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雑誌目次

論文

臨床検査11巻1号

1967年01月発行

雑誌目次

グラフ

肉眼標本の見方<1>—循環障害

著者: 金子仁

ページ範囲:P.2 - P.3

 病気の本態をその場で,この目で見るためには病理解剖が必要である.病気は病理解剖により始めて本当の診断がつけられる場合が多いからである.衛生検査技師は,たとえ何科で働こうと,病気の本態を知るため病理解剖を知らねばならぬ.このアトラスは病気の実態をナマナマしい実物を通じて示説する目的で編集されたものである.従来の臓器別区分をやめて病理総論的にならべて見た.

LDHアイソザイム分画法—乳酸脱水素酵素アイソザイムのpolyacrylamide gel薄層電気泳動による分画法

著者: 永井諄爾 ,   内山英幸

ページ範囲:P.5 - P.8

 polyacrylamide gelが電気泳動支持体としてすぐれた性能をもつことは,よく知られていることである。この方法によるLDHアイソザイム分画法を,グラフによって示すことにした。これに続く「技術解説」の項と見くらべながら,理解していただきたいと思う。

綿密な設計と豊富な設備—天理よろづ相談所病院の臨床病理部

著者: 山本俊平 ,   高橋浩

ページ範囲:P.9 - P.12

 経験と"かん"が診療になくては困ることは誰も知っている。われわれのいう臨床病理すなわち臨床検査がなければ,どうともならない段階に,現在の臨床医学が進歩したこともいう必要はない。当病院の建設,開始にあたっては関係した多くの人が,あらゆる部分について能うかぎりの配慮を行なったが,中でも臨床病理部,放射線部,手術部については綿密な考慮が加えられ,設備もされた。臨床病理部についていうならば,いかに設備がいき届いていても,実際に仕事をする技術者にその人を得なければ効果は乏しい。それで当病院では来年より技師学校を開設して人材の養成に努力する。写真撮影場所の選定およびその説明文については高橋浩臨床病理部長に任せた。

綜説

血漿タンパク

著者: 松村義寛 ,   河合忠 ,   松橋直 ,   天木一太

ページ範囲:P.13 - P.21

 血漿タンパクには,いろいろの検査法があり,方法がちがうとその所見もいちじるしくちがってくる。問題は複雑であり,また各科にわたっているので,話しあい形式で検討と解説をおねがいした。なお紙面の都合で,2回にわけて,おおくりする。

技術解説

染色体検査法—標本作成法と診断的意義

著者: 大石英恒

ページ範囲:P.22 - P.28

はじめに
 染色体検査が臨床医学の分野で重要視されるようになったのはごく最近のことである。これまで漠然と遺伝子の突然変異によるもの,あるいは遺伝学上不可解な現象とみなされていた先天異常のなかから,1959年,染色体異常に起因する疾患がFordら(Turner症候群),JacobsとStrong(Klinefelter症候群),およびLejeuneら(Down症候群)によって次々と確認された。それ以来,人間の染色体異常に関する研究はきわめて活発に行なわれるようになり,多くの論文が公表されるにしたがって,発見された染色体異常の種類もモザイクを含めるとすでに100に近い。しかし現時点において,染色体異常と臨床像との対応関係が明らかなものを整理してみると,常染色体としてはDown症候群,DとEトリソミー症候群,および"ネコなき"(Cri du chat)症候群の4つの疾患が挙げられ,性染色体としてはTurner症候群,Klinefelter症候群,およびXXX個体の3つに集約される。
 これら7つの疾患がそれぞれ特有な染色体異常に原因することはすでに多くの研究者によって確認され,もはや疑いの余地はないと思われる。

原発性非定型肺炎(マイコプラズマ肺炎)の検査法〈2〉—大量培養法と血清学的同定法

著者: 石田名香雄 ,   荒井澄夫

ページ範囲:P.29 - P.34

M.pneumoniaeの大量培養法
 マイコプラズマの分離培養とは別に特にこの一項を設けた理由はなるほど継代をくり返していくにしたがってマイコプラズスは一般によく増殖するようになってくるが特に抗原作製のため大量のマイコプラズマを集めるためには工夫が必要である。その大量のマイコプラズマを得るためにはどのようにすればよいかを本項で論じておきたい。

乳酸脱水素酵素アイソザイムの分画法—とくにpolyacrylamide gel薄層電気泳動法による

著者: 永井諄爾 ,   内村英幸

ページ範囲:P.35 - P.42

アイソザイムとは
 酵素の主体物質は蛋白質である。ある化学物質が純粋であるかどうかのきめ手の1つは,それが結晶であるかどうかである。多くの酵素が蛋白質として,また一定の複合蛋白体として,その結晶化に成功している。私たちはこうした結晶酵素を純粋な酵素,すなわちそれ以上細分などされないものと考えてきた。
 ところが1959年MarkertとMöller2)とは,心筋から抽出した乳酸脱水素酵素**の結晶の溶液を電気泳動にかけたとき,それが4つの分画帯にわかれることを認めた。すなわちこれら4つの分画は,どれもNAD***を助酵素とし,L-乳酸を脱水素するという触媒作用の点CH3-OHL-乳酸0COOH+NAD LDH CH3-C=O-COOH+NADHでは同じであるが,電気泳動における易動度に差異があったのである。MarkertとMöllerとは作用は同じであるが,その物理化学的性質のちがう酵素をアイソザイムと名づけた。彼らのこの研究と前後して,血清やその他の体液,また組織抽出液などを電気泳動やクロマトグラフィで分画するとき,それらの材料の中の多くの酵素が一定の分画に分離されることが知られていた。そして臓器の種類によって,分画される酵素,たとえばLDHのアイソザイム数とその分画像,それぞれのアイソザイムの性質が,それぞれ一定していることが明らかになった。この関係を模型的に示すと,図1のとおりである。

座談会

救急検査

著者: 畑下敏行 ,   福武勝博 ,   牧野永城 ,   三輪史朗 ,   樫田良精

ページ範囲:P.44 - P.54

 臨床検査をぬきにしては,医療を語ることはできない。にもかかわらず,わが国の夜間検査を含めての救急検査の実状は,どうだろうか。今回は,救急検査を立ちおくらせているものは何か。また,その解決方法は何か,など各科の需要を含めて検討してみる。

講座 やさしい数学

推測統計入門(4)

著者: 高垣東一郎

ページ範囲:P.55 - P.60

 新しい数学序説,確率入門,統計入門に続く推測統計入門(1)〜(3)において,次の各内容を学習した。
 推測統計入門(1)……推測統計学の考え方とその起源,母集団平均(または比率)の推定,標本抽出の方法など。
 同上(2)……母集団平均(または比率)についての検定,小標本による検定と推定など。

入門講座 細菌

平板への材料の接種法

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.61 - P.61

 分離培養,菌集落の単離による純化など,平板への接種は,実験の最初の手段となることが多い。目的は,孤立した菌集落をつくることである。
 通常,平板は,フタを下にし,清潔な実験台の上におく。これで,空中からおちてくる雑菌から,平板培地は保護される(ごくやわらかい,PPLO寒天等は,こうしてはいけない)。エーゼ,バーナー(またはアルコールランプ),接種する材料を,使いよい位置にならべる。

血清

免疫

著者: 松橋直

ページ範囲:P.62 - P.62

 ある伝染病に一度かかると,2度とおなじ病気にかからない,すなわち「2度なし」のことを免疫とよんでいる。たとえば,幼時に麻疹にかかると,その人は一生の間に2度と麻疹にかかることはない。耳下腺炎(オタフクカゼ)も同様であることは,われわれが身をもって体験しているところであろう。しかし,この例は,本人が病気にかかってしまい,運が悪いときは不幸な結果—死—になってしまう。軽いときでも相当に苦しまなければならない。この苦しみからまぬがれるために考えだされたのが,ジェンナーによって工夫された予防接種法である。有名な話であるから御存知のことであろうが,ジェンナーは,牛の痘瘡にかかったことのある乳しぼりの人は,人間の痘瘡にかからなくなることから思いつき,わが子を実験対象にえらんで牛痘をうえそれが害がなくかつ人間の痘瘡にかからなくなることを立証した。こうしてジェンナーによって創案された種痘法は,弱毒化した病原体を人間に接種することにより,人為的に伝染病の「2度なし」をつくることに成功し人類に多大な貢献をなした。その後19世紀の初め,パスツールによって狂犬病の予防接種法も成功している。

血液

血球の分化と成熟過程

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.63 - P.63

 健康人の身体には体重の約1/3すなわち4〜5lの血液がある。この血液は血漿(無形成分)と血球(有型成分)とに分けることができる。血球はさらに大別して赤血球系,白血球系,栓球系に分けられ,白血球系は細胞質内に顆粒を有する顆粒球系細胞とリンパ球,単球,形質細胞に区別される。
 これらの血球は造血臓器すなわち骨髄,リンパ節,脾などからつくられるが,その分化の過程はなお充分には明らかでない。現在赤血球,顆粒球,単球,栓球は骨髄から,リンパ球はリンパ節や脾臓,胸腺,扁桃腺などのリンパ組織でつくられ,形質細胞は網内系あるいは血管外膜細胞から産生されると考えられている。骨髄内でつくられる細胞のもっとも未分化のものを幹細胞と呼び,これから赤血球系,顆粒球系,単球系,栓球系と分化し(表),各々の系統の最も幼若型を一般に芽球とよぶ。この母細胞が細胞分裂をくりかえしながら数を増すと同時にしだいに成熟が進み,細胞の大きさは小さくなり,核構造も粗くなり核小体(核仁)が消失すると共に細胞質の染色性も変化し顆粒などが生じてくる。これは幼若型ほど細胞質内に多量の核酸があり強塩基性に染まるためである。正常な場合には成熟した細胞(表中□で囲まれたもの)だけが末梢血液のなかに出てくる。末梢血液中に出てこない未成熟な細胞を総称して幼若細胞と呼び,白血病をはじめいろいろな病的状態ではこの幼若細胞が末梢血液中に出てくる。

生化学

濃度の表わし方のいろいろとその間の換算法

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.64 - P.64

 溶液Tは溶質Sと溶媒Lとが均一に混合した状態にあるので,TのどこをとってもSの濃度は等しい。Tが大量にあっても,微量であっても濃度は一定の値をとる。いま溶質sグラムと溶媒lグラムを混ぜたところ均一に溶け合ったとすれば溶液の全量tグラムが次の式で表わされる。
t=s+l……質量不変の法則

病理

人体各臓器の肉眼によるみかた(1)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.65 - P.65

 衛生検査技師は,たとえどこのパートで働こうと,常に病的材料に接するのであるからどんな病気が人体に起るかという事を知っておく必要がある。最も簡単に病気を知るのは病理解剖した臓器を見る事である。このためには正常臓器を知っている必要がある。
 このアトラスは正常と病的の臓器を肉眼で知るために作られたもので,なるべく解剖によらねば知る事のできない臓器を選んだ。尚表面と割面が分る様に努力した。清水一男,進藤登(東一病院)両君の絶大なる協力に対して感謝す。

生理

心電計の扱い方(1)

著者: 蔵本築

ページ範囲:P.66 - P.66

 心電図とは心臓の収縮(拍動)のさいに見られる心臓の活動電位を記録したもので,それを記録する機械を心電計という。

各科共通

顕微鏡のあつかい方

著者: 相賀静子

ページ範囲:P.67 - P.67

 臨床検査室特に形態学的検査をおこなう細菌,病理,血液,一般検査室では顕微鏡は不可欠のものである。それだけにわれわれは取り扱い方および構造については深い理解と知識が必要である。常に注意しなければならない点,購入方法について次に記したい。

検査室メモ

天秤について

著者: 広明竹雄

ページ範囲:P.68 - P.68

 天秤は,臨床検査に従事するわれわれにとって馴染み深く,また無くてはならないものであるが,その使用方法は多くの成書や使用説明書に書かれているので,案外こんな処が盲点になっているのでは……と思われる点を述べてみたいと思う。
 天秤の基本型は,左右対照でヤジロベーと何ら変るところがない。ヤジロベーのいずれかの手の先端に一定の重さのものを付着させると,それに応じてヤジロベー自体が一定の角度に傾く。この原理を応用して,より精密にする為に複雑化したものが化学天秤である。

研究

Dextrostixの精度向上に関する検討

著者: 佐藤乙一 ,   星野辰雄

ページ範囲:P.69 - P.72

まえがき
 血中ブドウ糖の定量法としては古くからHagedoran-Jensen法,Somogyi-Nelson法等が一般に用いられてきた。しかし前者は精度は高いが操作が複雑であり,後者は操作は簡単であるがバラッキが多いという欠陥をもっていた。
 以上の二法は昏睡等で来院した急患者の血糖を緊急に検査する場合等には不向であり,検査部門の大きな悩みとなつていた。

血清コリンエステラーゼ測定法の超微量化

著者: 工藤智子 ,   白岩昭子

ページ範囲:P.73 - P.75

血清コリンエステラーゼの診断的意義は,肝疾患,ネフローゼ症候群等において,重要であることは,すでに,Vorhaus & Kark(1953)および高橋(1956)らによって論じられている。1)〜4)
 血清コリンエステラーゼ測定法には,種々の方法が考案されているが,臨床検査室において,適当な精密度をもち,しかも比較的簡単に実施できる方法として,高橋—柴田法5)がある。本法は,
 アセチルコリン(省略)コリン+酢酸
の反応の進行における,基質緩衝液のpH降下を,フェノールレッドを指示薬として知る方法である。著者らは,この方法をさらに超微量化することを試み,原法の試料量の1/10である血清0.01mlを用いて原法に劣らない精密度をもって測定する方法をえたので,ここに報告する。

学会印象記 第13回日本臨床病理学会総会

大場氏の超微量法の発表に驚嘆—2つのシンポジウムとパネル討論をきいて/臨床病理学の明るい未来像を求めて—パネルデイスカッション「臨床病理学と臨床病理医のあり方」をきいて

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.76 - P.77

 11月13,14日の2日間,徳島大学において170余題の一般発表と,二つのシンポジウムおよび,総会長演説,パネル討論とを内容として開催され,来会者は700名余に及んだ。
 シンポジウムの一は形態と機能と題したもので,病理形態学的所見としての疾患における臓器の形態的変化と当該患者の生存中に得られた臨床検査の諸成績とがどのような連関を示すものであるかという病態解析上の基本的の問題について,1.リンパ節と白血球,2.肝,3.腎の3部について11名の演者により述べられた。

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Glossary≪12≫

著者: 横山芳郎

ページ範囲:P.43 - P.43

〈o〉
obesity 肥満症
obligatory reabsorption 強制的再吸収

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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