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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査12巻2号

1968年02月発行

雑誌目次

グラフ

抗酸菌の検査

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.74 - P.75

1.結核菌(図1・2)
 ナイアシンテストが陽性であることは,人型結核菌の重要な特徴の一つであるが,もう一つの特徴は,コード形成である。これは,培養した菌に特有の所見であり,生体内の結核菌にはみられない所見である。
 牛型菌,BCGにもコード形成がみられるが,病原性の抗酸性桿菌のうち,非定型抗酸菌,ノカルディアでは,培養菌でもコード形成がみられない。

自動血球計数器のいろいろ

著者: 三輪史朗

ページ範囲:P.77 - P.81

自動血球計数器には,いろいろのものがあって多種にわたるが,原理的には,血球の光学的特性を利用するものと,血球による電気的変化を利用するものに大別される。以下主だったものを紹介してみよう(本文85頁参照)

梅毒の赤血球凝集反応(TPHA)の手技

著者: 富沢孝之

ページ範囲:P.82 - P.84

病原性Treponema Pallidum (TP)を抗原とした赤血球凝集反応(TPHA)について
 Cardiolipin抗原を用いる梅毒血清反応はすぐれた反志であるが,その抗原の特殊性から非梅毒血清を陽性にする非特異反応が問題となっており,生物学的偽陽性としてとりあげられている。この解決方法として本病原体であるトレポネーマを抗原とする反応を行なうことがのぞましいとされているが病原トレポネーマは現在においても培養ができず,そのものを抗原とする場合,おのずと抗原の量的な問題があり,広く行なうことができない。一方では術式の複雑さも加わり実用化をはばんでいる。術式の複雑な反応はまた結果の再現性ということにむずかしさがある。そこでわれわれは以上の問題点,特に梅毒血.清診断法としての特異性(より多く非梅毒血清を陰性と判定する)の高いもので,しかも簡単な術式のものに主眼をおいて赤血球凝集反応の検討をすすめてきた。

自動血球計数の現況

著者: 三輪史朗

ページ範囲:P.85 - P.98

I.血球計数の歴史1)
 世界で最初に血液中の赤血球数を数えるこころみをしたのは今から約250年前でJurinによるが,一応一般に使える方法を考案したのは今から115年ほど前の1852年Vierordtである。したがって血球計数の歴史は過去100年以上の歴史をもっている。Vierordtの方法は毛細管に血液を1滴とり塗抹し,この全赤血球を数えるという方法で,1つの試料を数えるのに数日かかって2〜7万個の細胞を数えたという。彼は正常値を500万/mm3と出したことからみて,大変面倒な方法ではあったがえられた成績は今からみてもかなり正確であったことは驚嘆に値するものである。

梅毒血清学的検査法の最近の動向

著者: 水岡慶二

ページ範囲:P.99 - P.107

I.はじめに
 一時その姿を消していた梅毒トレポネーマTreponema pallidumが最近再びあらわれ,早期顕症梅毒患者の増加をひきおこしていることはまぎれもない事実であり,それを裏付ける報告が数多くなされている。ことに,ハイティーンから20歳代にかけての若年者層に梅毒が蔓延している事実は重視されており,性病予防法を改正して結婚前の青年に血液検査を受けるように呼びかけるなど,国家も性病対策に積極的にのりだしてきている。
 このように,梅毒の血清学的検査法は,臨床医のために診断,治療の補助として役立つ一方,公衆衛生の立場からもますます重要視される検査法である。

座談会

衛生検査技師の学校教育

著者: 稲福全昌 ,   本田柄三 ,   森川訓行 ,   星和夫

ページ範囲:P.108 - P.115

 学校はどんな技師を育てることを目標にしているのか。病院はどんな技師を望んでいるのか。その両者を一致させる第一歩として,学校教育の実態と問題点を話しあっていただいた。

入門講座 生化学

比色分析法の特徴と注意点

著者: 小延鑑一

ページ範囲:P.117 - P.117

 比色分析は一般には試料溶液に適当な試薬を加えることにより,目的とする成分(物質)を着色化合物にして,その色調の強さを光電比色計で比較測定する分析法である。着色化合物の溶液が固有の色を呈するのは,その溶液が波長によって異なった吸収を示すことによるもので,白色光が透過した場合,ある波長域の光が吸収されるとそれ以外の波長一すなわち溶液は吸収した光の余色を呈することになる。光の吸収が可視領域で行なわれるような溶液について,白色光を透過せしめてその色調の強さを比較定量するのがいわゆる比色法であり,肉眼では可視光線のみしか観測することができないが,受光部に光電管などを用いると波長領域は紫外から赤外の領域にまで拡張できる。そして比色を単色光ないしはきわめて狭い波長範囲の光を用いて行なうと,分析の精度は高くなるほか種々の利点が生じてくるのである。
 比色分析法は,その利用している化学反応一呈色反応一が鋭敏であるために微量分析法に適しているのみならず,その化学反応などの操作の点からも迅速に分析を行なうことができる特徴をもっている。このようなことから臨床化学分析のほとんどがこの比色分析法により実施されているのである。

細菌

抗酸性染色法acid-fast stain

著者: 橋本雅一

ページ範囲:P.118 - P.118

 ある種の細菌は,酸,アルカリまたはアルコールでも容易に死滅しないうえに,なかなか色素と結合しにくいが(難染性),いったん染まると酸性脱色剤(酸性アルコール)を作用させても脱色されにくい(抗酸性)という特殊な性質をもっている。この性質は,菌体表面にミコール酸という脂肪酸が存在していることによる。このような性質をもっている菌を抗酸菌とよび,この染色法はこの菌を選択的に染め出す方法で,ふつうは結核菌を染め出すのに用いられている。これには,いろいろの方法があるが,最もよく用いられているチール・ネルゼン法について述べ,その術式についての注意事項を記載しておく。

病理

ミクロトームII—薄切りの実際

著者: 内海邦輔

ページ範囲:P.119 - P.119

 前回はミクロトームの点検整備について述べた。今回は,引続きミクロトームによる薄切りの実際について述べる。
 まず姿勢を正しくすること。すなわちミクロトームに対し正対して坐る。そして腰掛けの高さを調節し,上半身が自由に動くようにする。腰掛けはストッパー付きの高さの調節できるものがよい。ふつうの椅子で後によりかかったり,前の方に滑りそうになったり,あるいは横坐りしたりしてはならない。ミクロトームはできるだけ身体に近くセットする。

血清

血清学的検査法の基本術式II

著者: 松橋直

ページ範囲:P.120 - P.120

 臨床病理検査に導入されている血清学的検査法の基本操作のうちで,もっとも熟練を要するのは"ピペットさばき"である。抗体の定量にも,補体価の測定などにもまた交差適合試験にもピペットさばきが大切な手技となる。そこで,今回は簡単ではあるが,ピペットさばきについて述べることとする。

血液

正常骨髄像ならびに代表的血液疾患における定型的変化

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.121 - P.121

 表は代表的血液疾患について記したが,悪性貧血では巨赤芽球が↑,赤芽球癆では赤芽球系のみの↓↓,急性リンパ性白血病ではリンパ芽球の↑↑,慢性リンパ性白血病は成熟リンパ球の↑↑,単球性白血病では単芽球前単球の↑↑,多発性骨髄腫では形質細胞の↑↑,特発性栓球減少症では栓球非生成巨核球の↑,癌の骨髄転移では癌細胞の出現などが診断の助けとなる。
 骨髄穿刺液吸引不能(dry tap):時に穿刺をくりかえし行なっても全く骨髄血が採取出来ない場合がある。

生理

腎機能II

著者: 前田貞亮

ページ範囲:P.122 - P.122

1.クリアランス試験
 腎機能検査といえば必ずといってよい像ど,クリアランスという言葉が出る。今ある物質(A)が含まれる血液が腎を通過するさいに,Aが腎から排泄されるとする。Aが一定時間に排泄される全量(a)は尿中のAの濃度(UA) X一定時間の尿量(V)である。これが一定時間に血液から尿に排泄された量である。したがって血液のAの濃度(PA)でAの尿中の全排泄量(a)を除すると,A物質のagが排泄されるために用いられた血液の量が求められる。つまりA物質のagはUA×V/PA(ml)だけの血液から集められた量であり逆にいうとUA×V/PA(ml)だけの血液からagが除去されたことになる。この値が腎におけるAのクリアランスである一定時間は種々だがVは毎分尿量を用いる。A物質がもし血液が1回腎を流れる問に全部尿に排泄されてしまい,腎から出ていく血液中にもはや残っていない物質であれば,Aのクリアランス,換言すればA物質を排泄するために用いられた血液は腎を流れる血液の量と同じである。かかる物質としてはPAH (パラアミノ馬尿酸ソーダ)がある。PAHクリァランスで腎血流量を求めることができる。
 また尿が糸球体から出て尿細管を流れる間に種々の物質が吸収されたり,分泌されたりするが,尿細管でかかる吸収,分泌が行なわれない物があれば,そのもののクリアランスは糸球体で濾過された量を示す。

共通

論文の書き方I

著者: 天木一太

ページ範囲:P.123 - P.123

1.はじめに
 科学的な仕事は,毎日注意深くやっていれば,必ず新しい事実に,つぎつぎと気づくものである。たとえば試薬にある欠点があるとか,その1部を改良するとその欠点がなくなるとか,ある検査法は検体を少し長くおいておくと,テータがある方向にずれていくとかなどである。それが一般の人にすでに知られていることでなければ,一つの発見をしたことになる。その事実を知ることが,そのような仕事をする人にとって有利になることであれば,それを知らせてあげることは人助けになる。ここに研究発表が生れる。
 仕事の中で偶然気がついたことが,そのまま立派な発見になることもあろう。しかし,そのようなことはきわめて少ない。気がついたり,考えたりすることは,各人各様ではあっても,だいたい同じようなことが多いのである。それを確かめたり,数字にして比較したり,何か方法や考え方に欠点がないか検討したりするために,研究活動が必要になる。

発言

新しい予防医学運動

著者: 鈴木黎児

ページ範囲:P.124 - P.124

 臨床検査は,医師が患者の疾病を診断し,治療し,その経過を観察するためのデーターを提供する技術として研究開発されてきた。
 大小の病院で中央検査室制度を設け,多くの衛体検査技術者を擁してルーチンの検査をおこない,新検査法をとりいれ精度の管理に力をつくしていることは申すまでもない。

講座 臨床生理学講座Ⅳ

脳波<4>—雑音について

著者: 吉井信夫

ページ範囲:P.125 - P.131

雑音(Artifact)
 雑音というのは本物の脳波のような顔をして記録の中に入り込んでくるもので,脳から出てきた電気(脳波)以外のものである。すなわち,もともと記録に入ってきて欲しくない邪魔ものである。しかし,これがしばしば脳波と間違われることがあるので,雑音を本物の脳波から区別し,記録に混入したらこれを除去するか,はっきりと見分けなければならない。
 雑音は大きく分けると次の3つになる。

研究

各種白血球アルカリフォスファターゼ染色法の比較検討

著者: 三村一 ,   篠井格 ,   西下明 ,   山口司 ,   稲谷斉一郎

ページ範囲:P.133 - P.136

まえがき
 白血球のアルカリフォスファターゼ活性(ALPase)の変動が血液疾患の診断に有用であることは広く認められている。たとえば慢性骨髄性白血病を類白血病反応,あるいは骨髄線維症と,また真性多血症を続発性多血症と鑑別可能である。
 白血球のALPaseが臨床診断に1応用できるようになったのはKaplow1)がいわゆるScoringを提唱して以来である。その後基質の進歩に伴いALPaseの細胞化学的検出には種々の方法が発表されている。したがって検査室でルチーンに本法を採用しようとする時どの方法がよいか選択に迷うことがある。われわれはその代表的な三つの方法を比較検討してみた。

Auto Analyzerによる尿糖の定量法—SomogyiのNa2CO3法の応用

著者: 佐々木禎一 ,   佐々木茂 ,   池辺正 ,   永井龍夫

ページ範囲:P.137 - P.139

 スクリーニングを目的とした半定量も含めて,日常尿糖値を測定することはきわめて多い。その目的のための測定方法として,いわゆる試験紙を用いたDip and Read方式以外にも種々の方法が使われているが,いつれの揚合も信頼のおける値を迅速に出すことが大切な課題である。
 われわれも,種々の反応条件1),阻害物質の影響2),簡易法2)などを検討した結果,従来用いられてきたRavy―隈川―須藤の方法4)から,糖をNa2CO3水溶液中で加熱して生成する黄褐色〜暗コハク色の程度より尿糖値を知るSomogyiのNa2CO35)に切替え,多数の尿検体中の尿糖値の迅速定量に効果を挙げることができた。

血清コレステロール測定の直接法について

著者: 吉野二男 ,   片平宏 ,   石川浩子 ,   斎藤レイ子

ページ範囲:P.140 - P.141

緒言
 血清コレステロールの測定法にはいろいろの方法があり,それぞれ長所をもっているが,なかでも酢酸—硫酸を用いたLieberman-Burchard法に基礎をおいたもの,さらにその改良法が広く採用され,わが国ではZakらの抽出法によるZak-Henly変法が最も多く用いられている。そしてこれらに関しては,北村らにより余すところなく検討が加えられ,吟味を尽された感がある。その結果用いる試薬の不純が指摘されたため,各試薬メーカーでもよりよい試薬の供用に努力され,コレステロール測定用の高純度の酢酸,硫酸を得ることができるようになってきた。
 一方において,最近検査室における検査件数の増加は,コレステロール測定においてもその例外でなく,ますます増加を示してきつつある。このような時に,なおZak-Henly法でも若干の繁雑さを感ぜざるを得ないので,優良な試薬を得ることができることと併せて,いわゆる直接法を検討してみることも意義あると考えて,Rosenthalの処方による直接法を検討して,広く応用されているZak-Henly法と比較してみたところ良い成績を得ることができたので,検査室業務の能率化とも考えて報告するしだいである。

失敗の経験

尿中尿素の分解

著者: 寺田京子

ページ範囲:P.142 - P.143

 一般病院では初めての試みであった腎臓移植が成功して,Fさんが退院したのは,術後9ケ月後11月の下旬であった。移植の後数回にわたり起こった拒否反応を無事にきりぬけて,自宅通院が可能になった時,検査室の私達にもひそかな誇りがあった。昼夜をわかたない検査は,はじめの1ケ月間に1,200件にも達していた。拒否反応を発見する最も有力な手がかりが,尿の電解質の消長にある事が判明したのも,担当の私達にとって,何よりも嬉しい事であった。
 退院後,Fさんは,毎週何日分かの蓄尿の一部をもって外来を訪れる。尿への電解質および尿素の排泄が正常に継続しているかをチェックする為である。このような検診がはじまってから,Fさんの尿で,尿素N排泄だけが古いもの程ひどく低値を示すことに気がついた。病院に来た翌日に,急に腎機能が低下すると考えるのもおかしい。ひょっとすると,保存中に細菌が繁殖して尿素を分解してしまったのかもしれない。とすると,今迄報告していた尿素Nの排泄は全くでたらめであったことになる。

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Glossary≪23≫—肝臓・胆道系疾患(4)

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.132 - P.132

hepatitis肝炎
acute amebic〜急性アメーバー性肝炎

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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