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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査11巻13号

1967年12月発行

雑誌目次

グラフ

肉眼標本の見方<6>—その他

著者: 金子仁

ページ範囲:P.1006 - P.1007

 今まで病理総論的に病変を並べてきたが,今回は最後に"その他"として結石症(腎,肝),回虫症,発育異常(嚢胞腎,胎児性異栄養症,内脳水腫)を載せた。ことに回虫を有する肝はきわめて珍しいものである。終戦当時の剖検例ではたいていの屍体の消化管内に回虫を認めたが現在では一匹でも回虫を発見すれば珍しい方である。この例は終戦時の肝なので色褐せているがあえて載せたしだいである。

超微量定量の実際

著者: 佐々木匡秀 ,   大場康寛 ,   神尾尊

ページ範囲:P.1009 - P.1016

 ごく微量の血液を用いて,多種類の化学的成分を簡易に,迅速に,精密に分析し,病態を綜合的に把握しようという努力が永年続けられているが,近年,超微量化学定量法が日常検査として組み入れられ実用段階に達して,その目標に一歩近づいた感がある。ここでは,すでに山口大学医学部,東洋工業病院,川崎病院および天理病院において全面的に採用され,日常検査として活用されている能率的な,しかも経済的な各種超微量用機器を用いた実用的な精度のよい新しい超微量定量の実際を紹介する。

綜説

ファージ型別—疫学の一方法論

著者: 大橋誠

ページ範囲:P.1017 - P.1026

はじめに
 感染症の疫学的研究をする場合に,目的とする疾患の原因菌を明確に他の菌から区別して把握することは必須の条件である。病原細菌学の発祥はまさにこの認識に始まったと考えてよい。Koh,Pasteurの活躍を中心とした揺藍期ともいうべき19世紀の細菌学の大きな目標は,種々の病理所見,あるいは流行様相を呈する疾患にそれぞれ対応する細菌を発見し,それが原因菌であることを証明することであった。その後それぞれの病原細菌が詳細に研究されるようになって,いきおいそれらを対比類別しようとする方向へと学問は進展する。すなわち分類学としての発展の途である。
 また,生化学的な性質の解析の進歩に伴って,凝集反応,沈降反応などの免疫学的な方法論の開発によって,病原細菌をさらに明確に詳細に区分できるようになってきた。サルモネラ,赤痢菌,大腸菌など腸内細菌にせよ,肺炎双球菌,レンサ球菌にせよこのような方法による細分がなされている。しかしこれらの類別の作業はただ単に生物分類学としての興味からのみなされたのではない。同じ病理を示し,同じ流行形式をとる疾患をその病原体の性質の面からさらに区分し,この標識に従って該当疾患の流行についての認識を深めてゆこうとする意図があったはずである。

技術解説

緩衝液—種類および作成法

著者: 森本武利 ,   吉村寿人

ページ範囲:P.1027 - P.1034

 生体にとってpH値が一定に保たれることは非常に重要である。それは媒質のpHがわずかに変動しても各種組織における化学反応が著明に変化し,また酵素反応にはそれぞれ至適pHがあってその至適範囲をはずれると酵素反応は正常に行なわれなくなる。したがって媒質のpHは組織機能調節機構の一要因となっている。そこで各種生体液のpH測定や生化学的検査にさいし,この溶液pH調整の問題が非常に重要な意味をもってくる。このような溶液pHの調整に用いられるのが緩衝液であって,緩衝液に関する基礎的な知識,緩衝液の種類および主要緩衝液の作成法について以下項を分って説明する。

薬物中毒の検査法

著者: 武田寧

ページ範囲:P.1035 - P.1040

I.はじめに
 薬物中毒の場合に,その原因物質が何であるかを明らかにすることは,その治療等に必要不可欠のことである。一方中毒の原因となりうる薬物の種類は無数にあり,また検査試料の種類も,胃洗浄液,血液,尿,毛髪など多種にわたるのが実状である。したがって薬物中毒の検査法といってもすべての場合に応用しうる万能の方法がある訳ではなく,検査の対象となる薬物の種類,試料の種類,量などに応じて適した方法を立案し,実施せねばならないことはいうまでもない。本稿では比較的一般的な,催眠剤の検査法,一酸化炭素ヘモグロビンの検査法,水銀の定量法について述べる。ここにふれる以外の薬物の検査法については参考書1)〜3)を参照されたい。

座談会

超微量化学分析のルーチン化

著者: 大場康寛 ,   北村元仕 ,   斎藤正行 ,   佐々木匡秀 ,   松村義寛 ,   樫田良精

ページ範囲:P.1042 - P.1050

 樫田木誌の9月号に,「小児の検査」という特集をいたしましたが,その時の座談会で,微量化ないし超微量化というものは,今後の検査室として非常に重要である,というお話が出ました。またその号には,きょうおみえの大場先生の提供された「小児における血清化学的成分の,年齢別正常値」が載っております。この正常値などは,わが国で初めて出た日本人の子供の正常値,—厳密にいえば,日本西部の小児の正常値,ということになるかもしれませんけれども—とにかくこれだけりっぱなものが,いままでなかったわけです。こういう段階になりまして,確かに超微量分析というのは,必要なことは明らかでございますが,私,学会の出席でちょっと海外を回りましたところ,各地の検査室で,超微量というものがルーチンに使われております。
 そこで,日本も超微量というのは,一つの研究的な問題だという時代じゃなくて,早く各検査室がそれを採用するように踏み切らなければならない,という感を深くしました。

私の工夫

時間を短縮して血清高濃度尿素窒素値を測定する方法(ユニグラフ法)

著者: 出原朗 ,   青木哲雄

ページ範囲:P.1050 - P.1050

 ユニグラフを用いて血清尿素窒素値を測定する方法は広く行われておりますが高濃度尿素窒素値を測定する場合は従来,稀釈法が行われ稀釈液として生理食塩水,プール血清,3%アラビアゴムが用いられておりますが稀釈することによって粘稠度が変化したり又操作に手数がかかったりして問題が多く余り良い方法とは言えませんでした。そこで私達はユニグラフの指示層の呈色の高さが尿素窒素量に比例することに注目し次の方法によって血清を稀釈せず時間を短縮して血清高濃度尿素窒素値を測定する方法を考えましたので報告します。

入門講座 細菌

きれいな血液寒天の作り方

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.1051 - P.1051

 血液寒天には多くの菌種が発育できるので,特に球菌群の検査には,なくてはならないものである。菌が生えると同時に,溶血能も観察できる。このような目的に使用して,まちがいない結果をえるためには,次の条件をみたしていなければならない。
1)無菌であること。

血清

皮膚反応

著者: 松橋直

ページ範囲:P.1052 - P.1052

 前回までには免疫血清学反応のうちでも試験管内反応を中心に,血清学的検出法としてすでに行われていたり導入されつつあるものについて述べてきた。このほかにも種々の反応がある。そのうち毒素やビールスの中和抗体について簡単に述べておく。ジフテリアや破傷風の感染をうけたり,これらの毒素を免疫注射すると毒素に対する抗体が発生する。この抗毒素血清と毒素とを混合すると毒素の作用が中和される。中和されたことを知るには,一定量の毒素をモルモットに注射すると死んでしまうが,この毒素に抗毒素と加えてから注射したのでは死なないことから毒素が中和されたことを知ることができる。ビールスの場合も一定量のビールスを感受性のある動物あるいは培養細胞に与えると感染がおこるが,あらかじめ抗ビールス抗体を加えたビールスを与えたのでは感染がおこらないことから中和されたことを知ることができる。この反応にあずかる抗体を中和抗体とよんでいる。
 この中和反応あるいは免疫と関係あるものに皮膚反応があり,実際の免疫学的反応あるいはアレルギー反応の検査法として用いられている。皮膚反応には2種類あり,一つは前述の中和反応を皮膚反応の形でみるものであり,他の一つはアレルギー反応すなわち抗原抗体反応が生体にあたえる障害を利用したものである。

血液

ルーチン血液凝固検査

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.1053 - P.1053

 従来から血液凝固の機序は複雑で理解し難く,したがってそれに関する検査も専門的技術を要するものと考えられ易く,血液検査室でも敬遠されやすい検査項目となり勝ちである。しかしそれらのうちの基本的数種の検査は決して難しいものではなく,暫らくやってみれば誰でも容易に行ない得るものであり,しかもそれらの結果を組合わせ判断すると,大部分の凝固異常の病態が診断できるのである。
 このような意味でのルーチン検査として,ここでは,出血時間,凝固時間,Ca再加試験,プロトロンビン時間(一段法),トロンボテストをあげ説明する。

生化学

新しい方法を採用する場合の注意

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.1054 - P.1054

 臨床化学は日進月歩している。本誌にも毎号新しい方法が紹介され発表されている。これらの方法を大別すると下のようになる。
1)分析の目標が従来行われていなかった全く新しいもの。

病理

特殊染色(2)

著者: 畠山茂

ページ範囲:P.1055 - P.1055

1.エラスチカ・ワン・ギーソン染色
 ワン・ギーソン染色は簡便な膠原線維染色法として賞用されてきたが,これに弾性線維染色を加えて重染色することができる。ワイゲルトの弾性線維染色液が手軽に作れるようになったので重染色の方が好ましい。
A.ワイゲルト弾力線維染色液作製法

生理

ベクトル心電計

著者: 鈴木文男

ページ範囲:P.1056 - P.1056

 心臓の心起電力によって生ずる電位差の時間的変化を体表上で記録し,えられた波形の変化および時間変化から,心臓の正常や異常を診断するものとして,通常12誘導心電図が一般に広く用いられている。これに対して,心臓の心起電力の変化を大きさおよびその方向を含めて立体的に観察記録,これを診断に応用するものとしてベクトル心電図がある。この装置をベクトル心電計という。これは電気的空間座標軸を形成するために考案された,諸種の抵抗回路網と,その誘導電極からなる誘導部分と,この空間座標軸に投影された心起電力を体表上で記録した時えられる電位(約1mV)を増幅するための増幅回路部分と,いづれの誘導法を用いるとしても,心起電力を立体的に把握するために正面図,側面図および横断面図の形でブラウン管上に投影して観察記録する記録部分から成り立っている。そこでベクトル心電計の取り扱い方をこの3つの部分に区分して要述することとする。

一般

尿沈渣

著者: 林康之

ページ範囲:P.1057 - P.1057

 尿沈渣とは尿中に混入している有形成分のことを指すが,その種類と量を顕微鏡的にしらべることにより病気の診断に大切を情報を得ることができる。尿中の有形成分は,腎臓から尿道までどこからでも入ってくるわけでその主なものは各組織から遊離する細胞成分(上皮細胞,血液細胞)である。また尿中に溶解しているいろいろな有機,無機塩類が,体外に排出されると同時に溶媒である尿の条件が変化し,結晶として析出し有形成分として観察される。これらの沈渣として観察の対象となるものを次に示した。
 ①細胞成分:上皮細胞(扁平,紡錘形,小円形上皮など),赤血球,白血球,腫瘍細胞(円柱)。

検査室メモ

メスと砥石

著者: 広明竹雄

ページ範囲:P.1058 - P.1058

 物を切る匁もの……その刃先はどのように成っているであろう。
 これを論ずるには,分子のレベルで考えてみる必要があるようだ。

講座 臨床生理学講座Ⅱ

脳波<2>—脳波計のしくみ

著者: 吉井信夫

ページ範囲:P.1059 - P.1063

 脳の電位変動(脳波)を導き出す(導出または誘導と呼ぶ)ために電極を頭皮上に貼りつける。この電極を通じて導出された脳波は非常に小さな電位変動なので脳波計の中で増幅し眼でみられるようにされる。その仕組みを順序を追って説明しよう。
 脳波計は大きく分けると4つの部分になる。すなわち図1の如く①入力部,②増幅部,③記録部,④電源部に分れる。

対談

専門家としての社会的地位は高い—米国のサイト・テクノロジストアヤコ・クリストファーさんにきく

著者: 天木一太

ページ範囲:P.1064 - P.1065

 —今日は,せっかくのお里帰りというのに,わざわざお出でいただいたわけですが,まず検査技師の目からみた日・米の違いについていかがでしょうか。
 クリストファーいろいろございますけれど,一番感じますのは,アメリカという所はいったんお勤めしますと,仕事が一番大切なんです。たとえば8時間なら8時間,きっちり働かされ,その間に分らないところは本を読んだり致しますけれど,日本にいた時のようにゆっくり時間をかけて本を読んだり,勉強したりという余裕のない国なんです。人間が機械のように動きまわってしまうという感じを強く受けます。

研究

コロヂオン粒子の新製法とそれを用いる結核血清反応

著者: 長尾四郎 ,   友田恒典 ,   高井晶子

ページ範囲:P.1066 - P.1068

はじめに
 微粒子に抗原を吸着させて細菌体のような粒子抗原とし凝集反応を行なうと,抗体が鋭敏に測定される。この方法はコレステリン,血球やラテックス粒子を用いて沈降反応の増感に応用されている。細菌体のごとき懸濁粒子は表面荷電が13mvt以下になると凝集をおこすように1),粒子による増感法ではある抗原で感作したさいその粒子の荷電がこの限界点よりやや高いことが望まれ,粒子の荷電を高める抗原にはもともと荷電が低い粒子でないといけないなどの関係がある。
 私共は図1に示した操作で,ニトロセルローズから懸濁安定度を異にする諸種の粒子が作られることを知った2)。安定度が高いほど表面荷電が高いわけである。結核菌には蛋白,燐脂質および多糖体という3種の抗原が存するので,粒子と性状の異なる抗原との適合関係を検するには都合がよい。懸濁安定度を異にするニトロセルローズ(コロヂオン)粒子を用いて結核症の諸抗体の測定を試みたところ,抗原とそれに適した粒子との問の関係がかなり明らかにされ,粒子反応の応用を拡げるのに有益な知見が得られたので報告する。

簡易Ca,Mg同時測定法

著者: 飯田喜俊 ,   石倉保彦

ページ範囲:P.1069 - P.1072

はじめに
 最近,ベッドサイドで特に器具を必要とせず,簡易迅速に血液,尿等の検査を行ない,診断に役立てることが重要視され,そのために多くのキットが用いられている。Ca,Mg簡易測定も臨床上,重要なものの一つであるが従来からの測定法は面倒な操作が必要であったり,特別な器械を必要とするものが大部分であった。最近にいたり,Ca測定用キットが市販されるようになったが,それでもなお,光電比色計が必要であったり,Mgによる妨害があったりして,まだ充分とはいえない状態である。一方,Mg測定用のキットはまだできていない。
 そのようなわけで,われわれは血清,尿中のCa,Mgを特に器械を必要とせず,簡易,正確に測定する方法がないか検討し,さらに,同一試料で同時にCa,Mgをより簡易かつ正確に行なう方法について考案したので,ここにこれを報告する。

レポート

静岡県内病院と全国自治体病院における臨床病理検査室生理部門の実態調査—主として肺機能検査をめぐって

著者: 松山靖 ,   吉江達子 ,   松井晃一 ,   伊藤卓司

ページ範囲:P.1073 - P.1076

はじめに
 近年における医学の急速な進歩に伴い,臨床医学における臨床病理検査の重要性はいちじるしく増加し,検査には複雑かつ高度の技術を必要とするようになってきた。このような臨床病理検査室を合理的に運営するため,その実態調査や研究が盛んに行なわれているが1)〜8),諸家の報告は生化学部門に関するものが多く,生理部門に関する詳細な調査は少いように思われる。そこで私共は,生理部門において特にその重要性が増しつつある肺機能検査が,静岡県内病院においてどの程度行なわれているかを全国自治体病院のそれと比較するため,アンケートを静岡県内各病院および県外自治体病院に送り肺機能検査に関する実態調査を試みると共に,併せて検査室における人員と生理部門に備えられた器械の現状,および昭和40年度の医療器械購入予算について調査を行なった。

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Glossary≪21≫—肝臓・胆道系疾患(2)

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.1041 - P.1041

carbon tetrachloride 四塩化炭素
cephalin-cholesterol flocculation test セブアリン・コレステロール絮状試験

「臨床検査」 第11巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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