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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査12巻7号

1968年07月発行

雑誌目次

グラフ

FTA-ABS法における成績の判定とその基準

著者: 川村明義 ,   村田道里 ,   川島豊作

ページ範囲:P.454 - P.455

 FTA-ABS法の標本の観察は,螢光顕微鏡(暗視野法—対物レンズ400倍(乾燥系),単眼)により,抗原・抗体・標識抗体結合物中の螢光色素の発する螢光を眼で追跡,確認することにより行なう。この時螢光色素を励起する超高圧水銀ランプの輝線スペクトルの選択法によりUV励起方式(360mμを中心とするUV励起フィルターと400mμ以下をカットするUV吸収フィルターの組み合わせ)とBV励起方式(400-430mμを中心とするBV励起フィルターと500mμ以下をカットするBV吸収フィルターの組み合わせ)とがある。その特色は表に示す。なお観察に際しては,(1)ランプの励起光を測光して,輝度が十分なこと,(2)光軸が合っていること,(3)暗視野コンデンサーのセンターが合っていること,(4)レンズ類がくもっていないことなどを確認する。また観察時にコンデンサーの高さには常に注意を払うとともに,まず種々設置された対照がそれぞれの判定成績を示すことを確認する。ついで被験例の標本を観察すれば,その読みは右頁のカラー写真に示すように,容易に判定できる(なおこのときフィルターの組み合わせによる判定基準を併用するとよい)。成績の判定は技術解説の表2のようにして行なう。

特殊遠心器

著者: 福岡良男 ,   南京子

ページ範囲:P.457 - P.459

 特殊遠心器とは,"一般の日常検査に使用している低・中速の遠心器以外の遠心器"という意味に解釈していただきたい。したがって低・中速の遠心器でも,特別の目的のためにつくられたものや,特殊形式のものが含まれる。そのほか,高速・超高速のもの,種々の自動制御装置がついているものなどがある。電子工学の進歩とともに新しい装置をもったものや,改良型のものが次から次へと考案されている。これらの特殊遠心器のうちで,日常検査と密接な関係のあるもの,および将来,臨床検査室に設置する必要性のあるもののみを選んだ。

私たちのくう—虎の門病院臨床生化学検査部

著者: 北村元仕

ページ範囲:P.460 - P.464

 独立採算の病院では,増員や自動分析器の導入は経済計算上成り立つものでなければ許されない。検体の受付制限や精度の犠牲は検査室の自殺行為というべきだろう。天井知らずの検査件数増加を前にして私たちは,私たちのアイディアを生みだそう,と決意した.そして約3年,ルーチンの作業が見違えるように能率的になってきた。そのくふうのいくつかをここに紹介しよう。

総説

酵素検査の最近の動向

著者: 降矢震

ページ範囲:P.465 - P.473

 検査室で行なわれている日常検査のなかで,いわゆる"酵素検査"は,種目もふえ,その内容も著しく異なってきている。そこで,酵素検査の最近の話題,とくに血清酵素の測定を中心に,将来への展望を解説した。

技術解説

特殊遠心器グラフ参照

著者: 福岡良男 ,   南京子

ページ範囲:P.474 - P.478

 本誌のグラフ"特殊遠心器"に示したように,種々の特殊遠心機がある。遠心分離の特徴,遠心力と相対遠心力などの理論面は,本誌の12巻6号の"技術解説"で北村が述べた内容とまったく変わったところがないので,重ねて説明することをさけたい。

FTA-ABS法・螢光抗体法(吸収法)による梅毒の診断法

著者: 川村明義 ,   村田道里 ,   川島豊作

ページ範囲:P.479 - P.484

 梅毒の血清学的検査は,従来reagin反応を中心として行なわれ,一部特異反応としてTPI(Treponema pallidum immobilization)試験,TPCF(Treponema pallidum complementfixation)反応,RPCF(Reiter protein complement fixation)反応が行なわれてきた。reagin反応は感度が高く,日本での一般検査では約2%の陽性率を示し,その内の約10〜20%は生物学的偽陽性(BFD)反応とされている。特異反応中TPI試験は,生きた病原体の供給と手技そのものが煩雑であり,TPCF反応は一定の力価の抗原が得難いため,ともに一般化には問題がある。RPCF反応は,梅毒患者血清に対し反応が弱いことがあり,また非梅毒者にも多少陽性を示すなど,特異性に問題がある。
 FTA-200これらの方法の欠陥をおぎなう方法としての診断法FTA(fluorescent treponemal antibody)-200法は1957年以来Decon,Harrisらによって老案,改良されてきた方法である。すなわち病原トレポネーマの塗抹標本に被検血清を200倍に希釈したもの(それより濃いと非特異螢光の出現が著しい)を反応させ,もし被検血清中にトレポネーマに対する抗体が存在すると,当然,抗原・抗体結合物が生ずるはずである。

ルーチン検査活動の能率化

著者: 水野映二 ,   小野弘毅 ,   仁科甫裕

ページ範囲:P.485 - P.486

 私たちの検査室でもこの数年,技師の増員がほとんどないにもかかわらず,検体数は37年を100とすると42年は268とうなぎ昇りである。オートアナライザー,IL炎光光度計を初めとする新鋭の分析器械の導入や,簡便でかつ,正確,精度の高い操作法の採用などによってその対策がとられてきた。
 臨床化学では迅速,微量,正確,精密が不可欠な基本条件であるから,導入された分析器械をほんとうに自分たちの手足のように活用するには器械自体の改良を初め操作手順でのわずかなくふう,創作が必要である。私たちもこの2,3年,実際になけなしの頭をしぼりあって,能率化へのくふう,改良に努力を重ね日常検査にだいぶ活用できるようになった。これらのなかから2,3の道具とわずかな部品でどこでも簡単に作り上げられる例を紹介し,ご批判をえたいと思う。

連載 連載対談・4

血液凝固異常についての対話<その4>—症例3線維素溶解現象亢進症

著者: 安倍 ,   天木

ページ範囲:P.487 - P.491

oozingの現象
 天木症例3の特徴は,初め出血性素因の認められなかった患者の手術をしていたところ,手術が終わるころになって出血が起こってきた。その様子は,手術野の露出表面のいたるところから,高度のウージング(oozing)が認められ,そしてその場所から排液をしていた液が,いちじるしく血性になってきた,ということのように思われます。
 oozingというのは,どのような状態をいうのでしょう。

講座 病理学総論(その5)

炎症(2)

著者: 渡辺恒彦

ページ範囲:P.492 - P.496

炎症の分類
 前回炎症のプロトタイプとして急性滲出性炎の発現から終熄にいたる経過を形態的に追跡した。しかし実際の炎症は,途中のちょっとした条件のズレによっていろいろの形になる。はじめ断わったとおり,この小論では教科書的な記述はできるだけ避けたいが,話を進めるつごうもあるので,ここである程度,炎症の分類にふれておきたい。
 炎症の分類のしかたは学者によって必ずしも同じではないが,ここではその代表の1つとしてビュヒネル(Büchner)の教科書をかりることにした。他の学者の分類といえども,大筋にかわりがないことは,もちろん断わるまでもない。

臨床生理学講座Ⅸ

筋電図<3>—検査実施面での細目

著者: 土肥一郎

ページ範囲:P.513 - P.522

筋肉の収縮のさせかた
 どのような病気の診断の際に筋電図検査が必要であるか,またそれらの病気はどのような臨床像を示すか,また正常人にせよ患者にせよ筋から誘導される波形や放電様式はどのような生理学的機構にもとついているかなどについて前稿まで述べてきた。
 ところで,どのように詳細な知識があっても,ある筋肉を調べるとき,どのような力を入れさせてどこに電極をあてがえばよいかということを知らなければ十分な情報を得ることはできない。多くの場合,ある筋肉を十分働かせるためには,反対の力を検者が加えてやり,これに対抗して被検者が力を入れるというやり方をしなければ,結果として得られる筋電図はスパイク数が減少気味のものになってしまうのである。以下には,日常検査する筋について図と説明とを対応させて述べていく。またそれぞれの筋がどの範囲の脊髄髄節に属するかも付記してある。

入門講座 生化学

pH標準液

著者: 小延鑑一

ページ範囲:P.497 - P.497

 現在のpHはフタル酸水素カリウム標準液が基準になって定められたことは前回に述べた。それではすべてのpH測定には1っの標準液で十分であるかと言えば問題がある。それは,日常私たちが測定しようとする溶液には,蒸溜水のように溶質の極めて少ないものから,そうとう濃厚なものまであり,あるいは酸化性や還気性のものや懸濁物が含まれている溶液もある。このような溶液のは水素電極で正確に計ることはできない。
 溶液の性状に比較的影響を受けないで再現性のよい電極に,ガラス電極がある。しかしながら,このガラス電極の起電力は図1に示すように水素電極の起電力と一致せず,被検液との間に液間起電力もあり,酸性側およびアルカリ性側では直線性よりのずれもある。このため広い範囲にわたって標準液を定め,なるべく被検液のpHに近い標準液と比較してpHを測定するようにすれば,液間起電力などの値も同じく近接しており,誤差も少なくなると考えられる。

血液

赤血球沈降速度

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.498 - P.498

 血液に抗凝固剤を加えて細い試験管に入れ,まっすぐに立てておくと赤血球は血漿の中を沈降してしだいに管底に沈殿してくる。この現象を赤血球沈降反応あるいは単に赤沈または血沈と呼んでいる。
 この沈降する速さがいろいろの病気や状態によって変化するので,1918年Fahraeus (スエーデン)の創案以来今日まで健康診断に,また病気の診断や経過の判断に広く用いられている。

血清

梅毒の血清学的検査法V—FTA-ABS

著者: 松橋直

ページ範囲:P.499 - P.499

 Treponema pallidumを抗原とするもので,日常検査法として実用段階に入っているものとしては,TPHAの他にFTA-ABSとTPIがある。TPIはウサギ睾丸にTPを感染させてできた梅毒腫から,TPを抽出し,これを特殊な培地に保つと1〜2日生かしておくことができる。TPはらせん状で遊走しているが,これに梅毒患者血清と補体を入れると運動が止ってしまうので,この反応はTreponemal Immobilizationと名づけられ,略してTPIと呼ばれているが,TPを嫌気性の条件で生かしておかなければならないので,反応条件を一定に保つことはかなり困難であり,わが国ではほとんど実施されていない。
 TPを抗原として梅毒患者血清との間で螢光抗体法間接法を行なう方法のTreponemal Fluorescent Antibody testは略してFTAとよばれているが,TPは死んだものでよく,凍結乾燥したもので十分である上,ごく微量でよいので,螢光顕微鏡装置のあるところならどこでも実施できるため,世界各国で実用になっている。FTAは,創案された頃は患者血清を5倍希釈で用いられていたが,やがて,この希釈度では非特異反応が多いというので200倍希釈血清がもちいられ,FTA-200として,かなり高い特異度が経験されていた。

細菌

血液添加培地,特にチョコレート寒天培地の作り方と使い方

著者: 橋本雅一

ページ範囲:P.500 - P.500

血液添加培地
 普通寒天では発育しにくい菌(レンサ球菌,肺炎球菌,ジフテリア菌,リン菌,ずい膜炎菌ブタ丹毒菌など)のための栄養分の補給とか,増殖に特殊な血液成分を必要とする菌(インフルエンザ菌,百日ぜき菌など)にその発育素を供給するために,基礎培地に血液が加えられた培地である。溶解して40-50℃に保った基礎培地に,5-10%の割に脱線維素血液またはクエン酸ナトリウム加血液を加え,泡立たないようによく混ぜてから平板あるいは斜面に固め,1夜無菌試験を行なってから用いるのが原則である。この血液添加培地はその使用目的によって次のように使いわけられる。
1)一般菌増殖用:血液寒天,血液ブイヨンなど。基礎培地には,普通寒天,ハート・インフュジョン寒天,トリプティケース・ソイ・寒天などがよく使われる。

病理

パラフィン切片の伸展

著者: 内海邦輔

ページ範囲:P.501 - P.501

 今回はパラフィン切片の伸展を中心に話してみよう。薄切りしたパラフィン切片は通常,まず水に浮かべておき,ついで温度をかけて伸展しつつ,スライドガラスに貼り付けるのである。パラフィン切片を伸展してスライドガラスに貼り付けるときには,組織切片が十分によく伸展し,かつ伸展し過ぎないこと,組織切片とガラスの間に雑挾物を入れないことの2点がもっとも大切である。
 薄切りするときは通常,ミクロトームのそばに水を入れたシャーレを並べておき,薄切りしたパラフィン切片を一時その上に浮かべておく。この際パラフィン切片の厚さが適当かどうか,全面同じ厚さかどうか,途中で段ができていないかどうか,トラ苅り(段々ができる)になっていないか,メスの傷が出ていないかなどをざっと見る。悪い切片はどしどし捨てる。なお水に浮かべるとき,パラフィン切片の一端を水に着けると,自動的にパラフィン切片がのびて水面に浮かぶようでないと,切片は厚過ぎて役に立たない。巻紙のようにクルリと巻いてしまって,なかなか伸びないようなのは20μもの厚さと考えてよい。

共通

学会とは

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.502 - P.502

 志を同じくする人たちの集まりが会であって,学術を中心として集まるのが学会である。学術の分野は,はなはだ広いために,学会の種類も数も多い。規模もまちまちで数人の集りから数千人の会員をもつものまである。
 集まる目的は,いうまでもないことであるが,会員の専門としている学術の発展向上,普及をはかり,学術の成果に基づいて人類の幸福の増大に寄与することにある。すなわち,会員各自の研究の結果を持ちより,相互に検討してその価値を判定し,有益なものは広く公表するわけである。

検査室メモ

毛細ヘマトクリット管—その種類と使いわけ

著者: 広明竹雄

ページ範囲:P.503 - P.503

 最近の臨床検査には,簡便な反応の場……つまり,そのなかで反応させ,そのまま判定する目的……のために毛細ガラス管を用いる検査が普及しつつあるが,このガラス管はアメリカにおいてヘマトクリット(Ht)の微量化を目的として開発されたため,一般に"毛細ヘマトクリット管"と称されている。しかし,その後,CRP.β—LP.妊娠反応など,"毛細ヘマトクリット管"の名称がふさわしくないまでに他の検査にも使われるようになった。
 したがって,初期のころの毛細Ht管はもっぱらアメリカ製品に依存していたが,毛細管を用いる諸検査がポピニラーになるとともに国産化が進み,現在では需要のほとんどが国産品でまかなわれている。

座談会

腸内細菌検査法

著者: 川上稔 ,   善養寺浩 ,   舘野捷子 ,   松本礼三枝 ,   高橋昭三

ページ範囲:P.505 - P.512

 高橋これから"糞便中の病原菌の検査法"という題でお話を伺いたいと思いますが,その中でグラム陰性の桿菌でしかも好気的培養で生えてくるものに限ってお話をしていただきたいと思います。
 特にどこまでやったらいいかという点についてお話していただきたいと思います。今回は,善養寺先生の「腸管系病原菌検査法」の中の図を,一部おかりして,話題の中心にさせていただきます。

研究

日本人血小板数の正常値

著者: 鈴木笙子 ,   加藤修子 ,   長田政子 ,   六崎悠喜子 ,   佐々木良子

ページ範囲:P.523 - P.524

 血小板の正常値は検査法により,また報告者によって一定しない。
 最近,自動血球計数器を用いて算定する試み1)がなされているが,実用の域にはまだ多くの問題を含んでいる。

第11回衛生検査技師国家試験(昭和43年度)—問題—その1—

ページ範囲:P.525 - P.531

公衆衛生学
 問題1家族集積率の最も高い伝染病は次のうちどれか。
1.ポリオ2.日本脳炎3.赤痢4.ジフテリア5.しょう紅熱

私のくふう

抗ストレプトリジン0価測定時の稀釈する際の試験管立について

著者: 中西寛治

ページ範囲:P.531 - P.531

 抗ストレプトリジン0試験の血清稀釈は,Rantz—Randell法で,100単位以下は大きな間隔で読むようにして,急性期に低い抗体値のものは,その後よく上昇するので,100単位以下は大きな間隔でも,診断上は事が足り,初めから100単位以上抗体をもっている人は,その後あまり上昇しないので,間隔を細かくする必要があるわけである。そのため特別の稀釈法が用いられるが,倍数稀釈でないため,急いだり数例一緒に実施するとき,どこまで稀釈したかしばしば迷う事がある。そこで,試験管立(富士理研)にマジックインクで,図のように数値と印を入れておくと早く,確実に実施できる。
 4件以上の時は,一緒に検査し,できるだけ稀釈その他を手早く処理し,各試験管の時間的誤差をなくすよう5件以上の時は,4件1組とし検査し,できるだけ正しい値に近ずげるように努力している。

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Glossary≪25≫—肝臓・胆道系疾患(6)

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.504 - P.504

<Q>
Quick one-stage method of Prothrombin
プロトロンビンQuick一段法

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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