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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査13巻12号

1969年12月発行

雑誌目次

特集 血清学的検査—その本質と実際 グラフ

梅毒血清反応の自動化—Automated Reagin Test

著者: 福岡良男

ページ範囲:P.998 - P.1003

 梅毒血清反応の自動化をはじめて試みたのはフランスのVargues(1965)である.VarguesはFlow systemのオートアナライザーを用いてワッセルマン反応を試みることに成功したが,感度が劣っているためにいまだ日常化していない.ここに紹介するAutomated Reagin Testは,1967年にアメリカ国立伝染病センターの性病研究所のグループによって発表されたものであり,ガラス板法とほとんど同一の鋭敏度と特異度をもっている.Automated Reagin Test(通常ARテストと呼ばれている)はFlow systemのオートアナライザーによって行なう梅毒の間接凝集反応である。著者が行なった基礎実験をもとにしてARテストの概略を図示する.詳細は本文(1025ページ)を参照されたい.

血清学的検査の本質

座談会—血清学的検査の本質

著者: 松橋直 ,   水谷昭夫 ,   河合忠 ,   安田純一 ,   鈴田達男 ,   福岡良男

ページ範囲:P.1006 - P.1024

血清学的検査の発展
 安田 この座談会,どうしてやることになったかということを一言初めに述べさしていただきます.
 私たちが中央検査室制度が板についてきたつていうのは,ほぼ10年ぐらい前,東大あたりをモデルにして,全国でほぼ形が決まっていったといってもいいと思うんです.これは1つには,細菌血清検査というのが,かなり古くから独立した検査,中央化した検査として扱われていた点で,比較的中検制度の中に取り入れられるのがやさしかったといえると思います.ところがそれから10年間たちますと,血清検査はいくぶん後退してきたという感じがしないわけじゃないんです,ことに血液だとか,あるいは生化学の検査は,母体となっている親学会との関連が非常に強く,そのために非常に精力的にやられていると思うんです.血清検査には残念ながらそれがないのも原因と思います.

梅毒血清反応の自動化—Automated Reagin Test

著者: 福岡良男

ページ範囲:P.1025 - P.1028

 グラフページにおいて述べたようにAutomated Reagin Test(ARテスト)は,Flow systemのオートアナライザーによって行なう梅毒血清診断のための間接(受身)凝集反応である.これから述べるARテストの実施法は,アメリカ性病研究所(VDRL)で定めた暫定法1)に,著者の経験を加えたものである.

免疫血液学的検査

血液型の検査法—その問題点

著者: 中嶋八良

ページ範囲:P.1030 - P.1036

 血液型検査上の問題点は,"型の誤判"と"不規則抗体の見のがし"に集約されるといってよいであろう,しかし一口にそうはいっても,具体的には技術的な問題のほかに,病院や検査部の機構の問題や,事務上の問題があまりにも多く,それらをここで全部取り上げることはとてもできそうもない.そこで今回は,問題を①観念的にはわかっていても,実際にはとかく誤りやすい,あるいは等閑視されやすいいくつかの間題,②判定のややむずかしい,異常な反応を示す血液の検査法にしぼって,おもにABO式とRh式血液型の検査を対象に話を進めてみようと思う.

不完全抗体の検査法

著者: 小暮正久

ページ範囲:P.1037 - P.1041

 LevineとStetson(1939)は8カ月の胎児を死産したO型の婦人の血清中に,生理食塩水に浮遊したO型血球104例のうち,80例を凝集する抗Rh凝集素(食塩水凝集素)を発見した.その後新生児溶血性疾患で母子間のRh式血液型の不適合が原因となりうると考えられる場合でも,その母親の血清中にしばしば抗Rh凝集素が認められないことが経験された.RaceとWienerは,この現象をそれぞれ独立に研究し,その原因が抗Rh凝集素(食塩水凝集素)によるRh陽性血球の凝集反応を阻止する,特殊な性質をもつ抗体によることを明らかにした.この抗体をRace1)は不完全抗体(incomplete antibody)と呼び,Wiener2)は遮断抗体(blocking antibody)と名付けた.この抗体は生理食塩水に浮遊した対応する血球と結合するが,凝集反応を起こさないことが特徴である.
 Levineらによる抗Rh。(D)抗体の発見に続いて,D因子に関連しているC,c,E,e因子に対する各抗体,さらにKell,Lewis,Duffy,Kiddなどの各抗体が発見されるにおよび,不完全抗体の検出法はおおいに進んだ.

交差適合試験

著者: 徳永栄一

ページ範囲:P.1042 - P.1046

交差適合試験のあらまし
1.意義
 交差適合試験とは,輸血に際して血管内で起こりうる血液型による抗原抗体反応を予防するために,試験管内で患者の血清と供血者の血球,および供血者の血清と患者の血球とを反応させる検査で,前者を主試験,後者を副試験という.交差適合試験は輸血の前に必ず行なわねばならない操作であって,たいていの場合凝集反応の形式が用いられる.遠心器その他ある程度の設備を必要とするので,ベッドサイドで行なう性質のものではない.また患者と同型の血液を発注することは当然であるから,この検査の前提として必ず患者の血液型(ABO式およびRh式)の検査が必要である.術式については後で簡単にふれることとして,交差適合試験のいろいろな問題点を簡単に解説してみたい.

血液型不適合妊娠の検査のすすめ方

著者: 松本秀雄

ページ範囲:P.1047 - P.1051

はじめに
 最近著者の知り合いの眼科の先生から"私の従弟が結婚について,本人はA型,嫁の候補はO型ですが,血液型の不適合によっていろいろの不具者が生まれるとかいうので心配しています.どうしたものでしょうか"というお尋ねがあった.これはもちろん血液型に対する一般の関心,知識が最近とみにたかまっていることを示すものであろう.また一面,いろいろの新聞などジャーナリズムがその恐ろしさを強調するあまり,ABO式血液型の不適合がその"実力"以上の評価を受けているともいえよう.啓蒙のいきすぎがもたらした悲劇も時おりきかれるのである.
 また著者が滞米中,血液型不適合の問題に興味をもっていることを知つているスタインバーグ教授が,たくさんの家族的資料についての血液型検査の成績を示しながら,"Rh(-D)の妻とRh(+D)の夫との間に10人もの健康な子供が生まれているよ.ほらここにもある."といたずらっぽくよく笑ったものである.このことはRh式血液型の不適合があっても,必ずしも抗体は産生されていないし,溶血性疾患をひき起こすとは限らないことを示している.

輸血副作用の検査法

著者: 安藤清平

ページ範囲:P.1052 - P.1057

はじめに
 輸血を行なうときも,ブドウ糖やリンゲル液などの輸液を行たうときも,同様に静脈内へ点滴注入するが,輸血では輸液と違ってしばしば副作用を伴う,輸血で副作用が起こりやすい事実は,血液がブドウ糖などにない種々の特徴をもっていることに由来する.
 その第1は血液には赤血球,白血球,血小板という生きた細胞が存在し,赤血球が破壊した場合には溶血という現象が起こり,このような血液を輸血すると,効果がないのみならず副作用が起こる.

座談会—免疫血液学的検査

著者: 福岡良男 ,   支倉逸人 ,   安藤清平 ,   伊東重孝 ,   徳永栄一

ページ範囲:P.1058 - P.1066

直接クームス試験の問題点
 福岡 自己免疫性溶血性貧血を診断する場合に,まず第1に直接クームス試験をやらねばならないと思いますが,最近クームス試験の試薬について,いろいろ問題があるようにいわれていますので,その点について現場で毎日クームス試験をやっておられる伊東先生,何かお気づきの点がありましたら…….
 伊東 これはだいぶ前の話ですが,2社のクームス試薬の血清を使ってやってみたところが,片方が陽性で片一方が陰性であり,何度かくり返してみたんですが,どうしても同じ結果しか出ません.実際にそういう製品差が,どの程度あるものかお聞きしたいと思って…….

梅毒血清反応

座談会—梅毒血清反応

著者: 水岡慶二 ,   安田純一 ,   福岡良男 ,   松橋直 ,   鈴田達男

ページ範囲:P.1068 - P.1076

梅毒血清検査法の位置づけ
 水岡梅毒血清反応は,ご承知のように1906年ワッセルマンによってつくられてから,現在までもうすでに60何年かの日にちがたっているわけです.その間,いろいろな変遷がありまして,現在はトレポネーマを使う反応の実用化というところまで発展してまいりました.しかし,トレポネーマを抗原に使う反応が出てまいりまして,梅毒血清反応が,多少いまは混乱しているような状態ではないかと思います.
 はじめにそういうことにつきまして,ご意見をうかがってみたいと思います.

感染症の血清反応

細菌検査における血清反応

著者: 三輪谷俊夫

ページ範囲:P.1078 - P.1084

 細菌検査において広く用いられる血清反応には次のようなものがある.
1.分離菌の同定,特に血清学的型別のための"のせガラス"(または"ためし")凝集反応と"試験管内"(または"定量")凝集反応

レンサ球菌—A群レンサ球菌の凝集反応による型別法

著者: 宮本泰

ページ範囲:P.1085 - P.1091

まえがき
 レンサ球菌(Streptococcus)はその細胞壁を構成する多糖体の相違により,沈降反応法によって19位の群(Group)に区別されるが,その中で,A,C,Gの3群およびときにF群,D群とViridans strept.(亜急性心内膜炎起因菌)が,主としてヒトの疾病と関係がある.
 この中でことに病原菌としての意義の大きいのはA群である.A群はさらにその中を血清学的に型(Type)に分ける.型別法には2種類あって,細胞壁の表層に微量に存在するMタンパク質の相違によって型別を行なう沈降反応法と,それより深層に比較的多量に存在するTタンパク質の種類によって型別を行なう凝集反応法がある.

菌体凝集反応,間接凝集反応

著者: 北浦敏行

ページ範囲:P.1092 - P.1099

 細菌感染症の診断として始めて血清反応が用いられたのは,1896年Widalによる腸チフスの血清診断であった.それ以後70年の歴史を経てウィダール反応は現在もなお新たな種々の問題をもっている.
 チフス症におけるウィダール反応以外に菌体抗原を用いた血清診断にはワイル・フェリックス反応が有名である.それ以外に多くの細菌感染症においてウィダール式の凝集反応による抗体の証明,すなわち血清診断が応用されている.

ヒトマイコプラズマ血清診断の問題点

著者: 荒井澄夫 ,   石田名香雄

ページ範囲:P.1100 - P.1104

はじめに
 本邦においてMycoplasma pneumoniaeが初めて分離されてから早くも6年の歳月が流れ,ようやくマイコプラズマ学が一般の細菌検査室でも取り上げられるに至った.しかし一口にマイコプラズマ抗体測定法といっても種々の方法があり,検査室で検査を進める場合,どの検査手技に重点を置くかちょっとまごつくほどである.また最近,各国における精力的なマイコプラズマ感染症の研究によって,以前のように単にマイコプラズマ肺炎から抗体検出を目的とするばかりでなく,2,3の慢性疾患とマイコプラズマ感染症との関係がようやく明らかにされつつあるといえよう.
 本稿においては,数ある血清診断法の利害得失を検討するとともに,各種マイコプラズマの抗体上昇を示す疾患について言及したい.なおヒト由来マイコプラズマの生物学的性状や分離方法,同定法については省略した.

ウイルス疾患の血清検査

著者: 鈴木紀元 ,   高橋理明

ページ範囲:P.1105 - P.1109

 ウイルス疾患の血清検査のうち主なものとしては,赤血球凝集抑制(HI)試験,補体結合(CF)反応および中和試験(NT)がある.ここでは紙面の都合で,最近検査室で最もよく用いられているHI試験に重点をおきながら,記載していくこととする.

座談会—感染症の血清反応

著者: 安田純一 ,   北浦敏行 ,   松永清輝

ページ範囲:P.1110 - P.1117

近ごろの感染症
 安田 抗原抗体反応を病気の診断に使うことが始まったのは19世紀の終わりからで,ウィダールの反応が1896年です.それ以来,感染症の病原体を抗原にして患者血清の中の抗体を証明するやり方が,血清診断法として多く用いられてきたわけです.逆に,免疫血清を使って菌を同定する.そういう2とおりのやり方がありますが,今日使っている血清的検査法の中には,病原菌を使わない方法もあります.どちらかというと,病原菌を使う方法からそうでないほうへ主力が移っていく感じがしますけれども.
 それで今さら感染症の診断でもないと考える人もあるでしょうが,まず抗原抗体反応で診断できる感染症はどんな状態か,北浦先生に全体の見とおしをお聞きしたいと思います.

リウマチ因子,自己抗体,補体

リウマチ因子の検査法

著者: 堀内淑彦

ページ範囲:P.1120 - P.1125

はじめに
 リウマチ因子の検索は,1940年Waaler1)が補体結合反応の溶血系である,ウサギ抗体グロブリンを結合させたヒツジ赤血球が,慢性関節リウマチ患者の血清によって凝集することを見いだしたことから始まる.
 その後Rose2)がこの反応を慢性関節リウマチの診断に用いたのがWaaler-Rose反応であり,その後種々の変法が考案されている.しかしその本態は長い間不明であった.すなわちリウマチ因子は抗体であるかどうか,抗体だとすると,対応する抗原は何であるか,どのような機序で発生するか,リウマチ病変との関係はどのようなものかなどである.

自己抗体—臨床面より

著者: 本間光夫

ページ範囲:P.1126 - P.1129

自己免疫疾患について
 ある種の病気には循環抗体が見つかるが,それがあるからといって,その病気の組織障害がただちに自己免疫過程によって起こっているものとは必ずしもいえない.事実血清抗体それ自身有害的に作用しなくともよいし,またある場合には組織破壊の単なる結果として抗体が産生されているということもよく知られているからである.しかもその組織の破壊は,完全に免疫現象とは無関係の機序によって生じたもので,それ対して抗体が作られたのである.
 さて自己免疫が発症機序であるということを証明することは,現在の段階ではなかなか困難である.いくつかの病気については,この可能性を強く示唆するような成績が集められている.しかし大部分は未解決であるので,原因的関係は今後の成果にゆだねなければならない.したがって現時点では,"自己免疫現象"の見られるものを自己免疫疾患と広く取り扱わざるをえないものと考えられる.

自己抗体の新しい検査法—培養細胞を用いた混合凝集反応付.伝染性単核症の新しい検査法

著者: 粕川礼司

ページ範囲:P.1130 - P.1132

はじめに
 検査室で,日常行なわれているRA,LE,TA,サイロイド—テストなどは自己抗体を検出する方法であるが,これらの反応に用いられる抗原はすべて水に可溶性のものである.臓器の疾患と関連して自己抗体を検出しようとするときには,その臓器の水に不溶性の抗原と反応する抗体も検索する必要がある.ところが,この目的にかなったよい方法が見つかっておらず,組織ホモジネートを用いた補体結合反応や,組織切片を用いた螢光抗体法などが試みられているのが現状である.ここに紹介する方法は,培養細胞を用いて,水に溶けない細胞膜抗原と反応する抗体を検出しようとするものである1)

補体の検査法

著者: 稲井真弥

ページ範囲:P.1133 - P.1137

緒言
 最近10年間の補体に関する研究の進歩はめざましく,従来補体は第1(C1),第2(C2),第3(C3),第4(C4)の4成分からなると考えられていたが,C3がC3,C5,C6,C7,C8,C9,の6つの独立した成分に分かれることが発見され1,2),補体は少なくとも9つの成分からなることが明らかにされた.各補体成分はいずれもタンパク質で,血清から高度に精製されたかたちで分離できるようになった.そして各成分の免疫溶血反応における反応の順序や機作が明確になり,それにつれて血清中に補体成分を不活性化する物質(C1 inactivator,C3 inactivator,C6 inactivatorなど)があり,補体成分とこれらの物質が血清中で複雑な反応系を形造っていることがわかってきた.また補体成分は,免疫溶血の中間生成物を用いて正確に定量できるようになった.
 補体に関する研究がこのように進んだ今日,ふり返って検査室における補体の取り扱いについて考えてみると,次の2点を問題点としてあげなければならない.第1は梅毒,ウイルス性疾患の検査法としての補体結合反応に,補体研究の成果が全く取り入れられず,旧式な方法がそのまま行なわれていることである.第2に血清補体価の定量の臨床的意義については,今後さらに検討されなければならないが,現在では全くかえりみられていないことである.この2つの問題はいずれも,50%溶血法による補体価の測定法が普及していないためである.そこで50%溶血法によるヒト血清補体価の測定法を中心に,その基礎となる溶血素血清の作り方,至適感作に必要な溶血素量の決め方など実際的に重要な点について述べる.

座談会—自己抗体,リウマチ因子,補体の検査

著者: 鈴田達男 ,   本間光夫 ,   鈴木秀郎 ,   田村昇

ページ範囲:P.1138 - P.1148

 鈴田 まず自己免疫性疾患というのは耳新しいことばですが,どんな病気がこの中に属しているかという点からおうかがいしたいのですが.

ホルモン検査

ホルモンの検出—HCGのradioimmunoassay

著者: 水口弘司

ページ範囲:P.1150 - P.1156

はじめに
 産婦人科の日常診療で最もしばしば遭遇するのは妊娠である,と言っても過言ではあるまい.しかしながら,妊娠の診断は一般的に考えられるほど容易なものではなく,他疾患を妊娠と誤診したり,妊娠を見のがすことはさほど珍しいことではないのである.もちろん,定型的な妊娠は主訴をきいただけでも十分に判断しうるが,主訴があいまいであったり,定型的な妊娠徴候を認めぬ場合には診断を確定することは非常にむずかしく,外来診療でこうした困難を経験するのはしばしばである.
 そこで,より客観的で正確な診断をするために,臨床医学の領域に種々の検査法が導入され,今日では検査法を抜きにしては医学を語ることはできないほどになったのであるが,この意味で近年人絨毛性gonadotropin (HCG)測定法の進歩は注目に値する.

Radioimmunoassayの原理と方法

著者: 入江実 ,   対馬敏夫 ,   柴崎純子

ページ範囲:P.1157 - P.1160

はじめに
 ラジオイムノアッセイ(Radioimmunoassay)とは放射免疫測定法と訳され,放射性物質を用いた免疫学的測定法(immunoassay)という意味である.今日特に内分泌学領域においてタンパク性ホルモンの測定に用いられている.タンパク性ホルモンとは,タンパク質またはポリペプチドをその構造として持つもので,下垂体前葉ホルモンである成長ホルモン,副腎皮質刺激ホルモン,甲状腺刺激ホルモン,性腺刺激ホルモン,プロラクチン,および膵から分泌されるインスリン,グルカゴン,副甲状腺よりのパラソルモンなどである.
 1959年にBerson,Yalowがインスリンの免疫学的測定法を確立して以来,今日までその発展はめざましいものがある.上記の各タンパク性ホルモンのうちで実用の段階にあるものは,インスリン,成長ホルモンであり,他のものについてもまもなく実用の段階に達すると思われる.

対談—ホルモン検査

著者: 鎮目和夫 ,   熊坂高弘

ページ範囲:P.1161 - P.1168

内分泌疾患とホルモン検査
 鎮目昔は,病気の症状がだいたい出そろってから診断をつけていましたが,これからはだんだん症状が出そろわないうちに診断をつけなくてはならなくなってきた.内分泌疾患でも,いろんな症状が出そろわないうちに,血を採って調べてみるとか,尿を採って調べるとかして診断する.そして,その時期に治療すれば,患者さんが苦しまないで治るというようなことだと思います.
 ことに内分泌疾患は,昔は見ただけでわかるようなものが問題にされておりました.たとえば,バセドー病は日が飛び出して,喉がはれて,手が震えてくる.粘液水腫は顔が非常にぼやけた,へんな顔になってむくんでくる.末端肥大症は,末端が大きくなる.クッシング病は顔が丸くなって,胴体が太って,赤い筋ができる.

血しょうタンパク異常

免疫電気泳動法による血清タンパク質の観察

著者: 松本脩三 ,   信岡学 ,   村山峯子

ページ範囲:P.1170 - P.1182

まえがき
 血清タンパクの分画法としてこんにち主として行なわれているものは,おのおの性格を異にする下記の7種の方法である.
1.溶解度法{塩析法冷アルコール沈殿法

免疫拡散法による血しょうタンパクの定量—主としてSingle radial immunodiffusionについて

著者: 市橋治雄 ,   寺野由剛

ページ範囲:P.1183 - P.1188

 ヒト血しょうタンパクの分析に免疫拡散法が導入されて以来,その感度がよく特異性が高いことから,すぐれた微量タンパク定量法として臨床検査室でも利用されるようになってきた.これによって数々の臨床医学的な新事実が発見され,この方面の研究に寄与することが大であるといえよう.
 現在用いられている免疫拡散による定量法としては,①single radial immunodiffusion,②single linear immunodiffusion,③electroimmunodiffusionの3種(図1)があげられよう.

CRP

著者: 福田守道

ページ範囲:P.1189 - P.1194

はじめに
 1930年Tillett&Francis1)は肺炎双球菌性肺炎患者の血清に,肺炎双球菌より抽出したC-polysaccharideを加えると沈降物の生じることを見いだし,これをC反応性タンパク(CRP)として報告した.この反応はほかの抗原体反応といくつかの点で相違することが明らかにされている.すなわちCRPは肺炎双球菌感染症のみならず,他の疾患群の血清中にも広く出現し,かつ病気の極期に最も増量し回復とともにすみやかに減少する.またこの反応はCa++を必要とし理化学的性状も他の抗体と相違する.なお正常人血清には全く認められない.血清中のみならず浸出液中にも大量に見いだされる.さらに類似のタンパクはサルをはじめウサギ,その他の哺乳動物の血中にも検出されCRPなどと呼ばれている.
 以下まず簡単に本タンパク質の理化学的性状,臨床的意義などにふれ,その検出法,定量法に言及したい.

尿中タンパクの異常

著者: 永井一男 ,   有村博行

ページ範囲:P.1195 - P.1200

はじめに
 免疫学的方法を応用して尿中のタンパク分析を行なう場合,質的な異常と量的な異常とから考慮しなければならない.タンパク尿をその生成機序から大別すると,臨床的に問題となるのは2つの場合である.すなわち腎前性と腎性(糸球体性)タンパク尿であり,換言すれば尿タンパク組成の質的あるいは量的異常ともいえる.
 前者の代表的なものは,骨髄腫やマクログロブリン血症にみられるベンス・ジョーンズタンパク(BJP)やHeavy chain病のH鎖フラグメントのように,免疫グロブリンの代謝過程に生成された分子量の小さなタンパク体が,血液中に増量し尿中に排泄されたものであり,後者は腎疾患などで糸球体に病変が生じ,血清タンパクが基底膜の破壊により尿中に漏出したものである.

座談会—血しょうタンパクの異常

著者: 松橋直 ,   高月清 ,   河合忠 ,   臼井美津子

ページ範囲:P.1201 - P.1209

 松橋 最近,血しょうタンパク異常を,病院の臨床検査室の,生化学で扱っている所もありますし,血清検査室で扱っている所もあります.また内科の先生で,この方面に興味をもつておられる先生が,特に力を入れてやっておられる病院の検査室もあると思います.
 そんな意味で,臨床検査に携わっております技師の皆さんにとり,血しょうタンパク異常が身近の問題になってきているように私は考えます.

ひろば

ヒントをストレートにためしてみる

著者: 村田徳治郎

ページ範囲:P.1041 - P.1041

 チャンスということは前髪があって,あと髪のないようなものだという.対面にくる時はつかまえることができても,うしろ向きでつかまえることはむずかしいという.私は以前から毎月定例のいっせい結核培養検査の際,喀痰のパンピングに培養検査全体の時間の60-70%を占めてしまう.小川培地を使用した場合,4%NaOHで喀痰の前処置を行なうが,濃厚な粘性の痰ではどうしても量的関係のバランスをとることがむずかしくなる.
 この点に何らかのくふうが必要だと思っていたが,これというヒントもなく,またできるだけ参考書など目をとおしていたが,臨床上活用できそのうえ自分の検査室で利用できそうな方法は,これといって見つけることができなかったが,ある日試験台のうえでバーナーに石綿をしいて培地を溶解している操作から思いついて,早速恒温水槽を40℃−45℃程度にして,15-20分加温した濃厚痰の結果を調べてみたが,濃厚痰については,さほどの変化はなかったのでさらに4%NaOHを等量加えてみたが,やっぱり思うほどの効果成績は得られなかった.

私のくふう

電熱球を使って乾燥を迅速にする

著者: 中西寛治

ページ範囲:P.1046 - P.1046

 私は,7,8年前より乾燥を迅速にするくふうをしてきたが,鶏卵ふ化用の電熱球"イエス"(100V,40W)を利用した乾燥器を紹介する.特に梅雨時の尿細菌塗抹染色,血液像の染色後の乾燥に一段と威力を発揮し,年間を通じ使用している.利用の方法によっては,まだまだ価値あるものと思う.
 電熱球"イエス"の特徴は,1)鶏卵の形をなし,生地の有色ガラスを用い,保温を一層高め,外観美麗にして内部構造は陶器ボビンに電熱線(ニクロム線)を巻き,突起ガラス球内に挿入し安定性を保ち,取り扱い簡便にして電気のエネルギーを熱に変える唯一の経済的保温球である.

ステンレスの試験管かご

著者: 坂野重子

ページ範囲:P.1168 - P.1168

 2年前,当検査室に大型の超音波洗浄機がはいるのだから,クロム硫酸槽の必要はないとの意見が圧倒的でしたが,私は孤軍奮闘,その効用を並べて,特別設計のクロム硫酸槽を設置しました.図1は,それに合わせて作った,ステンレス製の試験管かごで,一槽に縦に並べてちょうど4つはいります.高さと幅は槽の大きさに合わせ,試験管の長さに厚みを合わせ,小試験管用と中試験管用の2種類があります.底部よりも口のほうがやや広く,取手はクロム硫酸液から顔を出すように,直立にしました.従来のかごのふたは,上についていて,試験管がいっぱいに詰まらないと,押さえがきかない不便さがありますので,ふたを中に落として,試験管の数に左右されず,押さえがきくようにくふうしました.写真の中ぶたは,かごの口よりも,縦横とも2cmぐらい小さくなっています.そして,かごよりも1.5cm長い2本の足をつけ,一方に1cm出し,後は片方に長く遊ばせてあります.

PSP試験尿の能率的な稀釈法

著者: 松下亀能

ページ範囲:P.1188 - P.1188

 PSP試験尿の稀釈を行なう場合,写真に示すように,ホース(軟質ゴム管)と1lのメスシリンダー4個を用意し,15分,30分,60分,120分尿を各メスシリンダーに入れ,10%NaOHを加えた後,水道水で十分攪拌混和しながら1lまで水を加えて稀釈する.以上簡単なことではあるが相当能率的であるので紹介いたします.

使いやすい心電計誘導コード

著者: 山口実

ページ範囲:P.1200 - P.1200

 心電計の誘導コードは長さ2.5m以上,分岐部より光の長さは1m以下とする.なお,誘導コードの識別記号および端子の色別は次のとおりとする.
右手(R)………赤

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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