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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査16巻3号

1972年03月発行

雑誌目次

カラーグラフ

Pneumocystis carinii肺炎

著者: 内海邦輔 ,   櫛部依子 ,   栗原恵都子 ,   小野寺令造 ,   油井慎曄

ページ範囲:P.232 - P.233

 Pneumocystis cariniiは原虫の一種で,赤血球よりやや小さい.ヒトおよび動物の肺胞内で増生し,Pneumocystis carinii肺炎により,呼吸困難で死亡させる.H・E染色では泡沫様カプセルと内小体を認める.種々の染色法で染められるが,特にグラム染色およびPAM染色法のGrocott変法が推奨される.グラム染色法は,Pneumocystis cariniiの発育環の検討に役だつ.Grocott変法はこのもののごく少数寄生の証明には最もすぐれた染色法である.

技術解説

喀痰の洗浄培養

著者: 三木文雄

ページ範囲:P.235 - P.242

 感染症は,その疾患の原因になっている病原微生物を抗生物質や化学療法剤で攻撃し,それを死滅させるか,あるいはその発育を止めることによって原因を取り除き,疾病を治癒に導くという理想的な治療のできる疾患であるが,その治療を成功させるためには,感染症の起炎菌を正確に把握して,その起炎菌に対して抗菌作用を示す薬剤を感受性検査によって選び出すことがきわめて重要であり,この細菌学的検査がまちがっていれば,治療を理論どおりに成功させることができないことは明らかである.
 血液や髄液のように本来全く無菌の状態で生体内に存在する検査材料や,病巣より直接穿刺によって得られた検査材料では,採取時の無菌操作が守られているかぎり,鏡検,培養によって菌の存在が認められた場合,それが原因菌であると断定してまずまちがいはなく,尿培養の場合でもできるだけ無菌的に採尿して,尿1mlあたりの細菌数を計算し,105/ml以上の菌を尿路感染症の起炎菌と判定してまずさしつかえないとされている.

血小板数の自動計測

著者: 新谷和夫

ページ範囲:P.243 - P.249

 血液学領域の自動化は赤血球数測定に始まりヘモグロビン,白血球数と順次その分野を拡大してきたが,血小板は粘着,凝集,崩壊しやすいという特性に加え,他の血球に比べ著しく小さいなどの事実もあり,その自動計数には多くの困難が予測されていた.しかし,幸いにもこれら諸点は遂次解決され,血小板数の自動計測もようやく実用段階にはいったと考えられるので,測定法を主体に血小板数自動計測の現況を解説したい.なお,現在実用化されている測定法は血小板富有血漿(PRP)を用いるものと全血を用いるものに2大別されるが,歴史的にみればPRP法のほうが古いので,本文でもその順に記述を進めることとする.

Pneumocystis carinii—その性質と検出法

著者: 内海邦輔 ,   櫛部依子 ,   栗原恵都子 ,   小野寺令造 ,   油井慎曄

ページ範囲:P.250 - P.255

1) Pneumocystis cariniiは原虫の一種とされている.
2) Pneumocystis cariniiはChagas (1909)および,Carini (1910年)により発見報告されていた.

私のくふう

尿細胞診において剥離を防ぐ方法

著者: 竹内良三

ページ範囲:P.249 - P.249

 尿中の細胞はスライドグラスへの付着力が弱いため,湿固定により剥離する細胞が少なくない.この対策として次の方法を行なっている.これにより遠沈による沈渣が多く,細胞破損は少なく,標本からの細胞剥離は少なく,パパニコロー染色などによる染色性も湿固定に劣らない.

総説

癌とは何か—吉田富三氏に聞く

著者: 天木一太 ,   吉田富三

ページ範囲:P.256 - P.261

癌細胞の特徴
 —まず,癌あるいは癌細胞の特徴というようなものについて,お話しいただけませんか.
 吉田 癌細胞というのは正常の細胞が癌化したものです.正常の細胞は,ある一定の組織構造をもっている場所に存在するということが1つの特徴です.たとえば,社会は一定の組織構造をもったものですね,オルガニゼイション(organization)という.人はその構造の中で生活している.細胞も同じように構造の中に生活している.そういうものから形式の上でいうと,離脱するということが,細胞が癌細胞になって増殖する場合の1つの特徴ですね.正常の細胞だと,その生活にとって,一定の定まった場所があるわけです.その定められた場所,つまり組織構造の中で生きているんだけれども,そこから離れて1個ずつになっても生活する能力を獲得することが,細胞が癌化するということの大きな1つの特徴ですね.1個ずつ離れたといってもそれは,2-3個が集団を作ったりなんかしていることもあるが,その集団として離れているわけです.こういうことが癌化ということの形の上での特徴,つまり形態学的な特徴ですね.

臨床検査の問題点・38

サイトスクリーニング—特に婦人科の細胞診

著者: 高橋正宜 ,   斉藤多紀子

ページ範囲:P.262 - P.267

‘細胞のふるいわけ’(サイトスクリーニング)は,早期癌の発見に重要な意味をもっていることは周知である.そこで,婦人科の擦過スミア,洗浄スミァをとりあげて,標本の見方を検討し,判定基準や類似した癌細胞との鑑別法などを追究する.(カットは退行変性の進んだ子宮頸管内細胞)

ME機器の安全対策・3

電撃の生理学と安全対策

著者: 伊藤晴夫

ページ範囲:P.268 - P.273

 電気はわれわれの生活に多くの利益をもたらす有益なエネルギー源であるが,その反面まちがった使い方をすると,人命をもうばうおそろしい力をもっている.
 今までにも,家庭電気製品をはじめ電気機器による感電防止のためかなりの注意がはらわれてきているが,最近ME機器に対する安全対策が特に重要視されだしてきた.それは最近のME機器による感電事故の内容,またその対策が他の電気機器に比べてよりきびしくなってきたからである.

論壇

いま思うこと…………

著者: 稲生富三

ページ範囲:P.274 - P.275

 衛生検査技師法が改正されて,臨床検査技師が生まれた.これを機会に,いま一度,自分自身の足下を率直に見直すということは,臨床検査を行なう私どもにとって,あながち無意味とばかりはいえないであろう.
 臨床検査技師が業務として行なって得た成績は,医師が患者の疾病を診断し,それによって治療の方針をたてたり,あるいは予後の判定をするときに,1つの資料として用いるのであって,直接的あるいは間接的に,人の健康保持という大きな目的のために行なっている.これは,ここで述べるまでもない当然のことである.

座談会

北海道の臨床検査室

著者: 鈴木義光 ,   吉田喬 ,   佐々木禎一 ,   林悟 ,   岡山成則

ページ範囲:P.276 - P.283

 昨年8月27-29日札幌で‘日本臨床病理学会’が開かれた.その機会に‘北海道の臨床検査室’と題して病院性格・立地条件の異なる4施設の技師の方々にお集まりいただき,寒冷地・僻地の検査室のもつ中央では考えられない独自な特徴を中心にお話しいただいた.とはいっても一部特殊性を除けば,検査室に共通の問題が端的に話し合われたといってよく,これからの検査室のあり方を考えていくうえでの一助となれば幸いである.

海外だより

—欧米(北欧,東欧,西欧,米国およびカナダ)の病院検査室(7)—チェコスロヴァキアの病院検査室—プラハ市の中央臨床医学研究所生化学部門およびブーロフカ病院臨床生化学部門の印象

著者: 佐々木禎一

ページ範囲:P.284 - P.288

 従来本邦にほとんど紹介されてなかった東欧社会主義共産諸国の病院検査部の見聞記を,数回にわたって報告してきた1-4)が,このシリーズの最後として,チェコスロヴァキア(以下チェコと略)のプラハ市で訪ねた2検査室を紹介したい.
 チェコについては,最近政治的現実に多大の関心をもってきたわけで,私は以前からぜひ訪ねたいと考えていた国であった.したがってその見学の印象は,私なりに訪問最後の共産国としてきわめて強烈であったといえよう.

自動検診システム受診記—愛知県総合保健センターを訪ねて

著者: 紀伊國献三

ページ範囲:P.289 - P.291

 ヘルスケアーシステムの一役を担う自動検診システム(AMHTS)が,わが国でも活躍しつつある.オートメーションとコンピュータの合作ともいうべきこの新しい医療の職場は,いったいどんな‘顔’をしているのか...紀伊國氏にその受診体験記を述べていただく.

レポート

臨床検査用自動器械導入状況に関する調査

著者: 佐藤乙一 ,   篠崎幸三郎 ,   新田進治 ,   大橋成一 ,   広明竹雄 ,   内海邦輔 ,   柴田久雄 ,   丹羽正治 ,   中橋勇次郎 ,   吉沢藤平

ページ範囲:P.292 - P.296

 医学の著しい発達に伴って,臨床検査は人体内の情報を提供するものとしてますます増加の傾向をたどっている.さらに従来は各教室で研究的に行なっていた検査も方法の改良により日常検査可能の種目に加えられるなど検査件数増加にはいっそう拍車がかかっているとも断言できそうである.
 以上述べたような事情により,いままで用手法で行なってきたものがしだいに半自動から自動化へと推移し,そのための器種開発があとを絶たない.

研究

阻害剤を使用したLDHアイソザイム測定について

著者: 岩田一郎 ,   加藤実

ページ範囲:P.297 - P.300

はじめに
 臨床酵素学の進歩に伴い,酵素測定も総活性のみでなく,アイソザイム的に分別することが多くの酵素で提唱され,臨床的にも大いに重要視されてきている.その中で最も古くから扱われているLDHは,Meister1)らにより,その不均一性が発見されて以来,電気泳動,クロマトグラフィー,塩析,抗血清や,熱または阻害剤などによる抑制,補酵素同族体利用能による方法など数々の試みがなされ,現在では電気泳動による方法が最も広く行なわれているが,測定操作上問題もあり,一般的にルーチン化されるに至っていない.
 1966年,Babson2)により阻害剤を使用した,LDHァイソザイム測定法が考案された.すなわち,H型LDHが2M乳酸で,またM型LDHが2M尿素で選択的に抑制されることを利用したもので,この方法を活性測定時に同時に行なえば,LDH総活性値の上昇が,H型かまたはM型によるものかを識別することができる.この方法をキット化したLDHプロファイルを入手する機会を得たので,測定操作上の問題点,正常血清のプロファイル値,プロファイル法と電気泳動法およびHBD/LDH法との比較,血清の保存温度の影響などについて報告する.

白血球像の塗抹部位による差異

著者: 坂内英明

ページ範囲:P.301 - P.304

はじめに
 白血球像の検鏡に際しては,あらかじめ弱拡大下で全視野を観察し,塗抹ならびに染色条件のよいところを確かめてから,油浸にして検鏡する必要がある.いくら塗抹・染色技術に習熟していても,以上の注意を怠ると血球の正しい判定が困難となり,労が多い割に信頼性の乏しい測定値を出す結果となりかねない.
 以上の点を考慮して白血球像百分率をとるときに,塗抹部位によってどのような差異が生じるのか,日ごろより疑問に思っていた.血小板算定(Fonio法)においては,塗抹部位によって測定値に著しい差が生じることはよく知られた事実である.そこで,白血球像の検鏡部位による差異について改めて検討を加えてみたので,その結果を報告する.

農村地帯住人の健康人血液成分の測定値

著者: 村井哲夫 ,   湯原幸治 ,   佐々木司郎 ,   立身政一

ページ範囲:P.305 - P.307

 生活環境の違いにより,種々の血液成分のデータに差のあることは,すでに多くの報告にみられる.著者らは秋田県農村地帯に生活するいわゆる健康人561例(19—62歳)の各種血液成分を測定する機会を得たので,赤血球数,ヘマトクリット(Ht),ヘモグロビン(Hb),白血球数および赤血球恒数について検討し,都市在住者(東京都に働く工員および学生)と比較した結果を報告する.また,従来から生活環境の相違により測定値に差が認められている血清総コレステロール,中性脂肪について調べた結果もあわせて報告する.

ひろば

子に託する

著者: 村田徳治郎

ページ範囲:P.300 - P.300

 世に検査技師多しといえ,5人の子持はちょっと少ないであろう.まして4,3,2,1,0歳と通しナンバーとなるとそうざらにないと自負している私である.‘大変でしょう’と職場のだれからもいわれることであるが,この意味を分析してみると‘奥さんが目を回している’‘さぞや夜昼騒々しいことであろう’‘よく安月給で生活しているな’などであると解している.‘とても俺にはまねのできることでない’と簡単にかぶとをぬぐ同僚,‘結婚もどうしようかと思っている私が恥かしい’と嘆息とも感嘆ともつかない声で告白をするお嬢さん技師.
 事実,結婚適齢期の男女の技師は多い.たとえ結婚しても共稼ぎしなければ生活はむずかしい.したがって,子を作らない仲間はめずらしいことではない.そのために心ならずも収入のよい他の分野に行ってしまう技師もあろう.結婚前だけとか独身時代だけ検査室にいるのだという人を一概に批判できない点もままある.

マレーシアの技師と文通をどうぞ

著者: 下村真耶子

ページ範囲:P.304 - P.304

 私は今,日本青年海外協力隊の一員として,マレーシアのクアラルンプール市にある国立医学研究所(Institute for Medical Research;IMR)血液検査部で働いています.Dr.Ropes (女性の血液学者で,英国で教育を受けた人で厳しいですが理を通す優秀な人です)の下にドクター3人,スタッフ7人,アテンダント3人に日本人の私がおり,また臨床検査技師を養成しておりますので,実習生が常に10人ぐらいいっしょです.
 インド人,中国人,マレー人と日本と違っていろいろな人種が一同に会して仕事をしておりますのは,さわやかでもあります.

新しいキットの紹介

オーストラリア抗原の検出—Au抗原検出試薬キット(電気泳動法用)による

著者: 内田壱夫

ページ範囲:P.308 - P.310

はじめに
 オーストラリア抗原(以下Au抗原)は,1963年Blumberg,B.S.らにより発見され1),その臨床的知見はBlumberg2),大河内4),Prince3)らにより報告され,血清肝炎との関係が明らかにされている.
 Au抗原の検出10)は,免疫拡散法,交差電気泳動法5,7),補体結合反応6),免疫接着赤血球凝集反応で検出できる.

アルカリアゾビリルビンブルー法によるビリルビン測定キットの検討

著者: 山田正明 ,   高木薫 ,   上原宏子

ページ範囲:P.311 - P.315

はじめに
 血清ビリルビンの測定は臨床検査には欠かせないもので,潜在性肝疾患の早期診断と治療に必要なことは衆知のごとくであり,かつ,特に新生児溶血性黄疸の指標として最も重要な検査種目となっている.
 このことから新生児の血清ビリルビン測定の場合,もちろん超微量法が要求され,最近の傾向としても微量法および超微量法が普及しつつある.

質疑応答

精液の運動率について

著者: M生 ,   鈴木秋悦 ,   浜田康生

ページ範囲:P.317 - P.317

問1.精子運動率を求める場合,下記の式で算定していますが,運動が活発な場合は,その他に算定方法があるでしょうか.
精子運動率=運動精子数/運動精子数十非運動精子数×100

Senior Course 病理

三杉論文付図

ページ範囲:P.318 - P.318

悪性腫瘍の電顕による検索

著者: 三杉和章

ページ範囲:P.335 - P.335

 1950年代にはいって超薄切片による病理組織材料の検索が可能になった時,電顕のもつ高分解能によって癌細胞に何か特有な形態的な変化が発見されるのでないかと期待され,多くの研究が行なわれた.しかし,この期待は裏切られ,電顕によっても癌細胞に特有な変化,すなわち正常細胞から明らかに区別される異質な形態を発見することはできなかった.
 しかしこれらの研究によって,悪性細胞の生物学的性状がより深く理解されるようになった.また,光顕では見いだしえない微細な形態的特徴,たとえば分泌顆粒,小胞体,糸粒体の性状や分布の程度,あるいは細胞膜の分化の方向や程度などを観察できるので,その腫瘍の発生母組織(Histogenesis)をより適確に推論することができることも明らかとなった.すなわち,電顕による検索が分類(診断)困難な症例の鑑別診断に有用であることが示された.本稿ではこのような実例を紹介し,実用的な診断面への電顕の応用について記したい.

生化学

放射化分析によるカルシウムの定量

著者: 坂岸良克

ページ範囲:P.331 - P.331

 臨床化学分析法のうちで最も扱いにくい項目にカルシウム(Ca)とマグネシウム(Mg)がある.多くの検査室ではEDTAキレート滴定を行なうか,CaはOクレゾールフタレインコンプレクソン法で比色し,Mgは原子吸光法で求めている.螢光法もあるが,バックグラウンドが不定で十分満足できる測定法とはいいきれない.
 Caは骨や歯を構成するハイドロオキシアパタイトの主成分であると同時に,そのイオンの関与する反応,すなわち血液凝固,筋収縮,神経系の興奮などになくてはならない.さらに組織については細胞間の接合を多糖類とともに維持するのに役だっているものと思われる.血清中のカルシウム濃度を2.5mMとすると,膜透析性成分はイオン型1.33mM,無機可溶性塩型0.32mMの合計1.65mMで,残りの0.85mMはアルブミンとの結合カルシウム0.67mM,グロブリンとの結合カルシウム0.18mMで,これらは非透過性成分に相当する.これら両成分の分離は必ずしも困難ではないが,総カルシウム測定法の必要性が優先すると思うので,ごく最近報告が出はじめた放射化分析法について述べてみたい.

血液

血餅退縮

著者: 安永幸二郎

ページ範囲:P.332 - P.332

 凝固した血液はしだいに収縮して血餅となり,血清を析出する.この現象を血餅退縮(clot retraction)といい,血小板の機能と密接な関係のあることが知られており,血小板減少でも減退する.血餅退縮の機序については血小板中のactomyosin様タンパク(thrombosthenin)の収縮が関係し,血小板中のATP分解によって収縮のエネルギーが供給されるものと考えられている.血餅退縮に先だって血小板の凝集やフィブリン糸への粘着がみられるところから,血小板は一応viableでなければならないと思われるが,この点については若干の異論がある.また血餅退縮は血漿中のフィブリノーゲン量,トロンビン量が関係し,pH,ブドウ糖,陽イオンなども影響をもっている.
 血餅退縮試験は退縮の時間や析出血清の量で表わすことができ,一般には後者が用いられるが,これにもいろいろの表現方法がある.貧血では当然,析出血清量が多くなるからヘマトクリット値で補正しなければならない.以下われわれが用いているTocantinsの変法について述べる.

血清

オーストラリア抗原(2)—検出法

著者: 稲井真弥

ページ範囲:P.333 - P.333

 Au抗原の検出には,最初Au抗原に対する抗体をもっているヒト血清を抗血清として,Ouchterlony法が用いられた.しかし,Au抗原の精製がすすむにつれて,この抗原で動物を免疫した抗血清を用い,また検出率を上げるために感度の高い検査法がいろいろ考案されている.

細菌

Serratia marcescens—特にその色素非産生株の確認と同定

著者: 橋本雅一

ページ範囲:P.334 - P.334

 抗生物質が広く使用されるようになってから,これまでは非病原性と考えられていた菌群による感染症が注目されるようになってきたが,れい菌(Serratia marcescens)もまたこのような菌の1つである.Serratiaというとまず思い浮かぶ性状は,赤色色素(prodigiosin)を産生する腸内細菌ということであろう.しかし,最近の報告では,色素非産生のSerratiaがふつうで,Serratiaと同定された菌株のうち,色素を産生するものは約7%にすぎないという.われわれが検出し,また保存している約40株のSerratiaでは,色素産生が80%以上にみられ,色素産生株が圧倒的に多い.

生理

皮膚電極ペースト

著者: 坂井澄雄

ページ範囲:P.336 - P.336

 生体の電気を導出する際,または生体に電気を加える際に,生体と電極間の接触抵抗を低下させる目的で使用されるのが‘ペースト’で,いわゆるのり状でなくても広義にペーストといわれている.ペーストは脳波,心電,筋電,インピーダンスプレチスモグラフ,オキュログラフ,あるいはディフブリレータなどに広く使われている.
 今回は一般的にみたペーストの役割について,ペーストに要求される性能を通して理解しよう.

業務指導のポイント

検体搬入時の注意点

著者: 橋本雅一

ページ範囲:P.337 - P.337

 病原体の分離同定が的確に行なわれるかどうかを決定する第1の要因は,検体が正しい方法で採取されたかどうか,また適切な状態で検査室まで届けられたかどうか,ということである.すなわち,どのような検体を,どのような時期に,どのようにして採取したか,また検査開始までどのように検体を取り扱ったかによって,検査の結果が大きく左右される.したがって,臨床医と検査室の間で緊密な連絡を保つことが,まず大事な点である.このような注意のもとに検体が採取されたとして,病棟から検体が送られてくる際に,検査室としてどのような注意が必要かについて,気がついた点を,2,3述べてみたい.

グラフ

組織と病変の見方 肉眼像と組織像の対比—泌尿器とその病変(2)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.319 - P.322

腎癌は決してまれな腫瘍ではない.血行性転移が著明なので,時に転移部の症状が先に出ることがある.ここに紹介する例も全身の骨転移があり,生前骨髄腫と診断された.組織学的に,原形質のきわめて明るい細胞が特徴である.
腎の転移性腫瘍も多く経験される.この例は肉眼でもハッキリわかる悪性黒色腫の転移である.原発は右足裏皮膚で,剖検したら,全身臓器に転移があった.
膀胱の粘膜は移行上皮細胞でおおわれている.膀胱のみならず腎孟,尿管,尿道の粘膜も移行上皮であることは忘れてならない.これは尿細胞診のときに問題になる.膀胱炎のときは移行上皮細胞が剥離してしまう.

検査技師のための解剖図譜・3

著者: 三島好雄

ページ範囲:P.324 - P.325

 胃は食道と十二指腸を連結するやや細長い嚢状の内腔の広い器官で,左上腹部に位置し,左後上方から右前下方に向かって斜めになっている(図1).側面からみると図2のように,肝下面と横隔膜から小彎(lesser curvature)に連なる腹膜重複部,すなわち小網が胃を上方からつり上げている.また大彎(greater curvature)と横行結腸の間には腹膜重複部でできた大網(あるいは胃横行結腸靱帯)がある.このように胃の上方は肝臓に連なり,下方には横行結腸が付着し,前壁は前腹壁に接し,後方は網嚢をへだてて膵前面に達する.
 胃の食道との移行部を噴門(cardia),この付近を噴門部,横隔膜に接する部分を弓隆部,中央の大部分を胃体部という.小彎の屈曲部を臨床的に胃角と呼び,これより十二指腸側を幽門部という.幽門部から十二指腸への出口を幽門(pylorus)と呼び,ここには幽門括約筋がある(図3).

検査機器のメカニズム・3

筋電計

著者: 瓜谷富三

ページ範囲:P.326 - P.327

 筋電図は筋の収縮に伴う活動電位を増幅記録したもので,導出の方法は,一般臨床でよく使われる個々の神経筋単位の活動電位を取り出す場合は針電極を刺入し,集合電位を取り出す場合は被検筋をおおう皮膚の上に表面電極を置く.観測には一般にブラウン管オシロスコープが使われ,記録する際はブラウン管撮影装置が用いられる.

検査室の用語事典

一般検査,血液学的検査

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.328 - P.329

14) Filtration fraction (FF);濾過率
 GFR (糸球体濾過値)とRPF (腎血漿流量)との比で,腎を流れる血漿量の何%が糸球体で濾過されたかを示す.正常は約0.2である.糸球体腎炎ではGFRがRPFよりも強く低下するのでFFは下降することが多く,心不全や本態性高血圧などでは,その逆の場合が多く,FFは上昇する傾向がある.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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