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雑誌目次

論文

臨床検査15巻1号

1971年01月発行

雑誌目次

カラーグラフ

蛍光

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.6 - P.7

 励起光として単色光を用いたときに見られる螢光現象は,平常,白色光の下で見慣れている螢光とはかなり様相を異にしている,その数例を紹介する.
 臨床検査への応用としては,ウロビリン体の定性に亜鉛との錯化合物が示す緑色の螢光やポルフィリン体の赤色螢光,リボフラビンの黄緑色螢光が顕著なものとして知られており,カテコールアミン,ステロイド,還元型ピリジンヌクレオチドなどの定量分析には不可欠なものとなるであろう.

グラフ

蛍光顕微鏡

著者: 和田計二

ページ範囲:P.9 - P.12

 螢光顕微鏡とは一般に,
1)標本内の螢光色素を励起するための励起光発生装置(光源+励起フィルター)

腸管原虫のシスト

著者: 浅見敬三

ページ範囲:P.13 - P.16

 原虫のシストを検出するのに最も基本となるのは,生きているシストの持つ特有な青白い光り方である.これを覚えなくてはヨード染色を行なってさらに深く鑑別に進むというわけにもいかないのだが,この光り方を写真という媒体を通して正確に表現することは至難のわざである.ここに掲げた写真はその点で不満足ではあるが,技術解説に記したように,サルの糞便を使って独習をしようと心がける人に少しでも役だってくれることを願う.

蛍光分光計カラーグラフ参照

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.62 - P.63

血球観察の基礎・1【新連載】

観察上の基礎知識

著者: 衣笠恵士

ページ範囲:P.18 - P.19

 最近,中央検査室で扱われる検査の多くが自動化される傾向にあり,さらにコンピュータの導入も現実の問題として身近に感じられる今日であるが,血球の同定については形態学的な判断が要求されるので,その点むずかしいわけである反面,自分の主観を生かしうる点でおもしろさがある.
 相当経験の深い人でも,毎日血球を見ているとしばしば疑問の細胞に遭遇するものである.このような細胞をどのように処理するか,すなわち安易に取り扱ってしまうか,納得のゆくところまでよく追求するかといった違いが,血液検査技師の将来の能力を決めるポイントとなる.

ノモグラム・13

酸素解離曲線

著者: 鈴木清

ページ範囲:P.21 - P.21

 血液ガスのうち,酸素に関連するものには溶解酸素(dissolved O2),酸素分圧(Po2),酸素飽和度(So2)がある.血液ガス測定の方法にはvan Slyke-Neillの検圧法と電気化学的測定法があるが,この解離曲線は本来,van Slyke-Neillの検圧法に用いられたものを基として製図されている.縦軸にpH,横軸にPo2,dissolved O2,斜線にSo2を示している.検圧法によるこの曲線の使用は酸素含量および酸素容量によってSo2がわかり,pHが既知であれば,この2者によってPo2が求められる.しかしSo2の求め方はdissolved O2を考えねばならないので,めんどうであるので略す.電気化学的測定でpHとPo2が既知であれば,その交点はSo2となる.したがってPo2,So2,pHの3つのうち2つが既知であれば,残った1つを求めることができる.

検査室の便利表・13

有機溶剤の濃度を比重から求める表

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.23 - P.23

 ある容積の物質(温度t°)の質量と,それと同容積の水(温度tw°)の質量との比を比重と呼び,dt°/tw°で表わす.4°の水1gはほとんど1mlに相当するから,dt°/4°は密度g/mlと同じ値である.密度も比重も温度の関数である.
 dt°/4°=dt°/t°×水の比重dw t°/4°の関係がある.

総説

人工透析と臨床検査

著者: 秋山暢夫 ,   稲生綱政

ページ範囲:P.25 - P.29

 欧州では,透析患者の死亡率が最近5年間に1/10に減少している.週2回の透析で,全く腎機能を失った患者でも社会復帰が可能になるというこの人工透析療法とはどんなものか,またそれに必要な検査とそのデータ変動の意味するものを概説する.

技術解説

螢光顕微鏡の基礎グラフ参照

著者: 和田計二

ページ範囲:P.30 - P.34

螢光顕微鏡のあらまし
 ある種の物質が吸収光よりも長い波長の光を放出するという‘螢光’現象を応用した顕微鏡が螢光顕微鏡である.これらの物質は螢光色素と呼ばれる.表にその例を示す.したがって螢光顕微鏡法を実施するにあたっては,基本的に以下の手続きが必要である.
(1)対象物質の吸収および螢光スペクトルを分光光度計および分光螢光光度計で測定する.または該測定データを文献的に確認する.

原虫のシストグラフ参照

著者: 浅見敬三

ページ範囲:P.35 - P.39

 原虫類の検査は日本の臨床検査関係者の最も苦手とする領域であろう.日本では寄生原虫類がその種類および頻度の点で比較的少ないとはいえ,無視してよいというほどではない.文明国はいずれも日本と同程度なのだが,他国の関係者のもっている知識は日本のそれに比べると,はるかに高い.普通の糞便検査で,寄生虫卵と同時に原虫類を検査することは常識であるが,日本では果たしていくつの検査機関がこれを行なっているであろうか.
 一般に,原虫類の検査はきわめてむずかしいという誤解が広く関係者間にしみ渡っているようであるが,決してそれほどにむずかしいものではなく,特別な熟練を要するものでもない.そのものを知らないから,見えていても識別できないだけのことなのである.原虫のシストに特有な光り方を一度頭に入れてしまえば,それと同じ光り方をする物体がその後はいやでも眼につくようになるし,そうなれば,参考書をひもといて種類の同定までにも進めるわけである.

臨床検査の問題点・24

ホルモン検査

著者: 屋形稔 ,   大沢竜子

ページ範囲:P.40 - P.45

 ホルモン検査はむずかしく,高価であると考えられてきたが,放射免疫測定法の出現が微量のホルモンを特異的に測定することを容易にし,またキットによる簡易化が進んだため,ルーチン化への道が開けてきた.副腎皮質ホルモン,甲状腺ホルモン測定を中心に,その問題点を検討する(カットはバセドウ病のシンチグラム).

コンピュータの基礎知識・1【新連載】

コンピュータ講座をはじめるにあたって

著者: 樫田良精 ,   開原成允

ページ範囲:P.47 - P.51

 最近の社会は情報化社会であるといわれているが,病院もその例外ではなく,情報化の波は病院の各所に押し寄せている."豊富な情報をいかに診断に生かすか"—このため,病院の検査に携ってる方々のために,今月から約1年間,コンピュータ講座を連載することになった.

学会印象記

臨床検査自動化研究会(1970年度総会)に出席して

著者: 中野和子 ,   泉悦子

ページ範囲:P.52 - P.53

 1970年度の臨床検査自動化研究会は昨年8月29,30日,ニッショーホール(東京港区)で開かれた.
 臨床検査界での"自動化"は器械の‘導入’から‘検討’の段階にはいった観があり,改良を加えた種々の器械が会場に展示された.総会場での一般演題は40,シンポジウムは2題を数え,また展示した会社も前回の5社から11社にふえ同研究会の発展がうかがえた.

エッペンドルフ・マイクロリッターシステムによる超微量臨床化学検査・1【新連載】

血清鉄および血清不飽和鉄結合能測定

著者: 岡村研太郎 ,   鈴木紀子 ,   冨田重良 ,   小延鑑一

ページ範囲:P.54 - P.61

はじめに
 近年の医療における臨床化学検査の進歩と役割はまことにめざましく,各種の分析機器が積極的に導入され,それらの性能の高度化とともに広範囲に利用されるようになってきた.
 分析機器の高性能化は常に物質の本態を追求する人間固有の科学する精神と,その成果を人間の幸福に還元することを理想としているものであり,臨床検査においても1,2種目程度の検査で満足せず,疾病の本態とその病態像をより詳しく探究しようとして,多種類の検査情報を求めてくるのは当然のことといえる.これがより高性能の自動分析機器の開発をうながし,オートアナライザーSMA 12/60などの出現となったのである.

座談会

臨床検査の未来

著者: 茂手木皓喜 ,   大場康寛 ,   樫田良清 ,   山中学 ,   福岡良男 ,   岸上義彦 ,   奥田清

ページ範囲:P.64 - P.73

 あけましておめでとう.年頭にあたり検査の将来像を描いてみました.できるだけわずかな試料で,正しく,すみやかに結果を得るという理想の追求は,検査の自動化ということになるわけで,各分野の7人の先達たちの描く未来像をお届けします.

論壇

仕事

著者: 石井暢

ページ範囲:P.74 - P.75

‘徹する’ということ
 仕事という語に対して,各人それぞれ種々な感情を覚えるもののようである.仕事仕事といいすぎると,そこに強く束縛された感じをもち,ときに拒否反応にまでエスカレートしないともかぎらない.
 しかしわれわれは社会人として存在する以上,なんらかの仕事をもつことは当然で,仕事に対する認識を再確認しておく必要がある.すなわち自分に備わった仕事に対する認識というか,感覚はきわめて広い範囲にわたっているものであるが,これは対社会的な価値判断のいかんにもよるものであろう.

研究

医化学用ガラス器具洗浄剤の効果と管理

著者: 原繁男 ,   浅沼春樹

ページ範囲:P.76 - P.79

序論
 ガラス器具の洗浄といえば,‘ああ,洗場のおばさんか’,というくらいにしかわれわれは考えないのではないだろうか.そして,毎日使用しているガラス器具の清浄度を調べてみたことがあるだろうか.ガラス器具の洗浄という問題は,臨床検査の第1歩であり,また一番重要な問題である.汚れが残っていて,検査データに影響を及ぼしはしないか,洗剤が残っていてこれもまた影響がありはしないだろうか.
 しかし各病院の現状をみると,衛生検査技師が試験管洗いをするということは到底不可能な場合が多い.特に医化学用ガラス器具洗剤は,表1に示すごとくアニオン型界面活性剤を主剤とした複合アルカリ洗剤とか,タンパク分解剤を配合したものが多い.また洗浄効果を高めるためにビルダーとして,リン酸塩,ケイ酸塩,CMC,EDTAなどが配合されている.このことから考えても,洗剤の残存による生化学データーへの影響は推察できる.そこでわれわれは,各洗剤の洗浄力および洗剤の残存度およびそれによる影響を実験し,日常われわれ衛生検査技師が行ないうる洗浄管理法を考案したので,ここに報告する.

オートアナライザーによるアミラーゼ測定法について

著者: 片岡直斗 ,   服部嘉之

ページ範囲:P.80 - P.82

 アミラーゼ測定法として,酵素反応の結果デンプンより生ずる還元糖を測定するSomogyi法1)などのSaccharogenic法と,未反応のデンプンをヨードデンプン反応を利用して測定するAmyloclastic法が広く行なわれている.前者は基本的な方法と考えられているが操作が煩雑である.後者はデンプンやヨウ素液の品質,ヨードデンプン反応におけるタンパクの影響などがいわれているが,これらの点に注意をはらえば,アミラーゼ管法2)をはじめ日常検査法として実用的な方法が多い.
 一方,ワゴスチグミン試験,パンクレオザイミンセクレチン試験など,アミラーゼ誘発による膵機能検査1)においては,Somogyi法などのSaccharogenic法の酵素単位が連続的なアミラーゼ値の変動を表現するのに便利であるとして一般に用いられているが,検査室の負担は大きいのが現状である.

デスクリート試料処理方式による自動化学分析—Ⅰ.チモール混濁試験

著者: 奥田稔 ,   小崎繁昭

ページ範囲:P.83 - P.86

はじめに
 Skeggs(1957)1)の開発した連続フロー方式による自動分析法はすべての化学反応,単位操作を密閉された可撓性のチューブ系内で行なうことを特徴とする,きわめてすぐれた方法である.
 今日,この方式に基づいた自動分析装置が臨床検査の分野で必需の機器として広く普及していることは,あらためていうまでもない.一方,自動化への別の接近方法として,デスクリート試料処理方式(discrete-samplehandling4))が最近急速に発達してきた.現在,20機種にも及ぶこの方式による自動分析装置が市販されている.この自動分析法の利点の1つはすでに確立している用手法をそのままプログラムして実施できることである4,5)

トリオソルブテストにおけるポリエチレン試験管(アセチールロイド)の影響について

著者: 山口重子 ,   栗原慎一郎 ,   山崎統四郎

ページ範囲:P.87 - P.89

はじめに
 著者らは1968年9月以来,当大学にてトリオソルブテストを行なっているが,1969年6月ごろからRSU値(Resin Sponge Uptake)が,他施設に比し異常高値を示すことに気づき,その原因につき検討したところ,採血後の血液や血清分離後の保存などに用いていた使い捨てのポリエチレン試験管によることがわかったので報告する.

私のくふう

アルブミン%よりA/G比への変換

著者: 平子隆夫

ページ範囲:P.89 - P.89

 血清タンパク分画は肝硬変,ネフローゼ,骨髄腫その他タンパクの生合成ならびに漏出のある疾患のスクリーニング,治療,予後診断のためぜひ必要な検査で,最近は,濾紙電気泳動から種々の点で有利なセルロース・アセテート膜を支持体とした電気泳動に替わり,完全にルチーン・ワークの一環として検査されるようになった.
 血清タンパク分画値は,まず総タンパク量を,タンパク計またはビュレット法で求め,そして血清を電気泳動,染色し,デンシトメトリー(または水酸化ナトリウム溶液による抽出)をし,各分画の比率(%),絶対量(g/dl)を計算し,A/G比を算出しなければならない.

新しいキットの紹介

Liebermann-Burchard反応による血清遊離型コレステロール定量法の検討

著者: 山田満広

ページ範囲:P.90 - P.93

はじめに
 総コレステロール中のエステル比の臨床生化学的診断価値は,最近薄らいできているといってよいであろう.なぜなら,その測定の技術的な煩雑さと,ほかにより容易に行なえる同じ目的の検査法が普遍化してきたことにあると考える.
 コレステロール測定に用いられる方法には,古典的なLiebermann-Burchard反応(無水酢酸と硫酸による呈色),最近では,塩化第二鉄によるKiliani呈色反応が多く用いられているが,いずれもリポタンパクと結合しているコレステロールおよびエステルを,タンパクから離断してから測定する点に変わりはない.エステル型を測定するには,遊離型コレステロールをジギトニンによって沈殿させ,それを集めて洗ったのち測定するのであるから,ジギトニンによる沈殿,洗浄,その回収という操作過程において注意しないと大きな誤差を生じやすく,技術的に困難な測定法とみられる.

シリーズ・日常検査における機械化のくふう・1

偏芯スターラの組み立て方

著者: 水野映二 ,   小野弘毅 ,   仁科甫啓 ,   北村元仕

ページ範囲:P.94 - P.95

 内外を問わず病院における臨床検査件数は年々15—20%の増加を続けているといわれる.私たちの検査室でも,この現象は例外ではない.この現実は経済問題としてのみ処理できるものではなく,政治的,社会的な理由が常にからんでいるから,検査室運営上の困難なテーマになっている.資金さえあれば,全自動分析装置を導入しようとする声も大きい.
 しかし,果たしてそれだけで本当の解決が得られるものであろうか.その前に,もっとわれわれのすぐ手のとどくところに,解決しなければならないことがあるのではなかろうか.独立採算下の私たちの病院で5年ほど前に,目前に立ちふさがったのは,このようなテーマであった.それからのあゆみを通じて,今,私たちはこう考える.‘機械化や自動化は,能率を上げたり人手をはぶくためのものだけであってはならない.むしろその目的は,より創造的な仕事と医学水準の維持と前進とを通して,患者へのサービス向上のためにこそあるのだ’と.

質疑応答

妊娠診断剤の代行

著者: M生 ,   玉田太朗

ページ範囲:P.96 - P.96

 問 尿の濃縮または稀釈により,フリードマン反応の低単位(50,100単位)および高単位(5万,10万単位)の検査を妊娠診断剤で代行できますか.具体的にご教示ください.

Senior Course 生化学

血糖測定

著者: 石戸谷豊

ページ範囲:P.97 - P.97

 血糖測定は糖代謝異常特に糖尿病の診断に欠くことのできない検査法であるが,その測定方法は従来用いられていた方法からしだいに改良・開発されたものが多く,今日各検査室で実施されている方法もまちまちである.

血液

止血検査

著者: 浮田実

ページ範囲:P.98 - P.98

1.止血のしくみ
 血液は血管内を流動性を保ちながら流れているが,血管壁に破綻を生ずると血液は血管外に流出して出血をきたす.細小血管よりの出血の場合にはただちに止血機構が働いて自然に止血する.すなわち血管の損傷により血管内皮細胞は剥離して膠原線維が露出する.この膠原線維は血小板のみを選択的に付着(粘着)させ,次いで膠原線維に粘着した血小板はさらに流血中の血小板を付着し(凝集),血小板変態を起こしていわゆる止血血栓,あるいは血小板血栓を形成する.この止血血栓は血管の損傷部位をふさぎ,それ以上出血するのを阻止する.
 一方,この血栓の間隙に貯溜している血漿中の第XII因子は,正常の血管内壁以外の膠原線維などの異物面と接触して活性化され,凝固機構が開始し,線維素を形成する(凝固血栓).この際血小板より放出される疑固因子,血管壁,ならびに組織より浸出する組織トロンボプラスチンなどは線維素の形成を促進する.この凝固血栓は止血血栓をより強固なものとしている.

血清

まれな血液型

著者: 村上省三

ページ範囲:P.99 - P.99

 本年は私がこの欄を担当することになりました.血清学の主流からはむしろはずれたところで,長年苦労を強いられてきていますので,果たしてお役にたつかどうかおおいに心もとない思いもするのですが,できるだけやってみることにします.

細菌

グラム染色

著者: 永井龍夫

ページ範囲:P.100 - P.100

 グラム染色は1884年C.Gramが発表した染色法であるが,その後いろいろ改変され,現在臨床細菌検査室で日常広く行なわれているグラム染色はHucker変法と呼ばれる方法で,その染色順序は次のとおりである.
1)塗抹,乾燥,固定

病理

症候と病理組織検査(1)不整脈

著者: 三友善夫

ページ範囲:P.101 - P.101

 心臓収縮の興奮は心房から心室へ刺激伝導系によって伝えられ,心房心室の順に心筋は収縮する.その刺激の発生と伝導の異常は,リズムの不規則な脈拍として現われ,不整脈と呼ばれる.刺激の調律は洞房結節に終わる自律神経により支配され,脊髄を起点とする交感神経はエピネフリンを分泌して脈拍を促進させ,延髄からの迷走神経はアセチルコリンにより脈拍を緩徐にする.したがって脊髄や延髄に,またはそれらから洞房結節に至る径路に何か病変が起こると脈拍のリズムは影響される.精神的興奮,運動,体温上昇,新陳代謝亢進時に頻脈を呈し,粘液水腫,栄養失調時に徐脈が見られるが,この機能的な原因は別として心筋,刺激伝導系に見いだされる形態的な病変とその検索法について述べたい.

生理1

換気血流分布

著者: 滝島任

ページ範囲:P.102 - P.102

 肺でのガス交換を効率よく行なうために,両者の接触する面積をできるかぎり大きくしなければならない.そのため肺内には約3億個の肺胞が存在し,それによって60m2という,想像以上の接触面積が確保される.
 しかし一方ではそのために,肺は3億個の肺胞へ,換気,血流ともに均等に配分しなければならない宿命を負わされている.これが換気血流分布のもつ重要な意義である.

生理2

色素稀釈法による心拍出量の測定

著者: 香取瞭

ページ範囲:P.103 - P.103

 色素(Indocyanine green,ジアグノグリーン-第一化学)を静脈系に注入し,動脈系で色素稀釈曲線を記録,心拍出量を計算する.本法はFick直接法とともに心拍出量を測定する最も信頼されている方法である.(1)単一急速注入法と,(2)定速持続注入法に分けられるが,臨床的にはもっぱら前者が用いられている.
 (1)単一急速注入法:図1のようなモデルでAに色素Imgを注入しその稀釈曲線をBで記録し,流量Qは一定でRの室内で色素の稀釈が完全でしかも再循環がないと仮定すると,Bにおける色素濃度C(mg/l)は注入時よりの時間tの経過に従い変化するから,

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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