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雑誌目次

論文

臨床検査10巻4号

1966年04月発行

雑誌目次

グラフ

螢光抗体法による脳炎像

著者: 青山友三

ページ範囲:P.302 - P.303

 左の表は東京地区で3年間にわたって毎年夏を中心に発生した日本脳炎(臨床診断)の剖検例をまとめたものです.一番診断の決め手となるウイルス分離は第7病日以降ではむずかしく,一方,迅速診断のできる螢光抗体法がすぐれていることを示しています.もう一つ注目すべきは毎年その時期に日脳以外の脳炎が発生していることで(ウイルス分離,螢光抗体法,組織所見などが何れも陰性の例),たとえばエンテロウイルスなどによる脳膜脳炎があげられます.抗原抗体反応の特異性を利用した螢光抗体法(直接法)を用い実験的に種々のウィルス性脳炎をしらべてみると,それぞれの病理発生に特徴のあることがわかります.
 これによって今まで原因不明とされていた脳炎のいくつかを,はっきりと診断しうるめどがつきました.

自動研磨機

著者: 内海邦輔

ページ範囲:P.305 - P.312

技術解説

部分トロンボプラスチン時間—PTT・KPTT測定法

著者: 藤巻道男 ,   佐野京子 ,   安井武義 ,   川辺ネウザ ,   藤巻京子 ,   和田敬子

ページ範囲:P.313 - P.318

はじめに
 臨床検査におけるスクリーニング・テストという言葉が広く用いられているが,これは各種疾患に対して検査を行なうにさいし,まず簡易な信頼度の高い検査法を行なって,その異常の有無を知ろうとする方法である。凝血検査における部分トロンボプラスチン時間Partial thromboplastintime (PTT)は,凝血因子の欠乏を原因とする出血性素因とくに軽症例の発見のためには信頼度のたかいスクリーニング・テストの一つである。
 Langdell (1953年)はトロンボプラスチンには正常血漿も1血友病血漿も共に同じ速さで凝固せしめるものと,正常血漿は速く凝固させるが,血友病血漿は速く凝固しないものとの2種類があるとして,前者を完全トロンボプラスチン,後者を部分トロンボプラスチンと命名し,後者を用いて血友病の診断法として,部分トロンボプラスチン時間(PTT)なる本法を考案した。

ミクロトーム刀自動研磨機—メスについての知識をふくめて

著者: 内海邦輔

ページ範囲:P.319 - P.323

まえがき
 ミクロトーム刀自動研磨機は,ミクロトーム刀(以下単にメスとよぶ)を砥ぐ機械であるから,この自動研磨機を上手に使いこなすかどうかは,砥上ったメスがよく切れるかどうかで判定される。すなわちメスをぬきにして自動研磨機を語ることはできない。そこでまずメスについて若干述べておきたい。

真菌検査法総論—≪その1≫真菌とは何か

著者: 川北祐幸

ページ範囲:P.324 - P.327

真菌の概念と分類学的位置
 微生物を検査同定する場合,その分類学的位置をまず正しく認識する必要がある。ではここでとり扱う真菌類は,分類学的にどこに位置しでいるかをまずしらべてみよう。
 植物は顕花植物と隠花植物に2大別され,後者はまた次の3部門に分けられる。

外国雑誌より

コントロール血清の濃度計算用チャート

著者: ,  

ページ範囲:P.328 - P.329

 検査データの品質管理の目的で用いられるコントロール血清中の成分濃度を迅速に計算するための簡単なチャートの作り方について述べた。市販きれているコントロール血清は乾燥血清でそれに蒸溜水を加えて溶解して用いるのであるが指示された量を60〜140%位の範囲内で稀釈することが可能である。

検査室メモ

血清マグネシウムの簡易,迅速超微量定量法

著者: 茂手木皓喜 ,   金子孟

ページ範囲:P.339 - P.341

はじめに
 マグネンウムの定量には,現在は主にTitanYellowによる比色法が行なわれているようである。これはTitan Yellowとマグネシウムとのレーキ呈色を比色するものであるが,この反応は不安定なのでポリビニルアルコールを加えて安定化している。しかしそれでもなお不安定で再現性が幾分悪いようである。われわれはマグネシウムとsodium-1-azo-2-hydroxy 3(2,4-dimethylcarboxanilide)naphthalen-1-(2-hydroxyben-zene-4-sulfonate)(以下Mann dye試薬とする)との呈色が安定で,血清の除蛋白も不要で,しかも超微量でできるという方法1)について追試し,操作を改良しある程度満足すべき結果が得られたので以下に報告する。

座談会

螢光抗体法—そのルーチン化のために

著者: 青山友三 ,   奥平雅彦 ,   川村明義 ,   高橋昭三 ,   松橋直

ページ範囲:P.342 - P.352

たのしんでできる検査
 松橋(司会)きようはこれを現代の1つのトピソクというのには世界的レベルからみたらもうおくれているんですけれども螢光抗体法を論じてみたいと思います。
 まず螢光抗体法の簡単な原理というようなことをちょりとお話してい結合物が確かにできているかどうかを見定める方法です。いいかえれば免疫学の1つの方法にすぎないわけです。ただこれが最近になって喧伝される理由というのは試験管内の反応というのは,血球を溶かすとか凝集をするどか,年がら年じゅう同じいかけるというのは1930年,今から35年も前から行なわれたわけですけれども,現在の螢光抗体法が緒についたのは1941年,Coonsがfluoreceinを用いて抗体をラベルするということをはじめた時からで,しかしこれが軌道にのったのは1950年のCoonsの例の有名なJournal of experimental Medicineに発表された報告からといえましょう。ただきたいと思うんですけれども,川村先生いかがですか。

臨床生化学部門における日常検査の人員と規模《その2》—全国自治体病院学会臨床検査専門部会より

著者: 田中英 ,   斎藤正行 ,   丹羽正治

ページ範囲:P.364 - P.371

司会結局今のお話も人員の不足ということからくるのではないか。そのような最少限度の検査をする場合には,一体どの程度の最少限度の人員が必要か。またその検査をするための設備とか,また器具というものの最少限度の必要性というところで討論してみたいと思いますが……
 この人員の点については,一昨年の全国大学病院の中央検査科長会議というものがありまして,その時に討論された結論によりますと,検査技師,検査助手,雑役,検査事務員というような検査室の専属要員というものが大学病院ではその性格上病床数の15%,それから一般病院ではその規模とか現状について考えなければならないが,大体10%が必要であるというような結論が出ております。

講座 やさしい数学

確率入門(1)

著者: 高垣東一郎

ページ範囲:P.353 - P.357

はじめに
 ‘新しい数学序説’(1)〜(3)において,集合と論理,行列・ベクトルと線型計画等々,新しい数学の内容として勧められている重要なトピックスを拾って平易に解説してきた。
 これらは,従来の数・式・図形を中心とする数学とくらべて新鮮な内容であり,誰にでも楽しく学習できて,ためにもなると感じられたであろう。

レポート

生化学検査の精度管理

著者: 広明竹雄

ページ範囲:P.358 - P.363

精度管理の試みとその動機
 精度管理のためにControl Serum, Unknown Sampleを病院間に流す試みは,米国では1946年ペンシルバニヤ州医師会で行なわれ,病院間のバラツキがあまりにもひどかったので,いろいろの対策がなされ,管理血清の必要性が叫ばれるにいたった。日本においては医学書院(1962)および肝機能研究班,第一化学その他で同一Sampleを各病院間に流すことが試みられ,いろいろの問題点が指摘されている。その後もいろいろと試みられており,検査各種目の内容にまで立ち入って追求するという動きは個々にはあったが,全体としてまとまって検討しようということにはいたらなかった。今回精度管理研究会が発足した目的は,単に病院相互間のバラツキを再認識するのみでなく,重複測定を行なってより多くの情報を知り,加えて検査機器や検査内容の検討を行なうこと,および検査技師相互の向上を目指すことである。われわれとしては,おしつけでなく自発的に技師が精度管理を試みた点に最も大きな意義があり,今後の検査技師会としてこの種の研究の進め方を示したものと考えている。

研究

血清ビリルビンの微量測定法について

著者: 川西孝 ,   白方隆晴 ,   小原早己 ,   坂手倫子 ,   若林宣子

ページ範囲:P.372 - P.374

はじめに
 最近,新生児の核黄疸の早期診断に血清ビリルビンの測定が頻繁に行なわれるようになり,このさい検体は毛細管で採取したきわめて微量(血清0.05ml程度)の血清で測定しうることが望ましく,また成人においても同時に他の肝機能検査を行なうことから,微量(血清0.1〜05ml程度)で測定されることが望まれている。このようなことから,われわれは現在までに発表されている色々な測定法から2〜3の測定法を選び,Evelyn-Malloyのマクロ法を標準として検討を加えた。さらに,ジアゾ反応のさいにしばしば問題となる溶血の影響について検討を試みたのであわせて報告する。

ゴナビスを用いた免疫学的妊娠反応の信頼性について

著者: 文屋誠二 ,   井口祥三郎 ,   川西純暉

ページ範囲:P.375 - P.377

緒言
 試験管内で妊娠の早期診断,あるいは妊娠反応を迅速簡便に行なえるということは,産婦人科医,およびFriedman氏反応などで直接動物を扱かい,その労力的,時間的不便さに積年の嘆きをかこっていた検査技師にとって,長年の念願であったが,最近,免疫学的妊娠反応の研究発達により,妊娠反応の革命的簡便法がルーチンに行なえるようになった。免疫学的妊娠反応には大別してSchuyler(1950)およびMc Kean(1960)らによる沈降反応,Brody(1960)らによる補体結合反応,Wide & Gemzell(1960)らによる血球凝集抑制反応などがあるが,操作の比較的短時間,簡易性,高感度特異性を有する血球凝集抑制反応が主として行なわれているようである。Wideらは1960年本反応に関しての学説を発表,つづいて1962年反応条件を多少変更して3000件に達さんとする検討を行なって以来,外国はもとより国内においても多くの追試が行なわれてきた。すなわち赤血球凝集抑制反応によるH. C. G.(人絨毛性性腺刺激ホルモン)の検定法である。近年になりこれに用いる抗血清やH. C. G. 感作血球の凍結乾燥の技術的進歩は,この保存をより安定化し,最近では我国でも,外国製品に損色なき優秀な国産製品も市販されるようになった。

血清鉄,血清銅の簡易,微量測定法

著者: 岡本明子 ,   茂手木皓喜

ページ範囲:P.379 - P.382

はじめに
 血清鉄,血清銅の定量には現在キレート化合物による比色法がひろく行なわれている。キレート剤の種類によってそれぞれ長短はあるが,共通した欠点は反応の不安定なこと,他の物質の妨害をうけやすいこと,試料を大量に要することなどである。これらの欠点を最少限にしたといわれ,バソフェナントロリン,バソキュプロインを使用した簡易測定試薬キットについて,われわれはさぎにその検討成績を報告した。このたびは,さらに簡易化,微量化したと称するSchweizerhall社製のキットを検討する機会を得たので,以下報告する次第である。

超微量定量に伴う誤差の検討

著者: 広中孝作 ,   村井操 ,   仁田坂勝己

ページ範囲:P.383 - P.385

はじめに
 現在,臨床化学の分野における測定方法,ならびに器具の発展にはめざましいものが認められ,それに伴ない超微量分析法が次第に臨床検査の一環として導入されるようになった。今日一般化されている主として毛細管によって得られた血清を用い,超微量分析を行なう場合の誤差の面について,標準定量法として用いられている方法と比較検討を行なった。

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Glossary≪4≫

著者: 寺田秀夫 ,   中甫

ページ範囲:P.330 - P.330

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diathesis素因,素質
hemorrhagic diathesis出血性素因

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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