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雑誌目次

論文

臨床検査12巻13号

1968年12月発行

雑誌目次

グラフ

螢光色素による血液像の観察

著者: 大竹順子

ページ範囲:P.1040 - P.1041

 現在の白血球分類法は,wright染色,giemsa染色およびmaygiemsa染色法による所見が規準となっている。しかし螢光染色も染色手技は簡単で,初心者でも美しく染まり,また慣れれば,現在行なわれているgiemsa染色法と百分率もほぼ同様にとることができる。
 染色手技は,Acridine Orange (生理食塩水1万倍)と血液を0.05mlピペットを用いてピペット内で等量に混和し,1-5分後塗抹標本を作製する。塗抹標本はただちに螢光顕微鏡(波長410mμ)で観察する。

検体の保存法—血清・血液

著者: 福岡良男

ページ範囲:P.1043 - P.1050

 血清や血液を保存する場合に最も大切なことは,無菌的に,しかも血清や血液の物理化学的変化をできるだけ少なくすることである。また,血液の場合には血液を液状に保つようにしなければならない。血清は無菌的に分離して,これに防腐剤を加え.冷蔵庫,アイスクリーム・ストッカー,ディープフリーザー,ドライアイスなどの中に入れて低温で保存するか,あるいは凍結真空乾燥して冷蔵庫中に保存する。
 血液は無菌的に採血してから,保存液を加えたガラスびん中に移し,4-6℃の冷蔵中に保存するが,3-4週間以上の保存は不可能である。

総説

けい光分光分析

著者: 田村善蔵

ページ範囲:P.1051 - P.1056

 生体成分には微量で生理活性を現わすものが多く,これらを混合試料である生体中から誤りなく分析するには,高感度でしかも選択性の高い分析法が要求される。最近開発した4法を解説する。

技術解説

飲料水の細菌検査—経口伝染病との関係から

著者: 柳沢文徳

ページ範囲:P.1057 - P.1062

 文化生活を営むためには,健康障害を惹起しない飲料水の確保が必要である。また,日常生活に必要な量が供給されなければならない。水質の安全性が保たれても,断水とか時間給水のようなききんにみまわれると,断水間の貯め水の水道に逆流するとか,貯め水の不浄化などが生じて不衛生な状態に陥る。
 飲料水を住民に供給する最良の方法は水道給水法である。そのために,国はその普及を図らなければならぬが,41年末の厚生省の発表によれば,給水普及率は69.4%(昭和41年3月31日現在)で,オランダ97%,イギリス96%,イタリア90%で,米国は80%という欧米諸国の普及率に比較して,きわめて低率である。そして約30%の国民は,井戸水・湧出水・川水・沼水・天水などに頼っているわけである。これらの飲料水のうち,上水道はどこの国でも法律によってその水質の保全がなされている。ただし,その根拠は水道法に基づくならである。他の飲料水は必ずしも安全性の期待されるものが少ない。

皮膚反応の検査

著者: 宮本昭正

ページ範囲:P.1063 - P.1068

 アレルギー性疾患の病因の決定には,注意深い病歴の聴取が大切であるが,しかし必ずしも全例において病歴のみから病因が決定されうるわけではない。したがって,病因の決定には種々の検査が必要である。しかもたとえ病歴から病因が疑われても,その裏づけとしての検査も必要となってくるわけでって,皮膚反応はその目的のために現在広く用いられている。
 皮膚反応において特に強調されねばならないことは,皮膚反応の陽性を示す抗原が必ずしも病因的抗原ではなく,陰性を示すものが必ずしも病因的抗原から除外されえないという点である。皮膚反応が強く陽性を示す抗原が,実際に病因的抗原である可能性は,皮膚反応の陰性である抗原よりもはるかに高いが,しかしあまり強く陽性でなくても,病因として重要である場合がある。特に食餌性抗原では吸入性抗原に比して,そのような場合が多い。したがって,皮膚反応はあくまでも病因的抗原決定のための補助手段であって,最終的なものではない。

心電図の電極の改良

著者: 案野剛輔 ,   三浦茂

ページ範囲:P.1069 - P.1074

 エレクトロニクスの技術が医学に用いられてから,日進月歩の発展が行なわれた。この医用電子(Medical Electronics:ME)技術の根底となった生体電気現象の計測・記録は,増幅器・記録器などのハードウエアにおいて著しい進歩をとげ,企業的にも安定したものの,トランスデューサである生体電気現象の導出電極には,なお多くの問題が残され,近年,ME技術が診療面のみならずスポーツ医学・環境衛生医学に広く用いられるに至って,動的状態の被検査に用いうる電極が強く要求されてきた。
 臨床で用いる心電図は,患者に呼吸の停止を命じて体動を防げば,実用上差支えない程度に安定な記録が得られるが,負荷心電図は負荷中の記録がとれないので,心電計からリード線をはずして負荷をかけ,その直後に心電図を記録しなければならない不便があった。

座談会

特許の知識

著者: 佐藤宗徳 ,   松橋直 ,   松村義寛 ,   天木一太

ページ範囲:P.1075 - P.1082

 日常の検査活動のなかで生まれる創意・くふう,また学会や雑誌などで自分の考案したものを発表するとき,特許に関連することがある。特許とはどういうものか,その取り方を専門家にたずねてみよう。

入門講座 生化学

濾紙について(2)

著者: 小延鑑一

ページ範囲:P.1083 - P.1083

 濾紙はセルロースからなり,その化学的特性については前回に述べたが,私たちが日常検査室にて体験しているのは,主に物理的な特性である。濾紙の物理的な特性の主なものについて述べて見ようと思う。

血液

血液疾患—4.リンパ節腫脹をきたす疾患

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.1084 - P.1084

 リンパ節は球状またはそら豆型の結節で,その内部構造は図のようで,結合織の被膜で包まれ,この被膜から線維柱が実質内に入りこんで,リンパ節をいくつかの小葉に分けている。被膜の各所から輸入リンパ管を通って運ばれてきたリンパは,複雑なリンパ実質の構造を通って臍門部に至り,輸出リンパ管に集められてリンパ結節を去るか,この間にリンパ球,形質細胞の産生ならびに細菌,異物,腫瘍細胞などの抑留や,喰食などの網内系機能が行なわれるわけである。
 リンパ節腫脹をきたす疾患は表のようであり,局所性リンパ節腫脹は付近の化膿性炎症による2次性リンパ節炎が最も多く,それに次いで癌の転移が多く,特に左鎖骨上部正中側のVirchow(ウイルヒョー)リンパ節は,消化管や胆嚢や膵臓の癌による転移によってしばしば腫脹する。

血清

免疫拡散法

著者: 松橋直

ページ範囲:P.1085 - P.1085

 抗原と抗体とを寒天.セルローズアセテート膜・シアノガムなどの支持体の中を拡散させ,ゆっくり沈降反応を起こさせる方法を免疫拡散法とよんでいる。この中で,抗原成分,または抗体を支持体中で電気的に泳動させ,展開した成分と抗血清または抗原と反応させて沈降線を観察する方法を免疫電気泳動法Immunoelectrophoresisとよんでいる。支持体の中でクロマトグラフィーを行ない,対応する抗体または抗原で分析する方法を免疫クロマイトグラフィーImmunochromatographyとよんでいる。あらかじめ支持体の中に抗血清を含ませておき,抗原の一定量をこれと反応させ,できる沈降輪の大きさを測定することにより定量を行なう方法,ことに平板寒天を用いる単純放射免疫拡散法Simple radialimmunodiffusionは,血清成分の定量に用いられ,日常検査も行なわれている。2,3のものを解説する。

細菌

生菌数測定法

著者: 橋本雅一

ページ範囲:P.1086 - P.1086

 臨床細菌学では生菌数を測定する機会はきわめて少ないといえるが,しかし尿の細菌学的定量とか,室内の細菌汚染度の検査(特に院内感染の場合の病室の汚染度とか原因菌の究明,あるいは手術室の清浄度の検査),飲料水の大腸菌群の定量検査などの需要がある場合には,生菌数の測定は欠くことのできない検査の1つとなっている。
 生菌数測定にはいろいろな方法があるが,ここでは上述の要望を満たすいくつかの方法だけを述べておくこととする。

病理

こんな組織標本を作ってほしい

著者: 内海邦輔

ページ範囲:P.1087 - P.1087

 今回は最終回であるから,病理医師の立場から,送られて来た組織標本について採点してみよう。

生理

プレチスモグラフ

著者: 三島好雄

ページ範囲:P.1088 - P.1088

 Plethysmographとは定容積容器に器官や体肢の一部を入れて,その容積変化を記録するもので,1883年にCohnheimらが腎容積計を発表して以来,諸種の器官容積計が考案され,主として動物実験などに用いられてきた。人に対する容積記録法は実施に著しい制限をうけるため,従来主として四肢の容積変化のみがとりあげられているので,ここでは,それを臨床検査として実施する方法について述べる。
 容積脈波の記録には,媒体として水や空気を用いる前述の定容積容積脈波計と,MEを応用した光電容積脈波計が用いられ,臨床領域では後者が広く用いられている。

共通

超音波洗浄のコツ

著者: 吉田光孝

ページ範囲:P.1089 - P.1089

 ガラス器具などを洗うということは,表面に付着した汚れ(異物)をとり除いてきれいにすることに他ならないが,汚れをとり除く方法には,クロム硫酸などを用いて化学的に汚物を酸化してとり除く方法と,洗剤液を用いる物理的な方法がある。後者は,中性洗剤の著しい進歩とともに日常容易に利用しやすい利点があるが,一般にブラッシングを併用する必要があるため,人手や時間を要し,さらにブラシの届かない部分の洗浄が困難であったり,また汚れの性質によっては落ちにくいものがあることも事実である。汚れの性質によって洗浄方法を選択することも重要であるが,一方,日常作業においては,大量の試験管などの洗い物をいかに能率的に洗浄処理するかが問題となる。能率的な機械の長所を生かし,かつ効果的な洗浄を行なうことを考えると,超音波を利用する洗浄法は能率的である一方,ブラッシングでは落ちにくい微細な汚れも落ちる利点を有していることは,みとめられる長所である。

検査室メモ

培養基今昔

著者: 大橋経雄

ページ範囲:P.1090 - P.1090

 9月はめずらしく4社のプロパーが,続けざまにやってきた。その中でA社のプロパーが,これは最近作ったものですと置いていった"製品要覧"を見て,つくづく隔世の感を深くした。というのは71ページにまとめた"要覧"には,培地,調整検査薬,血清検査薬など臨床検査試薬関係が120余も紹介されていたが,職場で細菌を担当している私にとって,こうした即席の試薬が,用にのぞんで電話一本でいつでも手に入ることのできるようになったことは,かつてその昔,さまざま自らの手で培地をつくってきた私たちにとっては,実にありがたいことだと思うのである。乾燥培地に精製水を加えただけで,ものの役にたつのであるから,これはありがたいとというより,むしろ助かっているといった方があたっているかもしれない。
 ところで,いまでこそこうした結構な乾燥培地が,つぎつぎと市販されているが,かつて私がこの検査の仕事に入った時代は,前にも述べたように,用にのぞんで培地はみんな自らの手でつくったのである。培地を自らつくるということは,仕事の忙しいような場合は,なんともめんどうなもので,特に糖培地の製造は他の仕事の能率を低下させた。寒天をはかり,ペプトンもはかる。肉水もつくれば,pHも見る。手なれた仕事であっても各種の培地をつくるとなるとなかなか容易でない。それが乾燥培地の出現で,培地をつくるわずらわしさはまったく解消してしまったわけである。

講座 臨床生理学講座Ⅸ

心音図<2>

著者: 町井潔 ,   関口寿

ページ範囲:P.1091 - P.1096

心音図のとり方
 前回は,心音計および聴診器の構造を説明したが,ここではそれを予備知識として心音図検査の実際を述べる。良い心音図を作るには,まず十分な聴診をしなければならない。聴診の条件がそのまま心音図検査の条件にもなる。

海外だより

トンガ便り

著者: 近藤弘司

ページ範囲:P.1097 - P.1098

 南緯20°,西径175°に位置するトンガは,年中猛暑と想像したが,夏期(11-2月)が過ぎると,朝夕は日本の秋を思わせる気候になる。2-4月まではよく雨が降る。しかし長雨でなく,2日,3日と続く雨はない。この時期が季節的には一年中最もよく,また安全な時期である。というのは,すべて飲料水を雨水に頼っているこの島の人々にとって,チフス,赤痢,蚊による伝染病に,それほど戦う必要を感じない時でもある。だがこの時期でも,全人口約8万のうち約5万のTonga-Tapu(トンガは150以上の島があり,3つの群島に分かれ,最南のTonga-Tapuが最も大きな島群)では,1カ月約4-5名のチフス,赤痢の発生をみる。

私のくふう

夏期における結核菌の螢光染色について

著者: 山本五郎

ページ範囲:P.1102 - P.1102

 昭和28-30年ごろ,結核菌の螢光染色は多くの病院,療養所で採用され,また厚生省の衛生検査指針にも記載されるようになった。ところが現在,結核菌の螢光染色をルーチンに行なっている所は,厚生省の近畿医務局管内では,おそらく当所だけではないかと考えられるほどに減少している。この理由は,衛生検査指針にも記載されてあったように,夏期に結核菌の染色力が落ち,陽性率が著しく低下する点にあると考えられる。
 それで螢光染色について考えてみた。図に示すように,オーラミン染色だけでは染色状態はAの位置にあって,結核菌,その他の菌,細胞,背景などすべてが染まってしまう。これに3%塩酸アルコール,あるいは10%蓚酸などで分別操作を施すと,Bの位置となって,背景および一部細胞の染まりが落ちてくる。このままでも染色状態の強弱によって,経核菌をその他の雑菌から見分けることもできるが,さらにメチレン青などで後染色を施すと,Cの位置となって,結核菌のみが染め出されてくる(一部細胞の輪郭も染まるが,邪魔にならない)ことになると思われる。

研究

生検スタンプ細胞と洗浄細胞との形態学的差異—胃細胞診スクリーニングにあたって

著者: 渡部庸一

ページ範囲:P.1103 - P.1106

 細胞診における悪性細胞の判定は,従来からいわれているように,細胞の集塊状出現,大小不同,重積性,細胞の巨大化,不整形,染色性の変化,N/C比の増大,核形不整,核膜の不均等肥厚,クロマチン増量,クロマチンの分布不均等,核小体肥大など1-4,8)をもってしているが,これらの項目のうち,あるものは正常細胞の変性によっても出現することがある。逆にまた,最近のように,直視下生検スタンプや,術中細胞診を行なうようになると,明らかな癌腫そのものの細胞の中に,たとえば核膜肥厚の全く認められないものも出現する。これらのことは,胃細胞診を行なう者にとって,はなはだ重要なことであるが,この間の事情について,あまり明確な記載がないため,実際には,迷うことが少なくない。そこで私は,実際に自分で行なっている材料の中から,この間題を解決するために次のように検討を行なった。

固定血球浮遊液による自動血球計数器の精度管理法

著者: 岡田徳弘

ページ範囲:P.1107 - P.1111

 自動血球計数器の普及により,血球計算の能率および精度は著しく向上した。現在,この分野で最も要望されているのは,精度管理のための標準血球浮遊液であるが,満足できるものを作るのは容易でない。本論文の製品は新谷和夫博士が試用されて,安定性のよい点,稀釈をしないのでそのための誤差や溶血のない点が優れていると考えられるので,まだ広く検討されてはいないが,特にここに掲載することになった。

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Glossary≪26≫—肝臓・胆道系疾患(7)

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.1056 - P.1056

thrombosis血栓症
thymol flocculationチモール絮状反応

「臨床検査」 第12巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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