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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査16巻9号

1972年09月発行

雑誌目次

特集 負荷機能検査法

座談会 負荷試験

著者: 林康之 ,   石山陽事 ,   佐野玖枝

ページ範囲:P.931 - P.938

負荷試験とは何か
1.負荷試験の意義
 林(司会)まず,‘負荷試験’ということばですがドイツ語でいうBelastungs probenを日本語に直訳したのが‘負荷試験’ということになったんだと私は思っております.

運動負荷心電図

著者: 成沢達郎

ページ範囲:P.939 - P.947

 循環器系の負荷試験として,負荷に用いられる方法は,薬剤によるもの,運動,低酸素,精神的ストレスによるもの,さらに最近では人工ペースメーカーによる電気刺激によるものなどがあげられる.われわれが日常臨床的に利用している負荷試験の目的は,潜在的冠状動脈硬化,いわゆる虚血性心疾患の発見と診断,心疾患患者(虚血性心疾患,弁膜性心疾患など)のいわゆるphysical fitness(体力)の検定,ことばを替えると,心疾患の重症度の客観的な判定と許容される運動量の決定,さらに虚血性心疾患中,心筋硬塞患者の社会復帰のための体力,この場合は主として心力であるが,そのトレーニングなどがあげられる.循環器系の負荷試験はどんな方法を用いても,心血管系の予備力のテストである.

脳波の賦活法

著者: 大高忠

ページ範囲:P.948 - P.957

 脳波の記録は,原則として安静に覚醒した状態で閉眼して行なわれるが,このような安静時記録にはまったく異常がみられないか,あってもごく軽度の異常しか示さないのに,ある種の刺激を加えて脳に特定の生理的・生化学的変化を起こさせると,異常波が誘発されたり,異常の程度がさらに増強されたりする場合がある.たとえば,てんかん患者で発作間歇期の安静時脳波にはほとんど異常がみられないのに,過呼吸を行なわせたときや睡眠時にはじめて明らかな異常波が出現することも少なくない.
 このように,被検者にある種の刺激を加えて脳の生理的・生化学的状態を変えることにより,安静時の記録では明らかでなかった脳波の異常性を顕著にさせる方法を脳波の賦活法と呼ぶ.

フェノールスルホンフタレイン排泄試験(PSP排泄試験)

著者: 石井当男

ページ範囲:P.958 - P.961

 フェノールスルホンフタレイン(Phenolsulfonphthalein以下PSPと略す)は毒性がきわめて低く,体内で代謝を受けず,すみやかに腎から排泄され,また検出が容易であるため,PSP排泄試験は現在最も広く用いられている腎機能検査法の1つである.
 注入されたPSPの約80%は血清アルブミンと結合するため,腎に到達するPSPの約4%が糸球体から炉過され,残りの50-60%は近位尿細管周囲の血管床から尿細管腔内に分泌される.したがって,PSPのクリアランス値は内因性クレアチニンあるいはイヌリンクリアランス値よりも高く,パラアミノ馬尿酸ナトリウム(以下PAHと略す)のそれよりも低い.

濃縮試験・希釈試験

著者: 石井当男

ページ範囲:P.962 - P.965

 腎臓の重要な役割の1つは塩分や水の排泄を調節することにより,生体の体液量および体液の滲透圧,電解質濃度などを一定の範囲に保持することである.水分摂取を制限された揚合や,発汗の著しいときには濃縮された尿が少量排泄され,多量の水分を摂取したときには大量の薄い尿が排泄される.このような尿の濃縮あるいは希釈には,腎臓の微妙な生理機構のほかに,下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモン(以下ADHと略す),副腎皮質ホルモンやその他の内分泌性因子,神経性因子,血行動態の変化など多くの因子が関係している.
 腎の濃縮能,希釈能は,生体の体液の滲透圧の調節に関する機能なので,まず滲透圧の概念と,腎臓の濃縮・希釈の機序を説明し,次いでその検査法について述べる.

Indocyanine Green(ICG)負荷試験

著者: 長村日出夫 ,   藤沢洌

ページ範囲:P.966 - P.970

 肝細胞は,循環血中の内因性あるいは外因性の物質を取り込んで,これらを濃縮して胆汁中に排泄する機能を有している.Bromsulfophthalein,Indocyanine green,Rose bengal,Fluoresceinなどの有機色素は,それぞれ排泄機構に相違はあるが,血漿から肝細胞を経て胆汁中に排出されるので,この性質を利用して肝血流量や肝排泄機能を推測しようとする試みが古くよりなされてきた.
 図1に示す化学構造をもつBromsulfophthalein(BSP)は,1925年White&Rosenthal1)によって肝機能検査に導入され,その後多くの研究の累積の結果,Mateerら2)によって肝排泄機能の標準検査法としての価値が確立された.血中から肝へのBSPの取り込みでは,網内系の関与は少なく,もっぱら肝細胞によって行なわれ,胆汁中への排泄は数時間にわたって認められるので,BSP静注後30分あるいは45分の血中停滞率を知ることは,肝胆道系の障害に対して特異性の高い,簡易でぎわめて鋭敏な機能検査の1つとして,今日でも,その診断的価値はいささかも失ってはいない.

糖質負荷試験

著者: 後藤由夫 ,   佐藤信一郎

ページ範囲:P.971 - P.980

糖負荷試験の種類とその選択
1.負荷糖質の種類
 糖負荷試験には多くの種類があるが,これを負荷する糖質の種類,投与経路,投与回数などから分けると,表1のようになる.実際にはこれらを組み合わせたもの,すなわち経口的ブドウ糖単一負荷試験とか静脈内ガラクトース二重負荷試験というような方法になるわけである1)

パンクレオザイミン・セクレチン試験およびセクレチン試験

著者: 竹内正 ,   石井兼央

ページ範囲:P.981 - P.990

 膵疾患の検査法は今まで血清・尿アミラーゼの測定,ワゴスチグミン試験,エーテル刺激試験などが主として行なわれていたが,その診断的意義については多くの検討の余地が残されていた.特に慢性膵炎,膵癌に関しては必ずしも的確な検査法であるとはいえないので,より特異的な検査法が望まれていた.
 この数年来,わが国でもしだいに普及してきた膵外分泌機能試験にパンクレオザイミン・セクレチン試験(以下P-Sテスト)または,セクレチン試験がある.この検査は最も信頼のおける膵外分泌機能検査と考えられるようになり,全国の多くの施設でルーチン検査法として行なわれるようになってきている.

内分泌機能負荷試験—メトピロン,デキサメサゾン負荷試験を中心に

著者: 武部和夫

ページ範囲:P.991 - P.1002

 最近の内分泌機能検査法の進歩の1つは,下垂体ホルモンをはじめ多くのホルモンがアイソトープを利用した免疫化学的(radioimmunoassay)方法によって測定が可能となったことで,このことによりホルモンの微量定量が可能となった.他の1つは種々な内分泌臓器,特に間脳,下垂体の刺激物が開発され,上記の免疫化学的方法の併用によって内分泌臓器の負荷試験が容易となってきたことである.
 現在内分泌臓器(膵を除く)の負荷機能検査法として,下垂体,副腎皮質系ではデキサメサゾン(dexamethasone),メトピロン(metopirone),パイロジェン(pyrogen),下垂体後葉ホルモン,ACTHが臨床的に用いられている.成長ホルモンではインスリン(insulin),アルギニン(arginine),糖負荷試験が用いられ,甲状腺系では甲状腺刺激ホルモン分泌ホルモン(TRF),甲状腺刺激ホルモン(TSH),甲状腺ホルモン特にtriiodothyronine(T3),抗甲状腺剤,性腺系としては性腺刺激ホルモン分泌ホルモン(LH-RF),性腺刺激ホルモン(LH,FSH),クロミフェン(clomiphene),プレマリン(premarin)などの負荷試験が用いられている.その他,下垂体後葉,副甲状腺,レニン,アンジオテンシン,アルドステロン,副腎髄質などの機能検査にも負荷試験が用いられている.

起立性タンパク尿

著者: 海老原昭夫

ページ範囲:P.1003 - P.1004

意義
 一見正常にみえる人,特に思春期の人に昼間,起立時にタンパク尿が出現し,夜間臥床中に消失することがある.これを起立性タンパク尿(orthostatic proteinuria)と称する.また体位性タンパク尿(postural proteinuria)と呼ばれることもある.器質的腎疾患があってすでに存在するタンパク尿が,起立位をとることによって増加するような場合もあるが,これは起立性タンパク尿とはいわない.また過激な運動,精神感動,うっ血性心不全などで起こるタンパク尿も機能的タンパク尿(functional proteinuria)と称され,起立性タンパク尿とは区別される.
 起立性タンパク尿は起立時にみられるわけであるが,その出現には体位が最も重要である.一般には前彎位(lordosis;うしろにのけぞった姿勢)で著明となり,立位の前彎位で最高となるが,臥位の前彎位でも陽性となることがある.ふつう,立位でも臥位でも,後彎姿勢をとるとタンパク尿は消失する.タンパク尿の程度は一過性にはかなり高濃度の時もあるが,ふつうは1日1g以下である.電気泳動ではアルブミンが多く,尿沈渣で赤血球,白血球,上皮細胞,円柱などが増加することもある.

体位変換による血圧の変動

著者: 海老原昭夫

ページ範囲:P.1004 - P.1005

 血圧を調節するメカニズムと,これに関与する因子は多岐にわたり複雑である.体位もその因子の1つで,体位によって血圧はかなりの変動を示す.また血圧は時々刻々と動揺しやすく,ことに高血圧症の中で最も頻度の高い本態性高血圧症においては血圧の変動は著しい.

テレメーターによるスポーツ活動中の心電図記録について

著者: 宮川政久 ,   北村和夫

ページ範囲:P.1006 - P.1008

方法および装置の沿革
 運動中の心電図の無線搬送の試みは,Breakell(1949),Holter(1957)らによってRadioelectrocardiographyの名称によって試みられ,本邦においても徳島大 岡,宇都宮(1958)らによって,運動中の心拍数の変動などについてみごとな業績があげられてきた.しかし,これらはいずれも真空管増幅器によるために,発信機の重量,振動による影響,波型の特性など,いろいろな制限下にあり実用的でなかった.
飛躍的に進歩がなされたのは,トランジスターの開発による小型化以後であり,わが国においては著者らが臨床使用に適する心電計基準に合致したものとして発表したもの(1959)が最初である,その後,各心電計メーカーがこの種の無線心電計,またパルスメーター(心拍計)を製作し,実用・普及の段階に至った.1964年の東京オリンピックの選手強化にはテレメーターを駆使したトレーニングが行なわれ,各国のコーチ陣の目を見はらせた(図1A).

血色素尿,寒冷凝集素,寒冷溶血素

著者: 三輪史朗

ページ範囲:P.1008 - P.1011

血色素尿(Hemoglobinuria)
 血色素尿はまず血尿と区別することを要する.血色素尿は透明で鮮紅色(オキシヘモグロビンの状態のとき)またぱ濃褐色(メトヘモグロビン)を呈し,遠心しても色調に変化なく,沈渣に赤血球を認めない.酸性尿の場合にはただちにメトヘモグロビンになるので濃褐色調を呈し,アルカリ性尿の場合には鮮紅色を保つ.ラキサトール(下剤),大黄(下剤),サントニン(駆虫剤)などの服用時は,尿がアルカリ性のとき紅色を呈するので誤りやすいが,酸を加えると退色するので区別できる.
 血色素尿は赤血球が多量に血管内で壊れるとき,すなわち血管内溶血のときに生ずる.溶血の起こり方には血管外溶血,すなわち障害赤血球ないし老化赤血球が肝,脾,骨髄などの細網細胞に貧食され処理される場合と,血管内溶血による場合とあり,ふつうの処理機転は血管外溶血であり,血中に大量の血色素が出ることはない.血管内溶血を起こすのは後述するような特別な場合に限られる.

Raynaud病と指先脈波

著者: 三島好雄

ページ範囲:P.1012 - P.1013

 四肢先端の小動脈の発作的収縮によって指趾の皮膚色調が間歇的に変化し,蒼白(pallor),青紫(cyanosis),紅潮(rubor)などの状態を呈するものを,Raynaud現象と呼んでいる.Raynaud現象のうち,基礎疾患がなく,純粋に小動脈の収縮によって起こるものをRaynaud病といい,若い女性に多く,両側の指に対称的に発生するのが特徴である.また,外傷,振動工具の使用,神経疾患,重金属中毒,膠原病などの際にもRaynaud現象の合併することがあり,これらを2次Raynaud症候群と総称している.その発生機序から,Raynaud現象はこのように2つに分けられているが,Raynaud現象という指先循環異常の面から検索してみると両者の間に差がない.
 Raynaud現象を呈する指先では,1,2月の寒い時期には脈波の波高が減少し,蒼白発作の際には脈波は消失するが,春先から夏にかけて気温が上昇すると脈波の波高も増加し,波形も正常となって健康人と区別しにくくなり,秋口から冬になって気温が低下するとともに再び血管収縮を起こすというように,指先脈波に季節変動がみられる.また,患者を静臥させて指先脈波を記録しながら室温を変化させてみると,20°−25℃の室温では健康人と変わりないが,室温がそれ以下になると脈波の波高が小さくなり,15°−18℃になると脈波が消失する.再加温に際しては,室温が20℃前後に上昇すると脈波が出現して,波高も急速に増大する.

カラーグラフ

赤血球系細胞の形態—Ⅱ.異常像

著者: 野村武夫

ページ範囲:P.928 - P.929

今回は,異常な形態を呈する赤芽球を選んだ.悪性貧血の巨赤芽球,鉄欠乏時の赤芽球,ヘム合成に障害がある担鉄芽球性貧血の赤芽球,および腫瘍性変化をきたした赤白血病の赤芽球である.いずれも骨髄穿刺液塗抹標本上の所見であり,染色法は特に断わらないかぎり,Wright染色により,倍率はすべて同じに統一してある.
これらの赤芽球の形態学的特徴は,さきに解説を加えたとおりであり,正常の赤芽球と対比すれば,異常像がよくわかるはずである(本誌16巻8号,カラーグラフ,技術解説参照).

私のくふう

加圧によるアンモニアガス駆出法を用いたモノカラー(ホイルフィルム)現像装置

著者: 菅沼源二

ページ範囲:P.961 - P.961

 医学会などをはじめとする各種講演には多くスライドが用いられるが,最近ではネガからのコンタクトプリントを得るのに,乾式現像法を用いる便利さのためと,濃紺のバックグラウンドに透明線画が鮮明なコントラストを示し,美しいスライドを作ることができるのでジアゾフィルムを用いたカラーホイル現像を行なうものが多く見られるようになった.
 この方法は型どおりにネガフィルムを作り,ジアゾフィルムを密着させて超高出力の螢光灯に露光したのち,ジアゾフィルムをアンモニアガスにさらすことにより現像陽画を得ようとするものである.

ゲル内沈降反応における中性洗剤処理法

著者: 富田有祐 ,   城宏輔 ,   高橋紀久雄 ,   新藤龍也 ,   田沼一成 ,   竹下隆裕

ページ範囲:P.1031 - P.1031

 私どもの臨床検査室では,免疫不全症候群のスクリーニングテストの1つとして,免疫グロブリン(γA,γG,γM,γD,γE)の定量を行なっている.測定方法は市販の抗血清とアガロースから寒天ゲル板を作り,γA,γG,γMはDirect single radial immunodiffusion法,γD,γEはIndirect single radial immunodiffusion法を用いているが,沈降輪の直径は家庭用液体中性洗剤に浸してから測定している.中性洗剤で処理すると沈降輪の輪郭がきわめて明瞭に直視でき測定しやすくなる.

ME機器の安全対策・9

手術室の安全対策

著者: 三浦茂 ,   三浦勇

ページ範囲:P.1014 - P.1018

 手術室は密閉された環境をもち,そして多くは意識のない患者を収容し,手術を行ない,器具や薬品を操作する.引火性のガスや薬品を用いる機会も多い.
 したがって手術室の安全対策を考える場合には,

ひろば

臨床検査の醍醐味―臨床検査で診断が確定した症例

著者: 中西寛治

ページ範囲:P.1018 - P.1018

 1)開業医から虫垂炎の疑いで当所に診断の依頼があった.中学2年の女子で,おそらく腹痛を訴えたのであろう.母と一緒に来所した.
 さっそく,白血球算定をせよとのことで算定したところ,18万余/mm3であった.そこで外来婦長に結果を渡たしたところ,電話で医師に連絡していたが,1万8000と言おうとして読みにくく,よく見るとケタが1つ違うことに気づき,18万余である旨告げた.

公害物質の検査法・2

水銀

著者: 喜田村正次 ,   住野公昭

ページ範囲:P.1019 - P.1026

 化学物質による公害あるいは環境汚染を解明していく段階で,分析の占める位置はきわめて高い.水俣病に始まる水銀汚染問題でも分析法の開発,発展とともに不明な点が明らかになってきたといっても過言でない.環境汚染指標や食品中の水銀の含有量を示す場合でも,現在でこそ総水銀,有機水銀を別々に分析し,検査することを要求されることが多いが,これもここ数年の分析の発達のためである.
 しかし,総水銀と有機水銀と分けて定量することの必要性は単に分析手段の発達からの帰結のみではない.これを理解するには水銀の毒性についての若干の知識が必要である.

検査室の常用機器・3

冷蔵・冷凍庫

著者: 白戸四郎

ページ範囲:P.1027 - P.1031

 検査室にとって冷蔵庫は最もありふれた機器の1つとなっているが,考えてみるとこれは取り残されていた領域であり,数多くの問題点をかかえているのである.冷蔵にしろ冷凍にしろ,われわれが検査室で取り扱うものは生体試料やその試薬であり,変質を避ける目的で使用する場合が多いが,そのため使っている冷蔵庫,冷凍庫は一部のディープフリーザーを除いてはほとんどが家庭用か営業用のものであって,目的とした対象が違うのである.ここに根本的な問題があるが,使うほうもほとんどそれを意識していないのが現実であろう.本誌ではすでに数回にわたって本題に近い内容を取り上げているので1-3),ここではなるべく重複を避け問題点の指摘と機種選定にあたっての参考的なことを主として述べたい.

新しいキットの紹介

血清トリグリセライド測定キット(リパテスト)の検討

著者: 曽根淳 ,   福井巌

ページ範囲:P.1032 - P.1035

はじめに
 最近,動脈硬化症と血清トリグリセライドとの関係が注目され,測定されることが多くなった.血清トリグリセライドの測定方法としていろいろの方法が行なわれているが1),大別すると,計算によって求める間接的な方怯と,直接トリグリセライドを測定する方法とに分けられる.間接的な方法としてはAlbrink1)の方法やBragdon1)らの方法が用いられていたが,測定方法が複雑なこと,測定誤差が大きいなどの点より用いられなくなった.直接的な方法としては,トリグリセライドをケン化し,生じたグリセリンを過ヨウ素酸で酸化してホルムアルヒドとし,これに硫酸化クロモトロープ酸を加えて発色させる,Van Handel and Zilversmitの方法やCarlson and Wadström1)らの方法が行なわれていた.
 最近,ホルムァルデヒドをアセチルアセトンとアンモニァの存在下で発色させる方法1)や,グリセリンを酵素学的に測定する方法1)も行なわれるようになった.

新しい機器の紹介

ポラロイドならびにズームレンズ着装顕微鏡の使用経験—特に染色体分析法への応用について

著者: 水野晶子 ,   前島義臣 ,   反町固

ページ範囲:P.1036 - P.1042

はじめに
 染色体検査法は最近一部の臨床検査部門に取り入れられ,研究の段階から応用への域に進展した感が深い.特に先天性異常,白血病,悪性腫瘍などの検索法に適用することはきわめて意義あるものである.
 ヒトの染色体数は既知のごとく22対の常染色体と1対の性染色体を有し,XY,XXとそれぞれ男性,女性と区別し,46本の染色体で構成されていることはDenver (1960),London (1963),Chicago (1966)の国際会議で決定されている.

検査技師のための解剖図譜・9

骨盤内臓器

著者: 三島好雄

ページ範囲:P.1044 - P.1045

 骨盤内にある臓器のおもなものは,膀胱・直腸のほか,男子では前立腺・精巣,女子では子宮・卵巣などである.

検査機器のメカニズム・9

自動血球計数装置

著者: 瓜谷富三

ページ範囲:P.1046 - P.1047

1.自動血球計数
 血球計数は検査件数が多く,検査員の疲労や測定精度がしばしば問題になっていたが,自動血球計数装置が開発されて,今日では臨床検査室にこの装置が広く使われるようになった.最近ではコールターカウンターS型やTechnicon Cell Counterのように検査過程をすべて自動化する方向に進んでいる.
 自動血球計数装置は血球検出機構とその計数部から構成されている.検出機構からみて下記のように大別することができる.

検査室の用語事典・9

血液学的検査

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.1048 - P.1049

49) Rosette formation;ロゼット形成
 LE細胞現象陽性の標本には,LE細胞因子が好中球の核に作用して,これを均一無構造の封入体(LE体)とするが,このLE体をとりかこんで貧食細胞(主として好中球)が集まっている像をみる.これを花冠状集合またはロゼット形成という.また白血球を中性紅・ヤーヌス緑の超生体染色を行なうと,単球系細胞では核の陥凹部位に中性紅が集まってみられる.このものを中性紅の花冠状配列(Neutralrotrosette)という.

Senior Course 生化学

酵素反応に使われる緩衝液

著者: 坂岸良克

ページ範囲:P.1051 - P.1051

 酵素活性を求める際にどの緩衝液を使ったらよいかはその酵素の至適pHによって決められることが多い.それでも研究者によってはそれぞれ好みの緩衝液があって理屈どおりには使い分けられていない.
 血清アルカリ性ホスファターゼを例にあげると今まで使われてきた基質と緩衝液は表1のとおりである.

血液

血小板抗体(2)—血小板補体結合試験

著者: 安永幸二郎

ページ範囲:P.1052 - P.1052

 補体結合試験の原理は,抗原物質(ここでは正常血小板)に抗体を含むと考えられる検体(ここでは患者血清)と補体を加えて反応させたのち(第1相),抗ヒツジ溶血素で感作したヒツジ赤血球浮遊液を加えてインキュベートして(第2相),溶血が起これぼ,第1相で補体が十分残っていたこと,つまり抗原抗体反応は起こらなかったと推測されるし,溶血が起こらなければ,第1相で補体は消費されたこと,つまり抗原抗体反応が起こったことを意味し,検体中には抗体が存在したものと推定するのである.

血清

補体の概念

著者: 稲井真弥

ページ範囲:P.1053 - P.1053

 補体に関する研究は最近10数年間に著しく進展し,補体についての考え方は大きく変わりつつある.このうち特に補体成分とその反応の順序に関して簡単に解説する.

細菌

腸内細菌としてのYersinia属

著者: 橋本雅一

ページ範囲:P.1054 - P.1054

 ペストの歴史は,Dionysiusがリビア,エジプトおよびシリァで流行したある恐しい伝染病を記載した紀元前3世紀にまでさかのぼることができるが,それ以後19世紀の後半まで,人類に対して非常な脅威を与えてきた.そして,その原因がペスト菌という小さな微生物であることが知られたのは1894年6月20日のことであって,その発見は当時ホンコンで流行したペストについて調査をすすめていたスイスの学者Alexander Yersinによって行なわれ,彼はこの菌をBacille de la Pesteと呼んでいた.
 北里もまたペスト患者からその原因菌としてある微生物を見いだしたと報告したのは同じ年の7月7日のことであったが,北里の報告した菌はグラム陽性で,弱いが運動性を示すものであった.その後,Yersinが発見した菌に対しては,Pest bacillus,Bacterium Pestis,Bacillus Pestisなどと呼ばれたこともあったが,ここで注目したいのは1944年にすでにYersinia Pestisという名前が与えられていたことである(van Loghem).

病理

病理組織標本(1)—固定から包埋まで

著者: 松岡規男

ページ範囲:P.1055 - P.1055

 病理組織標本作製法について,特に新しい方法はないが,その過程について再考する.

生理

計測用体表電極(6)—脳波用電極

著者: 深井俊博

ページ範囲:P.1056 - P.1056

 脳波測定において特に電極に関係する条件としては,電極材質,電極のり,電極固定法,電極の配置などが考えられるが,これについては本誌(vol.15)のシニアコースでも取り上げられているので,ここでは特に電極のりと固定法について概説する.

業務指導のポイント

電話応対と検査室

著者: 志賀フサ子 ,   舘野捷子

ページ範囲:P.1057 - P.1057

1.電話応対のABC
 ‘お早ようございます,××検査室です’.今日の仕事がまた始まる.第一声のよしあしはその日の仕事の進行に少なからず影響する.たかが電話ぐらい……と思っていないだろうか.検査室では毎日電話をかけ,受けそして臨床や他の検査室との間に,オーダーやデータ報告がいきかっている.
 車の事故は免許をとって間もないころよりも,運転に慣れてきたころが多いといわれる.電話のトラブルもこれと同じで‘自分はベテラン’という慢心が思わぬ失敗を招く.‘さようでございますか…’などといいながら電話器の前でおじぎをしている人がいる.電話は声とことばのやりとりで,姿は見えないからおじぎはむだなことだと思われているが,声は心のひびきであり,同じ声でもそのときの感情が敏感に相手に伝わる.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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