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雑誌目次

論文

臨床検査10巻2号

1966年02月発行

雑誌目次

カラーグラフ

急性白血病細胞

著者: 早川隆

ページ範囲:P.102 - P.103

 急性白血病細胞の診断において,最も問題になる症例は,白血病細胞のすべてがペルオキシダーゼ反応(以下「ペ」反応)に陰性の場合でありましょう。以下「ペ」反応陰性例の骨髄塗抹標本を供覧する。これらはすべて貪食能,超生体,位相差,運動能および電顕像の観察により,最終診断された症例である。

グラフ

血清検査に関係ある動物の注射と採血法

著者: 松橋直

ページ範囲:P.105 - P.112

 インスタント化の波は臨床検査の領域にも入りこみ,血清学的検査もその例外でないので,動物を直接あつかうことは非常に少なくなってきている。しかし,検査室が高いレベルを保つためには新しく開発されてゆく検査法についてゆかねばならない。そのためには従来の方法の諸条件の検討,新しい方法との比較検査などをたえず心掛けることが大切である。さらに重要なことは,日常検査の体験,経験の中から新しいものを生み出そうとするたゆまざる注意,努力である。こんなとき,自分で動物を免疫し採血することは,血清学的検査法にたずさわっているものにとって極めて普通なあたりまえの仕事となってくる。こんなことを考えながら,免疫注射,採血などに必要で,もっとも大切なコツと思われるところを写真で紹介することとした。

卒業生におくることば

医療の一環をになう使命

著者: 土屋俊夫

ページ範囲:P.113 - P.113

 はじめて臨床検査の職場に就職したみなさん,おめでとうございます。
 いよいよ自分の力が社会的になったことは愉快でしょう。また,まことによい職業をえらばれたことを大いにほこりにして下さい。

座談会

意欲ある職業人としての出発を—新卒業生に贈る言葉

著者: 福岡良男 ,   青野悠久子 ,   鮎沢邦枝 ,   遠藤和子 ,   平塚玲子 ,   藤川淳策 ,   吉田光孝

ページ範囲:P.114 - P.122

技師が迎える三つの時期
 司会(福岡)きょうはお忙しいところをお集りいただき,まことにありがとうございます。3月の下旬に約800人の新しい衛生検査技師の方が卒業して皆さんの仲間に加わりますので,今日は「新しく職業につく方に送る言葉」というテーマで,臨床検査室に勤務しておられる先輩の技師の方々から忌憚のない御意見を伺いたいと思います。職場で昼の食事をしながら話している時のような軽い気持でお話しをしていただきたいと思います。
 技師の方は学校を卒業してから,3つの時期を経ているのではないかと感じています。第1の時期は卒業したてのころで希望と抱負に燃えている時期,はじめの1年間くらいがこの時期にあたると思います。第2の時期は仕事が単調で無味乾燥に感じられる倦怠期といったらいい時期だと思います。卒業後2,3年目にこの時期を経験する人が多いように思います。全国的にみてこの時期に職場を変える人が多いように思います。第3の時期は仕事に熱意と愛情を持ち,ライフワークとして仕事に従事するようになる時期です。きょうはこのような立場から昨年3月に学校を卒業された藤川さんと鮎沢さん卒業後2年目を迎えた青野さん,卒業後5年目を迎えた平塚さん,それに加えて10年選手のベテラン吉田さんと遠藤さんに御出席をお願いしたわけです。

技術解説

血清学検査でつかう動物の扱い方—主にその免疫注射法・採血法

著者: 松橋直

ページ範囲:P.123 - P.129

はじめに
 ちかごろは,日常の血清学的検査に自分で動物からとった材料をつかうことはすくなくなってきている。たとえば,補体をとるためにはモルモットを全採血したり,心臓から採血して血清を分離したものであるが,この頃は,補体価の高いモルモット血清を凍結乾燥したものが市販されている。また,どうしても自分でとらなければならないと考えられていたヒツジの赤血球ですら,保存液であるオルスィバー(Alsever)液に混合し,低温に保存したものが売りだされている。まったく便利になったものである。しかしよい材料を使わなければならないとき,特殊な目的の実験をおこなうときは,どうしても自分で免疫注射をしたり,採血をしたりしなければならない。また,それよりもまして大切なことは,血清学なるものを理解するには,自分自身の手で免疫注射をして,ときどき採血して,その力価をはかってみることがよい手段である。またこうすることにより,抗原とか抗体というものの概念を適確につかむことができるからである。
 そこで今回は,血清学的日常検査でつかう可能性のある動物,その飼育法,免疫注射法,採血法などをのべてみることにしょう。

急性白血病細胞のみかた—特にペルオキシダーゼ反応陰性の場合

著者: 早川隆

ページ範囲:P.130 - P.133

はじめに
 急性白血病は1種類の幼若細胞が異常増殖する疾患で,主役を演ずるそれぞれの細胞にも種々の異型性をともなうものが多いため,普通染色標本にて骨髄性,リンパ性あるいは単球性などと明確に分けることは難かしい場合が多い。これら急性白血病細胞の診断に際し,最も問題になるのは,それらのすべてが,ペルオキシダーゼ反応(「ペ」反応)に陰性の場合である。今回はとくにこの問題に焦点をしぼって,診断の手順および鑑別の要点についてのべる。

イースト型真菌同定法—その分類基準と実験法

著者: 曾根田正己

ページ範囲:P.134 - P.140

はじめに
 イースト(酵母)という名称は分類学上の群を表現するものではなく,細菌,かび,きのこ,放線菌などに対しての用語である。そのためイーストに与えられた概念は研究者によってかなりの相異が見られる。ただイーストの概念を規定する基準となっているのはSaccharomyces属酵母の性質であって,「単細胞で生活環の大半を過す真菌」「外観が糸状とならず泡沫状を呈する真菌」「出芽(あるものは分裂)によって栄養増殖をする真菌」「アルコール発酵を営む真菌」などの性質の過半または全体を満足するものを指している。
 ことに医学領域に使われている「イースト型真菌」となると,一層不明確な用語となり,条件によって集落の外観が酵母状を呈するSporotrichum schenckü,Histoplasma capsulatum,生活環の一時期に出芽細胞を形成するBlastomyces属菌,さらに黒色の糸状菌で分生胞子(conidia)の形成にあたって分芽法をもって繁殖するCladosporium(Hormodendrum)までイースト型真菌としている場合がある。

論壇

国家試験の行方—1.臨時行政調査会の答申をめぐつて

著者: 佐藤乙一

ページ範囲:P.150 - P.154

まえがき
 衛生検査技師の国家試験は毎年4〜5月頃の間に厚生省が実施していることは一度この試験を受けた人ならみんな知っているはずである。ところが,この国家試験を地方自治体(都道府県)に移譲するか,廃止すべきであるとしていくつかの機関がながいあいだ討議をかさね,首相に答申したことについては本会に籍をもつ人以外あまりよく知っていないのではないかと思われる。そこで今回は衛生検査技師法の制定された昭和33年以前にもさかのぼってこれら許認可問題に関する諸問題にメスを加え,できうることならば衛生検査技師の資格をもつものは一団に結集し,このような動きに対する諸情報を交換しあいながら資質の低下を防ぎ,逆に大きく前進するキッカケを作ることを目標にして問題を提起してみたい。

解説

死体解剖保存法について

著者: 佐伯徹

ページ範囲:P.155 - P.158

 わが国の死体解剖および保存について規律しているものは,死体解剖保存法(昭和24年法律第204号)である。

講座 やさしい数学

新しい数学序説(2)—論理

著者: 高垣東一郎

ページ範囲:P.159 - P.162

《はじめに》
 序説(1)では,"新しい数学"とは何かということ,なぜその学習や研究が必要なのかについて述べ,特に"集合"について種々の例を通して,その考え方,演算法則応用について解説した。
 集合論の創設は今世紀の"現代数学"におけるもっとも大きな成果の一つに数えられ,これから学ぶ論理Logic,確率Probability等との関係も深い。

研究

自働血球計数器用の標準保存赤血球浮遊液について

著者: 星野孝 ,   森川清子 ,   瀨尾邦子 ,   矢崎千秋 ,   城内治子 ,   金子瑛子 ,   片岡寿子

ページ範囲:P.163 - P.167

はじめに
 近年臨床検査室の自動化がすすみ,多くの血液検査室においても自働血球計数器が普及してきた。現在用いられている自働血球計数器には,血球固定方式,血球抵抗方式,血球誘電率方式,血球移動方式等々,測定原理や構造に多くの種類があって,それぞれ一長一短があるが,いずれの方式でも,測定感度は目算値を基準として設定しなければならない。すなわち現在使用に供せられている自働血球計数器は,いずれも誤差の多い目算法による血球数算定を予め行なっておき,その測定値に合わせて器械感度を設定するという欠点を有している。そこで器械の計数特性曲線上plateauxの部分の広い器械では感度設定の誤りによる器械計数値の誤差も少くてすむが,この狭い器械では,目算値の誤差が直接に器械計数値の誤りを招くことになる。したがって熟練した技術員が行なっても±5〜10%の誤差を伴い,かつ測定者の個人差も考慮しなければならぬ目算値をもって器械感度を調節する操作には大きな問題がある。図1および図2は,島津型自働血球計数器(以下島津型計数器)と東亜型自働血球計数器(以下東亜型計数器)による赤血球計数に際し,器械計数値と感度または弁別電圧の関係を示したもので,いずれの型にも厳密なplateaux部分は存在せず,特に島津型計数器においては目算値と一致する計数値を示す感度附近でも曲線の傾斜はかなり急激であって1),正確な感度設定がきわめて重要である事実が示されている。

アルカリホスファターゼ管(栄研)による血清アルカリホスファターゼ活性測定法についての検討成績

著者: 佐々木禎一 ,   岡崎廸子 ,   坂本稜子 ,   藤原恭子

ページ範囲:P.170 - P.174

 日本栄養化学K. K. から出された血清AlP測定試薬「AlP管(栄研)」について次の検討成績を得た。
 1.操作段階が少なく,手技的に容易で,目的に応じて半定量と定量とに使用しうる便利な国産の試薬セットである。
 2.反応後の呈色液は550mμにAlP活性を表わすPPの吸収を示す。試薬盲験では全く発色しないので毎回盲験の要はなく,水を対照として測定することができる。
 3.温置時間(0〜60分)とAlP活性との間にSigmoidの関係がある。
 4.発色は再現性も高く,また発色後1時間以降はきわめて安定な呈色を保つている。
 5.高力価血清の稀釈は,水あるいは生食(夫々8,16倍稀釈まで)で行なつてさしつかえない。
 6.アルカリ剤は開封後長期にわたつたものは劣化し活性値に影響を与えるので新鮮なものを使用すべきである。
 7.呈色液の550mμにおけるPPの吸収ピークは,血清のAlP活性およびビリルビン濃度の大小にかかわらず常にビリルビン由来のピーク(450mμ周辺)とclear cutに分かれている。したがつてビリルビンの影響は受けず,また総ビリルビン,黄疸指数との同時測定も可能である。
 8.一方BSP混在血清ではアルカリ性下で異常発色するので測定値に影響を与える。
 9.PPを用いた検量線では0〜800μg/dlの範囲で直線性を示す。

尿素窒素測定法(Urease-Indophenol法)の検討

著者: 宮城芳得 ,   川村尚也 ,   佐藤章子

ページ範囲:P.175 - P.177

はじめに
 近年,簡易尿素窒素測定用試薬が輸入され,その測定法が発表1)されているが,今回ユリナイト(中外製薬)を入手する機会を得たので,これを使用して実際に尿素窒素を測定し,同時に従来当検査室で実施しているDiacetylmonoxime法と比較した結果を報告する。

外国雑誌より

"正常範囲値の平均"による検査成績の精度管理/"Number Plus Method"による検査室の精度管理

著者: 吉野二男

ページ範囲:P.168 - P.169

 検査室における精度管理の必要性については既に言葉を重ねる要はなく,充分御承知のことと思う。
 ところが精度管理のためには,コントロール血清を求め,あるいは,プール血清などを用意しなければならず,そのための手数,処理等の点から実施できないでいるところがあるのではないかと思う。

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Glossary≪2≫

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.140 - P.140

megaloblastic an emia巨赤芽球性貧血
megalocytic〜巨赤血球性貧血

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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