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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査11巻10号

1967年10月発行

雑誌目次

グラフ

肉眼標本の見方<5>—腫瘍(Ⅱ)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.692 - P.693

 この項目では肉腫および良性腫瘍をのせる。肉腫は非上皮性悪性腫瘍であるが,その頻度は癌に比して非常に少ない。大体1/5〜1/10と考えてよい。肉腫は若年者に多く,癌腫が淋巴行性転移をするのに比して,血行性転移をすることが多い。淋巴行性に転移する場合もある。良性腫瘍はその名のごとく,予後は良好でそのままにしておいてもさしつかえないが,発生部位により障害を起こしたり,または悪性化(たとえば脂肪腫が脂肪肉腫になったり,腺腫が腺癌になったりする)を起こす場合がある。

心電図の読み方

著者: 岸本道太

ページ範囲:P.695 - P.697

検査技師は心電図を上手に,きれいに記録するだけではいけない。検査技師も医療の協力者であることを自覚し,心電図の判読法を一通り身につけておく必要がある。特に救急を要するもの,すなわち急性心筋硬塞,発作性頻拍,完全房室ブロックなどの診断は記録と同時に行なうことが必要である。それは,このような心電図をみたさいにただちに医師に連絡し,処置に対する指示を仰ぐ必要があるからである。また,異常心電図の判読のためには正常心電図を充分に理解することが大切である。このような意味で正常心電図の定型的なもの,および急性心筋硬塞心電図,発作性頻拍,頻脈を呈する心房細動の4例を図示した。(本交715ページ参照)

交差適合試験

著者: 村上省三

ページ範囲:P.698 - P.702

 交差適合試験とは,どんなものであらねはならぬかは本文の解説を御覧いただきたい。要は諸外国では人命に関するもっとも重要な検査法として慎重に,厳重にやられているのに日本の現状はまだまだヨチヨチあるきに過ぎない。中には血液銀行でやらねばならぬことを止むを得ずやらされているのだと考えてすらいる不心得者がいる。交差適合試験は輸血をおこなう医師(医療機関)の責任に属する大切な検査である。また自分でおこなうにしても鋭敏度の低い血清法にしがみついて,しかも不十分な感作時間で切り上げているものがかなりあるようだが,これでは日本の患者は浮ばれまい。せめて酵素処理法の中でも時間のかからないブロメリン法位はとり入れたいものである。ここには血清法,ブロメリン法および間接抗グロブリン法をとり上げて図解することとした。

綜説

組織染色の理論

著者: 畠山茂

ページ範囲:P.703 - P.707

はじめに
 細胞組織の染色理論は,染料と生物組織間の物理化学的反応の理論であって難解な面が多くまた未知の現象が多い。著者にとってはこのような本質的なむずかしい標題に立ち向うにふさわしい力も経験にも乏しいが,ふだん伝承的,習慣的に行なっている染色操作に対しいささかなりとも理論的根拠が慾しいと願うものである。日常経験から得られた実際的な知識と,文献的考察に基づいて記述を進めることになるが,専門的立場からみれば晦渋な理解に堕しかねないことを附記しておきたい。

技術解説

比色分析における検量線—その作成と吟味

著者: 中山年正 ,   北村元仕

ページ範囲:P.708 - P.714

はじめに
 検量線の作成は化学分析の出発点にあたる。化学検査は体液化学成分濃度を「はかる」ことにあり,検量線はこのための「ものさし」にたとえることができるから,その作り方によっては結果に重大な影響をおよぼす。たとえば目盛の間隔が正しくとも表示が正確な値からずれていたり,または目盛の幅がちがっているようなものさしを使えば,計測値は一定の方向にはずれた結果となる。また使うたびにのびたりちぢんだりするものさしを使えば結果はバラツキとなってあらわれる。前者を正確度の,後者を精密度に関する誤差という。実際の検査においては,この2種の誤差が混在しているが,いずれも気づかれずにあやまった報告をしてしまうことが意外に多い。
 検量の尺度のちがい,すなわち正確度の差が,検査データのバラツキの原因としていかに重大であるかは,すでに1954年にWoottonらが国際臨床化学連合で実施した精度調査1)の結果から明らかになっており,最近の日本衛生検査技師会で行なった大規模な全国調査2)でも証明されている。後者では全国697施設に同一血清を配布し測定値を集計すると,きわめて大きなバラツキが示されたが,このとき同一の標準血清を共通の尺度として定量したところ,測定値の分布のくいちがいが大幅に修正されたのである。

心電図の読み方

著者: 岸本道太

ページ範囲:P.715 - P.720

 病院が大規模になり,その組織が合理化されるにしたがい,臨床検査は流れ作業的になり機械的になる傾向が強くなる。これは一面臨床検査の能率促進に役立っていることは否定できないが,また,一方においては個々の患者の特殊性ないしは重症度がややもすれば軽視されているうらみがある。心電図検査においてもその傾向はまぬがれず検査技師の中には慢然と機械的に患者の心電図を記録し,整理し,患者の状態に対する関心などはほとんど持っていないものも見受けられるようである。心電図その他の生理検査は他の病理,生化学検査のごとく物体,物質を取り扱うものとは異なり,生物しかも人格ある患者を取り扱うのであるから,患者に接する態度に気をつけると共に,患者の一般状態,臨床診断,治療状況に対する注意を絶えず払う必要がある。特に心電図においてその所見によってはただちに医師に報告し,指示を仰がねばならないことも多く,その点,ある程度の心電図判読の知識が要求される。この稿では,検査技師に必要な心電図のよみ方を概説し,特に医師に報告すべき緊急を要する所見について述べるつもりである。

交差適合試験に関する2,3の問題

著者: 村上省三

ページ範囲:P.721 - P.726

これでよいのか交差適合試験
 まかり違えばいのちと引きかえになるように大切な検査でありながら,これ程軽視されてきて,また今もって軽視され続けているものはあるまい。財政的にみても,これ程重要で,しかも時によっては専門的技術と知識を必要とする検査が,健保の取扱いでは輸血手技料の中に十把一からげに入れられてしまっている。そのためであろうか,ごく最近まで世間には権威ある大病院といわれているものの中にも,自己の責任でこの大切な検査をすることなく,血液銀行に下うけさせたり,血液銀行から派遣された係員にそのすべてをまかせていたところが非常に多く,むしろ交差適合試験は血液銀行がやるべきものだと誤解していた医師が数多かったようである。ところが交差適合試験は昭和27年に公示された"輸血に関し医師または歯科医師の準拠すべき基準"にも明記されている通り,輸血をおこなう医師の責任に属する検査である。もし交差適合試験の不手際がおきたとしたら,医師はどうなるであろうか。あれは血液銀行のミスだからとて罪をのがれることはできない。血液銀行にミスがあったとしてもそれを正しいと判定して輸血を実施したことによっておきる悪影響に対しては当然責任が生じてくる。

私の工夫

シノテスト1号(尿糖)による反応熱を何時でも急激に自然に行なう一方法

著者: 中西寛治

ページ範囲:P.726 - P.726

 検査量の漸増につれて,インスタントは検査試薬にも波及し,特に,尿検査試薬のインスタント化は,めざましいかぎりである。
 国内,外から発熱性物質を入れた試薬や酵素を利用した試験紙等が数種商品化し,また,発売されている。私は現在シノテスト1号(尿糖)を使っている。この原理は試薬に尿を加えると自然に沸騰し,尿中にブドウ糖が混入していると,硫酸銅がブドウ糖で還元されて,亜酸化銅や酸化銅になり,糖の含有量にしたがって,それぞれ色調が変化する。

座談会

院内血液銀行のあり方

著者: 天木一太 ,   安藤清平 ,   辻好克 ,   福岡良男 ,   松橋直 ,   村上省三 ,   松村義寛

ページ範囲:P.728 - P.738

 日本における院院内血液銀行は,欧米のそれと比べると,未だしの感を否定できない。今月は"院内血液銀行のあり方"と題して,その存在価値はどこにあるのか,現状はどうか,そこで働く技師はどうあらねばならないか,等々について,日本の血液銀行の生みの親ともいえる村上氏を中心に話しあっていただいた。

入門講座 一般

寄生虫検査<1>—検査にとりかかる前に

著者: 浅見敬三

ページ範囲:P.739 - P.739

 寄生虫卵や原虫類を顕微鏡によって検出しようとする前に,検査材料である糞便について検討しなければならないいくつかの間題がある。

血清

抗グロブリン試験(クームズCoombs試験)

著者: 松橋直

ページ範囲:P.740 - P.740

 赤血球のように細胞成分に対する抗体のなかには,生理食塩水中で凝集能力をもつ抗体(定型抗体,完全抗体)と,生理食塩水中では凝集能力をもたず反応条件をいろいろとかえた場合にはじめて凝集能力をもつ抗体(非定型抗体,不完全抗体)とがある。後者に属する抗体,たとえば抗Rh0(D)抗体は生理食塩水中で赤血球と反応させると赤血球に結合することはするが凝集をおこさせることができない。ところが,この抗Rh抗体を20%以上のアルブミン中で反応させると凝集がおこる。また,トリプシン・パパイン・プロメリンなどで赤血球を処置させてこの抗体と反応させると生理食塩水中で凝集がおこるようになる。しかし,赤血球に抗体が結合したことは推定するしかない。ところが,Coombsはこれを具体的に証明するため,抗体が結合していると思われる赤血球をよく洗い,これにヒト抗体グロブリンに対する沈降性抗体を加えたところ凝集がみられた。これにより,赤血球の抗原に抗体が結合することが明瞭に証明されたので,彼の貢献をたたえ一般にCoombs試験とよんでいる。しかし,抗体グロブリンに対する抗体即ち抗グロブリン抗体を加えるばかりでなく,クームズの頃よりもさらに広範な立場から検討されているので,これを抗グロブリン試験とよんでいる。そして,生体内ですでに抗体が結合していることを知る方法を直接法とよび,試験管内で抗体と抗原とを反応させてから試験を行なう方法を間接法とよんでいる。

細菌

クリグラー培地

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.741 - P.741

 グラム陰性桿菌で,普通寒天によく発育する菌は,腸内細菌と同様な方法で,生物学的性状を検査し,菌種を同定する。この目的で,分離培養後,第一に用いるのがクリグラー培地である。
 普通寒天に,乳糖1%,ブドウ糖0.1%,それにpH指示薬としてフェノールレッド,産生される硫化水素を検出するため,鉄塩とチオ硫酸ソーグを加え,半斜面,すなわち一部は高層に,一部は斜面となるように,ねかせてかためる。

血液

正常血球の鑑別

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.742 - P.742

白血球系細胞の鑑別

生化学

試料の処理—除タンパク

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.743 - P.743

 血漿あるいは血清中の最も多量にある有機成分はタンパクであるので,タンパク以外の成分を分析するには試料からタンパクを除いて行なうことが精度をよくするために必要である。
 タンパクを除く操作を除タンパクという。

病理

HE染色

著者: 畠山茂

ページ範囲:P.744 - P.744

 ヘマトキシリン(Hematoxylin)は無色の植物性染料で酸化するとヘマテイン(Hematein)となり黄色調を呈する。酸化は空気中でも行なわれ(自然熟成),人工的熟成には種々の酸化剤(KMnO4,NaJO3など)が使用される。酸化しすぎると酸化ヘマテインとなり沈澱するので酸化剤の量はほぼ正確にせねばならない。たとえば1.0gのヘマトキシリンに対しKMnO4は177mg,NaJO3は197mgである。
 ヘマテインは酸性色素であるが染色性を欠除し明礬や鉄などの重金属とキレート結合させアルミニウムや鉄ラックをつくることによって始めて染色性が得られる。この際結合した重金属は酸性溶液で強い正荷電を示すので核酸の燐酸基と結合し核クロマチンを強く染める。明礬ヘマトキシリンラックはpH3.0以上で青色化するので単に流水洗や薄いアルカリ液で処理すると鮮明で安定した青色がえられる(色出し操作)。

生理

心音計の扱い方<1>

著者: 森杉昌彦

ページ範囲:P.745 - P.745

はじめに
 各種の診断法が著しい進歩をとげている現在では,かつて医師のシンボルとまでいわれた聴診器の権威は地に墜ちたかに考えている人が少なくない。ところが,心臓の診断に関する限り,聴診器の占める位置は,昔よりもむしろ重要となっている。それ程,心音,心雑音は心臓および大血管における血行動態の変化を忠実に反映しているものである。しかし,人間の聴診能力には限界があるので,心音・心雑音について更に細かい検討を行なうために登場したのが心音計である。

検査室メモ

ふたたび洗淨について<1>—ピペットの洗浄

著者: 広明竹雄

ページ範囲:P.746 - P.746

 断水のあと,蛇口をヒネったトタンにほとばしり出た赤錆色の水……清澄と信じていた水道管の中が,このように錆びている現実に嫌悪を感ぜずにはいられない。
 われわれが日常使用しているピペットやメランジュールも,アミドシュワルッ10Bなどの好蛋白色素で染めてみると,時にハッとさせられる。透明でキラキラと輝き,完全に洗えていると信じぎっていたものが,或いは薄く,或いは濃く,蛋白による汚れが染め出されると,唖然とならざるを得ないのである。

講座 臨床血清学講座Ⅻ

各論(8)—血漿タンパク成分の血清学的検査法

著者: 福岡良男 ,   安藤清平

ページ範囲:P.751 - P.754

 血漿タソパク成分の分析にはGrabarにより考案された免疫電気泳動法がすぐれており,すでに血清検査室で実施されつつある。免疫電気泳動法についてはこれまでに多くの解説があるので,今回はこれを省略し,その他の血漿タソパク成分の血清学的な簡易検査法について解説する。

臨床生化学講座Ⅵ

酵素—血清酵素を中心に

著者: 松田誠 ,   藤沢洌

ページ範囲:P.755 - P.759

I.酵素反応
 生きている細胞の基本的な性質の一つは,その環境温度で複雑な代謝反応を非常にすみやかに進めることで,細胞内でこのような複雑な反応を見事に進めていく主な因子は酵素とよぶ一群のタンパク質である。酵素は生細胞によってつくられ一定の反応を触媒するタンパク質でその反応を細胞維持に必要な速度で進める。酵素はその触媒する反応量に比べると問題にならないくらい低濃度で作用する。酵素の機能は本質的にはその酵素の作用をうける物質(基質)を活性化して,反応速度を促進するのであって,しかも一つの酵素がいろいろな反応を触媒するのでなく,細胞でおこる数千の反応にはそれだけの酵素が必要である。すなわち酵素は基質特異性をもっているのである。

研究

血液放置による血糖値の経時変化—有機分析第67報

著者: 百瀬勉 ,   大倉洋甫 ,   松浪紀美子 ,   荒川泰昭

ページ範囲:P.761 - P.763

 採血後血糖値は時間の経過によって変化し,測定値に大きい影響を与えるので,試料を診療所などから集めて定量を行なっている中央的な臨床検査室などで問題となっている。この経時変化の研究は断片的に行なわれており1),最近ではブドウ糖酸化酵素法によって研究した例がある2)。先に著者らは血液をタングステン酸ナトリウムと硫酸アルミニウムカリウムで除蛋白し,3,6—ジニトロフタル酸で発色を行なう血糖の定量法3〜8)を発表したが,この方法が各地の臨床検査室で採用されていることから,今回この方法によって血液を放置したさいの血糖値の経時変化を追跡し,臨床検査で実際に役立つ資料を得ることを目的として研究した。
 また血液を著者等の方法の希釈倍率(30倍)に水で希釈したときの血糖値の経時変化,および血液を著者らの除蛋白剤で処理して放置したときの血糖値の経時変化も検討したので,ここに併せ報告する。

尿酸測定法の検討—その1—リンタングステン酸還元法について

著者: 屋形稔 ,   士田雅子 ,   富山八重子 ,   吉沢洋子

ページ範囲:P.764 - P.766

 血清および尿中の尿酸定量に今日多く利用されている方法は,大別すると,(1)尿酸の還元力を利用して,リンタングステン酸をタングステンブルーに還元し,その呈色を測定するリンタングステン酸還元法1)〜5)(以下リ法)(2)尿酸が紫外部に吸収をもつ特性を利用し,尿酸を特異的に分解する酵素ウリカーゼを働かせて,紫外部吸収の減少から定量するウリカーゼ法2)6)7),および(3)両法の組合せ,すなわちウリカーゼ作用前後のタングステンブルーの呈色の差から求める方法8)9)に分けられる。これらの中でも,それぞれの長所に基づいて,日常検査には前2者が繁用されている現状である。
 われわれは今回リ法(ヤトロンキット)と,国産ウリカーゼ(小野薬品)によるウリカーゼ法を実施することにより,両法を比較する機会を得,尿酸測定法について文献的考察を含め,これら測定法の問題点を中心に検討を進めたので,その成績について報告し,御参考に供したい。

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Glossary≪19≫—「循環器」関係(6)

著者: 横山芳郎

ページ範囲:P.727 - P.727

P-wave P波
absence of P-wave P波消失

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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