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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査12巻5号

1968年05月発行

雑誌目次

グラフ

螢光抗体法による淋菌検査

著者: 西浦常雄 ,   斉藤功

ページ範囲:P.300 - P.301

最近,性病特に梅毒と淋疾の増加が世界的に注目されてきている。また淋菌と形態的に似たmimaによる尿道炎,ペニシリン抵抗株による非定型的症例の増加,症状のない女子淋疾の追求もゆるがせにできない問題となり,従来,慣例的に行われてきた診断方法の再検討と同時に,より迅速,かつ正確な淋疾の診断法の導入が要望されている。Coonsに始まる螢光抗体染色法は,その検出率の高いことと同時に同定もかねるという長所を有するため,近時,各種の感染症の診断に応用されているが,淋菌においてもDeacon, Danielsonらにより検討が加えられ,淋菌の莢膜抗原の存在,髄膜炎菌との共通抗原などの基礎的研究に応用,さらに臨床的にも無症状の女性患者の診断等にすぐれた成績をえている。ここに2〜3の臨床塗抹例につき紹介する。(詳細は技術解説の項参照)

血球の電子顕微鏡像

著者: 渡辺陽之輔 ,   榎本康弘

ページ範囲:P.303 - P.308

綜説

検査のための母集団のとらえ方

著者: 山本俊一

ページ範囲:P.311 - P.316

はじめに
 臨床検査を行なうということは,ある時点にある人からある材料をとり,そのある部分の中に,あるもの(物質または細胞,微生物)があるかどうか,もしあればどれだけの量かをある方法によって知ることである。
 いまこのようにして一つの正確な情報(存在するかどうかや数値)が得られた場合,その数値だけでは,あまり意味がなく価値がないものであ.る。たとえばそれが正常値であるか異常値であるかの判断ができて,はじめてその数値が意味をもってくる。ところで,正常であるかどうかということは,同じ方法によって多数の同様な材料について検査がすでになされていなければならない。すなわち,ある材料に対しある方法によってすでに測定がなされ,その測定値の集まりについての情報があってはじめて各個の情報に対する判断が可能となる。

技術解説

螢光抗体法による淋菌検査

著者: 西浦常雄 ,   斉藤功

ページ範囲:P.317 - P.322

はじめに
 螢光抗体法は抗原抗体反応のもつ高い特異性を利用し,スライド上で抗原抗体反応をおこさせ,それを特定の条件下で実際に観察するものである。近頃,細菌,ヴィルス,ホルモン,酵素,組織抗原などの存在を探索し,かつ同時に同定するのに利用されているが,特に感染症への応用は著しく発展した。
 淋菌への応用は1959年Deacon et al.1)が男子淋疾に利用したのが最初でその後Harris et al.2)(1961),Danielson3)〜6)(1963,1965),斉藤7)8)(1964,1967)等により応用,技術改良されつつある。

顕微鏡写真撮影装置の進歩

著者: 新井三郎 ,   中坪寿雄

ページ範囲:P.323 - P.331

顕微鏡は,もっとも古く,もっとも新しい,臨床検査用の機械ということができる。このごろはずいぶん便利なものができて,日常の鏡検は非常に楽になった。しかし,よい顕微鏡写真を撮るということになると,そう容易ではない。これにはいろいろの要素が入ってくるが,近年とくに露出を決めることが容易な装置ができて,最大の難点が一つ解決されたように思う。この点を主限において,顕微鏡を作る側の人に説明を頂いた。こごに説明を頂いた2社以外にもいろいろの製品があると思うが,紙面の都合もあり,2社に代表をしてもらった形になったことを諒承して頂きたい。(編集部)

連載 連載対談・2

血液凝固異常についての対話<その2>—例症1第Ⅸ因子欠乏症

著者: 安部英 ,   天木一太

ページ範囲:P.332 - P.336

 天木この症例の特長は,外傷後出血が止まりにくい体質ということです。35歳の男性で,兄や母方の祖父にも同じよう、な症状がみられるところから,遺伝性の病気が想像されます。ここでスクリーニング・テストとはどういう意味ですか。
 安部スクリーニングというのは,たとえば出血性素因がある場合,これはどこに欠陥があるか,もし凝固因子に欠損があれば,どの凝固因子が悪いかという見当をつける検査です。いわばふるいにかける検査です。この場合凝固に関係するものでは,全血凝固時間,プロトンビン時間,部分トロンボプラスチン時間,トロンビン時間などの検査が行なわれます。

講座 臨床生理学講座Ⅶ

筋電図<1>—筋電図の役割を中心として

著者: 土肥一郎

ページ範囲:P.337 - P.343

I.はじめに
 臨床電気生理学的な検査としては,ありきたりのものをかぞえただけでも,心電図,脳波,筋電図,心音図,脈波,皮膚電気反射,ニスタグモグラムなどがある。このうち生体の発電現象を直接に(ということは振動→電気とか圧→電気とかのような変換を介在きせないで)増幅したものは最初の3つであり,それぞれの場合における発生個所の機能を推測する手掛りを与えるが,さらに発生個所だけでなくそこに到る道すじ,すなわち筋電図でいえば,筋線維以外に,神経筋接合部,下位運動ニウロン,上位運動ニウロン,大脳基底核,およびいわゆる錐体外路系などの各個所の機能をある程度分離して判定する手段として有力なルーチンの検査となってぎている。
 この3つの検査のうち,筋電図検査は術者の技能がちがうと結果がちがうという点で,いまだに検査技師に全面的には渡されていない検査法であり,通常は医師が検者となり技師が補助員となって協力して検査を完成するが,その場合に医師の経験年数やその時の状況たとえば充分な時間をかけて落ち着いて検査したかどうか,または患者の協力がどの程度得られたかなどにも左右されるという意味で不安定な要素を内に含む検査法である。しかしそれだけに検者の努力のしがいのある領域であり,しかも検査室が病院内ではたす役割がしだいに独立したものとなりつつあることからみると,将来は技師が熟練した医師と同じ程度に検者として活躍するようになるべき世界であるといえよう。

病理学総論(その3)

循環の病理—動脈系を中心として

著者: 渡辺恒彦

ページ範囲:P.344 - P.348

はじめに
 循環系とはもちろん心臓を中心とした,動脈,毛細管,静脈からなる血管系と,これとは別に分布しているリンパ管系とをいうが,今回は血管系,特に動脈系を中心として,循環の病理の一部を扱ってみたい。ほんとうは循環器の中心である心臓を主として考えてみたいと思ったのであるが,たとえば心不全一つを扱うとしても,大へんな紙数を必要とするし,ものによっては各論にいれるべきものも数多く対象としなければならないので,心臓を中心とした話は今回はしばらくおいて,血管系特に動脈系を中心とした話をすすめることとした。片手落ちのようでもあるが,これも一つの試みである。巨大な循環系の多彩な動きの中から,動脈系の様相をとり出してながめてみるのも,個体の循環を理解する一つのよすがともなろうかと思う。

入門講座 生化学

正確にはかるということ

著者: 小延鑑一

ページ範囲:P.349 - P.349

 前回化学はかりの説明をしたのに関連して表題について考えて見ようと思う。化学はかりには「ひょう量」や「感量」などの言葉が使われている。「ひょう量」とはあるはかりで安全に,かつ正確に測定し得る最大量であり,また感量とはそのはかりで正確に測定し得る最小量ということである。これにはいずれも[正確に測定し得る」という表現がなされている。ではこの「正確に測定し得る」の「正確に」とはどのように考えるべきであるのか。はかりが機器としてもっている構造上の誤差,測定操作上の偶発的な誤差,分銅自体の器差および浮力の影響など多くの誤差要因が考えられる。このことは「正確に」ということを文字通りに考えるのではなくて,「正確さ」がどの程度であるかと考えるべきである。これははかりの性能に関連してくる。すなわちはかりの性能は(1)感量sensitivity,(2)信頼度Precision,(3)読取限度Readability,(4)精度Accuracyの4点で評価される。
(1)感量sensitivityは等比型や不等比型などのように構造上ある誤差を伴っている。

血液

白血球アルカリホスファターゼ

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.350 - P.350

 白血球アルカリホスファターゼ(以下白血球AP)の変動は諸種血液疾患の鑑別上重要である。
染色法
 Naphthol AS.MX phosphate法が最も良い。(1)血液塗抹標本はできるだけ薄く塗抹しすみやかに十分乾燥する。乾燥が不十分であると固定のさいはげてしまう。②固定:30分以内に−3℃〜−5℃の10%ホルマリンメタノール(36%ホルムアルデヒド:10ml+メタノール:90ml,この全量に0.01%の割合に酢酸を添加)で5秒問固定する。固定液は冷蔵庫のfreezing unit内に格納しておけば−5℃前後になっており,取り出して直ちに使用できる。(8)流水で15〜30秒水洗,乾燥(4)基質原液1.0mlにFast Blue RRを1mgの割合によく混和溶解した液で塗抹面をおおい,湿潤室に入れてフラン器(37℃)に2時間放置(5)十分に水洗(6)1%サフラニンO水溶液で核の後染色を2分間行う(7)数秒間手早く水洗,乾燥(8)グリセリンゼラチン,または流動パラフィンで封じて鏡検する。標本保存の必要のない場合はそのまま油浸で鏡検する。未封入で標本を保存しても2力刀までは陽性顆粒の槌色はみられないといわれる。

血清

梅毒の血清学的検査法Ⅲ—補体結合反応—緒方法—

著者: 松橋直

ページ範囲:P.351 - P.351

 Wassermannが梅毒の血清学的検査法を創案したのは,まさにこの補体結合反店であった。1906年のことである。それは,Bordet-Gengou(ボルデージャングー)が確立した補体結合反応を応用し,Treponema Pallidum(TP)が多数検出される先天梅毒児の肝臓から,TPの抗原有効成分の水抽出液(これは前述のように誤りで,カルジオライピンなどの脂質であった)を抗原として,梅毒患者血清との間で反応させたものであった。そのため,この梅毒の補体結合反応をWassermann反応あるいはBordet-Wassermann反応とよんでいる。
 この反応系の溶血系以外には,抗体,補体,抗原の3因子があるが,梅毒の抗体の消長をみるために,種々の工夫が加えられてきている。抗体(梅毒患者血清)の量を知るため2倍連続希釈する抗体減量法(Kolmer法,ドイツ国定法など),抗体の量が多いと補体がより多く結合することを利用した補体増量法(Browing法,微研法など),抗原と抗体の最適比をうまくつかむことを利用する抗原減量法(緒方法など)に大別されている。わが国でもっぱらもちいられているのは緒方法である。

細菌

指示薬の概念と細菌学領域におけるその利用そのⅢ—細菌学領域におけるpH指示薬の応用例

著者: 橋本雅一

ページ範囲:P.352 - P.352

1.培地pHの調整
 正確には電気的方法(pH meter)を使うか,比色計(comparator)を用いるが,特別な場合を除いて培地の調整にはふつう±0.2pH単位の誤差が許されるので,pH試験紙で十分間に合う。しかし,目的とする培地のpHいかんによって,そのpHで最も鋭敏に反応する変色域をもつ指示薬を選択することが必要である。たとえば,培地のpHを7.2〜7.4に調整したいときには,標準表でこの部分が変色域のほぼ中央に位置しているBTBを用いるべきであるし,pH8.0〜8.2に合わせたいときには,この部分が中央部にあるPRが用いられることとなる。この場合,pHの測定には外部指示法を用いるのが原則である。すなわち,適当なpH試験紙の小片をきれいにぬぐったピンセットでつまみ,取出した培地液の少量をこの小片につけて濡らし,しばらくしてからその色調の変化を標準比色表の色調と比較する。
 培地の多くは調整前では酸性(6.0〜6.4)なので,アルカリ性にするには10%炭酸ナトリウム水溶液を少しずつ加えて,pHの変動を観察しながら所要のpHに調整する。なお,酸性にするには工0%酢酸水溶液を用いる。

病理

自動包埋装置

著者: 内海邦輔

ページ範囲:P.353 - P.353

 自動包埋装置は,病理組織標本作過製程のうち,脱水,脱アルコール,パラフィン浸漬過程を自動的に機械にやらせる装置である。自動包埋と呼んではいるが,最終のパラフィン包埋は人力でやらねばならない。この機械の代行する仕事はあまり高度熟練を要するものではないが,注意しないと脱水不良になったり,微小組織片を紛失したりする恐れもある。機械の取扱いと注意事項の要点を述べてみよう。
 自動包埋装置は,1)脱水,脱アルコール,パラフィン浸漬の系列容器を並べた部分と,その容器内に釣下げた組織片カゴを一定時間毎に持上げて次の容器に送る装置と,3)時間を規制するタイマーの3部分からなる。

共通

実験ノートのとり方—生化学検査

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.354 - P.354

 人の記憶は十年前のものでも,数十年前のことでも明確である場含もあるが,それはきわめて特別な事件に限られるもので,日常の事柄となると昨日のことでも,あるいは数時間前のことでも定かでないことも起る。したがって日常検査の成績はどんなに簡単なことであっても必らず記録するように努めなければならないものである。
 試料についての結果はもとよりのことであるが,検査に関係のあると考えられる事項は細大もらさず書きとめておく習慣が大切である。このために用いられるのが実験ノートである。

検査室メモ

オベクトグラスとカバーグラス

著者: 広明竹雄

ページ範囲:P.355 - P.355

 旅に出て,車窓を流れる風景に接するとき,スモッグに馴らされた頭のなかも窓外の空気のように澄んで楽しいもの……特に初めての土地へ行った場合はことさらで,窓から目をはなせないであろう。
 しかし,偶然に座った窓のガラス面がデコボコであった場合……目に飛込んでくる景色はギクシャクと歪み,イライラして楽しいどころではないが,今でもローカル線の列車などで時にこのような場面に遭遇する。

ニュース

サイト・テクノロジスト地位確立の第一歩—細胞診スクリーナー養成所開校

著者: 編集室

ページ範囲:P.356 - P.356

 去る5月6日,わが国で初めて細胞診スクリーナー教育の専門機間として,その養成所が東京と大阪に同時に発足した。大阪は大阪成人病センター内に設立されたが,ここでは東京の癌研究会(豊島区)内に開校した癌研究会付属病院付設細胞診スクリ一ナー養成所の開校式の模様を紹介しよう。

研究

プラスミンを用いた抗プラスミン値の測定法

著者: 松岡松三 ,   桜川信男

ページ範囲:P.357 - P.360

緒言
 近時ウロキナーゼなどの血栓溶解剤1)2)3)およびトランサミンなどの線溶阻止剤4)5)6)が臨床各方面において応用されるにつれ,線維素溶解(線溶)現象という言葉も身近に親しみを持てるようになった。しかし,このような薬剤を用いるにあたり,生体内線溶系の徴妙な変動を把握し,薬剤投与による臨床症状の変化,たとえば血栓溶解剤の過剰投与による出血傾向などを観察し,管理することが必要である。
 線溶現象に関する測定法は今日まで種々の原理にしたがい,数多くの方法が考案されているが,いまだに最良の方法はみられず,とくに抗プラスミン値測定法に関しては決められた方法はない。

ヘモグロビン測定法の検討—特に国際法溶媒,アメリカ法溶媒及び河内法溶媒について

著者: 岡崎公士朗

ページ範囲:P.361 - P.362

はじめに
 一般臨床検査としてのヘモグロビン測定法にはザーリー氏法が広く用いられて来た。しかし現在における最も信頼出来る測定法はシアンメトヘモグロビン法であって1),アメリカにおいてはすでに1958年同法に統一され2),またドイツでも1962年これが採用された2)。1968年9月開かれる第12回国際血液学会3)において国際的にこの方法に統一される予定となっている。ところがシアンメトヘモグロビン法の溶媒としては従来種々の処方が使用されているので,それと国際法に推奨されている処法との優劣を比較検討した。

乳酸脱水素酵素測定用キット(L-TEST)の検討—超微量化について

著者: 小田真也 ,   柚木光男 ,   奥山理 ,   川原重治

ページ範囲:P.363 - P.366

 最近乳酸脱水素酵素測定の重要性が認められるにつれて,測定法こ関しても,本法の標準法と見なされているWróblewski氏の紫外部による測定法1)のみならず,より簡易化された方法が発表されつつあるが2),他方それらを応用した測定用キットの発売をもみるに至りつつある。私達も本酵素測定にはL-TESTを使用しているが,本法は毎回血清を6倍稀釈して使用せねばならないというわずらわしさがあるので,それを除く意味で血清10λを直接採量して測定を行なうと共に,試薬も半量にして測定する方法を検討してみた。その概要を報告する。

私のくふう

濾紙法によるNiacin Test—(結核菌鑑別)

著者: 村田徳治郎

ページ範囲:P.360 - P.360

 濾紙法は培地集落数が4〜6あれば実施できるのが利点である。
試薬

機器の解説

Chloride meterによるクロールの測定

著者: 吉田陞

ページ範囲:P.367 - P.369

はじめに
 血清中クロールの測定法としては,最も古い方法とされているMohr法1)2)以来,幾種かが3)〜7)知られているが,現在日常検査法として広く用いられているのは,硝酸銀滴定法のSchales&Schales法8)であろう。
 近年,検査室の自動化が進められており特に検体の多い施設ではその傾向がいちじるしい。それに伴って自動分析機器の発達により,クロール測定もオートアナライザーの出現で,比色法9)による自動分析,また銀電極を用いる電量滴定法10)であるchloride meter法などの自動分析法が普及してきた。

特別レポート

病理学における特殊染色標準法設定について—殊に嗜銀線維,弾性線維,粘液,真菌の染色法

著者: 金子仁

ページ範囲:P.370 - P.376

はじめに
 組織診断に関して,病理医の学識経験が極めて重要な要素である事は勿論であるが,これと同時に組織標本染色の上手下手が病理医の診断を迷わせる場合がしばしばある。
 大部分の診断は,通常普通染色と呼ばれているヘマトキシリン・エオヂン重染色で,つけることができるが診断困難例は特殊染色を行ない,その組織の中の特殊な成分を染色して診断の助けとしなければならない。たとえば結核性病変ならば普通染色の外に結核菌を染め出し,結核であるという病変を確めるごときものである。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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