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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査13巻5号

1969年05月発行

雑誌目次

代謝経路と臨床検査・5

好気的解糖経路

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.360 - P.361

 ペントースサイクル,五炭糖回路,リングルコン酸酸化経路,ヘキソースモノリン酸経路などいろいろの名称でよばれているが,同じものである.研究者の名前をとって"Warburg-Dickensのサイクル"ともいわれる.
 嫌気的解糖経路では,酸素の消費がないので,急速な筋肉運動など酸素の補給がふじゅぶんのときに,多量のエネルギーを発生するためには,必然的に嫌気的解糖が行なわれ,その結果,ピルビン酸や乳酸の発生があるわけであるが,ここに述べる好気的経路は酸素を消費するので,じゅうぶんに酸素を供給しうる条件でないと進行しない.したがって,肝・脳・心筋など常時酸素補給があり,分圧の高いときに行なわれるものである,

カラーグラフ

腸内細菌培養検査

著者: 善養寺浩

ページ範囲:P.366 - P.367

 腸内細菌の検査といっても,その中の病原菌を確実に検出同定することが重要であって,正常菌叢のすべてを熟知する必要は日常の検査にはない.さて,腸管系病原菌といえるものは数種にのぼるため,同様な培養法でそれらを鑑別・同定できない.そこで,腸内細菌科に属する赤痢菌,サルモネラと病原大腸菌に限って,新しい鑑別培地の使用法を含め,述べてみたい.特に後2者の病原菌は赤痢菌に代わって,いまでは重視されている菌である.

グラフ

検査伝票

著者: 斎藤正行 ,   松村義寛

ページ範囲:P.369 - P.375

 検査室と病棟との情報伝達の手段として伝票が使用されている.誤りをなくし,記入事項を少なくし,手間のかからないようにアイディアが結集されている.
現行の検査伝票の代表的なものを集めてみた色紙・色刷りで一見して区別されるわけだが,紙面の都合でモノクローム・グラフにした.これは記載事項を判りやすくと考えたからである.百聞は一見にしかず.それぞれの長所を生かすように活用されれば幸いである(座談会参照).

初の細胞検査士の試験行なわる

ページ範囲:P.376 - P.376

 第1回細胞検査士資格認定試験(日本臨床病理学会,日本臨床細胞学会共催)が特殊臨床検査資格認定制度に基づき,3月10,11日の両日,東京の順天堂大学病理学教室で行なわれた,初めての試験のためか,受験資格の厳しさもあって,受験者は8名(女性2名)試験官(橋本敬祐主任試験委員)13名というかたちで予定どおり実施された.
 癌の診断に直結する細胞診という仕事をする人を選ぶだけに,その試験方法は慎重かつ厳格で,受験者ひとりひとりに試験官が直接問いかける,いわゆる"man-to-man方式"がとられ,"良性細胞ですか,悪性ですか"の質問に,受験者は顕微鏡をのぞきながら慎重に答えていた.

総説

補体

著者: 田村昇

ページ範囲:P.377 - P.381

 補体に対する研究は,1899年のBuchnerの論文が発表されて以来,免疫学の一分野としてすすめられてきた.特に最近10年間の補体研究は,他の免疫化学の分野の進展と呼応して,顕著なものがある.今日では,すでに"補体学"(Complementology)という新しい学問の分野が展開されようとしている.そこで,補体の本態とその作用についての現状を紹介することにする.

技術解説

血中ビリルビンの検査法

著者: 石戸谷豊 ,   伊藤忠一

ページ範囲:P.382 - P.387

はじめに
 血清総ビリルビン(総「ビ」)の定量は,黄疸の程度を知るうえで,欠くことのできぬ基本的検査である.また,血清ビリルビンにはジァゾニウム塩の添加により,直接紫紅色を呈する直接ビリルビン(直「ビ」)と,メタノール処理後はじめてジァゾニウム塩によって呈色を示す間接ビリルビン(間「ビ」)とがあり,これらを分別定量することは,黄疸の鑑別診断にとって,きわめて重要である。
間「ビ」はまた,ヘモビリルビンないしは遊離ビリルビンともいわれ,水難溶性であるが,肝に至り側鎖の2個のプロピオン酸基がグルクロニールトランスフェラーゼの作用でグルクロン酸抱合をうけ,ジグルクロナイドになると水溶性に変化する.ビリルビンは,肝以外でもグルクロン酸抱合をうけるが,このとき生ずるものは,モノグルクロナイドである。これらグルクロナイドは,コレビリルビンともよばれる.ジグルクロナイドのすべてと,モノグルクロナイドの大部分は直「ビ」として定量される.

救急検査

著者: 富田仁

ページ範囲:P.388 - P.395

はしがき
 各大学・各病院に中央検査室制度が設けられ,衛生検査技師法(昭和33年)が確立されてから,すでに10年以上が経過した.それまでは,大学においては,検尿,検便,血算などのいわゆる一般検査といわれるような検査は,各科病棟,各科外来内にて行ない,ややむずかしい検査は,研究室ないしそれに準ずる所で,医師自らが,たいてい自分のアルバイトとしてやっていた.したがって,その医師が転任すると,その検査はしばらく中止するというような時代であった.
 中央検査室制度ができてから,そのような臨床検査は,中検で専門の衛生検査技師が行なうようになった.多種類の多検体が専間の技師によって行なわれるので,各科からは非常に喜こばれたものである.

ひろば

Original deviceを書く

著者: 村田徳治郎

ページ範囲:P.387 - P.387

 仕事に夢中になっている時ほど,また追われている際これはと思うような考えが閃めくものである.そのような一瞬,メモなり何なりにキャッチライティングしておくと,思わぬ技術的収穫ともなり,またヒントになるものであるが,とかくこのような時にかぎって種々な理由があるにしても,不用意にもせっかくの機会を失いがちにしてしまう.後からなどといっても,多忙な時間なので忘れがちとなり,私どもはちょっとの間に貴重なOriginal deviceを日日おろそかにしてはいないだろうか.日々休むことなく刻々進歩する技術水準―私は無限の広さと大きさに眩暈する.これを生み育成した先人の汗と血の出るような努力に武者ぶるいせずにいられない.なぜならこの内にある技術的創意性とくふうの平衝が巧みに妙を得ていることである.しかしこれらは,さらにわれわれの知恵でもっと進歩させねばならぬ義務があるのではあるまいか,その意味において,日々のどんな小さなことにも敏感に反応し,またそれを生かす蓄積が必要であろう.結局どんなことでも,ちょっとした創意くふうが小さなメモ帳から生まれることは珍しいことではない.むしろその時を出発点とし,大きなOriginal researchとして発展していくと同時に,真の技術的向上になってはいまいか."白衣のポケットには常にメモ帳を"これは私のモットーである.書くということの面倒をどうしてもこの際克服することが条件であるが,しかし書くという習慣を身につけてしまうと,どんな多忙の間にも書く技術を会得できるもので,またこれを整理するのが楽しみとなるものである.そしてそれが自分の修練ともなるし技術の積み重ねともなり,検査業務に応用し使用して,自分の技術を生かすことになるのではあるまいか.そして同時に,広く批判評価を積極的に求めたらどうであろうか.そのようなことに本誌のごとき専門機関を利用・使用させてもらおうではないか.小さなくふうから大きな発明ということもあるように,お互い検査技術をおし進める仲間として琢磨していこうではないか.

臨床検査の問題点・5

心電図

著者: 長尾透 ,   根岸勇 ,   近藤淑子

ページ範囲:P.396 - P.403

 心電図は,手軽に操作できるようになったが,電気を用いる危険度の高い検査であることに変わりはない.そこで"心電図の電気知識"について,日ごろの疑問点をズバリきいてみよう.

主要疾患と臨床検査・5

腎疾患と臨床検査(2)—腎機能検査

著者: 波多野道信

ページ範囲:P.404 - P.409

 腎の機能は,生体内の不要物質を排泄し,酸塩基平衡を正常に保ち,細胞外液の量と組成を最終的に調節することにあるが,このような腎の機能が正常に保たれているのは,いろいろ複雑な機能がそれぞれ相互に調和しながら働いているためである.したがって,その機能検査についても代表的な2,3の検査だけでは,とうてい腎の機能障害を把握することは困難であり,臨床上できるかぎり多くの検査を施行する必要がある,このことは,初診時において疾患の診断を下すうえに必要であるばかりでなく,罹患腎がどの程度の障害をうけているかを推測する手がかりになる.これは同時に,その後の疾患の進行状態を把握するための基礎的データとなるものである.この腎のもついろいろの機能は,罹患腎においてすべて平等に低下するとは限らず,腎疾患のあるものでは,疾患の初めから治癒に至るまで,あるいは腎不全を経過した後死亡に至るまでの全経過のうちには,一部の機能にのみ障害が集中し,その他の部分ではあまり障害されていないという現象が起こる.その障害される機能の内容は,疾患の種類,あるいは進行の時期,または寛快の程度により異なっている.
 腎機能検査の目的は,このような腎障害の内容と程度を明確に把握することにより,その患者の質的および量的な障害程度を明らかにすることである.また,このような腎機能検査を各病期において反覆施行し,それぞれの時期におけるデータを比較検討すれば,これが疾患の予後を決定するうえに重要な示唆をあたえることにもなる.

1ページの知識 生化学

重量分析法

著者: 永井諄爾

ページ範囲:P.411 - P.411

1."真実の値"への接近
 たとえば血清コレステロールの定量には,いろいろの方法がある.ぞれらの方法の中でどれが最もすぐれているかを決めるとき,また新しい力法を発見開発したとき,その方法が従来の方法よりもすぐれているかどうかを決めるとき,いろいろの判定法がある.臨床検査の側からいえば,手早くできてしかも正確な方法が,最もすぐれた方法といえるであろう.しかし,臨床検査についてどうかすると,むりに正確でなくてもよい,手早ければそれで結構だという俗論がないでもない.ただしいわゆる簡易検査やスクリーニング・テストが全く無意味だというつもりはない.
 では正確とはどういうことか.たとえばある方法で血清コレステロールが200mg/dlと定量されたとき,それが果たして正確であるかどうかを決めるためには,"真実の値"を知らなければならない.

血液

血球計算の誤差をなくすには(5)

著者: 大橋辰哉

ページ範囲:P.412 - P.412

塗抹標本と血液像の見方
 血液像を正確に知るためには,まずよい標本を作る必要がある.
 図1のごとく,引きガラスで塗抹するのであるが,この引きガラスの移動を,早くすれば塗抹は厚くなり,遅くすれば薄くなる.また角度αを大きくすれば厚くなり,小さくすれば薄くなる.これらを巧みに組み合わせて適当の厚さにする.

血清

Coombs消費試験

著者: 安田純一

ページ範囲:P.413 - P.413

 白血球・血小板・組織細胞など,そのままで凝集反応として観察するには不向きな細胞を抗原とする抗原抗体反応の証明には,いろいろの術式が考え出されている.その1つに,抗グロブリン(またはCoombs)消費試験がある.
 これには,大別して,直接法と間接法とがある.直接法は生体内で,すでに感作されていると考えられる抗原に用いられ,間接法では既知の抗体または既知の抗原を用いて生体外で感作を行なう.すなわち,直接法は自己抗体による感作の証明に,間接法は同種抗体の証明または細胞の型分類・同定に用いられる.

細菌

腸内細菌科の菌(1)

著者: 木村貞夫

ページ範囲:P.414 - P.414

 この科の菌は,"細菌の形態からの同定(2)"(本誌2月号)で述べたように,形態からの同定が不可能で培養を必ず必要とする群である.しかも,培養では普通寒天に容易に生える菌であり,この科の菌の中には腸チフス菌,赤痢菌,大腸菌などの腸管系の伝染病の病原体が含まれていることと相まって,昔からわが国ではこの科の菌について多くの研究がなされている.検査すべき項目も,ほかの菌に比べて大へん多い.このおのおのの検査項目の詳細については成書に譲り,ここでは腸内細菌科の菌の概略と臨床細菌検査として最低限行なわねばならぬことについて述べたい.

病理

パラフィン・ブロックの薄切

著者: 川井一男

ページ範囲:P.415 - P.415

ミクロトーム
 わが国で最も広く普及している型は,滑走式ミクロ卜ームで,そのほとんどがユング型であるが,外国では回転式ミクロトームもかなり多く使われている.ミクロトームを使う要点は,(1)滑走面の完全な平滑さ,(2)ミクロトーム刀の適切な角度と傾斜,(3)ブロックの確実な固定および(4)正確に作動する微動送り装置にある.

生理

サイリスタ(Thyristor)

著者: 宇都宮敏男

ページ範囲:P.416 - P.416

 水銀蒸気などを封入した熱陰極形の放電管のうち,グリッド電極を備えており,それに加える電圧で放電の起動を制御できるものをサイラトロン(Thyratron)といい,従来電子的な制御装置の要素としてよく用いられてきた.サイラトロンとは門のように開閉する電子管という意味である.
 サイラトロンと同様な作用目的でつくられた半導体素子を,固体サイラトロンあるいはサイリスタといい,近ごろは小形の電子的制御装置はもちろん,製鉄における大形圧延機や交流式電気機関車のような大電力制御にもしだいに応用されるようになった.

一般

テスターの使い方のいろいろ

著者: 高原喜八郎

ページ範囲:P.417 - P.417

1.テスターの種類
 検査室には心電計,光電光度計,pHメーター,電気泳動装置などのような弱電機器から,超音波洗浄機,電気恒温槽,遠心機などのようなセミ強電的な機器に至るまでの種々な装置がある.これらがスムーズに動作しなくなった場合,技師としては通常2とおりの場合を想定する.1つはユーザーでもできる簡単な手入れで再び使えるようになる場合(電源プラグ接触不良,ヒューズ断,電極リード線接触不良,可変抵抗器不良など)であり,いま1つは内部特殊部品の交換を必要とするような事故の場合である.トラブルの原因が前者か後者かをチェックする段階までは,少なくとも現場の技師がなすべきであろう.そのために使用するポピュラーな測定器がテスターである.テスターには市販1100円ぐらいから1万円以上の高級品があるが,どれでも電圧計,電流計オーム計の最低機能は保有している.

検査室メモ

管理会議

著者: 大橋経雄

ページ範囲:P.419 - P.419

器材購入の第1関門
 私どもの国立療養所では,第1,4半期ごと管理会議が開かれる.この会議の構成メンバーは所の幹部をはじめ各職場の主任係長,あるいは婦長,現場長などで,会議の進行係は主として事務長もしくは補佐が行なう.会議のテーマとしては厚生省関東信越地方医務局で行なわれた所長,事務長,医務課長,婦長会議などの指示,伝達が主でそれにつづいて次4半期の示達予算の討議が行なわれる.この討議が出席者の腕の見せどころで,むこう3ヵ月の必要備品(あるいは主な消耗品)をわがものにするわけである.とはいえ要求額の1/3あるいは1/4にもみたない示達額から,自分の職場の必要分を獲得しようというのであるから,矢おもてに立つ会計主任は容易でない.
 それでもこのころでは医療備品関係はその中の一定額を医務課長にあずけ,医務課長の判断によって必要度のランクをつけるようになったから,以前ほど"けんけんがくがく"の騒々しさはなくなった.このように国立関係の病院療養所では,いかに自分の職場で器械器具が必要だとしても,先だつものが本省(地方医務局)から流されてこないことにはどうにもならないことで,その点私はまだ民間の医療機関のほうが,器材は案外希望するものが入手できているのでないかと思う.私はいつかも述べたように,他の施設に出張や見学した際には,決まって器材はすぐ買ってもらえるかどうかをたずねている.すると決まってなかなか買ってもらえないというのが国立で,特に療養所にいたってはあきらめているというのもある.

論壇

毎日の検査から

著者: 丹羽正治

ページ範囲:P.420 - P.421

 検査で日を送っている間に気づいた2,3の点について,皆さんと一緒に考えてみたい.

座談会

検査伝票—コンピューター時代の伝票の運命

著者: 吉田光孝 ,   樫田良精 ,   斎藤正行 ,   松村義寛

ページ範囲:P.422 - P.430

コンピューター革命のささやかれる昨今,伝統的な"伝票によるデータ処理"は,いまや風前の灯,そこで,この機会に,伝票の目的と意義,これからのありかた……などについて,洗いざらい検討してみることにする.(グラフページ参照)

海外だより

検査の自動化とコンピューターの導入—欧米の血液銀行と検査室

著者: 三輪史朗

ページ範囲:P.431 - P.432

 昨年9月上旬,ニューヨークで第12回国際血液学会が開かれ,出席する機会を得たので,その前後を利用していくつかの病院の研究室・検査室・血液銀行・輸血に関する研究施設などを見学した.ひと月ちょっとの短期間の旅でもあり,また欧州の旅行は私にとって初めてであり,その上ひとりぼっちの旅だったので,まことに強行軍になってしまい,1つの施設をじっくり見学するという余裕がなく,したがって,ここに示す印象記もはなはだ個人的な表面的なものであることをおことわりしておきたい.

研究

梅毒血清反応の検討(1)—緒方法,凝集法,ガラス板法,RPCF,FTA,TPHA 6法の比較

著者: 吉岡秀雄 ,   磯部淳一 ,   西条英次 ,   田原順子 ,   伊月豊度 ,   山中学 ,   住友健治

ページ範囲:P.433 - P.436

 現在,梅毒の血清学的検査法は,カルジオライピン(以下CLと略)を抗原とした緒方法,凝集法,ガラス板法の3法の併用が標準法として用いられている.しかしCL抗原は梅毒トレポネーマ(以下TPと略)に由来する特異性抗原でないために,しばしば生物学的偽陽性反応(以下BFPと略)を呈することがある.
 近年このBFPの問題を解決するために,TPを抗原とした特異度の高い検査法の開発・検討が進められており1-5),すでに非病原性TPであるReiter株のタンパク分画を抗原としたRPCFはルーチンの臨床検査にもとり入れられており6-15),さらに螢光抗体間接法を適用したFTA4,5,12,14),また1966年に富沢らによって考案されたTP感作赤血球凝集反応15,16)(以下TPHAと略)も漸次実施段階に至っている.

梅毒血清反応の検討—特にRPCFを中心として

著者: 後藤大九郎

ページ範囲:P.437 - P.440

緒言
 Pangbon(1941)により発見されたCardiolepin-Lecithin(以下CLと記す)が,一定の力価をもつきわめて安定した梅毒抗原としてその価値が認識されるや,従来の補体結合反応や沈降反応の創案者はこぞって本抗原を採用し,その精度が一段と優れていることを報告した.わが国においては緒方1)により,CL抗原を用い抗原抗体最適比を応用した抗原減量法が発表され,理論的にもまた比較実験においても最もすぐれた術式として,凝集法ならびにガラス板法とともに一般に常用されている.
 CL抗原の出現により梅毒血清反応の鋭敏度ならびに特異度は西村2)の報告するごとく,単なる牛心抽出液を抗原としたときに比し,きわめてすぐれたものとなった.しかし梅毒以外の疾患に非特異的な陽性反応を呈する率は低下したとはいえ,松橋3)は癩,エリトマトーデス,原発性非定型肺炎,リウマチ性疾患などにおいて相当数の偽陽性を呈するものがあり,これら梅毒とは無関係に偽陽性を呈する反応を生物学的偽陽性反応(BFP)とよび,これにはほとんど生涯続く慢性のものと,急性疾患のとぎ一過性に偽陽性となるもののあることを指摘した.BFPについて松橋3),水岡4),勝又5),富沢6)らはCL抗原は病原体そのものからとりだしたものでないためBFPはその発現必至であり,このBFPを鑑別する意味において,Treponema-Pallidum(以下TP)そのものを抗原とする術式を用いて決定すべき必要を強調する.

Aut Analyzerによる血漿,尿および髄液中ブドウ糖定量法の検討

著者: 宮原洋一 ,   北垣良憲 ,   野口斉 ,   臼井敏明

ページ範囲:P.441 - P.442

 Auto Analyzer (以下AAと略す)による臨床化学検査の自動化は,検査件数の急増と検査技師の不足に伴って,年々その範囲を広めつつあるが,なかでも血糖の自動化が最も普及しており,AA1台による2種目以上の組み合わせスケジュールでは,血糖と尿素窒素の組み合わせが最も多い1)
 われわれの検査室では,これまで血糖,尿糖,髄液糖を,3,6-dinitrophthalic acid法(百瀬法)2,3)によって測定してきたが,その自動化に際してTechnicon N−2b法,N−9法4)が尿糖測定不可能なこと,および日常化スケジュールにおいて尿素窒素と連続して測定する必要から・尿素窒素(N−1b法)のManifoldをそのまま使用することを目標として,3,6-dinitrophthalic acid法についてくふうし,毎日の運転スケジュールの中で,能率的に好成績を得ているので報告する.

私のくふう

剖検臓器・組織の保存法/検鏡カバー

著者: 上田房子 ,   鈴木盛雄

ページ範囲:P.443 - P.443

 私たちは臓器の保存法として10カ月ほど前から次の方法を試みており,見学者からの問い合わせが多いので,ここに紹介いたします.
 近頃店頭ではビニール包装しているところをよく見かけます.これにヒントを得て考えてみました.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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