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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査10巻9号

1966年09月発行

雑誌目次

グラフ

胃がんの肉眼検査—初期の胃がんを中心として

著者: 佐野量造

ページ範囲:P.854 - P.855

 初期の胃がんを肉眼的にわけると,次の3種の型が代表的である。(A)胃腔内に突出するがん。(B)胃壁を決潰するがん。(C)胃粘膜の表面に拡大するがん。これらの3種のがんは,それぞれ,発生した母地,進行した場合の浸潤や,転移の様式もことなっている。いままでの胃がんの型はかなり進行したがんについて記されてきたが最近は診断学のいちじるしい進歩で初期の胃がんの形態が把握できるようになった。ここで紹介するのは初期の胃がんの例である。

性ホルモンの周期性変化と細胞診

著者: 高橋正宜 ,   浦部幹雄 ,   高橋義邦

ページ範囲:P.857 - P.864

 成人女子の子宮内膜は卵胞より分泌されるエストロゼン,および排卵後黄体から分泌されるプロゼステロンに反応して特徴ある増殖期,分泌期,月経期の周期性変化をくりかえす。図1は卵巣ホルモン分泌の推移を図式的にあらわしている。
 エストロゼンは機能的に増殖性ホルモン(growth hormone)として作用し,とくにミュラー管起源の組織である子宮,卵管,頸管,膣上部などが感受性を有する。口腔粘膜,膀胱粘膜,表皮も反応性を示すという記載があるが質的にも,また程度もかなり弱いものと考えられる。

綜説

細胞診の基礎—Cytoscreenerのために

著者: 田中昇

ページ範囲:P.865 - P.872

まえがき
 1965年11月東京で開催された赤十字衛生検査技師会の「細胞診screener」の講演および,1966年5月9日より3週間にわたって行なわれた日本臨床病理学会関東支部主催「細胞診screener」養成講習会の冒頭に述べた講義の内容を基にしたものである。著者は一病理学者として,また病院の病理医(pathologist)として,ある信念のもとに病理部門において,この十数年間細胞診を実施し続け,たえず組織学とのcontrolにおいて自省しつつ訓練し,同時にscreenerを養成してきた。この間,必ずしも熱心であるとはいい得ないまでも多少なりとも得るところがあったと信じている。検出率の点からだけみても表1に示す1965年のデータはこの分野では一流と目されている癌研究所細胞診部における公表データと比較し得るレベルに達しており,かなり成果をあげていると思う。
 著者の検査部門のscreenerは病理の技師5名のうち4名で,年間6000件に達する組織検査を兼ねて年間7〜8000件の細胞診を臨床とはまったく独立した立場で実施しているのが実情である。ここでは,手技,技術面にはまったく触れず,この間に得られた体験に基づき,かなりの議論の余地があろうとは思うが,平素考えていることを述べる。

技術解説

歯・骨病理組織標本の作り方—パラフィン・ツェルロイジンを用いて

著者: 山本肇 ,   篠原昌子

ページ範囲:P.873 - P.879

 歯や骨のように石灰分を含む組織を薄切する場合には通常脱灰することが必要ですが,脱灰法の実際についてはここでは詳細に述べることをさけて,主としてパラフィンおよびツェルロイジンに包埋したものを中心として歯および骨の病理組織標本の作り方について記載することにします。

検査データのグラフによる検討の仕方

著者: 土肥一郎

ページ範囲:P.881 - P.888

はじめに
 測定されたデータは数字として表現されることが多く,また組織学的所見なども単にある目印の有無だけでなく悪性度を表す数字で程度を示すことが少なくない。数字で表したものはさらにある直線にプロットしたり,またはxy軸平面に位置づけて示したりするといろいろな傾向を推測するのに便利で,この図を眺めているうちに生物学的法則の手がかりを直観的に考えつくこともまれではない。図形は数字の羅列よりもつよく直観に訴えるが,この"感じ"から法則を導くには正しい統計処理の方法を用いなくてはならない。以下にそのいくつかを例をあげて説明しよう。

真菌検査法総論—≪その5≫酵母様菌類

著者: 川北祐幸

ページ範囲:P.889 - P.896

酵母様菌類
 真菌類に属する酵母は,細菌よりやや大きい単細胞の微生物で,出芽によって増殖する。Saccharomyces属のように有性生殖を行なうもの(完全菌数)と,Candida属のように有性世代のない(不完全菌類)とがある。そして,Lodderらによれば,子嚢中に子嚢胞子をつくる(1)Endomycetaceae,射出胞子をつくる(2)Sporobolomycetaceae,および胞子を全然形成しない(3)Cryptococcaceaの3科(familees)28属合計180種が酵母様真菌として分類されている。
 I. Endomycetaceacは次のように各属に分類される。

レポート

みつめたい私達の現状≫3≪—アンケートにみられた全国大学病院衛生検査技師の実態

著者: 郡山八郎 ,   相沢久美江 ,   清水加代子 ,   三浦秀人

ページ範囲:P.897 - P.900

今月の調査/業務・研究・教育これにどうとりくんでいるか!
 私達大学病院に勤務する衛生検査技師の仕事の内容をみると,検査業務の他に研究,教育という2つの要素が加わるので,大学病院以外の病院における業務内容とは大部異なっていると思います。この研究と教育とは私達に明確に義務づけられたものではないのですが検査方法の検討,改良などの研究面は今日の検査の進歩に欠くべからざる条件であると思います。また大学が教育機関であるという観点からすれば,大学病院の中央検査部は,医学部学生はもとより,大学に付属する衛生検査技師学校生徒,さらに地方病院からの研修生などの実習教育の場であり,私達技師は彼等の指導者として,重要な立場にあると思います。このような状況の下で,大学病院の技師は業務に伴う研究,教育ということをどのように考えているかをみてゆきたいと思います。

私の工夫

内田式簡易吸引器

著者: 内田正明 ,   樫田良精

ページ範囲:P.900 - P.900

●特徴
 従来の市販吸引器は下部にある排水口のガラス管の接続部分が非常に細くすぐ破損します。
 一度破損すると修理できないのがこの器具の最大の欠点です。その上大変高価であまり好ましくないように思います。私は2年来手製を使用していますが,性能,持久性,経済性においては市販品にすこしも劣らぬと信じますので発表いたしました。

講座 臨床血清学講座Ⅲ

総論(3)

著者: 福岡良男 ,   安藤清平

ページ範囲:P.901 - P.909

I.臨床検査に用いられる血清反応
 種々の血清学的反応が臨床検査に用いられている。

やさしい数学

統計入門(3)

著者: 高垣東一郎

ページ範囲:P.911 - P.916

 統計入門(1)において,統計学のおこり,新しい統計学(推測統計学)の意義,指数と比率(人口,物価,医学的変量など),度数分布,算術平均の計算法などを学び,
 同(2)では,種々の代表値(幾何平均,メジヤン,モード),正規分布の性質,標準偏差の計算方法などをとり上げた。

研究

抗凝固剤アンチクロットETの検討

著者: 日比谷淑子 ,   村山範子 ,   小林茂樹

ページ範囲:P.927 - P.929

はじめに
 血算に用いる抗凝固剤は,従来二重蓚酸塩,ヘバリン,EDTAなどが使われていたが,時間の経過に伴い検査成績がしばしば不正確であったので1),私達の検査室では血算は耳朶採血で検査を行なっていたが,検査量の増加や自動血球計算器の購入により,耳朶採血では不便になったので,適当な抗凝固剤を探していた。今度新しく発売されたアンチクロットETについて,白血球数,血小板数,血液像,網赤血球数,Hb,Htについての時間的変化を,二重蓚酸塩,ヘパリン,EDTAと比較検討してみた結果,アンチクロットETについて,他の抗凝固剤よりも好成績が得られたので,耳朶採血に代りアンチクロットETを使って血算を行なっている。その結果を報告する。

尿蛋白質に関して

著者: 遠藤了一 ,   筧佳代子 ,   菱沼昭子 ,   高橋順子 ,   石塚昭信 ,   鈴木秀治 ,   菊池猪三男

ページ範囲:P.930 - P.932

はじめに
 尿蛋白質定量法については多くの研究者によりすぐれた方法が考案されている。Carawayは直接測定法として5%三塩化酢酸による混濁の420mμ比濁法,三沢,沖中らによる20%スルフォサリチル酸比濁法,Kingsburyclark法,Extonによる硫酸ナトリウム,BPBを用いる方法,この他にHarrison法,末吉法,エースバッハ法などがある。これらの蛋白質定性,定量時における標準混濁液に関しては残念ながら安定性あるものが得られず,5〜10mg/dl程度の判定はきわめて困難である。最近医学書院にて開発中のPSラティックス混濁標準液を入手してこれの安定性などについて検討を加えた。

受験体験記

成功は一歩の努力から—<衛生検査技師国家試験>

著者: 長村甚弥

ページ範囲:P.933 - P.933

 「長村甚弥」5月17日の新聞に厚生省発表による自分の氏名が大きく,そしてそれのみが目にはいる。"遂に合格出来たそ"涙が自然ににじみでる。今迄の長い苦しい受験生活が次々と頭をかすめる。「お前はよくやった。この合格は,その賞品だよ,よく頑張ったよ」と私は自身にいいきかせた。
 私は,高校卒業と同時に大阪府立衛生検査技師学校に入学し,卒業の時,国家試験に失敗し,翌日から受験生活のスタートをきった。

外国雑誌より

血糖

著者: 北野敬

ページ範囲:P.935 - P.935

 血液中の糖は,ほとんどブドウ糖であるが蔗糖や乳糖も幾分かは,含まれている。空腹時における健常者の血液中には普通,80〜120mg/dlの糖を含有している。食後では,その平均値が180mg/dlに達することもある。筋肉中のブドウ糖は酸化によってエネルギーと熱になる。糖は腸管から吸収され血液に入る,そして過剰分はグリコーゲンとして,大部分は肝臓に貯臓される。過剰の糖のうちのあるものは脂肪に変り内臓,とくに腎臓の回りや皮下に貯えられる。炭水化物の摂取が少なければ,グリコーゲンはブドウ糖に変り,もとの血液に入る。
 ブドウ糖代謝は,膵臓のLangerhans島から分泌されるホルモンであるインシュリンによって調節される。インシュリンの分泌が不十分な場合には真性糖尿病が起こる。

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Glossary≪8≫

著者: 寺田秀夫 ,   横山芳郎

ページ範囲:P.934 - P.934

<t>
target cell的状赤血球
thalassemia地中海貧血

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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