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雑誌目次

論文

臨床検査15巻11号

1971年11月発行

雑誌目次

カラーグラフ

風土病の検査(4)—マラリア原虫

著者: 沢田滋正 ,   鵜飼新一郎

ページ範囲:P.1054 - P.1055

 マラリアは現在,日本内地においては自然感染例をほとんどみない.その原虫はハマダラ蚊(Anopheles)を媒介として伝染し,ヒトの成熟赤血球に寄生する.原虫は,三日熱原虫,四日熱原虫,熱帯熱原虫の3つに分類され,それぞれ繁殖体として,幼若型,成熟型,分裂型の各段階を経て分裂し,一部は生殖体となる.繁殖体の発育に要する時間は,三日熱原虫で48時間,四日熱原虫で78時間,熱帯熱原虫で24-48時間であり,熱発作もこれに一致するが,熱帯地方における感染はほとんど混合感染で,典型的な熱型をみることは少ない.原虫を調べるには,一般に発熱発作の前後に耳朶より採血し,薄層標本および濃塗標本を作製し,ギムザまたはライト染色を行ない鏡検する.以下に掲げた原虫像は,インドネシア旅行中,罹患し,帰国後再発した例から得たものである.

グラフ

検診センター1PL東京健康管理センター/検診センター2愛知県総合保健センター

著者: 桂戴作 ,   菅沼源二

ページ範囲:P.1057 - P.1060

 PL東京健康管理センターは,自動化機器による,検査の自動化をはかるとともに,コンピュータによるデータ処理を行ない,経費の低下と時間の短縮とを可能にし,従来の人間ドックの内容を,一般大衆のものにしえたといえる.
 さらに,日増しに増加する社会的精神的ストレスの個人健康に及ぼす影響までも解析されており,それらが,会員制システムを採用することにより,半年ごと,年2回の検診を行なって,時間の経過とともに変る生体情報を観察しつづけ,個人健康の維持をはかろうとするものであり,より多くの人間の幸への奉仕に生きようと念ずるものである.

組織と病変の見方 肉眼像と組織像の対比—泌尿器とその病変(1)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.1061 - P.1064

泌尿器の主なる臓器は腎と膀胱である.腎で尿を作り,尿管を通じて膀胱に達し,ここで貯えられ,尿道を通じて排泄される.
成人の正常腎は1個およそ130gくらい,楕円形で真中に凹みがあり,この部を腎門部という.ここから尿管,動脈,静脈が出入する.

寄生虫・原虫の生活環・5

蟯虫—Enterobius vermicularis

著者: 安羅岡一男

ページ範囲:P.1066 - P.1067

 寄生線虫類の生活環は,前号までの原虫類,吸虫類,条虫類などのそれに比べれば,中間宿主を必要としない比較的簡単なものが多い.しかし,例外的に複雑なものも2,3見られる.線虫類はその生活環の形式によって次の3群に大別することができる.
 第1群:生活環のほとんどを宿主体内で過ごし,卵の時期のみを外界で過ごす種類(例:回虫,蟯虫,鞭虫など)

ノモグラム・23

放射能測定の時間と精度

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.1069 - P.1069

 解説 放射能の測定にあたって計数時間をどのくらいにしたらよいかを求めるノモグラムである.A線(計数率)とC線(計数時間)とを直線で結び,その線がB線と交わる点の左側は0.9精度の計数誤差を,右側は0.95精度の計数誤差を与える.
 例 1250cpmのものを4分計測すれば,29cpmの誤差(0.9精度で)となる.1250±29cpmと書く.40分計測すれば,1250±9cpmとなる.

検査室の便利表・23

凝固機序と検査法

著者: 梅垣健三

ページ範囲:P.1071 - P.1071

総説

発色基質—その沿革と将来

著者: 降矢震

ページ範囲:P.1073 - P.1079

 臨床検査室での酵素活性度の測定にも,いわゆる‘発色基質(Chromogenic Substrate)’が用いられている.その簡易にして正確なことから,今後もその利用が盛んになるように思われる.ここにその沿革とそれぞれの特徴について,狭いながら筆者の見聞と体験を記した.これが新しい基質の開発,将来の利用の拡大に何らかのお役にたてば幸いである.

技術解説

マラリア原虫と検出法

著者: 鵜飼新一郎 ,   沢田滋正

ページ範囲:P.1080 - P.1085

 日本内地におけるマラリアの確実な自然感染は,大鶴1)によると1959年滋賀県にみられた1例が最後であるという.したがってわれわれは一応本症とは無縁になったように思われるが,なおいまだに本症は麻薬常習者の間に潜在するといわれ,ほかにいわゆる輸入マラリアおよびそれに起因する輸血マラリアは,今後増加のきざしがある.
 最近経験した1例は20歳男子学生が,昨夏約1か月間インドネシアに旅行し,ジャカルタはじめ各地に滞在しており,バリー島において発病したもので,現地の医師より治療をうけた既往がある.その際の診断名は‘重い病気’ということで,患者はマラリアということを再発時まで知らなかった.帰国後発熱のため某病院に入院したが,マラリア原虫陰性のため腸チフスと臨床診定され,われわれが診療する結果となった.以下本症の病原を中心に寄生虫学的概要を記すこととした.

血液凝固検査の標準化

著者: 梅垣健三

ページ範囲:P.1086 - P.1091

はじめに
 1963年よりはじめられた‘本邦人の血友病並びに類縁疾患に関する研究’班の血友病診断に用いる凝血学的検査術式の標準化の試みがきっかけとなり,第12回日本臨床病理学会総会で‘血液凝固検査の標準化’がシンポジウムとして取り上げられ1-5),血液凝固の認識がしだいに深まってきたのと相まって,標準化された検査法の検査室への導入が年々増加してきた.また出血に関する検査はふるい分けとしてどの範囲に行なうのがよいかについても,正常止血機序より考えて血管系,血小板系および凝固系について少なくとも6項目を行なう必要があるとの考え方が理解され,浸透し,今日ではほぼ実施されていると思われる.
 これまで先天性凝固障害症は,凝血学的に凝固因子活性がないことで診断されてきたのであるが,血漿タンパクの分析の研究が進むに従って,分子生物学的観点よりながめられ,異常血色素症と同じように,分子構造上の異常によって発症することが報告されるようになってきた.すなわちDysfibrinogenemia,Dysprothrombinemiaであり,また血友病および類縁疾患についても凝固タンパクの構造異常によると思われる症例が凝固免疫学的に検討され,報告されている.

超音波診断の基礎(2)

著者: 畑宏

ページ範囲:P.1092 - P.1098

各科部位の診断
1.頭部(つづき)
3)脳腫瘍

私のくふう

遠心上清の簡易採量法

著者: 杉田明義

ページ範囲:P.1098 - P.1098

 血清の除タンパクを必要とする検査では,遠心沈殿管内で除タンパクを行ない,遠心沈殿後,その上清を用いることが最近よく行なわれている.
 われわれもコレステロール,銅,尿酸などによくこの方法を用いているが,ミニペットに若干の改良を加えた器具により非常に簡便に,遠心沈殿後の上清を分離採取する方法を考案したので報告する.

学会印象記

第1回嫌気性菌検査技術セミナー—実り多かった1週間の研修

著者: 中沢百合子

ページ範囲:P.1099 - P.1099

 8月1日から7日まで,岐阜大微生物学教室で,第1回嫌気性菌検査技術セミナーが開かれました.暑いさ中でしたが,1週間を楽しく有意義に過ごすことができ,指導の鈴木祥一郎・上野一恵両先生に感謝しております.
 東京で開かれた第1回嫌気性菌感染症研究会(2月)で,数々の演題を聞いたあとで感じたことは,嫌気性菌に関してもこれから研究するというのではなくて,すでに研究されてきているのだということ,また,10数年からのデータに加えて,それらに取り組んでおられる諸先生方をみて,検査室でも一刻も早く取り入れなければと思ったものです.そこで今回をよい機会として,特に無芽胞性嫌気性菌の同定のための基礎的な知識や技術を収得するため,参加しました.

臨床検査の問題点・34

ベンスジョーンズタンパクの見方

著者: 今村幸雄 ,   大島寿美子

ページ範囲:P.1100 - P.1105

 骨髄腫の診断に,尿中のベンスジョーンズタンパク(BJP)の検出が大きな材料となる.最近,特にその診断価値が注目されているが,性質・検出法は,検査室にはあまり知られていない.具体例を免疫電気泳動法にとりBJPの基礎から判定基準までを検討する.
(カットはクリオグロブリン:左は対照)

コンピュータの基礎知識・10

総合健診システム—東芝総合健診センター

著者: 山口清士 ,   玉虫彰弘

ページ範囲:P.1106 - P.1112

はじめに
 わが国では‘人間ドック’と呼ばれる,いわゆる成人病に対する早期発見を目的とする総合的な精密検診が,多くの病院に開設されている.しかし,受診者は2-6日程度の日数と高額の費用を必要とするほか,利用可能人数がベット数により制限され,受診者は年間数万程度であり,あまねく中高年齢層を対象とすることができない.
 これに対して,社会の急激な発展によって,健康に及ぼす悪影響が増大するとともに,医療に対する人々の欲求が高まり,この社会的ニーズにマッチした医療のシステム化,システム技術の活用の必要性が増しつつある.

RI検査の基礎・5

シンチレーション計数装置

著者: 吉川春寿

ページ範囲:P.1113 - P.1118

シンチレーション・カウンター
 シンチレーション・カウンターの主要部分はシンチレーター(scintillator)と称する螢光体と光電子増倍管(photomultiplier;略称ホトマル)とからなり,必要であれば前置増幅器をつけてひとまとめにし,ケーブルで計数装置につなぐようにしてある.

座談会

ヘルス・ケアー・システム—(Health Care System)

著者: 岩塚徹 ,   岩井喜典 ,   桂戴作 ,   寺岡弘平 ,   菅沼源二 ,   天木一太 ,   樫田良精

ページ範囲:P.1120 - P.1127

 昨年5月,東芝総合健診センターを皮切りに,最近,日本の各地にコンピュータを利用した新しい形の検診センターが生まれてきている.そこには,検査技師としての新しいジャンルがひらけているようだが,今月は実際の仕事にタッチしている人々に,その利点,問題点,今後の方向などを話し合っていただいた.

海外だより

米国の細胞診学校に学んで

著者: 安松弘光

ページ範囲:P.1128 - P.1130

はじめに
 1969年8月から1年間,ロスアンジェルス市にある南カリフォルニア大学(University ofSouthern California,略して通称USCという)の細胞診学校に入学し勉学する機会を得たので,この学校を含めて米国の細胞診学校の教育の概況ならびに米国における細胞診技師について紹介し,参考に供したいと思う.
 ロスアンジェルス市は南カリフォルニアにあり,温暖で低湿度というめぐまれた気候のもとで,アメリカ西部の工業,商業の中心地として急速に発展の一途をたどっている都市である.USCの大学病院および医学校は大学本部とは離れてこのロスアンジェルス市の北東部にある.そして細胞診学校はこの大学病院の16階にある病理部門の細胞診部の中に設置されてある(図1).

研究

Haemophilusの分離培養についての検討

著者: 佐久一枝 ,   内田順子 ,   野崎真弓 ,   丸山すみ子

ページ範囲:P.1132 - P.1134

はじめに
 呼吸器感染症の重要な原因菌の1つにH.influenzaeがあげられているが,この菌種は分離培地の選択いかんによっては全くといってよいほど発育しない.ただ血液を加えてあればよいというのではない.当細菌検査室では数年前からHaemophilusの分離率を高めようと努力した.喀痰,咽頭ぬぐい液の検体について1965年には5%の分離率であったが,その後の培地の組成,作り方の改良により1969年には検出率を23%まで高めることができた1)
 以下どのようにして検出率を高めたか,またその結果に基づいて現在Haemophilusの同定検査をいかに実施しているかについて報告する.

新しいキットの紹介

血清リン脂質定量法に関する検討—Phospholipids-Test Wakoについて

著者: 久城英人 ,   吉田高子 ,   福井巌

ページ範囲:P.1135 - P.1138

 血清リン脂質はレシチン,リゾレシチン,セファリン,スフィンゴミエリンなどよりなり,リポタンパクの形で血清中に溶存し,総リン脂質濃度はおおよそ125—300mg/dlとされている1)
 血清リン脂質の定量法はいずれも,(1)血清からのリン脂質の分離,(2)リン脂質の無機リン化,(3)無機リンの比色定量の3段階から成り立っている.

昭和45年度第3回細胞検査士資格認定試験

ページ範囲:P.1139 - P.1144

液状検体(1)
 1.次の文章の()内に適当な言葉を入れなさい.
 a 膀胱の粘膜は()組織で被われている.

質疑応答

Jirgl絮状試験の検査法について

著者: K生 ,   福岡良男

ページ範囲:P.1145 - P.1145

 問 最も新しい血清膠質反応で,閉塞性黄疸血清に特異的反応を示す肝機能検査とされていますが,その検査法のご紹介をお願いします.

シリーズ・日常検査における機械化のくふう・11

血清コレステロールの比色測定におけるフローセル方式化

著者: 水野映二 ,   仁科甫啓 ,   小野弘毅 ,   北村元仕

ページ範囲:P.1146 - P.1147

 私たちは既報(本誌3,4月号)のようにフローセル化によって比色の能率を図ったが,血清コレステロール測定時のように高粘度の発色液では,吸引が困難であり,かつ前行試料の汚染が著しく,実用化に至らなかった.
 Zak-Henly変法によるコレステロール発色液は,水の40倍もの粘度をもっている.このような液体を汚染なく連続比色するためには,セルに到達するまでの距離をできるだけ短く,液流の乱れが起こらないような流路をくふうしなければならない.このために直線的なフローセルを設計し,比色計の下部から垂直に吸引チューブを導き,吸引液量4.5ml,吸引時間4秒,汚染率1.5%におさえることに成功した.このフローセルを用いた比色システムを説明する.フローセル部は図1に示した.各部分を次の順序で組み立てる.

Senior Course 生化学

成長ホルモン

著者: 石戸谷豊

ページ範囲:P.1149 - P.1149

 ラジオイムノアッセイは,血中ホルモンはじめ多くの血中微量成分を測定するうえに画期的な進歩をもたらした.成長ホルモン(GH)の測定もその1つで,原理は前号で述べたインスリン測定と全く同様である.
 このように下垂体前葉ホルモンのうちでGHが最も容易にルーチン化されたのは,GHの精製が容易なこと,分子量2万1500で抗体を作ることがやさしいこと,測定感度がよく,測定の特異性に問題が少なく,血漿の抽出を必要としないこと,さらに予備能の判定にインスリン刺激試験,アルギニン負荷試験などのすぐれた検査法が開発されたことによる.

血液

第XIII因子の検査—(線維素安定化因子:FSF)

著者: 鈴木弘文

ページ範囲:P.1150 - P.1150

1.測定原理
 被検血漿に塩化カルシウムおよびトロンビンを添加し生じたフィブリン塊に,尿素あるいはモノクロール酢酸(MCA)などの解離剤を加え,フィブリン塊が溶解するか否かを測定する.第XIII因子が欠損あるいは減少している場合は,その欠乏の程度に応じてフィブリン塊は溶解する.大部分の凝固検査はフィブリン析出までの時間を測定するのに対して,XIII因子の測定はフィブリン塊の溶解状態を観察するものでやや特異的である.

血清

ABO式新生児溶血性疾患の診断(2)

著者: 村上省三

ページ範囲:P.1151 - P.1151

2.妊娠中の検査(つづき)
 前号に述べたように抗AP溶血素が陽性のときは,さらにAx血球の5%液と母血清とを等量に加え,室温に30秒おいたのち,1500rpm 30秒遠心して凝集の有無を検査する.もし胎児が障害を受けていれば陽性となる.わが国ではBx血球も入手可能であるので,試みてみるのもよかろう.
 さて,抗AP溶血素もAx血球の凝集も陽性であれば,ABO式の溶血性疾患の疑いは十分であるが,どの程度の障害を受けているかは,定量的に検査してみなければわからない.その1つとして母血清を等量のAP血球で吸収した前後で,A1やB血球に対する抗体価の変動をみて判定する方法がある.母血清を倍数稀釈した場合,その差が2管以下なら,障害はまずなく,3-4管なら中等度に,5管以上の差が認められれば交換輸血を必要とする程度だとしている.

細菌

嫌気性菌の検査

著者: 永井龍夫

ページ範囲:P.1152 - P.1152

 偏性嫌気性の病原菌としてはクロストリジウム(Clostridium)属があり,これはグラム陽性盂菌で芽胞を形成し,菌体外毒素を産生する.本菌属には創傷感染の原因菌となる破傷風菌やガス壊疽菌群,ならびに食中毒の原因菌のボツリヌス菌がある.
 なお近年クロストリジウム菌属以外の嫌気性菌,すなわち無芽胞嫌気性菌がいろいろの感染症の病原菌として検出され,臨床細菌検査の立場から注目されるようになってきた.

病理

症状と病理組織検査(11)—咳・痰

著者: 三友善夫

ページ範囲:P.1153 - P.1153

 最近,公害,特に大気汚染により咳・痰の訴えが増加している.咳・痰の原因としてほとんどすべての呼吸器疾患が上げられ,さらに肺水腫,心不全,大動脈瘤,異物,心身症などの肺疾患以外からも生じる.咳は呼吸器粘膜が炎症,機械的刺激,化学的刺激,温度,心因性の原因によって刺激され,呼吸中枢近くの咳中枢が興奮して発生する.
 長期間にわたる難治性の咳・痰の原因病変の検索が問題になるが,次の諸検査が行なわれている.

生理1

脳疾患と異常脳波

著者: 江部充

ページ範囲:P.1154 - P.1154

 脳波に異常所見が出現している場合,まずいきなり疾患名と結びつけようとするのは好ましいことではない.
 脳波とは本来,脳の機能状態に由来する電位変動を記録したものであり,それぞれの脳疾患に対しては非特異的な現象である.しかし脳波発生のメカニズムが複雑であり,今日なお十分に明らかにされていないことも多く,まして異常脳波についてはその生理学的意味づけは明らかでない.しかしわれわれが個々の症例を取り扱うにあたっては,一応これまで知られている生理学的な意味づけを試みることがたいせつである.その意味づけとともに,実際には経験に基づいた判断,すなわち統計的なデータによっていろいろな疾患と対応させて,最終の結論が導き出されることになる.

生理2

賦活法(1)—methods of activation

著者: 神保真也

ページ範囲:P.1155 - P.1155

1.過呼吸(hyperventilation,H.V.)
 最も簡単で広く行なわれている賦活法である.閉眼のまま1分間20-25回の普通の速度で深呼吸を行ない,成人では3-4分間,小児では速度は成人より速くて2-3分間行なう.不自然に速くしたり深くすると,筋電図や体の動きによるアーティファクトがはいりやすくなるので,前もって深呼吸の要領を示して数回練習させてから始めるとよい.
 脳波記録は過呼吸中および終了後1分以上は続けるべきである.過呼吸の始めと終わりは記録紙に明記し,また30秒ごとに記入するのが望ましい.また深呼吸を1回ごとにmarkerなどで記号をつけるのもよい.過呼吸終了時には,その速さと深さから過呼吸の程度を良,中等度,不良と判定して記入すべきである.過呼吸をくり返して行なうときは,少なくとも3-5分間待って患者が安静状態にもどってから行なう.小児で過呼吸に非協力的なときは,風車や吹き流しを吹かせるとよい.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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