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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査15巻8号

1971年08月発行

雑誌目次

カラーグラフ

ランゲルハンス島のA,B,D細胞の染め分け

著者: 藤田恒夫 ,   渡辺雪子

ページ範囲:P.738 - P.739

 ランゲルハンス島は上皮性の内分泌細胞の索と,周囲から侵入する毛細血管およびこれに伴う少量の結合組織からできている.内分泌細胞にはA,B,Dの3種類が区別される.インスリンを分泌し,膵島の大部分を占めるのはB細胞であり,これに対して少数派をなすA細胞はグルカゴンを分泌することが知られているが,D細胞の分泌するホルモンはまだわかっていない.これら3種類の細胞を染色法によって区別することは,膵島の機能や病態を知るうえでも,また膵原性の腫瘍の性質を決定するうえでも重要である.ところがヒトの膵島細胞は小さいうえにA細胞やD細胞の染色性が低いために,その染め分けは実験動物のそれに比べるとむずかしい.
 ここにはヒトのランゲルハンス島の染色法について,近年行なわれる代表的なもの2,3をカラー写真で紹介しよう.

グラフ

トリョードサイロニンレジン摂取率の測定

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.741 - P.748

 放射性同位体(ラジオアイソトープ;RI)を利用した甲状腺機能検査法が近年広く普及している.患者にRIを投与して甲状腺への摂取率を検査する方法もあるが,患者の血清について検査室内で調べることのできるin vitroの方法が開発されてから,さらに広く活用されるようになった.
 RIの利用にあたっては,放射線による障害の予防に十分努めなければならない.検査を実施する技師自身,また身近にいる同僚の人たちも,不要の放射線に暴露することのないように注意しなければならない.

寄生虫・原虫の生活環・2

肺吸虫—(Paragonimus westermani)

著者: 鈴木了司

ページ範囲:P.750 - P.751

 吸虫類,特に二生目に属する吸虫の生活環は非常に複雑で,すべご中間宿主を必要とし,世代の交番が営なまれ,中間宿主体内で幼虫期の増殖がみられる.
 肺吸虫は肺に虫嚢を作り,その中に住む.虫嚢は結締織の壁につつまれ,中は空洞になっている.
 日本ではヒトに寄生する肺吸虫はウェステルマン肺吸虫(Paragonimus westermani)のみであるので,以下ウェステルマン肺吸虫についてその生活環を述べたい.

ノモグラム・20

UV法によるタンパク,核酸量の推定

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.753 - P.753

 使い方タンパク含有液の280,260nmの吸光度を測定し,E280とE260との比を求める.それに対応して核酸の%が求められる.E280×Fとして,タンパク量(mg/ml)が求められる.光路長は10mm.
 例 E280=0.450 E260=0.605となったときは,

検査室の便利表・20

臨床血清学的検査と試薬(3)

著者: 福岡良男

ページ範囲:P.755 - P.755

総説

蚊—その媒介伝染病との関係を中心に

著者: 神田錬蔵

ページ範囲:P.757 - P.762

 蚊について病害動物学の立場から詳説することは紙面のつこう上困難であるので,ここでは蚊と病気との関係のうち,特に最近解明されてきた事がらを中心に述べることにした.したがってここでは蚊の形態分類などについて説明を省略し,蚊がヒトの病気の伝搬にどのように関与するか,病原体と蚊の習生生態を中心に病気の生態である疫学について述べる.

技術解説

超音波診断の基礎(1)

著者: 畑宏

ページ範囲:P.763 - P.770

はじめに
 ここ10数年の間に超音波は医学の各分野,特に診断面で広く利用されるようになり,今回臨床検査技師の検査種目にも正式に取り上げられるにいたった.そこで2回にわたって超音波診断の概要について述べたいと思う.

重金属の組織化学(2)

著者: 前田隆英 ,   伊原信夫

ページ範囲:P.771 - P.778

ガレインを利用する方法スズ,アンチモンの検出
1.原理
 ガレイン(Gallein)は塩酸酸性溶液でスズ,アンチモンと難溶性の錯塩を形成し,赤紫色ないし赤色の沈殿を生ずる.その他の金属も同様の条件で沈殿するものがあるが,反応産物の色調が異なっている.したがって,スズの証明法15)として,次の反応液に室温で切片を2-3時間作用させたのち(岡本の法),亜硝酸ナトリウムに作用させると,ガレィン酸スズはただちに脱色するので,アンチモンとは理論的に鑑別可能となる.

私のくふう

染色台のくふう

著者: 千野惇義

ページ範囲:P.770 - P.770

 従来,私の所の研究検査科では,写真用バットにガラス管を渡して染色台としていたが,図1のようにしたところ,むらなく連続的に10枚の標本を迅速に染め上げることができるようになったので紹介する.

臨床検査の問題点・31

日常検査における補体の定量法

著者: 田村昇 ,   佐藤芳江

ページ範囲:P.780 - P.784

 ‘補体’が検査室にはいりつつあるが,まだ補体とはどんな物質なのか,また性質・作用についてはよく理解されていない.
 補体結合反応に,なぜモルモット血清(乾燥補体)が使われるか,その保存法は,50%溶血法のメリットは......など実際面の検討を進める.

コンピュータの基礎知識・7

検体検査のデータ処理—クリーンデータMARK-Ⅱを例として

著者: 鈴木清八

ページ範囲:P.785 - P.792

はじめに
 近年病院における臨床検査室の検体量は,血液・尿を主体として増加の一途をたどっている.しかし,これに対処すべき衛生検査技師の絶対数が十分ではなく,本来の検査業務に付随した伝票整理,データの記入,転記,報告などの事務作業に抹殺されかねない.
 すでに使用されている種々の自動分析装置は,このような実情において必然的に誕生したといえよう.それらは1つの検体より12項目の検査を行なうものや,15秒に1検体を処理する高速分析装置などがある,しかし,検査依頼伝票と照合して検体を自動分析装置にかけるまでの作業配分や,分析後のデータをペンレコーダやプリンタより最終報告書へはほとんど手作業に頼っており,さらに検体の検査項目は少ない病院でも100項目以上に及び,今日自動分析装置で処理できるものは50項目にも満たず,全部の検査項目を自動化することは,資金と技術的な面から無理な話である.さらに検体量の増加に比例して人員を補充することは,近年の専門技術者の供給不足と人件費の上昇を考えた場合,給合的な計画のもとに機械化できるところは機械化でカバーし,本来人間のもっているすぐれた機能を最も重要な検査業務に専念させるべきと考える.

RI検査の基礎・2

放射性崩壊の法則

著者: 吉川春寿

ページ範囲:P.793 - P.798

放射能の強さ
 放射線は原子が1個崩壊することに出るのであるから,放射能の強さは単位時間あたりの崩壊原子数,すなわち崩壊の早さ(disintegrationrate)で表わされる.単位としては,毎秒原子崩壊数(disintegration per second)略してdpsをそのまま用いてもよいが,普通は3.7×1010dpsをとってこれを1キュリー(curie)といいCiで示す.1Ciは元来は1gのラジウムと放射平衝にあるラドンの量として定められた単位であるが,のちにすべての放射性核種に拡張され,今では上述のように定義されている.10−3Ci,10−6Ci,10−9Ci,10-2Ciをそれぞれミリキュリー(mCi),マイクロキュリー(μCi),ナノキュリー(nCi),ピコキュリー(pCi)という.
 放射能の強さを実際に測定装置を用いて測るときには,必ずしもその放射線全部を数える絶対計数(absolute counting)の必要はない.いわゆる相対計数(relative counting)で十分目的を達することが多い.たとえばGM管などで放射能の強さをはかる場合,放射体から出る放射線粒子は空間のあらゆる方向(立体角4π)へ向かうのに対して,GM管の中にはいって計測されるのは一部にすぎない.それでも,同じ核種について,再現性のよい条件で測定するのであれば,測定にかかってくる放射線対全放射線の比率は一定であるから,実際に測った計数値だけで放射能の大小を比較するには実用上さしつかえない.したがってトレーサー実験では特別な技術を要する絶対計数はせずに,相対計数だけですませるのである.実際に測定にかかってくるその比率を計数効率(counting effciency)といって,もしもこれがわかっていれば,計数率(単位時間の計数値)から放射能の強さの絶対量を求めることもできる.廃棄物中の放射能を知るとか,放射能の生物的作用を考える場合には,このようにして実測値から絶対量を求めなければならない.

論壇

人間ということ

著者: 那須毅

ページ範囲:P.800 - P.801

 検査技師は‘人体’を課題として,自然科学的,生物学的な方法をもって追求する職業であるから,どうしても‘人’を対象としてながめる傾向になるのもやむをえない.
 自然科学というものは,自己の方法の限界を知り,その方法に適しない課題は,これをきびしく除外してゆくという態度をとりつづけてきたし,これが自然科学の驚くべき発達をうながした理由でもある.その結果,コンピュータはある面では人の頭脳作業を追い越したとも言えるし,また人類をして月の世界に立つことを可能にさせた.

海外だより

—欧米(北欧,東欧,西欧,米国およびカナダ)の病院検査室(2)—デンマークのコペンハーゲン市に大学付属病院リグスホスピタレットとビスペビョルグ病院とを訪ねて

著者: 佐々木禎一

ページ範囲:P.802 - P.806

はじめに
 前号(1)報でスウェーデンのウプサラ大学付属病院の中央検査部について紹介した1)が,今回は同じ北欧のデンマークの首都コペンハーゲンにコペンハーゲン大学の付属病院のリグスホスピタレット(Rigshospitalet)と,同じ教育病院であるビスペビョルグ病院(Bispebjerg Hospital)とを訪間したときの様子を報告したい.

研究

セルロゲル膜による血清LDHアイソザイム測定キットの検討

著者: 西村辰志 ,   新原恵美子 ,   尾辻省悟

ページ範囲:P.807 - P.811

はじめに
 血清乳酸脱水素酵素(LDH)は電気泳動によって5つのアイソザイムに分画され,そのパターンに診断的価値がある.電気泳動の支持体としてカンテンゲル,セルロースアセテート膜,ポリアクリルアミドゲル,濾紙などがあげられるが,われわれはセルロースアセテート膜を支持体とするNitro-blue tetrazolium-Formazan発色法に基づく1)市販LDHアイソザイム測定キット*1)を用いて,臨床検査面での有用性を中心に検討を行なったので報告する.
 また,従来正常域血清のアイソザイム測定は困難であり,濃縮法をはじめとして,その解決法が望まれている2).われわれは血清を濃縮し分画を行なったので,その濃縮の効果および正常値についてもあわせ報告する.なお,カンテンゲルを支持体とする市販LDHアイソザイム測定キット*2)(以下カンテン板法という)との比較検討もあわせ行なった.

新しいキットの紹介

Itaya-Ui改良法に基づく血清遊離脂肪酸比色定量用キットの検討

著者: 久城英人 ,   高野圭以 ,   福井巌

ページ範囲:P.812 - P.814

 近年,生体における遊離脂肪酸(以下FFAと略)の生理的意義が解明されるに伴い,臨床面でも病態時の血中FFAレベルが追求され,代謝異常(糖尿病,肥満),神経・内分泌系の失調(甲状腺機能亢進,褐色細胞腫,末端肥大症),ならび肝障害時に血中FFA値が異常を示すことが知られ,その診断的意義が強調されつつある.
 現在行なわれている血中FFAの定量法は滴定法と比色法に大別される.

第17回衛生検査技師国家試験問題と解答

ページ範囲:P.816 - P.826

問題
公衆衛生概論
 問題1 飲料水判定基準について誤っているものはどれか.

シリーズ・日常検査における機械化のくふう・8

炎光光度計の吸引ノズルと排液法

著者: 水野映二 ,   仁科甫啓 ,   小野弘毅 ,   北村元仕

ページ範囲:P.828 - P.829

 ナトリウム(Na),カリウム(K)の測定は,体液電解質管理に重要な役剤を演ずるため,炎光光度計の普及とともに,依頼件数が著増の一途をたどっている.
 炎光法の操作は比較的単純で,検体を稀釈液で50—200倍に稀釈したのち,炎光光度計に吸引させるが,ふつう稀釈検体を試料用小ビーカーに移し,吸引ノズルに接触させるようになっている.この際,電解質はきわめて高倍率に稀釈されるので,器具や環境に由来するわずかな汚染が無視できない誤差を生じ,稀釈以降の操作には慎重な配慮が必要である.炎光分析自体は迅速な操作であるが,件数の増加に伴い,相対的に測定の前準備に時間がかかるようになるので,私たちは次のような簡単なくふうで,能率ならびに汚染による問題点を改善した.

質疑応答

上皿天秤と分銅の扱い方

著者: O生 ,   白戸四郎

ページ範囲:P.830 - P.830

 問 上皿天秤の分銅は左右どちらの皿にのせるのが正しいのでしょうか,またどちらか一方の皿にのせるのが正しいとすると,その理由も合わせてお教えください.また,最近市販されているケース入りの上皿天秤(0.5gぐらいまで分銅をのせなくても計れる:メーカー・石田)だと分銅を左皿にだけのせるように作ってあるのですが,何か理由があるのでしょうか.

Senior Course 生化学

血清Monoamine Oxidase(s-MAO)

著者: 石戸谷豊

ページ範囲:P.833 - P.833

 血清中に存在する Monoamine Oxidase(S-MAO)は,コラーゲンの成熟過程のCross-linkに関与しているコラーゲンMAOときわめて性質が類似し,両者はおそらく同一酵素であろうと考えられている.この酵素は肝のミトコンドリアに局在するMAOと異なり,非フラビン系酵素であり銅を含有する.
 最近この酵素は急性肝障害では上昇せず,慢性肝障害では上昇することが注目され,肝線維化への移行過程を知る有力な補助診断として認められてきた.

血液

プロトロンビン時間(Quick 1段法)(2)

著者: 鈴木弘文

ページ範囲:P.834 - P.834

1.測定原理と意義
 被検血漿に十分量の組織トロンボプラスチンと適量のCaCl2液を添加し,凝固時間を測定することにより,外因系凝固機序および凝固第Ⅱ相に関与する第Ⅱ,Ⅴ,Ⅶ,Ⅹ因子の消長を総体的に測定する方法である.したがって,もし異常値(延長値)が認められた場合は,これらの各凝固因子のいずれかに異常があることが推定されるが,そのほか次の場合にも異常値が認められる.(1)フィブリノゲンの量的,質的異常,(2)拮抗物質の増加(抗組織トロンボプラスチン,抗トロンビンなど),(3)プラスミン活性の異常亢進,(4)消費性凝固障害,(5)抗凝血薬(クマリン系誘導体など)の投与,(6)血友病B+(ウシまたはヒト脳抽出組織トロンボプラスチンを用いた場合のみ),(7)重症肝障害などである.
 一方,内因系凝固機序に関与する凝固因子,特に第Ⅷ,Ⅸ因子などが欠乏している場合,すなわち血友病A,血友病Bの場合には正常域の値を示す.また第ⅩⅢ因子欠乏症の場合も正常値を示す.

血清

ランドシュタイナーの法則に従わぬ血液型(4)

著者: 村上省三

ページ範囲:P.835 - P.835

2.脱落型(つづき)
2)病的な条件が加わる場合
 これにもいろいろのケースが考えられます.おもなものを取り上げてみますと,

細菌

腸内細菌の検査(1)

著者: 永井龍夫

ページ範囲:P.836 - P.836

 腸内細菌の中でチフス菌,パラチフス菌,赤痢菌は法定伝染病の病原体として重視されてきたが,近年これらの疾患は減少してきている.むしろ腸内細菌に属するそのほかのグラム陰性杆菌が消化器のみでなく泌尿器や呼吸器の感染症,さらに敗血症や髄膜炎の原因菌として検出されるようになってきている.したがって腸内細菌の分離,鑑別,同定はひととおり心得ておく必要がある.

病理

症状と病理組織検査(8)—脾腫

著者: 三友善夫

ページ範囲:P.837 - P.837

 臨床的に脾腫として認められるときに,脾臓はその重量が正常の2-3倍以上となっている.
 脾腫の検索にあたっては‘原病は何か’を求めて行なわれる.脾腫を示す疾患は血液疾患と感染症が多いために,問診と症状に加えて末梢血液検査,骨髄像の追求がなされ,さらに血清タンパク,肝機能,赤沈値,X線検査,アイソトープ検査,門脈圧測定,血清学的および細菌学的検査なども行なわれる.その中で病理組織検査の対象となるのは肝,リンパ節,脾の臓器生検があり,悪性リンパ腫,結核,バンチ症候群,マラリア,カラアザール サルコイドーシス,日本住血吸虫症,トキソプラスマ症,ヒストプラスマ症などの診断がなされる.

生理1

正常脳波(2)—睡眠時の脳波

著者: 本田正節

ページ範囲:P.838 - P.838

 脳波は意識の状態により大きな影響をうける.一般に意識がおかされると徐波となるが,生理的の意識の変化すなわち睡眠の場合は,その深さによっていろいろな脳波所見を示す.睡眠は普通の睡眠(オーソ睡眠;ortho-sleep)と特殊な睡眠(パラ睡眠;para-sleep,逆説睡眠,賦活睡眠)とに分けることができる.

生理2

不整脈と心電図

著者: 山崎登志雄

ページ範囲:P.839 - P.839

 心電図は心臓の電気現象を経時的に記録するので,調律異常の診断解析に最も有効な方法であり,心電図を欠いて不整脈は診断できない.
 正常の心臓刺激生成は洞結節で起こり,心室に向かって正しく伝導される.すなわち,洞結節—心房—房室結節—ヒス束—田原脚—プルキンエ線維—心室筋の順である.しかし心房,房室結節,心室にも刺激生成能力があるため,異所性刺激生成を起こすことがある.これに対し洞結節自体で生成異常を生じたのは,正所性刺激異常という.一方,洞結節から心室筋に至る刺激(興奮)伝導路に病的状態が起こり,正常の伝導が行なわれない場合を刺激(興奮)伝導障害という(表).

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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