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雑誌目次

論文

臨床検査13巻4号

1969年04月発行

雑誌目次

代謝経路と臨床検査・4

脂酸のβ酸化

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.276 - P.277

 脂質中には,直鎖の飽和脂酸が含まれているのが特徴的であり,この脂酸の末端カルボキシル基が他物質のアルコール基とエステル結合をしている.
 エステル結合を分解する酵素はエステラーゼ,あるいはリパーゼとよばれており,消化液中には膵リパーゼが分泌されているが,肝,筋など多くの組織の細胞中にも存在する.

カラーグラフ

トキソプラズマ症の臨床検査

著者: 小林昭夫

ページ範囲:P.282 - P.283

トキソプラズマは胞子虫類に属する原虫の1種で,その発育形態には栄養型と嚢子(シスト)とがある.栄養型は感染の急性期に,嚢子は慢性期にみられるものである.ここにはギムザ染色,螢光抗体法による両型の染色像を示した.
トキソプラズマ症の血清学的検査法としては,最も重要な色素試験と赤血球凝集反応を取りあげ,それらの反応様式を図示した.

グラフ

心音計—熱ペン式とフィルム式

著者: 太田怜 ,   町井潔

ページ範囲:P.285 - P.288

心音心雑音とは,心臓ならびに近接大血管から発生した振動のうちで,特に可聴域内のものと定義することができる.これらを記録するために設計されたものが,心音計である.心音計は①集音部,②増幅部(フィルターが内蔵されている)③記録部の3部からなりたっている.今日,心音計には,撮影式と直記式の2種があるが,これは記録部がフィルム式になっているか,熱ペン式になっているかの相違である.心音図作製の簡略化という点で,後者の方がはるかにすぐれているが,得られた心音図の精度という点ではいまのところ,前者に遠く及ばない.

新しい心音計のピックアップ—種類とその使い方

著者: 吉村正蔵 ,   小原誠

ページ範囲:P.289 - P.289

コイルプラネット型遠心分離器

著者: 木村英一

ページ範囲:P.290 - P.292

本装置は,遠心沈殿管の長さを数mに延長するため,細長いチューブを,直径6mm,長さ約25cmのガラス棒にコイル状に巻き,これを高速回転盤上に垂直に取りつけ,その中心軸の回りにコイルを低速自転させる二重回転式遠心分離器で,粒子分離,超微量赤血球浸透抵抗,超微量向流分配など,従来の遠心分離器とは全く異なった利用のできるものである.
装置は,昭和41年度文部省科学研究費補助金(試験研究)の援助により試作し,血球浸透抵抗に関しては,昭和43年度厚生省新医療技術研究補助金の援助により,目下臨床的応用を研究中である.

総説

溶血—その最近の理論

著者: 三輪史朗

ページ範囲:P.293 - P.298

"溶血現象"は,免疫学の進歩,電顕の開発,放射性同位元素の応用などによって,実にさまざまなことが解明されてきた.ここでは,最近の知見を,特にその"理論"にしぼって解説する.

技術解説

トキソプラズマ症の臨床検査

著者: 小林昭夫

ページ範囲:P.299 - P.304

 トキソプラズマ(Tp)症の臨床検査は(1)寄生虫学的検査,(2)血清学的検査,(3)病理学的検査に大別されるが,本稿では前2者について解説したい.

オートアナライザー—不調の原因と対策

著者: 野本昭三

ページ範囲:P.305 - P.311

 自動分析装置として,現在,市販または検討されているものには,AutoAnalyzerのほか,ロボットケミスト,クリノマック,ACシステム,日立など,数社からの製品があり,今後,しだいに一般に用いられていくものと思われるが,現状では,AutoAnalyzerが最も広く普及している.今回,特にAutoAnalyzerをあげて,その不調の原因と対策について述べることになったのも,そうした現状によるものと思う.
 AutoAnalyzerには,その機械購入時,装置についての説明書といっしょに,「故障と対策」という手引き書が添付されている.これは種々な故障について,その場所別に,故障・原因・対策を表にした基本的な手引き書であり,AutoAnalyzerの機構をよく理解した人であれば,一般には,この手引き書だけでじゅうぶんと考えられる.また,このほかに数種の解説書1-3)があり,運用にあたっての注意事項についても種々述べられている.したがって,ここでは,AA付属の手引き書にある基本的事項および他の解説にある事がらは,できるだけ重復をさけ,筆者がこれまで日常検査で遭遇した,ごく実際的な事がらについて述べることにする.

グラフ解説

コイルプラネット型遠心分離器

著者: 木村英一

ページ範囲:P.312 - P.313

 コイルプラネット型遠心分離器は,当教室の伊東洋一郎助手の創案に基づき作製した新しい遠心分離器で,目下,臨床検査装置としての応用も検討中であるが,従来の分離器に比べ種々の特徴を有するので概要を紹介したい.
 詳細はNature,212巻985ページ"The Coil PlanetCentrifuge"(1966)および,医科器械学雑誌,36巻496ページ"Coil Planet型遠心分離器の原理とその応用"1966を参照されたい.

臨床検査の問題点・4

交差適合試験

著者: 松橋直 ,   竹内直子

ページ範囲:P.314 - P.319

輸血の検査として欠くことのできない"交差適合試験"とは何か.それに従事するテクニシャンは,何を心得ていればよいか.今月は,交差適合試験の免疫血液学を検討してみよう.

ひろば

技術の誠心

著者: 村田徳治郎

ページ範囲:P.319 - P.319

 学校卒業したては一応基礎ができているので,なにごともヤッテヤロウという意気込みがあるもので,またこのころは実行力と勉強もよく一致しているので,おもしろいことが一ぱいで時間の経過もさほど苦にならないばかりか,むしろ日の短かきをなげくこともあるほど意欲があるものである.だが,5年,10年となるとたいていのことに驚くこともなし,また現時点における内容では根本的に新しいというものも比較的少ないし,関係のないことが多いので,経験でおしとおして勉強を怠りがちになる時期でもある.この時期において怠りや面倒という習慣を身につけてしまうと,なかなか矯正が困難である.5-10年というと臨床検査室でいえば主任・係長クラスであろうが,この層がマンネリズム化すると検査項目,内容,開発すべきことなど,海外の文献の検討が検査室単位でできなくなるばかりでなく,個々の技術を一定の水準に保つこともむずかしい.このような雰囲気・環境は,これから精一ぱいのびようとする若木を枯してしまうであろう.
 これは技術に対する冒涜もはなはだしい大罪であろう."なにごとも成せば成る,成さねば成らぬ"のたとえのように,臨床検査という技術業務につく者は,特にその指導者である者は,そこらの顔役チンピラのごとく面子にとらわれるような精神ではその役はつとまるまい.

主要疾患と臨床検査・4

腎疾患と臨床検査(1)

著者: 波多野道信

ページ範囲:P.320 - P.324

 腎疾患の疑いがあれば,型のごとく尿検査を行なうのが普通である.そして,それ以後の検査は操作の簡単なものから複雑なものに向かい,また患者の負担の軽いものから重いものに向かって必要に応じて進められていくのが普通である.また腎疾患の診断が明確にされた後は,その疾患の進行速度や病態を知るうえに,それぞれの患者で必要に応じて種々の検査が日を追つてなされるのが普通である.なぜなら,かかる経時的な検査を行なわないかぎり,治療方針や予後の決定に明確な方法をとりえないためである.
 腎疾患における臨床検査の進め方としては,さきに述べたように,操作の簡単なものから漸次むずかしいものへ進むのであるが,大多数の場合は,次の順序に従って検査を進めるのが最も普通である.

1ページの知識 生化学

溶媒の精製(2)

著者: 永井諄爾

ページ範囲:P.325 - P.325

4.クロロホルム 沸点61℃
 ホスゲン,アルデヒド,アセトン,ある種の有機塩素化合物などが不純物として含まれる.これらを除くのには,分液ロートを使って,水—濃硫酸—水−5%水酸化ナトリウム液の順に洗い,最後に水で洗い,洗浄されたクロロホルムに無水硫酸ナトリウム,あるいは塩化カルシウムまたは無水炭酸カリウムを加えて1夜放置して脱水し,常法に従って蒸留する.

血液

血球計算の誤差をなくすには(4)

著者: 大橋辰哉

ページ範囲:P.326 - P.326

ザーリ計の使い方
 現在は,ザーリ詩よりも光電比色計によるほうが,血色素測定にはより精度が高いとされ,後者の普及が著しい。しかし,検体数が多く,一括してできる所では後者を用いるべきであるが,例数の少ない所では,むしろザーリ計のほうが,簡便であろう.この意味で,光電比色法が普及しつづけても,ザーリ計は消滅することはないと思う.このために,とかく誤差の大きくなる危険性の多いザーリ計は,慎重に取り扱い,すこしでも誤差を少なくする努力が必要である.
 かつて筆者が,熟練した技術員4名について行なったザーリ法測定の誤差は,各人別々の器具を用いて,同一の患者から各入採血測定したときの,平均値との差は2.3%以下(平均1.9%)で,また各人が2回採血したときの差は7.7%以下(平均1.9%)であった.つまり,熟練すれば.きわめて再現性の高い,誤差の少ない方法たりうるのである.

血清

中和

著者: 安田純一

ページ範囲:P.327 - P.327

中和試験
 吸収と似て非なる操作に"中和(または阻止)試験"がある.
 吸収では,赤血球,菌体など粒子状の抗原を使い,抗血清と反応させた後,遠心沈殿によって抗原とそれに結合した抗体とを反応系から除去してしまう.中和では,可溶性の抗原を用い,抗原抗体反応の産物は反応系に残っている.したがって,抗原液を加えることによる抗体の稀釈は不可避である.最初に,可溶性抗原を加えても,生じた沈降物を遠心沈殿によって除去した場合には,"中和"とはいわず吸収と同様に取り扱っている.

細菌

普通寒天にはえる病原菌(2)

著者: 木村貞夫

ページ範囲:P.328 - P.328

病原ブドウ球菌の検査同定(2)
 3.同定をかねたブ菌の分離培養
 前項で述べたように,ブ菌の病原性の決定にはコァグラーゼ反応が基準になるが,忙しい臨床では1日も早く病原ブ菌を決定したいために,"コ"反応とかなり一致する性質の検査と分離培養とをかねさせる検査方法を行なうことが多い.しかし,これらの検査はいずれも"コ"反応とは全く別のブ菌の性質を調べているものであるから,"コ"反応とかなり一致はするが,中にはくい違うものもある.こういう時は,あらためて"コ"反応を行なわねばならないことをよく記憶しておく必要がある.これらの検査法は下のようであるが,いずれも一長一短がある.
(1)PP寒天培地一普通寒天1l中に,マンニット5g,NaC150g,0.5%フェノールフタレイン2リン酸塩30mlを加えた培地である.食塩によってブ菌以外ののMicrococcus発育を抑制するとともに,ブ菌の"コ"産生能とフォスファターゼ活性が平行することから,フォスファターゼ産生能をもって病原ブ菌の同定ができるようにした培地である.フェノールフタレイン2リン酸塩は分解しやすいので,加熱滅菌ができない点が欠点である.培養後,アンモニアガスをあてるとフォスファターゼ陽性菌は桃色になる.

病理

組織の包埋

著者: 川井一男

ページ範囲:P.329 - P.329

 完全に脱水した組織片から,ただちに組織検査に適した薄い切片標本を作製するのは困難で,いったん組織片を均質な物質中に埋めてから薄切にするのが一般の方式である.この操作を包埋とよび,最も広く利用されるのがパラフィン包埋法であり,特殊な場合には,セロイジン包埋やセロイジン・パラフィン包埋も行なわれる.

生理

電界効果トランジスタ(FET)

著者: 宇都宮敏男

ページ範囲:P.330 - P.330

 今回は前回述べたトランジスタとは全く異なる原理で動作する電界効果トランジスタ(Field Effect Transis—tor;FET)について解説する.

一般

タイマーその種類と扱い方

著者: 坂岸良克

ページ範囲:P.331 - P.331

 予定した時間の経過を知らせる目的で作った時計をタイマー(Timer)という.通常は60分以内の時間の経過に含わせて作られるが,電気機器の作動または停止にも使えるようスイッチと組み合わせたものは,数時間の経過を知らせられるようになっている(遠心機,オートアナライザー用タイムスイッチ).

検査室メモ

宇宙にも塵がある

著者: 広明竹雄

ページ範囲:P.333 - P.333

文明が生んだ非文明
 エレクトロニクスのめざましい発達は小型で高性能な機器を生み,電子計算器をはじめ,自動記録装置,自動血球計算器,心電計,脳波計などわれわれの職域においても身近かなものとなりつつあるが,その主役を演じるトランジスタや,集積回路は機構が顕微鏡レベルの微小さで,したがって,これらは製造工程中に小さなごみが1個迷入しただけで使用に耐えなくなりうるのである.
 宇宙塵……歴史的な宇宙衛星や宇宙船ロケットの飛行以来,われわれにもなじみ深い身近かなものとなった……あの高い宇宙にも塵があったのである.

論壇

標準液

著者: 藤井暢三

ページ範囲:P.334 - P.335

標準液の必須条件
 容量分析によって,量を測定するにあたっては,ファクターの定まった規定溶液,すなわち正確な一定の当量濃度溶液が,必要であるように,光学的に比色することによって,量を測定するには,正確な一定濃度の基準になる溶液が,必須である.あるいは,一定濃度のこれにるいする溶液を,すべて,標準液と総称している.ゆえに,標準液は濃度が正確であって,そのうえ,できるだけ安定で,変化しない性質のものであることが望ましい.もちろん,その溶質である標準試薬そのものは,最も純化された品質のものでなければならないことは,いうまでもないことである.
 さて,日常,臨床化学検査に従事していて多忙なものにとっては,信頼性の高い,使用に便利な標準液が与えられると,日々の業務の能率のうえに,どんなによいかわからない.

座談会

"病院実習"今後のあり方

著者: 渡辺恒彦 ,   林康之 ,   亀井喜恵子 ,   伊藤一重 ,   春日誠次

ページ範囲:P.336 - P.343

技術者にとって"実習"は,ある意味では,教室の教育と同様に重視されなければならない.しかし,実習が現実の行為を伴うかぎり,教える側と学生との両者の考え方や目標が一致しなければ,スムーズにすすめることは,容易なことではない.今月は,この"病院実習"を,特に受け入れる側にポイントをおいて考えてみることにした.

海外だより

国際臨床倹査技師会(IAMLT)総会に出席して—1968ヘルシンキ

著者: 川村秀子

ページ範囲:P.344 - P.345

 私は札幌医科大学付属病院の中央検査部に衛生検査技師として勤務しておりましたが,同検査部の佐々木禎一先生のお世話により,昨年の7月1日よりヘルシンキ大学付属中央病院のメーラハチ病院(本誌12巻1号参照)に勤務し,スカンジナビア,特にフィンランドの臨床検査について実習する機会を得ました.

研究

脳波検査と平均不関電極

著者: 吉井信夫 ,   呉進益 ,   西尾いと子 ,   降旗八重子 ,   石井久江

ページ範囲:P.346 - P.349

 脳波を記録するには2つ以上の電極が必要で,2つの電極間の電位差の変化を一定の速度で流れる紙の上に書かせるか,ブラウン管上に描かせる.この2つの電極の一方を,脳の電位に対して電位が0または0に近い点におけば,ほとんど脳の電位変化そのままを記録できるわけになる.このような電極を不活性電極(inactive electrode)または不関電極(reference electrode)と呼び,反対に頭皮上においた電極を,脳の電気活動を記録するという意味から活性電極(active electrode)と呼んでいる.単極導出(また単極誘導)はいうまでもなく,活性電極と不関電極の間の電位差の変動を記録するものである.したがって,もし常に0電位にある不関電極を使って単極導出を行なえば,脳の電位変動の絶対値が得られるわけである.脳波の周波数や振幅,波形,その他を正確に知るためには単極導出が基準になるわけで,活性電極と活性電極を結んだ双極導出は,この点信頼度が少ない.そこで高名な脳波学者の中には,双極導出を全く用いていない人すらいる.このように,脳波検査では単極導出の占める地位は非常に大きなものがある.

東亜自動血球計数器の問題点の検討(I)

著者: 山本和子 ,   藤本治栄 ,   香西逸 ,   田村晃一 ,   安永末代 ,   田上智子

ページ範囲:P.350 - P.352

はじめに
 東亜自動血球計数器(以下MCCと略記)についてはすでに多くの研究が発表され,ほとんどの問題が解決されたように思うが,この中で特に問題にされた諸点について,MCC採用以来私たちの検討してきた成績と比較し,MCCを実用化すべくさらに検討を加えた,II型の赤血球同時通過の問題および白血球同時通過,小赤血球の数え落とし,白血球計数,特に白血球減少例についての結果を報告する.

オートアナライザー比色部(tubular flowcell)の利用による超微量比色の試み—血清ビリルビン分別定量への応用

著者: 菱本恒温 ,   柿本称生 ,   出井勝重

ページ範囲:P.353 - P.354

 臨床化学検査の超微量化のための研究は,近年ますます盛んとなり,種々の方法が考案されてきているが,結論的には微量検体の測定のための比色計の改善と,鋭敏な試薬の開発にある.後者については開発の余地はあるが,むずかしい問題である.前者の比色計についてはいまだ決定的な器種がなく,超微量化を困難にしている.
 筆者はオートアナライザー比色部を,日常の自動分析器としての使用から,簡単な切り替え操作によって,比色液量0.2mlを十分比色できる超微量比色計としての利用を案出し,さらに,サンプラー,プロポーショニングポンプ,レコーダーの利用による半自動化,超微量比色を実用化した.最初の試みとして,血清ビリルビン分別定量に使用し,直接,総ビリルビンならびに各盲験用に血清20λ,すなわち1回使用血清量0.005ml (5λ)の超微量化ができたので,その概要を説明する.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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