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雑誌目次

論文

臨床検査17巻10号

1973年10月発行

雑誌目次

カラーグラフ

API試験によるグラム陰性杆菌の同定

著者: 小栗豊子

ページ範囲:P.1058 - P.1059

API試験は細菌の生物学的性状検査の簡易法として考案されたものであり,ここに示した‘API−10 screen’の他にも使用目的によりいくつかの性状検査のセットがある.本法は培地作成の一連の操作が省け,また生培地に比べ保存が容易であることから,大小の検査を問わず使用できる便利さがある.使用の際には被検菌株より菌液を作成し,これを毛細管ピペットを用いてシートにプロットされた管状の部分に接種し,37℃,24時間培養後判定する.(「研究」79ページ参照)

技術解説

浸透圧とその測定法

著者: 太田隆志 ,   菊池聖司 ,   江良和雄 ,   太田和夫

ページ範囲:P.1061 - P.1070

 生体は,ほぼ60%を水で占められており,生体のほとんどの機能はこの体液の中で営なまれている.体液の中に溶解している個々の物質によって起こる生化学的代謝反応も重要な意義をもつことは言うまでもないが,体液全体として示す物理化学的な性質を知ることもきわめて重要な意味をもつ.ここで物理化学的性質とは,溶解している物質の粒子の数,溶媒としての水の性質などによって決定されており,生体の細胞膜が半透膜であるため,そこに生じる体液の浸透圧が生体の機能に与える影響はきわめて大きい.
 浸透圧の測定が容易に,かつ正確にできるようになってきたが,まだまだごく限られた分野でのみ行なわれている観が強い.しかし浸透圧の測定が臨床面での日常の診断・治療に大きな役割りをもっているので,浸透圧計の原理,構造およびその操作などについて解説し,原理的な面にも触れてみたいと思う.

臨床化学簡易測定装置

著者: 奥田清

ページ範囲:P.1071 - P.1078

 医学・医療の進歩ならびに諸社会制度の変革は,疾病構造の変化,人口構造の高齢化を加速せしめたことは諸統計の示すとおりである.そしてこの現象は,医学そのものにも影響を及ぼし,従来の形態学中心の医学から,豊富な臨床情報を背景に,疾病を機能変調としてとらえる医学に変遷せしめたともいえる.もちろんこれを支えたものの1つに,臨床検査の進歩発展があったことはいうまでもない.
 聴診器の発見によって理学的診断法が完成され,またX線の導入によって診断学は飛躍的な発展をとげたといわれる.しかし,いずれにしても従来の診断法は,そのデータの判読・解釈に経験的な要素が大きかったといわねばならない.これに対し,最近における各種分析法の進歩は生体からの臨床情報のとり出しを容易とし,詳細で精度のたかいデータの入手を可能にするとともに,その計量化にも着々と成功をおさめてきた.

アミノ酸尿の分析

著者: 北川照男 ,   堀江文子 ,   小出朝男

ページ範囲:P.1079 - P.1089

 尿中に排泄されているアミノ酸量が,正常よりも著しく増量している場合をアミノ酸尿という.一般にアミノ酸尿はその成因によって,臨床的にover-flow型,non-threshold型,specific re-nal型,non-specific renal型の4型に分類されているが,その成因を明らかにするためには,血清アミノ酸と尿アミノ酸を同時に分析する必要がある.
 したがって,アミノ酸尿の分析とはいっても,血清アミノ酸と尿中アミノ酸の両者の分析方法について触れる必要がある.

私のくふう

毛細管ヘマトクリット検査の能率化—不用になったサンズピペットを使って

著者: 黒河和彦

ページ範囲:P.1089 - P.1089

 最近血液検査にしめる毛細管ヘマトクリットの検査が多くなりました.検査術式が簡単で,高速遠心器さえあれば気軽にできること,また,ドクターサイドからすれば短時間に再現性のよいデーターが得られることが魅力なのでしょう.そこで私は不用になった(管理上のミスで先端を破損)サンズピペットを用いてスピーディに採血することができるようになりました.慣れればどなたでも早くできるようになります.

総説

人畜共通感染症—Zoonoses

著者: 今泉清

ページ範囲:P.1090 - P.1096

 人畜共通感染症(人畜共通伝染病—このほうがむしろ広く用いられている)とは,脊椎動物とヒトとの間に自然に移行しうるすべての病気または感染をいう.人畜共通感染病では,ヒトと動物との結びつきを明らかにすることがポイントである.したがって,病原,臨床,病変,治療などの細部についてはそれぞれの専門書にゆずるべきである.
 人畜共通感染病という言葉はだれがわが国で初めて用いたのかよくわからないが,ギリシヤ語のanthropozoonosesの訳で,初めは人獣伝染病であったが,いつごろからか獣より畜のほうが多く用いられるようになった.Anthropozoonoses(anthropo—ヒトの意味の連結形)は厳密には,ふつう動物に発生している感染病がヒトにきた場合の表現で,これに対して,zooanthroponosesはふつうヒトに発生しているものが動物にきた場合の表現である.現実には,zoonosesが国際的に広く用いられている.日本語は,獣,畜,感染病,伝染病,感染症などまことに多様すぎるので,この際片かなのゾーノーシスを提唱する.

臨床検査の問題点・56

臨床化学の半自動化

著者: 大場康寛 ,   亀岡満子

ページ範囲:P.1098 - P.1103

自動分注器,自動希釈器,比色計など臨床化学検査には,機械と人がなかばして参加するいわゆる半自動化機器がある.用手法,全自動化法に比べて,能率面や適応面で大きなメリットをもつが,一方機械に対する技師の姿勢や実際面に問題がないわけではない.(カットは自動希釈器)

異常値の出た時・10

尿素

著者: 高橋進

ページ範囲:P.1104 - P.1108

 尿素は生体内におけるタンパク代謝の終末分解産物で,主に腎を介して排泄され,比較的少量ではあるが重要な物質である.
 尿毒症では尿素が血中に蓄積するとの考えは,約150年前にすでに明らかにされた1)

臨床化学分析談話会より・3<関東支部>

現場からの問題提起

著者: 菅野剛史

ページ範囲:P.1109 - P.1109

1.精度管理と‘養われた目’
 4月は例年検査室に新人を迎える時期である.昨年の4月には若手,中間層の技師が,検査室のあり方,臨床化学のあり方について抱負を述べ,斎藤正行先生をはじめ丹羽,田村ら諸先生からの助言と討論の中から未来の検査室像を探りだそうという試みがなされて好評であった.4月は何をというのは談話会に限らず世の常かもしれない.そこで今年は現場からいかに問題点を見出し,それを解決していくかについて啓蒙の意味も含めて北村元仕先生に‘臨床化学分析の現状と展望’という題の講演を依頼したのである.以下,その内容の要旨を示す.

論壇

未来を築く臨床検査技師であるために

著者: 笠原和恵

ページ範囲:P.1110 - P.1111

 電子工学の長足の進歩に伴い,医療の器械化,自動化,コンピューターの導入など臨床検査は,最も大きな流動期を迎えようとしている.また,一方,広域医療体制が望まれ,医療情報システムのネットワークをつくる計画が進められ,医療のシステム化,データバンクの問題が論議される今日このごろである.

座談会

抗凝固剤使用上の問題点

著者: 安部英 ,   日比谷淑子 ,   松村義寛 ,   松橋直 ,   高橋昭三 ,   天木一太

ページ範囲:P.1112 - P.1121

すべての検査は,サンプル採取後すぐに行なうのが最も望ましいが,実際はそうはいかない.おもに血液検査に使われる抗凝固剤は,検査項目によっては使い分けが必要である.EDTA,ヘパリンを中心に,血液がどう凝固し,サンプルにどう影響するかを検討し,それらの正しい使い方を求める.

化学検査のうつりかわり・10

尿酸

著者: 柴田進

ページ範囲:P.1122 - P.1127

尿酸定量の特性
 尿酸は下の式に示すようなbiureide(尿素NH2CONH2のHを酸基で置きかえたものをureideという)で,それはmurexide test(試料に少量の硝酸を加えて磁製の皿にいれ,重湯煎上で蒸発乾燥させ,放冷後注意してアンモニアをすこし加えるか,その蒸気をあてるかすると,残渣が深紅色に発色する)によって確認される.過マンガン酸カリウムで酸化されてC1—C6—C5の炭素結合を切られてアラントイン(allantoin)になる.もちろん尿酸を特異的にアラントインに分解する酵素も存在し,これはウリカーゼ(uricase)と呼ばれている.
 この酵素は,はじめ哺乳類の肝臓のエキス分のなかに検出されたが,その後細菌や酵母から抽出された.

研究

Immunoplateによるβ-リポタンパク質の定量

著者: 伊藤宜則 ,   佐々木実

ページ範囲:P.1128 - P.1130

 リポタンパク質測定の臨床的意義はFredricksonらの家族性高脂血症の型分類が提案1)されて以来,ますます認識が深まってきた.この分類は特にβ-領域リポタンパク質のβ-リポタンパク質とpreβ-リポタンパク質の定量が不可欠なものとなっている.
 β-リポタンパク質の定量は,超遠心2)や電気泳動法3)などの分画法による場合と免疫拡散法4,5)や化学的方法6,7)などにより測定されている.

グラム陰性杆菌の同定検査法としてのAPI試験と慣用法との比較実験(カラーグラフ参照)

著者: 小栗豊子 ,   飯島千秋

ページ範囲:P.1131 - P.1134

はじめに
 臨床材料より検出されるグラム陰性杆菌は腸内細菌科のものがほとんどであり,この中にはShigella, Salmonellaなどのように菌種の同定がそのまま病気の診断の決め手となる重要なものが含まれている.わが国の細菌検査の歴史を見てもこれらの菌種の分離,同定検査は最初に手がけられており,現在ではその方法も精確度の高い安定した検査システムが日常化されている.しかし,細菌検査は他の検査に比べると培地作成などの準備のために一定の設備を必要とし,多くの労力が費やされており,この方面の簡易化がすすめられてきている.腸内細菌科の菌種の同定検査においてもディスクを用いるビオテスト,短冊型濾紙を用いたPath-Tec,種々の生培地を1本のチューブにおさめたEnterotubeが紹介されているが,これらの方法は従来の方法と比べると設備,操作の面では大きく改善されたが,中には従来の方法との一致率が良くないことや,高価であるなどのことがあり,日常の同定検査をすべてこれらの方法に置き替えるにはなお問題が残されている.
 私どもは最近‘APH試験’による腸内細菌の菌種の同定検査の検討を依頼されたので,慣用法との比較実験を行なった.

新しいキットの紹介

アルカリアゾビリルビンブルー法によるビリルビン測定新キットの検討

著者: 八島弘昌 ,   広本淳子 ,   植木弘明 ,   松田由美子

ページ範囲:P.1135 - P.1138

はじめに
 血清ビリルビンの測定法は1913年Van den Bergh1)がビリルビンにジァゾ試薬を加えてアゾ色素を発色させる方法を発表して以来1936年Jendrassik Cleghorn法2),1937年Malloy-Evelyn法3)が相次いで発表されビリルビンの代表的測定法となった.両法ともに多量の血清を必要とし,試薬特にメタノールの純度によりタンパク質が白濁し,バラツキが大きくなる欠点があったが,1961年Michaëlsson4)がこれらの欠点を補う改良法を発表した.
 今般,著者らはオートァナライザーに採用されているJendrassik Grof法の改良法であるアルカリアゾビリルビンブルーの反応を用いて,比色定量するビリルビン測定キット‘Bilistrate’(Warner Lanbert社)について検討を行ない,当院で日常検査に採用しているEvelyn-Malloyの改良法で比較的信頼されているE社キットと比較検討したので報告する.

GOD-Perid法による血糖の特異的測定法の評価

著者: 池辺正 ,   佐々木禎一

ページ範囲:P.1139 - P.1141

はじめに
 血糖測定法の歴史は古く,重量法・滴定法はもちろん,多くの還元反応によるような諸測定法はだんだんと過去のものとなり,現在の主流は酵素測定法とo-Toluidine法にしぼられてきている1)
 これらの測定法は微量化・迅速性・簡易性という日常検査用としての要望に応えているばかりでなく,その高い特異性のために広く用いられているともいえよう1).しかし,Glucose oxidase(以下GODと略記)を用いる酵素法2)もすべての点で満足すべきところに到達しているわけではない.たとえば,GODによるブドウ糖の酸化は特異的であったとしても,それに続く共軛酵素(Indicator enzyme)反応系と有色色素生成という後半段階では必ずしも特異的でなく,問題が残されている.したがって多くの試みは,後半いかに特異的な反応-発色を組み合わせるかという点の改良を目標にしたものが多い.

霞が関だより・17

医療関係者の身分法・2—‘ことば’の背景

著者: K.I

ページ範囲:P.1142 - P.1142

 前回は,現在制度化されている医療関係者の身分法のうち,職種に関しての定義と,その職種の業務とする範囲について述べるとともに,特に医師については,WHOの資料の一部を掲載するなどして,この分野における世界的な傾向も紹介してみた.今回は少し角度を変えてその続きを記してみることとした.
 医療関係者と言えば,普通の場合には医師をはじめとするいわゆる西洋医学の従事者を指す.そのうち,診療の補助部門を担当する職種のことを,一部ではアンダーメディカル(Under Medical)ということばで表わしているが,大部分はパラメディカルスタッフ(ParamedicalStaff)あるいは単にパラメディカルということばで表わしているのが現状であろう.このパラメディカルということばは,いわゆる合成語であって,英語辞典にも載つていないのはご承知の方も多いのではなかろうか.さてこの合成語は,いろいろ誤って解釈されるというところから,WHOでは,医学に関する各種保健業務の中での用語としては使わないとなったということである.WHOというところは,社会制度の異なった世界各国の集まりであるところから,1つのことば(この場合は用語)にしてみても,受け取り方に様々のものがあることは十分想像できるところから,けだし当然のことと言ってよいと思う.

質疑応答

血液検査の測定値について

著者: 新谷和夫

ページ範囲:P.1143 - P.1143

 問 血色素量,ヘマトクリット値,赤血球数などの測定値は同一個体から採血した血液であっても,その採血部位によって差があります.耳朶血,静脈血,指頭血の順に低くなり,しかも採血時の体位が立位であるか臥位であるかによっても違ってきます.それぞれの間の差がおよそ10%であるとすれば,その測定値のひらきは無視できない数値であると考えます.それで,
1)成書に記載された正常値は耳朶血,静脈血,指頭血のいずれの値として理解したらよろしいでしょうか.貧血の有無を知るために測定した患者の成績を正常値と比較する場合に困惑を感じます.

走査電顕の目・10

骨髄巨核球(Megakaryocyte)

著者: 小川哲平

ページ範囲:P.1145 - P.1146

 巨核球系に属する最も幼若な細胞は,巨核芽球(me-gakaryoblast)で直径15-50μで原形質は好塩基性で無顆粒状で,核は網状のクロマチンを示し,数個の核小体を有する.
 前戸核球(promegakaryocyte)は核は円形,卵円形ないし不正形を示し,一部では分葉傾向を示してくる.原形質は好塩基性で,顆粒状をなし,また微細なアズール顆粒を認める.

シリーズ・一般検査 尿検査・4

尿の定性検査

著者: 猪狩淳

ページ範囲:P.1147 - P.1148

体内での代謝産物,老廃物が尿中に排泄される.またときには体内に蓄積されたある種の病的成分,物質が尿に含まれ体外に排泄される.
尿検査,特に定性検査は尿中にいかなる物質があるのかわからないままで検査されるのである.これが大切な特徴といえよう.また尿中には定性反応を妨害したり,非特異的な反応をきたす未知の物質が混在している.検査従事者はこの点を常に念頭におき,だれでもできる簡単な検査とバカにしないでほしい.

私たちの検査室

検査を支えるものは人である—岩手医科大学中央臨床検査部

ページ範囲:P.1149 - P.1152

この検査部の中央化は,昭和35年に始まり,昭和45年新病棟の完成とともに,患者検査は新外来棟2階の中央,検体検査は旧病棟2階の一画を占め,現在45名の部員を擁するまでに発展した.この特殊な配置の長短を補うため,エアーシューター,集中採血制など,きめの細かいくふうがこらされている.
とりたてて紹介すべき新しい自動機器も,独自なシステムもないが,部員の平均在職期間が長いのは,単に居心地の良さによるよりも,精度管理に裏付けられた技術への自信と,開発研究の奨励に促きれた創造への意欲による面が大きいのではなかろうか.

検査と主要疾患・10

貧血

著者: 中島弘二

ページ範囲:P.1154 - P.1155

1.貧血とは
 正常造血においては図に示すように,幹細胞に造血因子エリトロポイエチンが作用し赤芽球に分化させる.赤芽球は細胞分裂によりその数を増加させるとともにヘモグロビンの合成と核の形態成熟が起こり細胞は成熟してゆく,ヘモグロビンを十分に蓄積した赤芽球は成熟濃縮した核を脱核し,網赤血球として末梢血中に供給される.網赤血球は末梢血中にて24時間後にはミトコンドリア,ミクロゾームを失つて成熟赤血球となり約120日間血管の中を流れた後,寿命がつき網内系細胞で処理されてしまう.処理された数だけの赤血球が骨髄により供給され血管内には一定量の赤血球を有している.貧血症は末梢血中の酸素運搬を担う赤血球の絶対数(またはその能力)の低下によって引き起こされる.

検査機器のメカニズム・22

超音波洗浄機

著者: 柿沼建

ページ範囲:P.1156 - P.1157

1.超音波洗浄とは
 早くから機械工業,水産業などの分野においては超音波を利用した機器がそれぞれの目的に応じて使用されており,特に生産部門における省力化機器としての機能は大いに発揮していたところである.近来,医療関係の分野においても超音波のもつ機能を応用した機器(例:超音波診断装置,超音波治療装置など)の開発が急速に進み実用化されており超音波洗浄装置などもその1例である.人間の耳に聞こえてくる音は約16-18,000Hzまでの範囲の振動音だと言われており,それ以上の振動音はほとんど聞こえずこの不可聴域の波長を超音波と称している.この超音波を液体のなかで発生させると無数の気泡が生じ,これが生じては消滅をくり返し,さながら液体が沸騰しているかのような状態となる.この現象を称して空胴現象(キャビテーション)と言うが,この時に生ずる大きなエネルギーが固体性の付着物を溶解せず直接破砕して,微粉となり洗浄液中に分散させる作用となる.超音波を利用して行なう洗浄方法の特徴は,超音波の直進性と不可聴音(20—30KHz,出力300-600W)のために騒音が少なく洗浄液中に発生した超音波は液体中を伸縮波として進み固体(被洗浄物)表面に達するが境界面に付着している汚れ層との間に加速的な力が働き境界面に間隙ができあがることである.

検査室の用語事典

自動化学分析

著者: 北村元仕

ページ範囲:P.1159 - P.1159

51) Pulse chamber;パルスチャンバー
脈流を減らすためにチューブ系の途中に設置する機構の一つ.図のような空室をもったガラス製の部品で,脈流はチャンバー内の空気が圧縮されたりひろがったりすることで消去される.→パルスサプレッサー

細菌学的検査

著者: 坂崎利一

ページ範囲:P.1160 - P.1160

60) Oantigen;O抗原
菌体抗原のことで,菌体特に細胞壁を構成する脂質,タンパクおよび多糖質の複合体である.O抗原は内毒素とも呼ばれ,多くのグラム陰性杆菌では細胞毒性の主体物質とされている.121℃,2時間加熱,1N塩酸およびアルコール処理などの理化学的処理によっても破壊されない.免疫学的にもO抗原は特異性があり血清型別に利用される.

Senior Course 生化学

調製試薬使用上の留意点

著者: 内田壱夫

ページ範囲:P.1161 - P.1161

 最近の検査室においては,検査項目の多様化,かつ多数検体の迅速処理の必要性から,検査目的に従って調製されたキット類が広く使用されている.臨床検査に用いられる薬品は,単に分析用の種々の薬品にとどまらず,その標準物質まで含み,また分析方法,技術が多種多様であることを反映して,きわめて種類が多く,またその方法の改良,新しい分析技術の提起に伴いその内容もめまぐるしく変わっているのが現状であり,調製試薬の内容に関しても同様である.ここでは,自験例をも含めて,調製試薬使用上の留意点を考えてみたい.

血液

骨髄像の見かた,考えかた(10)

著者: 桑島実

ページ範囲:P.1162 - P.1162

 本シリーズの残る3回は,実際の症例の骨髄像所見を示し,見かた考えかたをすすめていく.当然ながら診断は,臨床所見,諸種の検査成績の十分な理解ののち総合的に決めるもので,多くの制約された条件の加わつた骨髄像を拡大解釈すべきでない.

血清

酵素結合した抗原による抗体の定量法について—Enzyme-liked Immunosorbent Assay;ELISA

著者: 伊藤忠一

ページ範囲:P.1163 - P.1163

 抗体に酵素を結合させたものを用いて組織における抗原の局在を調べる方法は酵素抗体法として,現在,広く用いられている.このような酵素結合抗体または抗原を用いて試験管内で微量の抗原または抗体を定量する方法について,最近,2,3の論文の発表がある.たとえばEngvallら1,2)はアルカリ性ホスファターゼに精製した抗IgG抗体を結合させたものを用いて抗原量としてはきわめて微量なng/mlというレベルのIgGを測定することに成功しているし,またvan Weemenら3)はペルオキシダーゼとヒト胎盤性ゴナドトロピンに対する特異抗体を結合させたものを用いてゴナドトロピンを測定する方法を報告している.
 今回のシニア・コースではこのような酵素と抗原を結合させたものを用いた微量抗体の測定法についてのEn-gvallら4)の最近の論文を紹介しようと思う.

細菌

Pseudomonas cepaciaを同定するための要点

著者: 藪内英子

ページ範囲:P.1164 - P.1164

 検出頻度の高くない菌に出逢うのは心ときめくことである.Pseudomonas cepaciaもそういう菌種の1つである.臨床材料から分離されるpseudomonadsの中でP.cepaciaと同定される菌株は多くない.わが国での分離例は私の経験した限りではまだ10例に満たない.玉葱(ラテン語でcepa)の病原菌としてニューヨーク州で分離命名されたこの菌はその後,世界各国で自然界や院内感染例から分離されているが,自然界から病院内環境への侵入経路はわかっていない.P.aeruginosaやP.maltophiliaに比べてはるかに低い率でしが検出されないが,ときとして血液培養でかなりの菌数がくり返し証明されたりこの菌による尿路感染症が多発したりする.そのような場合この菌に対する心の準備がないと同定に困惑することになる.そこで今回は鑑別同定に役だつP.cepaciaの特徴について述べてみよう.
 同定のために届けられた菌株の形態と生化学性状を調べていると,極多毛性pseudomonadでニンヒドリン法によるリジン脱炭酸試験とgluconate brothでの2—ketogluconateの産生とが陽性の菌株に出会うことがある.その時その菌株がP.cepacia‘かもしれない’という期待に胸が躍る.

病理

酵素組織化学(2)

著者: 堀浩

ページ範囲:P.1165 - P.1165

2.酸性ボスファターゼ
 テスト材料としては肝が最も適している.切片の作り方はアルカリ性ホスファターゼと同様.
金属塩法

生理

心臓マッサージ機

著者: 土屋喜一 ,   小野敏和

ページ範囲:P.1166 - P.1166

 近年,わが国でも心臓疾患による死亡が激増しているが,心マッサージ法は救急心蘇生術のなかでも血液の循環を維持する方法として最も重要な役割を果たすものである.心マッサージ法は開胸式心マッサージ法と閉胸式心マッサージ法とに大別される.現在これらは用手法により施術されるのが一般であるが,用手法では術者の肉体的疲労が大きいこと(5分以上の継続はきわめて困難),心拍再開に必要な他の治療に別に医師を要すること,術者の巧拙にもよるが一般に完全な回復を得るに十分な血行動態が得られぬことなどからその機械化を図る必要性が痛感されてきた.

My Planning

‘生涯教育’のなかの学校教育

著者: 清水加代子

ページ範囲:P.1167 - P.1167

 教育問題について,最近‘生涯教育’ということばを耳にする.このなかで,学校教育と社会教育とは有機的に結びついた教育という車の両車輪であるといわれている.私は現在のわが国の技師教育を考える時,この生涯教育という観点からみて,どうしても学校教育が軽視されているように思われる.そこで私なりにこれからの学校教育について考えてみた.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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