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雑誌目次

論文

臨床検査12巻10号

1968年10月発行

雑誌目次

カラフグラフ

皮膚の染色標本

著者: 西山茂夫 ,   佐原京子 ,   日下恵子 ,   川口洋子

ページ範囲:P.696 - P.697

 皮膚の病理組織標本を作る方法,その種類および目的については,一般病理組織と全く変わるところがない。皮膚は最も生検を行ないやすい器官であり,皮膚疾患の診断だけではなく,内臓病変と関係のある皮膚症状の診断にとっても,重要な検査法である。ここに,われわれの組織研究室で,日常行なっている染色法のうちのいくつかを供覧したいと思う。

グラフ

薄層ゲル濾過法によるタンパク分析

著者: 河合忠 ,   青木紀生 ,   山岸安子

ページ範囲:P.699 - P.706

 SephadexG−200superfineの有する分子筋効果を利用して,血清タンパクを分離する薄層ゲル炉過法によると,分子の大きさからA分画,G分画,M分画の3分画に分けることができる。本法は微量の検体で定性のみならず定量も可能で,これに免疫を応用すれば,さらに多数のタンパクの同定も可能である。
 本法は,特に異常タンパク血症の鑑別診断法として有用な,新しいタンパク分画法であり,また,各タンパクの移動距離から,目的とするタンパク成分のおおよその分子量を知ることもできる。

総説

臨床化学分析における呈色反応

著者: 南原利夫

ページ範囲:P.707 - P.712

 複雑多岐にわたる組成の生体試料をとり扱う臨床北学分析では,正確な結果を得るために,常に最適の方策が要求される。呈色反応においても同様で,ここでは代表的なものを5点とりあげ,その機構を中心に解説する。

技術解説

簡易血中尿素窒素測定用試験紙Azostixについて

著者: 屋形稔 ,   小網悦子

ページ範囲:P.713 - P.716

はじめに
 現在,血中尿素窒素(BUN)の定量法として臨床検査室で実施されているものにDiacetylmonoxime法,Urease Indophenol法,Urease Nessler法,Unigraph法などがある。簡易法としては,上記のUnigraphが簡便で値も信頼できるものとして広く用いられてきたが,最近反応時間1分という血中尿素窒素の簡易測定用試験紙Azostix(Ames社)が発表され,市販に先だち第6回診断試薬研究会(43年4月新潟にて)でAzostixの使用経験について討論がなされた。以下,その折の知見をまとめてご紹介し,Azostixの正しい使用法と問題点について老察を加えたい。

Mycoplasma pneumoniae,肺炎ミコプラズマの補体結合反応

著者: 海老沢功 ,   北本治 ,   中村昭司 ,   佐藤民雄

ページ範囲:P.717 - P.720

 Mycoplasma pneumoniae肺炎ミコブラスマ(Chanockら,1963)の肺炎病原体としての役割は,すでに米国をはじめ世界各国の研究者によって認められている。いわゆる原発性異型肺炎を含めた肺炎患者のうち,肺炎ミコプラズマによるものは,対象となった集団や検査方法によってかなりのひらきがあり,20%(Forsythら,1965),30-46%(Kingstonら,1961),より68%(Chanockら,1961)という数字が,米国の海軍初年兵について報告されている。一般市民の間では16%(Janssonら,1964),38%(Andrewsら,1965),50%(Cookら,1960)という数字が出ているが,医科研においてわれわれが集めている症例は,だいたい30%ぐらいである。この頻度は,他の既知のウイルスによるものよりはるかに多く,肺炎ミコプラズマの病原体としての重要性を如実に示すものである。
 さらにこの病原体による肺炎は,年間を通じほとんど常時経験されるので,臨床家にとって大事な疾患であると同時に,検査室においても,早晩,ルーチンの検査対象としなければならないものである。

ウイルス性疾患の臨床検査(1)

著者: 中村正夫 ,   西内道明

ページ範囲:P.721 - P.726

はじめに
 わが国においても,最近,臨床ウイルス検査は著しく進歩したが,病院などで一般臨床検査として行なうには,なお多くの問題点が残されている。このことについては,のちにまた述べたいと思うが,一方では,ウイルス検査方法の進歩が,これらの障害をすこしずつ解決しつつあり,その重要性は今後さらに増すことと思われる。
 ウイルス性疾患には,特徴のある症状を現わすために,臨床的診断が容易なものもあるが,無菌性髄膜炎,感冒様疾患,ある種の発疹性疾患など,ウイルス検査によってはじめてその原因が明らかになるものも多い。現在,ウイルス検査は一般に早期診断がむずかしく,また,化学療法その他特別の治療法を行なえないものが多いので,その結果が直接患者に利用されることが少ない。このような理由で,その意義は一般ルーチン検査とはやや異なっている面がある。しかし病因を明らかにすることは臨床医学の進歩のためのみならず,疫学・予防医学方面にもきわめて重要なことであり,ウィルス検査の必要性もそれだけ大きいと考える。

ひろば

"私のくふう"を生かそう

著者: 村田徳治郎

ページ範囲:P.716 - P.716

"私のくふう"を生かそう
 近ごろ,検査業務が多面複雑化すると,新しい検査機器も次々と発売はされるが,なかなか金と意が一致しないものである。またどうしても必要というものも存外少ない。むしろ,日常業務に頻繁に使用される小物の器具類こそ必須で,検査業務の良し悪しに大きな影響を与えるものである。
 しかし,小器具類でこれというものは医療器具屋に存外少ない。だからといって不自由していることはない。自分らの仕事をくふうすることによってどんなにやりやすく,また正確に早くできるか……経験と勉強から生まれた現場の知恵が,独創的なくふう工作となって,どんなに日常の多忙な仕事の潤骨油となっていることであろうか。

連載 連載対談・7

血液凝固異常についての対話<最終回>—検査法のまとめ

著者: 安部英 ,   天木一太

ページ範囲:P.727 - P.731

まとめ
 天木これまで,いろいろな凝固異常の患者,5症例について,どういうふうに調べるか,えられた検査の所見をどう解釈するか,そして,どう診断に到達するか,お話し合いをしてきました。ここで,まとめをしておきたいと思います。
 凝固異常がその患者さんに,ほんとうにあるのかないのかの診断,出血性素因と凝固異常とは同じでありませんから,出血性素因はあるが,その原因が凝固異常であるかどうかということを,どうやって調べるかについて,お話いただけますか。

私のくふう

血液型ウラ特殊判定台—(ABO式)

著者: 荒木佑氏

ページ範囲:P.731 - P.731

 ABO式血液型表試験は実施法および判定においても,難なく短時間において成績の判定ができ,術者が判定し,それを記録する者との2名が最低必要である。同様にしてウラ試験を行なうのであるが,ウラ試験になるとベテラン技師が判定を行なっても表試験の数倍からの時間を要する。試験管を振り上げ光線を通し,視力の点からも,体力的面からも,以外と疲労するのである。
 構造Aウラ試験管台およびウィダール管合わせて1.5kgなので,図1の鉄板からの鉄棒がささえられるものでなければならない。

座談会

第17回衛生検査学会を顧みて

著者: 今井誠 ,   中甫 ,   中村勝 ,   宮沢暁子 ,   堀越晃 ,   佐藤乙一

ページ範囲:P.732 - P.740

 新しい検査法,くふうされた機械がつぎつぎと生まれてくる昨今,臨床検査は医療の発展と相まって,成長期にあるといえるが,同時に混乱期にあるともいえる。17回めを迎えた衛生検査学会を,参加者の目を通してその現況を知り,問題点をさぐってみた。

入門講座 生化学

規定液について

著者: 小延鑑一

ページ範囲:P.741 - P.741

1.規定液とは
 溶液が1000mlに溶質をg当量含んでいる濃度を当量濃度といい,この溶液を一般に規定液と呼んでいる。そして,1g当量の揚合,この溶液の濃度を1規定といいこれを規準にして他の溶液の濃度を表わすことができるのである。規定の数を規定度といい,記号としてN,またにnを用いている。1規定,2規定,10規定をそれぞれ1N,2N,10Nなどと表わし,溶嫁の表示としては1NHCl,2NH2SO4などと記している。
 酸や塩基のg当量とは酸の揚合1モル,すなわち1g分子がOH基と化合しうる水素の数であり,塩基の場合では1g分子が水素と化合しうるOH基の数である。

血液

血液疾患—2.白血病

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.742 - P.742

 白血病は簡単にいうと造血臓器の悪性腫瘍で,腫瘍の性格をおびた白血球が造血臓器を系統的に侵し,末梢血液中に出現するとともに,全身臓器組織に広く浸潤する病気である。

血清

ラテックス凝集反応

著者: 松橋直

ページ範囲:P.743 - P.743

 溶解性の抗原と抗体が反応しておこる沈降反応を,感度を高め,かつ見やすくするため,増感剤の役割をする赤血球,ベントナイトやポリスチロールなどの粒子を反応系に加えて,凝集反応の形式にするものを間接凝集反応(受身凝集反応)とよんでいる(凝集反応の項参照)。このうち,検査しやすい形になって市販され,いわゆるインスタント検査としてひろく用いられているのは,赤血球,ポリスチロール粒子を増感剤とする反応である。ポリスチロール粒子を緩衝液に浮遊させたものは乳状で,生ゴムであるラテックスに似ているので,現在ではこれをラテックス(Latex)と呼んでしまい,ポリスチロール粒子を増感剤として凝集反応の形式でみる諸反応を,ラテックス凝集反応と呼びならわされるようになってきている。もっとも,抗原と抗体を反応させ沈降反応が起こりつつある状態に,ポリスチロール粒子を入れても,凝集反応が起こるのて,これらの反応を総括して,ラテックス結合反応とよんでいる場合もある。
 現在実用になっているものとして,

細菌

病原ブドウ球菌の同定のためのコアグラーゼ試験とDNase産生試験

著者: 橋本雅一

ページ範囲:P.744 - P.744

 病巣から分離されたブドウ球菌の多くは,病原株—黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)—であることが多いが,ときには非病原株—表皮ブドウ球菌(Staph.epidermidis)—と鑑別を要することもある。この目的で日常行なわれているのはコァグラーゼ試験であり,最近になってDNase産生試験も用いられるようになった。

病理

固定—その実際面

著者: 内海邦輔

ページ範囲:P.745 - P.745

固定剤の選択
 今回は固定の実際面について述べよう。
 はじめに固定液の選択についてのべる。染色対象すなわち脂質・糖質・酵素などにより固定剤を変えなくてはならない。脂質に対しては,アルコール,エーテルなど脂溶性固定剤は用いられない。ふつう,ホルマリンが用いられる。オスミウム酸も有力な脂質固定剤で,ことに微細な脂質粒子まで固定染色するので,電子顕微鏡レベルでの脂質証明にも用いられる。糖質は水溶性であるので,ホルマリンは用いられない。アルコール,アセトンなどが用いられ,包埋もパラフィン包埋でなく,ツェロイジン包埋する。糖タンパク質など複合多糖類の場合は,結合しているタンパクが固定されるので,一応どの固定剤でもよい。種々の酵素類の組織化学的証明を行なう際には,固定剤の選択とともに,組織材料切除後,非常にすみやかに(10分以内ぐらい)低温固定する必要がある。人体の諸酵素は,胃中のペプシンを除き,中性または弱アルカリ性で作用し,酸性メジウムには非常に弱く,酵素作用停止,または破壊されてしまう。したがって,アルコール,アセトン,エーテルなどの中性固定剤が用いられる。また酵素反応は嫌気性であるから,組織材料を採取してから,時間が経つとどんどん酵素反応は進行してしまい,せっかく染色しようとする時には,すでに目的とする酵素はなくなってしまうこともある。

生理

電極法による血中ガス分圧測定のコツ

著者: 宮沢正治

ページ範囲:P.746 - P.746

 PHメーターはガラス電極と比較電極とからなる検出部と,検出部に生じた起電力を増幅しpHを指示させる指示部より成っている。使用上一番問題となるのは,pHの温度による変化が非常に著しいために,Water Jacketの温度は特に注意を要する。同様にガラス電極と比較電極間に使用されるjanction cap中のKCIは,完全に飽和していなければならず,また較正以後はこれに大きな温度差を与えないようにする。
 次に,毛細管は入念に洗い,サンプルの測定前には必ず生食液またはリンゲル液を通して,次に測定するサンフルの溶血を起こさせないよう考慮しなければならない。

共通

医学写真のとりかたのコツ(2)

著者: 進藤登

ページ範囲:P.747 - P.747

 バック用に使用する樹脂板も厚さが増したり,色調が濃すぎると透過光にムラができるし,また投射光によって生じた影を消すことができなくなる。
 バックは被写体によって決めるが,前にあげたネビーブルーの色だとだいたいどのような被写体にも適する。以上のように,前回の撮影装置と合わせて,撮影を行なえば,一度被写体の位置を決め,カメラを取りかえるだけで,白黒・カラーは同じ状態で撮れる。バックはよごれることなく,のせ台のガラス板をちょっとふくだけで,次の撮影にとりかかることができる。ただ,注意しなければならないのは,カラーの時にバック用樹脂板を入れるので,シャッターを押す時に自分の手の影が写る恐れがあるが,レリーズを使用すれば問題はない。

検査室メモ

2番バッター—新しい術式・機器の導入のコツ

著者: 西畑泰次郎

ページ範囲:P.748 - P.748

明暗を分ける"1番バッター"
 思いきり振ったバットの先からエネルギーを得たボールは,心よい澄んだ音を残して,秋空にグングンのびる……このトップバッターの快心の打球は,その日のチームの勝因となった。
 逆に,トップバッターが3振でもくったら苦戦に陥るのは当然……。

講座 臨床生理学講座Ⅻ

心電図<3>

著者: 真島三郎

ページ範囲:P.749 - P.756

 今回は心筋硬塞,心室肥大その他に際してみられる心電図所見について述べ,また,目的によって行なわれる特殊な検査法についても簡単にふれたい。

研究

血液から分離される細菌の種類と頻度ならびに培養方法についての検討

著者: 林浪子 ,   上田京子 ,   奥平紀子 ,   吉岡一 ,   松宮英視

ページ範囲:P.757 - P.760

はしがき
 血液からの細菌検出は,敗血症または菌血症の診断の根拠となるから,臨床上きわめて重要な検査手技である。
 近年,培養方法の向上につれて,検査室での検査頻度も増加しつつあるが,それに従って,結果の正確さが要求されるのは当然のことである。そこでわれわれは,従来行なってきた検査成績をもとにしてその方法に検討を加え,将来さらによい検査を行なうための資料としたいと考えた。

細胞診用固定液—特にサイトスプレー固定について

著者: 山本陽子 ,   河野康之

ページ範囲:P.761 - P.763

 私たちは細胞診用固定液として,パパニコロー固定液およびサイトスプレー固定液を使用しているが,血性貯溜液の固定にサイトスプレーを使用すると,ときに溶血をおこし,検体がみにくいことを経験している。そこで,この原因を検討し,いかにしてよい標本を得るか,ささやかな実験を行なったので,その結果を報告する。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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