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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査13巻8号

1969年08月発行

雑誌目次

カラーグラフ

妊娠反応—生物学的診断法と免疫学的診断法

著者: 木下佐

ページ範囲:P.630 - P.631

アシュハイム—ツォンデク反応,フリードマン反応,マイニニ反応などのHCGの生物学的測定法が産婦人科領域において,きわめて高い診断的価値を有することはいうまでもないが,最近では免疫学的のHCG測定法が実用化され,その簡便性のため急速に普及しつつある.
 鋭敏度あるいは定量法としての信頼性にはなお問題があるが,少なくとも妊娠の早期診断法としては,すでに生物学的方法をほとんど必要としないといえよう.

グラフ

抗体産生細胞

著者: 天木一太 ,   入交清博

ページ範囲:P.633 - P.640

抗体を産生する細胞は,抗体産生細胞,とよばれており,リンパ球系細胞と形質細胞とがある.しかし,リンパ球のうちで,どのような形態を有するリンパ球が抗体を産生している細胞であるかは明らかでない.これは抗体産生細胞の同定が技術的に困難なためである.
現在,抗体産生細胞の同定法としては,螢光抗体法,microdrop法,電子顕微鏡によるフェリチン抗体法などがあるが,特異性や細胞観察にそれぞれ長短がある.われわれの教室では,Jerneの寒天プラーク法を顕微鏡で検査するよう改良し,本細胞の形態学的観察にすぐれた方法を考案した,また,自己免疫疾患の自己抗体産生細胞の同定法を新しく開発しているので,以下われわれの抗体産生細胞の検査法と抗体産生細胞の形態について紹介する.

代謝経路と臨床検査・8

ピリミジンの合成と分解

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.642 - P.643

 核酸は塩基としてプリンとピリミジンを含むが,プリン体については前号に掲載したのでピリミジンについて述べる.これもまた,CO2とNH3から合成せられ,分解されるとCO2とNH3とになってしまう.
 ピリミジン体は図に示したもののほかに数種あるけれども,量的には小さいので省略した.
 デスオキシリボ核酸(DNA)は,細胞核中にあって遺伝形質として中心的役割を果たし,リボ核酸は細胞原形質中にあってメッセンジャーRNA(m-RNA),転移RNA(t-RNA),または可溶性RNA(s-RNA),リボソームRNA(R-RNA)など分子量の著しく異なる群に分かれている.核酸を構成するプリン体はアデニン,グアニンであるが,ピリミジン体はDNAではシトジンとチミン,RNAではウラシルとシトジンであり,糖成分はDNAではデスオキシリボース,RNAではリボースである.

総説

病気とダニ

著者: 白坂竜曠

ページ範囲:P.645 - P.650

最近では,ダニの被害を訴える人は珍しくなったが,ダニと人間の生活とは,有史以来,切っても切れない親密な関係で営まれてきた.では,ダニはほんとうに生活圏から姿を消してしまったのであろうか.そこで,生活の中の"ダニ学"とくにダニと病気の関係を中心に,最近の傾向を解説する.

技術解説

馬赤血球を用いた感染性単核球症(Infectious Mononucleosis)の血清学的診断

著者: 熊谷直秀

ページ範囲:P.651 - P.658

PAUL-BUNNELL反応
感染性単核球症の患者血清は,羊の赤血球に対する凝集素を多量に含んでいることは,PaulとBunnell1)(1932)以来よく知られている.これは本症の血清学的診断に用いられ,PAUL-BUN-NELL反応と呼ばれているが,また異好性抗体試験(Heterophile Antibody Test)ともいう.その理由は,この抗体は一種の異好性抗体であるからで,この異好性抗体について若干説明する.

新しく登場した電界効果トランジスタ—脳波計のオールトランジスタ化を成功させた原動力

著者: 吉井信夫

ページ範囲:P.659 - P.664

最近のトランジスタなどの半導体に関する技術の進歩は,非常に目ざましいものがあり,脳波計や心電計の増幅器などがだんだんとトランジスタ化されてきた.そして,心電計のほうは,すでにオールトランジスタ化されている.しかし,脳波計のオールトランジスタ化はなかなか困難があり,これまでは不可能ではないかと考えられていたが,電界効果トランジスタ(Field effect transistor;FETとよぶ,図1)が開発されて脳波計のオールトランジスタ化が成功し,一昨年の脳波学会の医療器械展示会では各社がいっせいに新脳波計の発表を行なった.
このトランジスタのおかげで,脳波計のオールトランジスタ化,ひいては小型化・軽量化ができるようになった.FETは脳波計以外にも各種の用途があつて,近い将来,医用電子の分野で真空管を駆逐してしまうことが予想されるくらいである,以下,この半導体について説明を加えるが,そのまえに,まずトランジスタについてだいたいの概念をもってもらうために,その一般について簡単に述べよう.

ひろば

人工血清

著者: 大林弘幸

ページ範囲:P.664 - P.664

 ふだん健康を自慢しているあなたの血液が検査の結果,病的な値として報告されたら.あなたはさぞびっくりすることでしょう.—というのは,私は,いささか電気泳動法による血清タンパク分画に自信がありました.その私としたことがはしたなくも,あるとき,"正常"であるべき患者血清が病的な測定値として報告されたと注意がありました.
 たしかに,この患者の最近の検査結果は,"正常"そのものであり,患者の名前が間違っていたか.患者血清が入れかわっていたか.検査物提出より報告までの間違いとなる原因を1つ1つ探していっても心当たりなく原因不明,わりきれない気持のままとなりました.数日後,その原因追求のため1つの実験を思いつきました.

O-Toluidin法による血糖測定には580mμ付近の波長を!

著者: 山本五郎

ページ範囲:P.702 - P.702

 血糖検査は,保険点数の割に手間のかかる検査であったが,2-3年前よりO-Toluidin法を採用することにより,今まで検査に1時間を要していたのが,15分ぐらいに短縮され,また操作も簡単なものとなって,ようやく保険点数との間にバランスを保つようになった.
 しかし,O-Toluidin法による血糖測定にも泣きどころといったものがないわけではない。第1に,糖液を水で稀釈した検量線と,標準血清を用いて作った検量線とが一致しないことであり,第2に溶血の影響,黄疸の影響がみられることであり,第3に遠沈して,血清または血漿を分離しなければならないことである.

臨床検査の問題点・8

妊娠診断法—免疫学的検査と生物学的検査

著者: 木下佐 ,   野中薫

ページ範囲:P.666 - P.671

妊娠の検査は免疫学的検査の開発によって,短時間で結果を知ることができるようになったが,一層微妙な判定を要するようになった.そこで,免疫学的妊娠反応について,おもに他の検査法と比較しながら,その長所,短所を検討してみよう(カラーグラフ参照).

主要疾患と臨床検査・8

胃と腸の疾患と臨床検査

著者: 菊池弘明 ,   松永藤雄

ページ範囲:P.672 - P.676

はじめに
 最近の消化管疾患に関する検査法の進歩は目ざましいものがある.一般的にいって,検査法には形態を追究するものと,機能を追究するものがある.消化管の検査法の場合,前者に属するものとして,レントゲンを使った検査と内視鏡を用いた検査があり,消化管疾患の診断では今でもこの両者による検査が主要な位置を占めている.後者に関する検査は,胃液検査以外いまだ一般的といえるものは少ない.しかし,臨床医学にRadioisotopes(RI)が導入され,次第にその領域を広げつつあるということは特記すべきことであろう.
 この形態と機能面からの疾患に対するアプローチに加えて,心身医学の面から消化器病を診断し治療する態度が生まれたことは,これまた画期的なことである.

1ページの知識 生化学

キレート滴定法

著者: 永井諄爾

ページ範囲:P.677 - P.677

1.血清カルシウムの定量法
 血清カルシウムの定量は,現在なお依然として困難な問題を残している.この血清カルシウムの定量法の1つに,キレート滴定法がある.ムレキシド,エリオクロム・ブラックT,カルコンあるいはカルセインなどの指示薬をカルシウム溶液に加えると,これらの色素はいずれもカルシウム・イオンと結合して特有に発色する.このように発色させておいて,エチレンジアミン四酢酸(EDTA)で滴定すると,この物質はカルシウムとの結合が強いから,指示薬と結合したカルシウムを奪って,カルシウムを奪われて遊離になつた指示薬は,それ特有の色を現わす.たとえば,エリオクロム・ブラックTはカルシウムと結合すれば赤紫色であるが,遊離の状態では青色である.赤紫色→青色の変色を終末点にして,滴定に要したEDTA標準液の量から,カルシウムの量を計算するのである.

血液

血球鑑別のコツ(1)

著者: 大橋辰哉

ページ範囲:P.678 - P.678

1.染色について
 第1にたいせつなことは,よい塗抹標本を作ることである.わるい標本では,正確な血球鑑別はどのようにすぐれた血液学者といえども不可能である.よい標本の作り方は,すでに5月号に述べてあるので参照していただきたい.
 染色液は表1のごとく,いずれも一長一短がある.最もよいのは,メイとギムザの二重染色である.しかし,これは時間がかかりすぎるので,普通はライトでじゅうぶんである.ライトで注意を要することは,どぎつく染まりすぎることである.一般に,核の網状構造が粗になり,単球や好中球の顆粒も粗大にみえる.したがって,白血病など異常細胞の出ている場合や,幼若細胞が多種類みられる骨髄標本では,ライト染色は好ましくない.メイ・ギムザ二重染色にすべきである.

血清

混合凝集反応(2)—間接混合凝集反応

著者: 安田純一

ページ範囲:P.679 - P.679

 さきに述べたように,直接混合凝集反応は,原則として赤血球と共通の抗原がない細胞には利用できない.
 そこで,感作血球にさらに抗グロブリン抗体を結合させたindicatorを用いる間接混合凝集反応が考案された.

細菌

血液寒天に生える菌(1)

著者: 木村貞夫

ページ範囲:P.680 - P.680

 血液寒天を用いる菌として一般的なものは,グラム陽性球菌ではレンサ球菌,肺炎球菌,グラム陽性杆菌ではジフテリア菌,グラム陰性球菌では淋菌,髄膜炎菌,グラム陰性杆菌ではインフルエンザ菌,軟性下疳菌(Haemophilus属),百日咳菌,野兎病菌などがある.上記の菌のうち,Haemophilus属のものは血液を必須とする(血液の中に発育因子がある)が,ほかの菌は必ずしも血液でなくても血清,腹水などで代用することができる.

病理

組織の染色(2)

著者: 川井一男

ページ範囲:P.681 - P.681

3.核染色剤のいろいろ
 光学顕微鏡標本では核を染め出すのに,たいていはヘマトキシリンが用いられることはすでに述べたが,核が紫色に染まったのでは判別が困難な染色法では他の色調の色素が使われる.核を赤く染めだす色素としては,マロリー染色の酸フクシンやアゾカルミン,弾性線維染色や線維素染色のケルンエヒトロートやリチオンカルミンなどがあり,サフラニンを用いる例(鉄染色)もある.メチルグリーンは核のDNAを青緑色に染める.

生理

論理回路(2)

著者: 宇都宮敏男

ページ範囲:P.682 - P.682

 スイッチやリレー(継電器)による論理回路例を前号で述べたので,こんどは計算機などで用いられる半導体素子による論理回路の解説を行なう.

一般

ドライバーとナット回し(1)

著者: 高原喜八郎

ページ範囲:P.683 - P.683

ネジの種類・サイズ・材質
 検査に使用するME機器類の調整や保守,あるいは軽修理を行なう場合には,必ずネジ(捻子,ビスともいう)を回す必要が起こる.これらのネジには,一般に図1のごとき形状と名称があり,捻子頭(がしら)部の溝の形状には—(マイナス)と+(プラス)の2種類がある.
 ネジのサイズには,捻子径1mmぐらいの微小なものから3mmぐらいの一般用のもの,5mm以上の大型なものまであり,捻子頭の形状には扁平状(A),丘状(B),山状(C)などの種類と大小のサイズが組み合わせられ,また材質には真ちゅう製,鉄製,ベークライト製,ルーサイト製などがある.

論壇

血液

著者: 吉川春寿

ページ範囲:P.686 - P.687

なぜ血液が検査材料となるのか
 臨床検査というと,まず血液の検査が主要な部分を占めている.血液学的検査,血清学的検査は当然のこととして,生化学的検査もまた大部分が検査材料として血液が用いられる。毎日病院の臨床検査室にあつまってくる血液のサンプルは非常に大きな数にのぼるし,またその検査項目もたいへんに変化が多い.臨床検査室から血液を対象とする検査を除外したら,まるで小規模なことになってしまうであろう.
 なぜにこのように血液が検査材料として用いられるのか.ここでは生化学的検査の面からそのわけを考えてみよう.

●特別インタービュー

アメリカのテクニシャンの生活—養成・業務・待遇について

著者: ,   天木一太

ページ範囲:P.688 - P.690

Miss K.Zeebはワシントン州・シアトル市のファーランド・サナトリウムのチープ・テクニシャンです.日本旅行に来られた機会に,帝国ホテルで,米国のテクニシャンのことをお聞きしました.

研究

血清トリグリセライド値とリン脂質,コレステロールの関係

著者: 村井哲夫 ,   湯島幸治

ページ範囲:P.691 - P.694

 最近,動脈硬化症,糖尿病,ネフローゼなどにおける血中脂質の動きが注目されている.臨床検査の分野でも,それら疾患の診断,治療効果,予後の判定などの情報を得る手段として脂質の測定が要求されるようになった.検査室でも臨床よりの要求に答え,従来から測定していたコレステロール(以下「コ」)に加えて,トリグリセライド(以下「ト」),遊離脂肪酸(NEFA),リン脂質(以下「P」),β-リポプロティン(β-L)の測定を実施するようになってきた.著者らは血清「ト」値の測定を検査室で採用するにあたり,健康人の血清「ト」値の日差変動,食餌による影響の経時的変化を調べるとともに,血清「コ」値,血清「P」値などとの相関を調べた.さらに糖尿病患者について6カ月間にわたり,上記脂質の測定を行ない,その変化を調べたのであわせて報告する.

血液検査室の精度管理の実際とその効果

著者: 只野寿太郎 ,   大竹順子

ページ範囲:P.695 - P.697

はじめに
 血液検査室の精度管理は,従来は臨床医が自分で得たデータと患者の病状を比較することにより行なわれていた.しかし中央検査室制度では検体は医師の手をはなれ,患者の病状を全く知らない検査技師が盲目的に検査をすすめることになる.したがって成績の正確度については検査室側も医師側も全くわからず,それぞれの立場から判断するより致し方ないというのが現状である.ここに血液検査室における精度管理1,2)の必要性が生まれた.一方,血液検査室では,業務のほとんどが形態学的検査であり,主観に左右されやすいため再現性の悪い欠点が目立っている.
 われわれは順天堂大学医学部中央検査室と,中央鉄道病院臨床検査科における諸種血液検査重複測定値についてはすでに報告3)した.

衛生検査技師教育制度の問題はなにか—国立大学医学部付属衛生検査技師学校の場合

著者: 森川訓行 ,   三河内武丸

ページ範囲:P.698 - P.699

 現在の衛生検査技師教育制度については,ここ数年来各方面から当局にその改善を強く要望してきたが,現在までに記録すべき改善はみられない.のみならず,重要かつ核心と思われる問題が手つかずの状態で放置されたままである.
 周知のごとく,現在の教育制度は2年制,2年半制から3年制短大,さらには4年制大学と多岐にわたり,これが文部省・厚生省別々の指定という混乱を呈している,この計画性のない方策を生じた素地は文部省・厚生省はもちろんのこと教育関係者も技師教育に対する根本理念を欠き,いささかの展望ももたなかったためであり,その結果が今日の抜本的改革以外に解決策が考えられない事態に至らしめたのであり,その責任は筆者らも含めてきびしく反省されねばならない.

私のくふう

ズダンⅢ脂肪染色操作について

著者: 松下亀能

ページ範囲:P.694 - P.694

 図1に示した臓器水洗籠(または茶こし)を使用して染色操作を行なうと,従来の成書にある方法に比較して,操作が容易でありかつ大切片でも破損のおそれがなく好都合である.すなわち,蒸留水,アルコール,染色液,流水中を通じ,終始上記の籠に切片を入れたまま染色操作を続けヘマトキシリンの色出しまで行なう.
 本法では切片は散在せず,籠を引き上げて見ればその染まりぐあいがわかり,また40-60%アルコール液から水中に移す場合,籠を徐々に沈めれば切片の破損は防止しうる.また薄切後水槽中に浮かんでいる大切片は直接籠ですくうと便利である.なお,このような操作法は他の遊離切片染色に利用可能と考えられ,紙上で紹介したしだいである.

ニュース

血清トランスアミナーゼ測定標準操作法補遺—日本臨床病理学会・日本消化器病学会・肝機能研究会

ページ範囲:P.700 - P.702

 当研究斑はさきに血清トランスアミナーゼ測定の標準操作法について一案を発表し,それが多数の方々の賛同のもとに広く使用されている.ところが一部の方々からこの操作法によると正常値の範囲が,従来の文献の値よりかなり低いようであるという意見が出されてきた.当研究斑でもこの点に気づき検討を加えてきたが,このたびようやく意見の一致をみて,ここに再びわれわれの趣旨を明らかにすることになった.
 さきに発表した案を精読していただけば明らかなように,われわれはトランスアミナーゼの単位としてWroblewski-Karmenの定めた単位すなわち340mμの吸光度の変化が毎分0.001である場合を1単位と定めることを提唱している.しかし,実地上この紫外吸収法はルーチン操作には不適当であり,かつ費用もかかるのでReitrnan-Frankelの比色法に準じた方法を採用したのである.

第13回 衛生検査技師国家試験 問題と解答—(昭和44年3月8日実施)

ページ範囲:P.703 - P.714

問題
公衆衛生概論
問題1 最近のわが国人口のすう勢は,次のうちどれか.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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