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雑誌目次

論文

臨床検査12巻3号

1968年03月発行

雑誌目次

グラフ

咽頭所見と検査成績

著者: 柳下徳雄 ,   山辺昌

ページ範囲:P.148 - P.149

 検査室へは,各科から咽頭培養の検査依頼が相当多い。しかし,培養結果が出たさいに,その咽頭所見はどんなようすなのか,検査成績は診断にどう役立ったのか,検査技師諸君は知る機会がないのが通常である。そこで,咽頭に変化を生じる疾患の代表的なもの数例について,咽頭所見・臨床経過・検査成績と診断を揃えて,御参考に供する。
 症例1〜4は,咽頭症状が病気の主症状であり,咽頭培養の結果が原因を決定した例である。症例5は,咽頭症状は病気の一部であり,検査の面でも,咽頭から溶連菌が純培養状態に検出されたことは,皮膚の発疹のγ—グロブリンテスト陽性という成績と一緒に考えて,狸紅熱と診断確定した例である。症例6は,咽頭症状が病気の主症状で,ジフテリアを疑わせたが,咽頭培養の成績はこれを否定したので血液検査が実施され,顆粒白血球減少症という診断が導き出された例である。このように陰性という検査所見も,正しい診断に到達するために重要なことに注意して頂きたい。

テレメーター心電計の使用法

著者: 新谷博一 ,   成沢達郎 ,   石井靖夫 ,   藤巻忠夫 ,   金沢英夫 ,   野木洋平

ページ範囲:P.151 - P.155

 テレメー夕ー心電計は運動中のようなダイナミックな心電図をとるのに適し,研究用にも,臨床的にも実際に使用されていますが,まだそう一般的には利用されていないようです。そこで写真を使って,これをみればテレメーター心電計がその日から使えるというような解説を試みました.ラジオにくわしい方なら簡単なことですが,電気に弱い人に目標をおいたので少々くどくなったかもしれません。もの足りない方は本文を参照していただくと理解がしやすいかと思います。

実験動物の健康状態の見分け方

著者: 中野健司

ページ範囲:P.156 - P.158

 実験小動物では,健康状態を知るための臨床的諸検査が困難である。従って,なるべく剖検によって動物群の健康状態を知ることが望ましい。以下は現在しばしば経験されている疾病についての肉眼所見である(本文参照)。

綜説

甲状腺機能検査法

著者: 丸田公雄 ,   志田寛

ページ範囲:P.159 - P.163

緒言
 甲状腺機能検査法は直接ヨウ素代謝に関係している甲状腺131I摂取率および血清蛋白結合ヨウ素の測定と,間接的に甲状腺機能を推測する基礎代謝率,血清コレステロール並びにTriosorbTest等の測定に大別されるが,現在臨床的には131Iを利用した甲状腺機能検査法,血中甲状腺ホルモンの定量並びに基礎代謝率測定の三つが最も広く用いられている。

技術解説

実験動物の健康状態の見分け方

著者: 中野健司

ページ範囲:P.164 - P.168

まえがき
 最近わが国でも実験動物に対する関心が高まると同時に実験動物に対する要求が高度となり,良質な動物が要求されている。
 良質な動物とは環境,遺伝因子,疾病の制御されている動物を意味するのであろうが,今回与えられた表題から,動物実験を行なう際疾病のない健康な動物をどのように見分けるかに主眼をおき,個々の疾病についての詳細な記述,摘発方法等については教科書1)2)を参照していただき省略する。

テレメーター心電計—取り扱いの実際

著者: 新谷博一 ,   成沢達郎 ,   石井靖夫 ,   藤巻忠夫 ,   金沢英夫 ,   野木洋平

ページ範囲:P.169 - P.174

はじめに
 テレメータリング,余り耳なれない言葉ですがすでに私達の生活の中に直接,間接に切りはなせない程深く入りこんでいる技術なのです。石油工業の写真をみると,まるで無人工場のようです。製鉄も昔のように真赤にやけた溶鉱炉の傍に人間がいるような事もなくなったようです。ダムの水量の調節も人手を要しません。
 人工衛星からは様々な情報を,時には宇宙飛行士の心電図を地上に送り,宇宙遊泳中の脈拍数の変化などまでわかるようになりました。テレメータリング(遠隔計測)は遠隔部における対象からの情報を計測し,その情報を伝達する技術方法で,さらにこの情報をもとに対象をコントロールすることも出来ます。生物,とくに高等動物は,精緻を極めた無数のテレメータリングの集積ともいえるでしょう。テレメータリングの技術的な進歩は電子工学の発達によるものですが,トランジスターさらに最近のIC回路などは,機器の小型軽量化,安定化を容易にしてテレメータリングの応用範囲を大幅に広げました。医学の世界にも着着と導入され,患者の体温,脈拍,呼吸,血圧の自動測定記録はすでに使用されています。この場合情報は電気的に変換されてコードを通じてセンターの記録器に接続されています。心電計も患者コードを延長して遠隔部で記録すればテレメータリングですが,通常テレメーター心電計(以下テレ心電計と略す)といえば,コードを使用しないで無線で心電図を送り記録する心電計のことをさします。

管理血清・標準血清<2>—正しい使い方と問題点

著者: 斎藤正行

ページ範囲:P.175 - P.185

 日常の検査にこれら所謂「管理血清」をどう利用するかということであるが,大きく三つに分けられる。第1は前記の各種類を用いての毎日の検査の精密度(Precision)管理,第2は標準血清(Standard in Serum,例えば4C)を用いての正確度(Accuracy)の管理,第3は標準血清などを従来の水溶性標準液の代りに用いることである。

受験体験記

心身ともに疲れはてる—一級試験(血液)を受験して

著者: 寺村公

ページ範囲:P.174 - P.174

 試験と名のつくものはどんな種類のものであれいやなものだ。幸い合格はしたものの,どの科目についても満足すべき成績でなかったので何となく後味が悪い。どおしてあんな検査が出来なかったのか,どおしてあの筆記試験に解答出来なかったのだろう,あんな簡単な質問にどおして答えられなかったのか……,後から考えてみると自分の不勉強振りをまざまざとさらけ出したような気がする。

レポート

"現実の臨床検査"を土産物に—国公私立大学病院臨床検査技術者研修会

著者: 堀越晃 ,   松本佶也

ページ範囲:P.185 - P.185

 去る昭和43年2月1日より8日まで,東京大学医学部附属病院において交部省主催による第1回の国公私立大学病院臨床検査技術者のための研修が行なわれた。全国の国公私立大学病院,分院と研突施設約60か所から,臨床検査技術者で臨床検査部(室)の主任以上の職務に在るものまたはこれに相当するもので,推せん選考されたものが参加した。これは大学病院が医学教育と研究及び診療にあたるという特殊性をもつところから,十分にその役割を果たし,能力を発揮させるとともに,臨床検査と技師のレベルアップを目的としている。
 大学病院に中央検査室が設置されはじめてから10数年たち,現在では殆んどの大学病院で臨床検査室が中央化された。従って施設の運営と管理,検査技術,精確度管理,技術者としての姿勢等について方向づけが必要な段階にきていることが,この研修会をもつ意義と解釈してよいだろう。

座談会

業室感染の予防

著者: 上野幸久 ,   大河内一雄 ,   瀬戸幸子 ,   和田浩 ,   高橋昭三

ページ範囲:P.186 - P.192

 高橋(司会)本目はどうもお忙しいところを有難うございました。それではこれから先生方に,いろいろと「業室感染予防」というテーマでお話を伺いたいと思います。
 私,ちよっと業室感染予防ということを考えたんですけども,一つの分け方として,臨床検査室の業室感染には,患者が検査室に来た場合にその患者から感染を受けるという場合,臨床検査室では新鮮な検体多数を扱うことが多いもんですから,その検体を介して感染が起る場合,それから検査室では検体の培養を数多く扱うことから,それから感染が起る場合と,大体この三つくらいを考えていいだろうと思います。

入門講座 生化学

化学はかりについて

著者: 小延鑑一

ページ範囲:P.193 - P.193

 化学はかりとは化学用に使用されているはかりの総称であるが,一般的には分析用のはかりをいう。そしてこれには最大荷重量(ひょう量)と感量とにより分類されている(表1)。
 はかりは分析の目的に応じて適当なものを選ぶことが大切であり,必要とする精度にみたないものを用いて,いたずらに数字を並べるのは無意味であるが,また必要以上に精度の高いはかりを用いることも労ばかり多くして効果のないことである。

血清

梅毒の血清学的検査法Ⅰ—ガラス板法

著者: 松橋直

ページ範囲:P.194 - P.194

 梅毒の血清学的検査法には,カルジオライピン・レシチン抗原のような脂質をもちいるものと,梅毒病原体であるTreponema Pallidum (TP)をもちいるものとがある。カルジオライピンは動植物の細胞のミトコンドリアに含まれ代謝に重要な役割を演ずる物質であるが,TP中にも含まれ,梅毒にかかると,カルジオライピン(Cardiolipin略CL)に対する抗体ができる。この抗体はCLとレシチン(Lecithin略Lec)とを適当な比較に混合した抗原と反応する。したがって,CL・Lec混合液が梅毒の診断にもちいられる。ところが,CL-Lecは動植物に広く分布する物質であるから,これに対する抗体は梅毒以外のときにも産生される。しかし,その頻度は,梅毒がほぼ100%であるのに比べてずっと低い(5〜40%)ので,CL-Lecを抗原とした反応で陽性なときは,梅毒が最も疑われる疾患である。
 CL-Lec抗原による検査法には凝集反応系統のものとして,ガラス板法,梅毒凝集法などがあり,補体結合反応では緒方法,Kolmer法などがある。TP抗原をもちいるものには,FTA, TPHA, TPI試験などがある。

血液

含鉄赤芽球(Sideroblast)

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.195 - P.195

 赤血球内にベルリン青反応を呈する鉄顆粒を含む赤血球を含鉄赤血球(Siderocyte),同様な顆粒を含む赤芽球を含鉄赤芽球(Sideroblast)と呼ぶ。前者は摘脾後の末梢血に出現するが正常人ではほとんどみられず,臨床的に大切なのは骨髄中の含鉄赤芽球の消長である。

病理

ミクロトームⅢ—メス

著者: 内海邦輔

ページ範囲:P.196 - P.196

 薄切りには3つの要素が必要である。ミクロトーム,メス,技倆である。今回はメスについて述べる。メスについては,メスそのものの良否と,メス研磨の良否とが問題になる。
 メスは良質の炭素鋼で作られている。先づ形を作り,ついで焼入れして鋼の硬度を高める。しかしそのままでは硬過ぎてもろく刄がボロボロと欠けるので,焼鈍(やきなまし)をして適当な硬度にし,刄に粘性をもたせるのである。最近地金,焼入れ,焼鈍しともに進歩したので,国産でもよいメスが作られるようになった。現在国産では森本製メスが最も多く使われている。

細菌

指示薬の概念と細菌学領域におけるその利用についてⅠ

著者: 橋本雅一

ページ範囲:P.197 - P.197

1.指示薬(indicator)の概念
1)指示薬の種類
 ある反応体系で,その化学的変化あるいは条件の変化と関連して,その色調を変える成分がふつう指示薬と呼ばれているものである。しかし,多くの反応系でその反応の変化の終末点を定量的に測定できる成分という意味では,もっと広い意味で使われていいはずであって,なにも化学反応だけに限って指示薬という言葉が使われる必要はない。たとえば,細菌毒素の定量に用いられたマウスにも,また血清学でよく用いられる補体結合反応に使われた感作赤血球にも,指示薬という言葉が用いられていいわけである。したがって,その測定の対象となる反応系によって,指示薬は次の三つに区別されてよかろうと思う。

生理

内分泌機能検査Ⅰ

著者: 井林博

ページ範囲:P.198 - P.199

 はじめに:生体はその内部環境をつねに一定の状態になるべく保とうとする機構が存在し,例えばわれわれの血液中の糖,蛋白,脂質,Na, Kなどの塩類や水分などは互に調和された一定のレベルにおかれるように,たえず巧みな生体の智恵(wisdom of body)が働いています。この機構はホメオスタージス(homeostasis)とよばれていますが,このhomeostasisをコントロールする生体の智恵の正体は色々な内分泌腺から分泌されるホルモン(hormone)であります。
 内分泌機能検査の方法は体液中(血液又は尿)のホルモンそのものを直接に生物学的方法(bioassay)又は化学的方法(chemical assay,最近は免疫化学的方法によるimmunoassayも開発されて来ております)によって測定する手段のほか,下垂体前葉ホルモンのようにその作用の末梢標的内分泌腺(target g1ands)の機能検査から間接的にその機能の異常状態をうかがう方法,更にホルモン固有の生理作用を応用して間接的にホルモン分泌異常の有無を検査する方法に分けられます。一般に内分泌機能の検査は技術的に若干操作の煩雑なものも少なくなく,又内分泌腺の機能は相互に,あるいは他の非内分泌臓器(特にホルモンを不活性化する肝など)の機能とも密接な関連をもっていますのでその機能検査成績の判定にはとくに綜合的な考え方と解析が必要になってきます。

共通

論文の書き方Ⅱ

著者: 天木一太

ページ範囲:P.200 - P.200

1.論文の形式
 論文には長さ,形式など,内容によっていろいろの場合がある。大論文のときには,緒言(はじめに),材料と方法(実験方法),実験成績,考案,結論,および総括,それぞれ項を改めて書くことが多い。短い論文のときにはそれを適当に簡略化して書く。長い論文は一般に嫌われるから,その方がよい場合が多いが,内容の中に前にあげた項目が適切に入っていることが必要である。緒言では従来の考え方や実施されている方法,その論文の目的を書き,さらに結論を一言で記しておくこともある。総括は全体を簡単にまとめたもので,論文を書いているときは無駄のように感じることもあるが,大切なものである。現在毎月おびただしい論文が発表されていて,一般の人はそれに目を通すのは容易でない。総括で論文のおよその内容を知り,必要と思えば全文をゆっくり読むのである。総括という項をつくらない場合には,緒言か結論のところで総括にあたるものを,わかりやすく書いておくようにする。
 論文はできるだけ理解しやすく,読みやすく書くように努める。各項には番号をつけておくが,その順序はおよそきまっている。

講座 臨床生理学講座Ⅴ

脳波<5>

著者: 吉井信夫

ページ範囲:P.201 - P.209

賦活法(誘発法)について
 いろいろな状態に脳をおいて,その変化をみること,すなわち,脳に直接または間接に刺激を加えたり,安静時と異った状態にすることにより異常な所見を得ようとする試みを,賦活法(又は誘発法)と呼んでいる。
これには種々の方法があるが,広く使われていろのは1)過呼吸

病理学総論(その1)

序論—病理学の歴史的背景について

著者: 渡辺恒彦

ページ範囲:P.210 - P.214

●はじめに
 これから何回かにわたって病理学総論の話をすすめてゆくわけであるが,そのまえにすこしおことわりしておきたいことがある。
 まず第一にこれから述べることは,病理学の教科書のように,たくさんの事項をならべて,それらを一つ一つ説明してゆくというやり方はとりたくないということである。病理学で扱かう範囲はおよそ全身の,あらゆる病変におよぶから,それを一つ一つていねいに扱かうとなると大へんな紙数になるし,又わたしごとき程度の能力の人間にはとてもできることではない。そういう意味の教科書的病理学は別に世上にたくさんある成書を読んでいただくとして,わたしはそれらの多数の項目の中から,わたしなりに実感の入る部分だけをとり上げてみたいと思う。だから項目は決して多くならない筈である。多くなくとも,その一つ一つをわたしなりに扱かってみて,ある読者の方々にこういう見方もあるのかと思っていただければ,わたしの今度の目的は達したことになるのである。

研究

o-toluidine法及びo-toluidine硼酸法による血糖測定の検討—主に反応条件について

著者: 山田正明

ページ範囲:P.215 - P.221

はじめに
 衆知の如く血糖の測定は臨床検査には欠かせないもので,糖質代謝に異常を起こす内分泌系疾患,特に糖尿病の診断,治療上最も重要な検査種目の一つである。
 血糖の測定方法は従来からある方法(Hargedorn-Jensen法,Foln-Wu法,Somogyi-Nelson法)に代って最近は特異的にブドウ糖を測る方法が普及しつつある。

発言

「臨床病理技術士認定試験」に対する私見

著者: 藤沢武吉

ページ範囲:P.221 - P.221

 日本臨床病理学会が毎年施行している「臨床病理技術士」一級,二級一般検査士の資格認定試験に対し日本衛生検査技師会がどう対処するかについてはすでに発表されておりますので省略致します。
 しかしこれらの試験の必要性があるかないかという基本的な問題に対して臨床検査室の管理的な立場にある者として二三意見を述べて皆様の御批判を得たいと思います。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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