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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査11巻2号

1967年02月発行

雑誌目次

グラフ

医真菌検査

著者: 川北祐幸

ページ範囲:P.80 - P.81

 細菌検査のベテラン技師でも,真菌となると始めから手をつけないで,敬遠しているのではないだろうか.たしかに,真菌類は,そのSpeciesの多い事は驚ろくばかりであり,専門家といえどもそう簡単には同定できない.しかし,臨床検査という立場から考えたとき,すくなくとも,Candida属,Aspergillus属というように,病原性のある真菌類約20菌種程の属名については,正確な知識をもち,その他の菌類との区別と同定ができるよう心がけたいものである.現在真菌類の同定規準が,形態におもきがおかれているので,標準株や,正確に同定された菌について,その形態,色調上の特徴をつかむよう普段から心掛けるならば,真菌検査はさして困難な事ではない.

欧米でみた新しい検査機器

著者: 福岡良男

ページ範囲:P.83 - P.90

 第6回国際臨床病理学会(ローマ)とアメリカ血液銀行学会に出席する機会をえたのでその前後2カ月間をついやして,ソ連,中部および南部ヨーロッパ,アメリカの中央検査施設を見学した。外国の中央検査制度はわが国のように画一的のものではなく,国,あるいは病院によってそれぞれの特色がみとめられた。各国の施設は非常に自動化されており,検査の迅速化と検査材料の微量化に努力しているようであった。
 各国でさまざまな検査機械を見たが,スペースの都合もあるので,そのうちの一部を紹介することにした。これらの写真は各施設長の好意ある許可を得て撮影したものである。

綜説

血漿タンパク<その2>

著者: 松村義寛 ,   河合忠 ,   松橋直 ,   天木一太

ページ範囲:P.91 - P.98

 前回においては,血漿タソパクの概念,またHowe法,チゼリウス法,電気泳動法,エタノール・フラクション等について,話しあっていただきました。今回は,超遠心法とグラバールの法を中心に話しを進めていただいた。

私の工夫

結核菌耐性検査(間接法)における菌液作製について

著者: ,   高橋昭三

ページ範囲:P.98 - P.98

 結核菌の薬剤耐性検査は直接法よりも間接法が優れていることは周知のとおりであります。ルーチンに直接法を用いている検査室はほとんどなかろうと思われます。しかしデーターをとくに急ぐ場合は直接法が採用されると思われます。
 さて間接法に用いる菌液でありますがこの作製法は種々ありますが,このほど私が思いついて実施しましたら,とても簡便な方法がありましたので紹介致します。結論は滅菌生理食塩水または滅菌蒸留水の1mg/mlの100倍菌液ができればよいのであります。私は化学検査にも従事している所から,血清膠質反応の硫酸亜鉛試験の基準液の混濁と菌液の混濁との関係に注目しました。1mg/mlの100倍菌液が2TTの何単位基準液とほぼ等しいかがわかれば,ガラス玉を入れたなす型コルベンの中に等しい基準液を入れて菌液作製時の対象とすればよいのではないかと思いました。そこで次のようにして作りました。

技術解説

皮膚真菌症の検査<3>—菌種同定法

著者: 香川三郎

ページ範囲:P.99 - P.105

菌種同定法
 菌種の同定は培養により得た菌株につき,その肉眼的培養形態,すなわち発育の速度,菌苔の表面の性状,色,菌苔裏面の性状,培地内に産生される色素の有無等につき観察し,おおよその菌種を予測しておき,さらに菌苔の一部を掻きとって顕微鏡下に菌学的性状,すなわち胞子の形,大きさ,数,その産生方式(懸滴培養等で確認する),菌糸の形状,菌糸の変形と目されている特殊な器官(たとえばラセン器官。結節器官,櫛状器官等)の有無等を検索し,これらを総合した上で菌種を決定するのである。しかしながら菌株によっては,同一菌種でありながら,分離当初の初代培養時においてすでに種々な程度に変異(variation)がみられることが少なくなく,特に白癬菌群においていちじるしいものがあり,菌種同定に困難を感じさせることが多い。また菌株の保存中,特に継代培養を行なううちに菌種によっては速かに培養の肉眼的形態および顕微鏡的菌学的形態に変異が起こり,菌種の同定を困難にすることもあるので,菌種の同定は分離当初の初代培養のものにつきおおよそ1ヵ月以内の早期に行なうことを原則とすべきである。

尿細菌簡易検査法—T.T.C.法および亜硝酸塩法変法

著者: 清水喜八郎 ,   我謝充弘

ページ範囲:P.106 - P.112

まえがき
 尿路感染症を診断するにあたって尿中細菌を検索することが最も重要視されていることは周知のとおりである。とくに尿1ml中に10万個(105/ml)以上の細菌の存在を認めた場合には,ほぼ確実に尿路感染症であるといわれている。
 つまり,尿の定量培養は汚染尿と真の感染尿とを区別するのに最も信頼しうる方法であり,多くの大学病院や大病院においてひろくおこなわれているが,この方法は細菌学的設備を要し,また相当な時間と高度の技術が要求されるので,日常の多数の患者尿のスクリーニング検査としていかなるところにおいても,容易におこなわれることは不可能である。したがって多くの実地臨床医によりその簡易化が望まれてきた。

螢光抗体法による抗核抗体検査—臨床的意義と検査法

著者: 長沢俊彦

ページ範囲:P.113 - P.116

はじめに
 抗核抗体検査はLE細胞試験と同じように全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematodes,以下SLEと略す)の診断に用いられる検査法である。LE細胞試験はすでに多くの臨床検査室で取扱われているのに対して,抗核抗体検査のほうはまだあまり普及していないのが現状のようである。私達の教室では数年来螢光抗体法によって抗核抗体検査を行なってきた結果,この方法が特異性が高く,しかも簡単に実施できるすぐれた検査法であることを見い出しているので,この検査の臨床的な意義とその実際の手技について紹介を試みる。

レポート

見つめたい私達の現状≫5≪—アンケートにみられた全国の大学病院衛生検査技師の実態

著者: 福嶌利江 ,   諸星貞雄 ,   小笠原祥夫 ,   清水加代子 ,   石戸谷豊

ページ範囲:P.117 - P.121

今月の調査
作業条件、地位、身分収入、目的等について
 全国大学附属病院中央検査部に勤務する衛生検査技師1000名を対象として調査したアンケートを資料に,私たちは今まで4回(Vol10:No5, No.7, No.9, No.13)にわたっていろいろの観点から検査技師の現状をみてきました。今回はアンケートの最後の問題として"作業条件""地位""身分""収入"それに,"検査部で働く目的"などについてみてゆきます。

合理的な制度の運営—米国の検査室を見学して

著者: 天木一太

ページ範囲:P.130 - P.133

 1年間程米国のボストン市のNew England Medical Center Hospita1で臨床血液学を勉強して帰国したところ,米国の検査室について書くように依頼された。米国に行くまでは,何となく,米国の検査室が非常に進んでいるように想像していたが,実際に行ってみた感じでは,日本の進んだ中検とそれほど柏違はない。米国といっても,東部,中部,西部で相違があるが,場所によっては,むしろ中央検査室の制度として,日本のほうが進んでまとまっており,米国のほうが旧態依然としているように感じたところもあった。この点はやや意外であったが,帰国してからゆっくり考えてみると,やはり米国のやり方には優れている点があって,旧態のようにみえるところも,それぞれよい点があり,理由があってそのようになっていることがわかってきた。
 西部のロスアンジェルスやサンフランシスコでは中央検査室を十分にみる機会がなかったので,中部のメーヨー・クリニクと東部のボストン,ニューヨークについて書いてみることにする。中検といっても自分の専門以外の分野はみてもよくわからないから,結局主として血液険査室ということになる。

貭疑応答

<質問>溶血性連鎖球菌について

著者: 島田三貴也 ,   高橋昭三

ページ範囲:P.121 - P.121

 溶連菌検査の場合私どもは血液寒天平板と臨床用チオグリコレート培地で増菌しその溶血の種類を鑑察する程度なのですが,この程度で良いのでしょうか。
又溶連菌の耐性検査の場合その菌液を作る事の困難さ,又ハート・インフュジョン培地では発育困難なので菌液に血液を混ぜてハート・インフュジョン,血液,菌液混合による観察をしていますが菌液の作り方,耐性検査について何か良い方法を御教示願います

座談会

真空採血器—使用方法と問題点

著者: 武藤俊雄 ,   寺村公 ,   菱田美智子 ,   樫田良精

ページ範囲:P.124 - P.129

 樫田(司会)最近,検査に使う血液を患者さんから能率よく採血し,しかもその後につづく検査の操作にもなるべく便宜を与える意味で,真空採血器が日本でも売り出されるようになりました。ここに見本が一つありますが,これには前後に2つの刃がついたジスポーザルの採血針が付いていて,普通の注射器の外筒に似たものの中に真空の小試験管が挿入されるようになっています。優秀な真空採血器が出廻るようになれば日本でももっと普及する,いや普及しなければいけないのじゃないかと思います。東大の中央施設には,血液,化学の検査,あるいは血清学的検査に使う血液をとるために中央化された採血室ができております。そこでは1日に200〜300人の患者さんから検査のために血液をとっています。現在のところ採血業務を担当している看護婦さんは真空採血器にまだあまりなじまないためか,この採用には多少抵抗を示しております。それで現在ではジスポーザルの注射針をつけた注射器で採血しております。このジスポーザルの注射針は採血のさいに血清黄疸が万一にも発生するのを防止するために使っております。すでに駒込病院では,真空採血器をお使いになっているようですので菱田さんからその経験とか,ぐあいが悪い点とかについてお話し願いたいと思います。

講座 臨床血清学講座Ⅵ

各論(2)—感染症の血清学

著者: 福岡良男 ,   安藤清平

ページ範囲:P.134 - P.138

 今回はレンサ球菌感染症と梅毒を除く他の感染症に応用される血清学的検査法の概略についてのべる。

入門講座 細菌

スライド凝集反応

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.139 - P.139

 特に腸内細菌等の血清学的同定に用いられるので,腸内細菌の場合について,まず説明する。
 純培養としたもの,クリグラー培地斜面の菌,BTB乳糖寒天培地上に分離された集落の菌を用いて行なう。SS培地,マッコンキー培地等,胆汁酸塩を含む培地上の集落は使用しない方がよい。やむをえない場合は,えられた結果が,一応の参考になる程度であることを知っておいてならば,やってみてもよい。

血清

抗原

著者: 松橋直

ページ範囲:P.140 - P.140

 麻疹や耳下腺炎にかかると,その患者には免疫が成立し,その血液中には抗体がつくり出されることを前回にのべたが,この麻疹や耳下腺炎の病原体のように,ある生体に免疫を成立させたり,抗体をつくりだされるきっかけをあたえるものを「抗原」とよぶ。こう考えてくると,身近に例はいくらでもあろう。たとえばインフルエンザビールス,チフス,コレラ菌などのような抗原体はすべて抗原とよんでよいことになる。
 腸チフスやコレラにかかったとき床に,患者血清とチフス菌,コレラ菌などを混ぜあわせてどの病原菌と反応がおこるかを調べ,診断の助けにしようとする血清診断法でわかるように,抗体をつくりだすきっかけをあたえた病原体は,試験管内においてその抗体と反応し何らかの形の目にみえる現象をひきおこすことができる。すると,抗原は免疫を成立させ,抗体をつくり出すきっかけをあたえるばかりでなく,試験管の中でその抗体とだけ撰択的に反応する性質があることがわかる。

血液

採血手技の基本

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.141 - P.141

 血液検査の採血のさいには,あらかじめ検査の目的をよく話し,また患者のなかには採血を厭がる人も多いが,10〜20mlの採血が生体に対して全く影響なく,正常な骨髄は7〜8倍の予備造血能をもっているから,ただちに補給され全く心配のいらないことを説明してやるとよい。小児の採血の場合は患児は泣き騒ぐことが多いから,気嫌をとりながら動かないように採血部位の固定に努め,また時に患児の母親の協力も必要とする場合がある。採血した血液はその使用目的により用いる抗凝固剤が異るから注意する必要がある。
 血球成分は生理的にも種々の条件,たとえば食事や運動などで変化しやすいから,同一患者でくりかえし検査する場合は,同じ条件で採血することが望ましく,生化学的検査の目的では,早朝空腹時に採血することが原則である。

生化学

試薬の作り方と選び方(1)

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.142 - P.142

 臨床検査に用いられる試薬は数百種を超えているが,日常検査に必要なものの多くは市販の調製試薬あるいはキットにたよることができるようになった。分業による経済的利益の他に,同一の組成のものが広く用いられるのは検査結果の統一の上にも望ましいことである。
 しかしながら,試薬の性質によっては極めて変質しやすいものもあり,短時日の間に使用不適当となるものもあるので,そのような試薬は各検査室において使用直前に調製しなければならない。ことに生物的製剤,酵素,助酵素,タンパク,ビタミンなどに関するものは調製後,ただちに使用することが望ましいものが多く,保存するさいも,低温(5°以下)あるいはジープフリーザー(—20℃以下)中に保管しなければならないものが多い。

病理

人体各臓器の肉眼による見方(2)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.143 - P.143

生理

心電計の扱い方(2)

著者: 蔵本築

ページ範囲:P.144 - P.144

心電図のとりかた
 心電図検査室は明るく,清潔で,室温も22〜25℃に保たれ,ゆったりとして患者の気分を和らげるように室内の配置を考えることが望ましい。心電図をとるベッドもスプリングマットレスの大きめのものが患者の緊張を除き,また患者の体を平等に支えるので筋電図障害なども少ない。ベッドには絶縁シートを敷きその端子およびベッドの足からもアースをとっておく。アースは検査室内のアース端子からとるが,それのない場合は水道の蛇口からとる。
 心電図のとり方を順をおって説明すると,1)心電計のアース端子からアースをとり,電源コードをつないで心電計の電源スイッチを入れる。真空管式心電計では心電計の安定するまで3〜5分かかる。全トランジスター式心電計はすぐに安定する。

各科共通

遠心器の取扱い方

著者: 堀越晃

ページ範囲:P.145 - P.145

 遠心器とは液体または物質から遠心力を利用して比重の異る物質を分離する器械である。ここでは遠心沈澱に必要な装置一式と日常検査に必要な取扱い方を中心に述べよう。

検査室メモ

光と色と臨床検査

著者: 広明竹雄

ページ範囲:P.146 - P.146

 光と色,これは切っても切れないもの,なぜならば光がなければ色は見えないから。
 われわれの遠い祖先が永い原始生活の間に得ていた光,それは,太陽,月,星,これら天体からのものが正常のものであり,例外的なものとして,オーロラ,火山爆発,山火事,などに驚異の目を見はったことであろう。

研究

東亜自動血球計数器の使用経験—第2報

著者: 黒川一郎 ,   後藤尚美 ,   木村寿之 ,   山本英彬 ,   小島博 ,   大水幸雄 ,   小屋進 ,   猪口紀子 ,   長浜系子 ,   永井龍夫

ページ範囲:P.148 - P.151

緒言
 前報1)において我々は東亜自動血球計数器を用いた赤血球測定成績を述べ,日常検査における有用性を論じた。
 本報告においてはさらに,赤血球測定にあたっての二三の問題点の検討と,白血球計測に応用した場合の成績について述べる。

血清鉄測定の半微量化について

著者: 加藤俊雄 ,   馬場巽 ,   岡徹哉 ,   白方隆晴 ,   坂手倫子 ,   川西敏夫 ,   飴野成子 ,   瀬島昭 ,   坪内純江

ページ範囲:P.152 - P.153

 血清鉄測定は貧血や黄疸の鑑別診断などに重要であるが,その悩みの一つは多量の血清を必要とする点である。したがって多くとも0.5ml程度の血清で測定できることが望まれる。最近Williamsら1)はα,α'-ジピリジルなどの発色剤で血清中の鉄を発色させた後に,それを陽イオン交換樹脂に吸着させ,前もって作っておいた標準列と比較するという半定量法を報告している。この方法は操作も簡単で,特殊な微量装置も必要としないので,どの検査室でも行えると考えて検討した。
 なお,分子吸光係数の高いトリピリジルトリアジン(TPTZ)を発色剤に選び,微量定量法を検討したので,併せて報告する。

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Glossary≪13≫

著者: 横山芳郎

ページ範囲:P.147 - P.147

renal failure腎不全
renal function腎機能

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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