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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査12巻11号

1968年11月発行

雑誌目次

グラフ

神経系の病理組織標本

著者: 小出ツネ

ページ範囲:P.770 - P.771

 神経系の病理組織染色法として,ふつうに用いられている種類の染色写真を掲げた。Cajal染色以外はすべてパラフィン切片である。神経病理の場合でも一般病理標本と全く同じく,1)材料の十分な固定。2)十分な脱水。3)よく砥いだメスの使用の3つの点が,よい組織標本を作るための絶対の条件である。特に神経組織の場合には脂質が多いので,脱水に十分時間をかけて包埋する必要がある。またあまり欲ばって大量の切片を一度に染色すると神経標本の場合,特に思いがけぬつまらぬ失敗をするように思う。

PHAによるリンパ球の—形態学的変化技術解説参照

著者: 若狭治毅

ページ範囲:P.773 - P.780

 リンパ球はむしろ形態学的構造の単純さによって特徴づけられるが,その機能や分化の点では今日なお疑問の点が少なくない。近年,in vitroにおけるリンパ球の幼若化現象,特にPhytohemagglutinin(PHA)による実験が活発に行なわれ,問題点の解明に1つの足がかりを与えている。

総説

電解質の臨床的意義

著者: 杉野信博

ページ範囲:P.781 - P.786

 近年,電解質の測定値が,実際の診療面で貢献する割合が増しつつある。その分布状態,バランスの意義,Na,K,Caなどの濃度異常の原因と意味するものを明らかにし,電解質の臨床的な意義を解説する。

技術解説

Phytohemagglutinin(PHA)を加えたリンパ球培養の実際

著者: 若狭治毅

ページ範囲:P.787 - P.790

 Phytohemagglutinin(PHA)はいんげん豆(Kidney bean)から抽出されたもので,1916年にDorsetやHenley1)によってHog. choleraに対する抗血清を作製するため,赤血球を凝集する目的に使用されたのが最初である。その後RigasやQsgood2)はPHAを白血球の分離にも使用しうることを指摘した。
 このようにして,赤血球凝集への利用に使用されたPHAは,Hungerford,Donnelly,Nowell,Beck3,4)が末梢血から白血球を分離し,培養後,細胞分裂像とともに芽球へ変化することを見出してから,PHAは染色体の研究のみならず,細胞の変態実験,特にその機序やPHAの変態因子に多くの興味がむけられるようになった。PHAの化学的組成としては,電気泳動法によって数種のタンパクと粘液多糖体の両者を含んでいることが明らかにされている。現在,Difco(米国)から販売されているPHAには"M"と"P"とがあるが,一般に使われているのはPHA-Mである。

結核菌の薬剤耐性検査—特に間接法について

著者: 工藤祐是

ページ範囲:P.791 - P.796

 結核症の臨床検査のうちでも,薬剤感受性試験(以下,耐性検査と呼ぶ)は,今後ますますその重要性が増すに違いない.このところ抗結核薬の種類は急にふえ,10種を越えるが,まだまだ新顔がげ登場しそうな形勢にある。しかも結核菌は耐性になりやすい細菌で,耐性菌をもつ患者はふえる一方である。当然,耐性検査により,有効な薬剤を選ぶことが治療の前提となる。また耐性菌による感染の問題も決して軽視できない。今や,患者から結核菌を検出した場合,薬剤投与とは無関係に,主な抗結核薬について耐性検査を行なうのが常識となっている。
 現在,わが国で最も広く用いられている日常検査法は,結核菌検査指針1)に記載されている方式であろう。これは卵培地を用いる希釈法であるが,世界的にも培地こそ異なるが,ほぼ同じような方法が圧倒的に多く採用されている。欧米の一部では,血清やアルブミン入りの寒天培地も用いられているが,液体培地は臨床検査にはほとんど使われていない。また結核菌の耐性検査は大部分が希釈法によって行なわれ,拡散法は日本やドイツのごく一部で用いられているにすぎない。

ウイルス性疾患の臨床検査(2)

著者: 中村正夫 ,   西内道明

ページ範囲:P.797 - P.802

2.赤血球凝集抑制試験(HI)
 赤衆球凝集反応(HA)を示すウイルスには次のものがあるが,ウイルスによって凝集する赤血球の動物種,至適pH,温度などはそれぞれ異なっている。
1)ミクソウイルス

私のくふう

濾紙による染色法—血球像を例として

著者: 村田徳治郎 ,   服部理男

ページ範囲:P.796 - P.796

1.考案の目的
 染色液を濾紙に染め乾燥させ,使用時標本面にて再びメタノールで抽出し,血球像を染色し同時に固定も行なおうとするものである。

パラフィン包埋ブロックの接着作業に関する1くふう

著者: 松尾均

ページ範囲:P.824 - P.824

 パラフィンの煙は,気道刺激,あるいは発癌性の問題など,人体に数々の悪影響をもっていると思われるにもかかわらず,今日なおパラフィンブロックの台木への接着作業は,火焔で熱したスパーテルや,高温に保った電気ゴテを使用しており,パラフィンからの煙の発生は避けられない。かりにスパーテルをパラフィンの融点より少し高めの温度にすると,煙の発生はみられないが,熱容量の少ないこれらのスパーテルは,温度が下がりやすく作業能率は著しく低下してしまう。そこで私は①煙を発生させず②多量の連続作業に対しても一定の温度が保て③しかも作業がしやすい構造であることを目標に,保健と作業能率向上とを考慮して,図のような器具を作ってみた。

座談会

沖繩の臨床検査の現状

著者: 堀越晃 ,   金城進 ,   福岡良男

ページ範囲:P.803 - P.808

 "となりの検査室はどんなだろうか"という気持は,日進月歩のこの世界ではだれでもいだくものだ。戦後23年経過した沖縄は,人口約100万の島だが,日本の"外国"である現実で,検査室にも影響を及ぼしている。たまたま日本衛生検査学会に出席のため本土を訪問した金城進氏に,その現状を聞いてみると……。

入門講座 生化学

濾紙について(1)

著者: 小延鑑一

ページ範囲:P.809 - P.809

試験用濾紙の組成
 私たちの検査室で日常使用している濾紙はいろいろな種類があるが,すべて試験用濾紙と呼ばれているものである。
 濾紙には用途により大別して,試験用と工業用とがある。工業用には各種の製造業や,自動車,ジェット機などにおける空気・油・燃料などの濾過,金属加工における研磨用フィルター,エァコンディショナーのエアフィルターなど多方面において濾過の精密化・能率化のため多種多様の濾紙が用いらている。

血液

血液疾患—3.出血性素因

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.810 - P.810

 正常な場合では,小さな血管が破れて出血を起こしても,血管と血小板と血漿内にある凝固因子によって短時間内に止血が起こる。この止血機序に異常があり,止血が長びく状態を出血性素因と呼び,皮膚に出血斑を生じたり,粘膜,関節または筋肉内出血などを起こしてくる。このような出血傾向は原因により次のように大別できる。
1)血管の障害によるもの

血清

細菌凝集反応

著者: 松橋直

ページ範囲:P.811 - P.811

Widal反応
 スルフォンアミドやペニシリンなどの発見をきっかけとする,化学療法ないし抗生物質療法のすさまじい発展により,腸チフスや発疹チフスなどはちかごろ非常に少なくなってしまった。とはいえ,発熱を伴う疾患で,その原因がつきとめにくいときは,どうしても微生物の感染を疑い,細菌やリケッチアなどの血清反応も行なわなくてはならないので,今日でも依然として,細菌を抗原とする反応が用いられている。
 細菌を抗原とする凝集反応の最も典型的なものは,Widal反応である。すなわち,腸チフスにかかると,チフス菌としか反応しないような抗体が,患者血清中に見いだされるようになる。ところが,腸チフスと似たような症状を呈するものにパラチフスAとBがあり,しばしば3者を鑑別できないので,パラチフスAとB菌も抗原として用いる。その原理は,抗原抗体反応の説明によく引用されるものである。この反応は,Gruberが前世紀の終わりに伝染病患者の血清中に,その病気の原因となる細菌を凝集する抗体(凝集素)があることを発見し,Widal(1904)がこれを腸チフスの診断に応用したことに始まるものである。そのため,Gruber-Widal反応と呼ぶこともある。

細菌

カタラーゼ試験とオキシダーゼ試験

著者: 橋本雅一

ページ範囲:P.812 - P.812

カタラーゼ試験Catalase test
 カタラーゼは鉄ポルフィリンを含んでいる酸素で,過酸化水素を次のような過程で水と酸素に分解する反応を触媒する。
カタラーゼ2H2O2—→2H2O+O2
 多くの細菌が基質を酸化するときに,その最終産物として過酸化水素が産出されるが,この成分は強い細胞毒であるので,この成分が蓄積すれば細胞は死滅していく。たとえば,嫌気性菌はカタラーゼを持たない。したがって,この菌が酸素の存在下で営む代謝によって過酸化水素が産生されても,れこれを分解できないので死んでいくことになる。乳酸菌もまた,この酵素を欠いている。一般的に言って,多くの好気性菌および通性嫌気性菌はカタラーゼ活性を示し,特にチトクロムを豊富に含んでいるリン菌,その他のナイセリアは強い陽性を示す。そのほか,臨床細菌学的には,カタラーゼ試験陽性であるペスト菌,結核菌,赤痢菌でも,無毒ペスト菌やINH耐性結核菌では反応が弱くなり,また赤痢菌でもA群は陰性であるということが注目される。

病理

染色について

著者: 内海邦輔

ページ範囲:P.813 - P.813

病理検査における電子顕微鏡などの活躍
 今回は染色について述べる。組織染色のうち,日常もっとも普通に利用されるものにはヘマトキシリン・エオジン重染色法(以下H・E染色)である。一般に普通染色と呼ばている。これに対し,膠原線維や筋線維など特殊な組織構成成分の染色を目的とした染色法や,細胞含有物・分泌物などの染色を目的としたものがあり,一般に特殊染色と呼ばている。細菌・真菌・原虫など微生物の染色法は特殊染色の応用である。
 最近,螢光色素を利用した染色法や,さらに螢光色素と血清学的な抗原抗体反応を組み合わせた螢光抗体法が開発されている。

生理

超音波診断

著者: 中村紀夫

ページ範囲:P.814 - P.814

 原理超音波は人間が音として聞くことのできる音波(可聴音波)よりはるかに高い周波数を持ち,密度の異なる2媒体の界を通過する時に,その境界面で一部が反射し,残りが通過する。そして超音波は指向性が鋭く,液体・固体を媒体としてよく伝達する。
 そこである方向に向かって発信された超音波の反射波を探知し,入射から反射して元の位置に戻るまでの時間を,ブラウン管オッシロの面の上に横軸上に距離として描記し,反射量を波型の大きさで示す。あるいは反射量を輝度変化に変えてブラウン管オッシロの面上に投影させ,しかも振動子をスキャンして断層撮影を行なう。前者がA-scope方式であり,後者がBscope方式である。

共通

医学用語の統一

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.815 - P.815

学術用語と制限漢字
 わが国で用いられている医学用語は,主に西洋医学の輸入によって始まったものが多いが,もとより欧語をそのまま使用するわけにはいかないから,それに相当する邦語ができている。すでに近世におけるオランダ医学,続いてドイツ医学を移入することが盛んに行なわれた時代から,当時の医学者がその豊かな学識を傾けて,和漢の言葉のうちから医学用語としてふさわしいものをとり入れるよういろいろ苦心してまとめたものが多いのであった。
 ところが戦後になってアメリカ医学が勢いを得るとともに,従来の欧州系の用語により体系づけられてきた医学用語は,かなり大きく変化することになった。

検査室メモ

いかにしたら信頼されるデータが出せるか—検査科の立場から

著者: 広明竹雄

ページ範囲:P.816 - P.816

 臨床検査は,早く診療に役だつ検査成績を提出しなければならない。と同時に検査種目の増加と精密化が,中検と合わせて簡易化ということになる。その理由の1つに疾病の変貌,すなわち表現型の変異によることである。
 ご承知のように,第2次世界大戦の終わりに多かったチフス性疾患,クルップ性肺炎,結核などの死亡率の高いものが脱落し,今や脳血管損傷,悪性腫瘍,心疾患のようなものが死亡率の首位をしめつつあること,また感染症や丹毒というものは少なくなり,変形性の感染症が多くなり,感染アレルギー性あるいは膠原病と称するものが多くなり,そのほか代謝異常や遣伝疾患が比較的に増加しつつある。

講座 臨床生理学講座XIII

心音図<1>

著者: 町井潔 ,   関口寿

ページ範囲:P.817 - P.823

 最近,わが国でも心臓移植が行なわれ大きな話題となっているが,古来,心臓は生命のシンボルであり,心音を聴くことは生死を分ける根拠でもあった。すなわち,心音(心雑音も含む)とは,心臓および大血管の活動により生じた機械的振動の中で,体表面に伝達された可聴域のものと定義される。これを心音図として記録する二とは以前から多くの人々により試みられたが,近来,電子工学の進歩により,便利な心音計が普及し,心音図検査が盛んに行なわれるようになった。心臓外科の進歩に伴い心疾患のより精密な診断が必要となり,レントゲン写真,心電図と並んで心音図も基本的検査の1つとなったが,十分に活用するためには,まず良い心音図をとらなければならない。
 心音図とは,心音という音響現象を記録して視覚化したものである。物理的にいえば,ふつうの心音図とは,心音という縦波(疎密波)の振動を横波(高低波)に変えて理解しやすくした観察方法である。

特別レポート

国立大学検査部血液検査室の実態

著者: 田原口経貞 ,   脇川千鶴子 ,   志摩重美子

ページ範囲:P.825 - P.828

 血液検査部門は最近まで他の部門に比べ,器械化,検査法の改良,および精度管理という面でやや立遅れた感があった。しかし,近時ようやく器械化も進み,検査法にもしだいに新しい方法がとり入れられるようになった。このように検査に対する近代化が進んでも,検査件数の増加は大きい。さらに国の政策である"欠員不補充"さらに"欠員カット"による人員不足にわれわれは頭を悩ませている。
 今回の調査は主眼をこの"人の問題"を中心に,国立大学検査部血液検査室の実態調査を試みた。

研究

集団的臨床化学成績精度管理の経験

著者: 川本昭 ,   医化学研究班

ページ範囲:P.829 - P.835

 1946年ペンシルバニア州医師会が行なった同一試料の測定1)以来,施設問における測定値のバラツキについての対策検討は今や世界的な問題である。日本においても1962年,医学書院2)が全国の臨床検査機関に同一試料を配布し,その分析値に大きな差のあることを指摘した。また,日本衛生検査技師会は昭和40年度に第1回3),および昭和41年度に第2回4)と,世界でも初めての大きな規模で全国的に同一試料の測定を行なった。その成績は精度管理の必要性を如実に示している。
 兵庫県衛生検査技師会では昭和39年夏,自家製プール血清を県下16施設に配布し,総タンパク,A/G比,コレステロール,アルカリフォスファターゼ,クンケル,チモール,糖について測定値の集計をおこなったのが始まりで(表1),昭和40年会員各位の自発的な声から医化学研究班が結成され,本格的な活動を開始するとともに広く精度管理の必要性を説き,未加入各施設に呼びかけた。

ビリルビンの分光光度法による測定の検討—新生児血清総ビリルビン定量

著者: 橘和義

ページ範囲:P.836 - P.838

 最近になって,新生児の核黄疸の早期診断に,血清総ビリルビンの定量が頻繁に行なわれるようになった。被検者は新生児とか未熟児なので,検体も毛細管で採取したきわめて少ない量で定量を実施せねばならない。操作が複雑であればそれだけ誤差が生ずるから,できるだけ操作が簡単で,しかも正確かつ迅速に実施できるような方法が強く望まれてくる。従来ビリルビン定量にはジァゾ反応のEvelyn-Malloy法が広く使われているが,今回はそのミクロ法とこの方法よりは操作が簡単な分光光度法について,両者の比較検討を加えてみたので,その結果を報告する。

血糖測定法(オートアナライザーN9a)における2,3の検討

著者: 市田篤郎 ,   谷敷輝夫 ,   花田裕子

ページ範囲:P.839 - P.841

1)オートアナライザーHoffmann法による,血糖測定に耳採血による全血を用いることが,実用上便利と思われるが,全血を使用することの妥当性について,検討を加えた。
2)全血を用いる場合,特に溶血液の種類による差異が,血漿の場合と相違する。われわれは全血0.1mlを0.5g/lフッ化ナトリウム加飽和安息香酸水溶液1.9mlに加えて測定している。
3)赤血球中の透析性還元物質の個体差は少なく,この影響は少ない。むしろ透析率の差に基づくと思われる要因により,血漿値が全血値の約107%高値を示した。
4)還元型グルタチオン,尿酸,クレアチニン,アスコルビン酸の本法における還元糖(ブドウ糖)相当値を明らかにした。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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