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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査17巻2号

1973年02月発行

雑誌目次

カラーグラフ

好酸球と好塩基球

著者: 木村郁郎

ページ範囲:P.130 - P.131

 従来好酸球はアレルギーと関係深いことが知られていたが,最近ではさらに好塩基球とアレルギーとの関係が明白となったので,両血液細胞についてアレルギーとの関係を中心にその形態を示し,特にわれわれの研究の端緒となった,われわれが改良した直接算定法を用いた場合の慢性骨髄性白血病,あるいは気管支喘息の両細胞,また好塩基球における抗—lgEを用いたIgEの局在とか,抗—lgEによる細胞破壊の状態,またはアレルギー反応局所への好酸球のみならず好塩基球の出現,あるいは同様の意味での喀痰中への両細胞の出現について示す.そしてこれらの細胞はアレルギー反応を惹起したのち,これを修復する働きを有し,アレルゲンに対する生体防衛に関して重要な白血球であると思われる.

技術解説

クリオスタットとゲラチンスライドによる凍結切片標本作製法

著者: 鈴木裕

ページ範囲:P.133 - P.146

 クリオスタット(Cryostat)は凍結切片を確実・迅速に作ることを主目的として,最初は主に酵素組織化学の分野で使用され始めたが,その凍結切片作製の容易なことや迅速性によって,最近ではほとんどの病理検査室に設置され,迅速標本の作製や一般の凍結切片作製に今まで使用されてきた凍結法にかわって広く使用されるようになっている.
 しかしその利用の現況をみると,酵素組織化学や免疫組織化学などを行なっている基礎関係部門を除いて,この機械の性能を十分に利用しきっている所はむしろ少なく,また常時使用しているとしても,新鮮凍結切片による迅速標本の作製に使用しているくらいのもので,それも従来の凍結法の代役程度になってしまい,これではせっかく買入した高価な機械もいたずらに場所を取るのみで,元の凍結法に逆もどりということにもなりかねないが,この原因を考えてみると,クリオスタットを使用した場合でも新鮮凍結切片以外は従来どおり,すべて遊離切片として扱うという方法にあると思われる,これでは従来の凍結法とあまり変わりはなく,凍結法に慣れていればこれで十分と考えるのは当然のことといえよう.

Van Slyke検圧装置—測定操作の留意点とそのコツ

著者: 松本佶也

ページ範囲:P.147 - P.157

 血液ガスの測定法ではVan Slyke (バンスライク)検圧装置による方法が,標準法とされている.最近ではAstrup type,ILメーターなどの電極法12が普及しているが,本法はそれらの方法との比較と較正に,いまだ重要な位置を占めている.
 従来から本法での測定はむずかしく,熟練を要するといわれている.装置の操作に慣れた者も,測定中に慎重細心な測定技術と精神的緊張を維持しなければ,正確な結果と再現性は得られない.したがって較正用の試測値でも,極言すれば,確かな習熟した者の測定値でなければ,評価に値しない.

脳波の合理的な検査のしかた—判読医の立場から

著者: 柴崎浩

ページ範囲:P.158 - P.165

 脳波はその用い方によっては,臨床神経学における最も有効な検査法のひとつである.しかしそれはあくまでも目的にかなった良質の脳波記録が得られることを前提とする.そこで日常脳波判読に携わっている一神経内科医の立場から,いかにしたら最もよい脳波が得られるかについて,実際の記録の順序に沿って述べることにした.特に,申し込み医または判読医と検者との境界領域に重点をおぎ,両者の橋渡しになるよう留意した.

総説

ペット(犬,猫)よりの寄生虫感染症

著者: 吉村裕之

ページ範囲:P.166 - P.172

 近ごろはペットブームといわれ,家庭における小動物飼育熱はますます盛んで,飼育動物の種類もふえつつある.このような中で,動物の移入先が東南アジアその他熱帯地方からのものでは,種々なる熱帯病の起病体がともに運搬されて来る危険性もないとはいえない.そうでなくとも最も身近なペットである犬,猫のごときが,その飼育管理のマナーの欠如から幼児を咬殺させたという社会問題がふえつつあり,またこれら動物の排泄物,なかんずく糞便の戸外散乱はひとつの公害であるのみならず,これらの寄生虫のある種のものが人,ことに幼児の砂遊びなどを通して感染の機会を少なからず推察させる.公衆衛生学的観点からも決して見のがしえない課題である.
 家畜寄生虫が時に人体へ侵入して起病性を発揮することはただに寄生虫のみならず細菌,ウイルス,リケッチアなど病原微生物に広く認められ,これらは人畜共通感染症(Zoonosis)として近年のトピカルな問題として取り上げられている.ここでは筆者の取り扱う寄生虫病のうち犬,猫から由来する興味ある感染症について筆者のささやかな経験例をも混えて紹介することにしたい.寄生虫病の種類と性状を列記すると表1のとおりである.

学会印象記

第8回国際臨床病理学会/第10回国際検査技師会会議

著者: 中野栄二

ページ範囲:P.173 - P.173

臨床病理の広さを再認識
 第8回国際臨床病理学会(ⅤⅢ World Congress ofAnatomic and Clinical Pathology,学会長MartinNordmann M.D.)が昨年9月12日より5日間ミュンヘンにてWorld Association of Societies of (Anato-mic and Clinical) Pathology (会長John AndujarM.D.;USA)の主催のもとに開かれた.ミュンヘンはオリンピック直後ではあったが,オリンピックムードやその騒々しさは感じられず,落ち着いた静かな南ドイツの中心都市で,学会は市の中心部より少し離れたシェラトンホテルで行なわれた。参加者は約600人で日本からは約40名参加し,総演題数244で,西ドイツ約80題,アメリカ約50題と多く,日本からは17題であった。しかし日本から実際に発表されたのは13題で,残りの4題はH研究機関が無断欠席し発表されず,学会に迷惑をかけたことは残念であった.
 講演は4会場に分かれて行なわれ,演題はMain se-ssionsとSpecial sessionsに分けられ,Main sessionsのテーマは次のごとくであった.

臨床検査の問題点・48

CRP検査の実際

著者: 河合忠 ,   近藤弘司

ページ範囲:P.174 - P.178

特定な疾患の診断材料というより,疾患の動態,予後,治療効果の判定に非常に有効なCRPテストは,検査手技や試薬の点で簡単に行なえるだけにどの検査室でもやられているが,同時に見逃がされている点も多い.ポピュラーな毛細管による混合法を中心に検討する.(カットは,Single radial immuno-diffusionによるCRP検査の陽性成績)

異常値の出た時・2

遊離脂肪酸の高い時低い時

著者: 中村治雄

ページ範囲:P.179 - P.184

 最近,血液中の遊離脂肪酸の臨床的意義,およびその重要性が理解されるにつれて,しだいに遊離脂肪酸測定が頻繁に行なわれるようになってきた.
 遊離脂肪酸はきわめて微量に存在する物質であるだけに,その測定上の注意もたいせつで,できるだけ誤差の少ない方法で測定されるべきであることはいうまでもない.さらに,採血から検査までの間で,その検体をいかに取り扱うかも重要な点である.

私のくふう

沈殿のある試験管の洗浄法

著者: 太田英義

ページ範囲:P.184 - P.184

 われわれは,タルク法でインスリンを定量しているので,直径1cmの試験管の底に付着するタルクを除去するのに非常な労力を費していた.
 一般に沈殿のある試験管の洗浄には,ブラッシングと水洗のくり返しにより行なわれるが,われわれはアスピレーターと中空のパイプで作った洗びん子の組み合わせにより,はるかに能率よく処理できるようになった.この方法は沈殿のある試験管ならば,すべて利用できると思われる.

化学検査のうつりかわり・2

電解質

著者: 高原喜八郎

ページ範囲:P.185 - P.192

はじめに
 今から30年もさかのぼった1940年代の病院検査室の姿は,もちろん中央化もしていなく,医局研究室内の一部あるいは病棟の片すみで多忙な臨床医によって片手間に行なわれていた程度のものであった.当時の臨床検査手技の大半は病理形態細菌学が占めており,代表的参考書も「生物学的臨床診断学」*1(海軍軍医学校教本,金井 泉 著)とかいう名前であったと記憶する.
 電解質などの検査種目としては,Na, K, Cl,Ca, Mg, CO2,pHなどが行なわれた揚合もあったが,一般に血清量は1種目につき1ml以上を必要とする滴定法あるいは肉眼比色法によっていた,1950年代にはいると第二次世界大戦による科学技術の進歩の影響を受けて,主としてアメリカにおいて光電比色計が急速に進歩実用化し,化学検査手技がつぎつぎと肉眼比色から光電比色法へと改良されていった.この間の事情は当時,アメリカの臨床化学技術の進歩をいち早くわが国へ導入された斎藤正行氏の著書1に詳しい.また同書には,当時としてはまだ目新しい炎光分光光度計(当時は焔光と書いた)に関する解説が巻末に詳しく紹介されていることは,わが国におけるこの方面の最初の資料の普及として意義あることと思われた.

研究

血液検査室におけるディスポーザブル採血びんの使用経験

著者: 西村甲子夫 ,   保田順子

ページ範囲:P.195 - P.197

はじめに
 中央検査室制度の発達とともに,多くの血液検査室では従来の耳朶採血にかわって,種々の抗凝固剤を使った採血びんに静脈から採血し,多数の検体をいっせいに自動血球計数器により計数するようになった.われわれの血液検査室では,これまで採血びんとしてSTMなどの抗生物質の空びん(以下STMびんと略)を洗浄,乾燥し,一般に最もよいといわれている抗凝固剤アンチクロットーET1,2)を使用し検査をすすめてきた.ところが最近人件費の高騰,検体数の増加などの要因から,種々のディスポーザブル容器の普及が目だってきた.われわれも経済的必要性からディスポーザブル採血びん(以下ディスポびんと略)に切りかえるにあたって,データの正確さについて2,3の検討を試みた.

新しいキットの紹介

‘ウリカラー・400’を用いる血清尿酸の自動分析

著者: 岡村研太郎 ,   長谷川邦子

ページ範囲:P.198 - P.200

はじめに
 血清尿酸の自動分析には,尿酸の還元力を利用するリンタングステン酸法1)と銅キレート法2,3)が用いられており,尿酸酸化酵素(以下ウリカーゼ)を利用するウリカーゼ・ペルオキシダーゼ法4)が最近報告された.
 このたびKageyama5,6)が発表したウリカーゼ・カタラーゼ法の原理に基づいた尿酸測定用試薬キット‘ウリカラー・400’が小野薬品から市販されたので,このキット試薬をそのまま用い,テクニコンオートアナライザースタンダードタイプによる血清尿酸の自動分析を試みた.

ポル-Eフィルムシステム

著者: 川村明子 ,   林康之

ページ範囲:P.201 - P.204

はじめに
 電気泳動法の臨床的応用は,支持体の改良とともに普及発展してきたが,最近ポル-Eフィルムシステム(Pfizer社)を使用する機会を得たので紹介したい.総括的に述べると,濾紙,セルロース・アセテート膜泳動法に比較して,(1)作業内容が単純化され,(2)作業に要する時間が短縮され,(3)分離能にすぐれており,(4)応用範囲もかなり広いという利点をもっている.しかし分離がややシャープすぎるために,デンシトメトリーに支障をきたす場合もありうるという使用上の制限も認められた.
 しかし本システムは著者らの経験によると,アイソザイムの分離,リポタンパクの分離,免疫泳動などにすぐれた能力をもつと思われ,本邦における報告もないので使用経験と結果を紹介したい.

昭和47年度第25回,26回二級臨床病理投術士資格認定試験学科筆記試験

著者: 金子仁

ページ範囲:P.205 - P.214

問題
臨床化学
1)次の反応式の( )をうめよ.

霞が関だより・10

医療関係者の範囲

著者:

ページ範囲:P.215 - P.215

 前3回は,検査技師の制度ができてから現在に至るまでの経過およびその内容を,実際の数字をもとに述べてみたが,今回は医師・歯科医師を中心とした医療関係者の範囲はどのようなものがあるかについて述べてみた.
 WHO (World Health Organization)が毎年発行している報告書に各国の医療関係者数が掲載されている.それをみると取り扱い上の違いがよく表わされている.表わし方としては,Asistant, Under leveler, Techni-cian Auxiliaryといったようにようにであるが,名称上あるいは業務上のことは,わが国でいう‘助手’に相当するものであると思われる.このように取り扱っている国はどちらかといえば社会主義国に多いが,医師,歯科医師,獣医師,薬剤師,看護婦といった各職種にみられるのに興味がもたれる.わが国でも沖縄の復帰に伴う一連の措置の中に医介輔(いかいほ)および歯科介輔の存続を認めたが,これは一身専属の権利としてあくまでも例外的な扱いである.

質疑応答

染色の‘にじみ’について

著者: O生 ,   日野志郎

ページ範囲:P.216 - P.216

 問 最近,血液像の染色において,特にリンパ球ですが,核の周囲が淡紫色に染まり,原形質中ににじみ出たように見えることがあり,著しいときには原形質全体がこのようになることもあります.この原因をご教示ください.
 作製操作は「臨床検査法提要」(金井泉著)に記載されているとおりに行なっております.なお,緩衝液は武藤化学pH6.4,染色液はメルク製ギムザを使用しています.

走査電顕の目・2

血小板のガラスビーズ表面への粘着

著者: 小川哲平

ページ範囲:P.217 - P.218

 血小板は,血小板自体の働き,血小板の成分,血小板に吸着された物質により,毛細血管の機能を維持し,止血および凝血反応に不可欠である.このように血小板は多くの機能をもつが,最も明らかな作用は,その粘着・凝集により出血局所に血小板血栓を形成し,血管壁の欠損を閉じることであり,この機能は1次止血として強力である.
 しかし血小板の機能検査法として実際に行なわれているものはあまり多くなく,また標準化されていないものもある.

シリーズ・一般検査 寄生虫卵検査・2

回虫不受精卵,鞭虫卵,蟯虫卵

著者: 鈴木黎児 ,   三瓶孝明 ,   鈴木了司

ページ範囲:P.219 - P.220

 回虫受精卵は,基本的な虫卵の鑑別点を覚えこむためにたいせつであるが,この虫卵は雌雄の寄生によって初めて糞便中に出現する.近年,回虫寄生率の減少で,雌虫だけの単性寄生例がふえ,1匹の雌虫は1日約20万個も産卵するので,日常検査では不受精卵を見る機会のほうが多い.そして不受精卵の鑑別は,虫卵の形に変化が多くむずかしいものである.

組織と病変の見方—肉眼像と組織像の対比

生殖器とその病変(2)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.221 - P.224

 女性生殖器疾患として最も恐るべきは癌である.卵巣にも発生するが,最も多いのは子宮癌である.このうち95%は子宮膣部付近に発生する頸癌である.体癌はわずかである.前者は主として扁平上皮癌,後者は主として腺癌の組織像を呈する.組織像と細胞診をよく対比されたい.
 卵巣病変で最も多いのは嚢腫である.デルモイドチステ(皮様嚢腫),漿液性嚢腫,偽粘液性嚢腫とある。デルモイドチステは毛髪があったり,歯があったりする.嚢腫はいずれも良性である.クルーケンベルグ腫瘍(Krukenberg's tumor)は消化管ことに胃癌が卵巣に転移したもので,両側に発生し,若い成熟婦人に多い.組織学的に印環細胞の多いのが特徴である.

検査と主要疾患・2

慢性肝機能不全症

著者: 畠山茂

ページ範囲:P.226 - P.227

 この中で最も代表的なものは,肝硬変症であろう.肝硬変症の原因は多岐にわたりここでは取り上げないが,大きく分けて炎症性のものと代謝異常性のものになる.いずれにしても本来の肝組織の構造的な整合性が失われ,肝細胞の壊死と再生および線維化の進行に伴い,新たな構造上の再構築が現われる(図1).特に肝内門静脈末端のつぶれや肝動脈との吻合などによる門脈圧の上昇が特徴的で,食道静脈瘤形成(図2)や,皮下膀静脈の拡張によるメジサの頭(図3)などの側副静脈が目だってくる.
 図3の左側は,肝機能不全によるいろいろの症候を現わしたものであるが.まず強い血清アルブミン量の減少を伴う血清総タンパク量の低下が起こり,同時にグロブリンが増量し,それに対する反応(TTT, ZTTやCCFなど)が陽性に出てくる.逸脱酵素といわれるトランスアミナーゼの上昇は,肝硬変症の静止期にはあまり著明ではなく,しかもGOTのほうがGPTより高めにでる.

検査機器のメカニズム・14

pHメーター

著者: 大場操児

ページ範囲:P.228 - P.229

1.ガラス電極pHメータの測定原理(図1,2)
 図1は,測定の際に測定者がpHメータに手を触れる個所を配線図の上で示したものである.薄いガラス膜で作られた容器(G)の中にpH既知の溶液(B)を入れ,被検液(A)に浸すとガラス膜の両側に電位差を生ずる.両液に適当な電極E1,E2を浸して.その電位差を電圧計(V)で測定すれば,ガラス膜に発生した起電力を知ることができる.この起電力はほぼpH値に比例し,pH 1で59.1mVである.関係式は次のように示されている.

検査室の用語事典

自動化学分析

著者: 北村元仕

ページ範囲:P.231 - P.231

6) Base line;基線
各試料の濃度が波形で記録紙上に画かれるとき,濃度0の試料が示す位置を結ぶ線を基線という.定量分析における試薬ブランクに相当し,検量の原点となる.また,基線の乱れは反応液の不適正な流れや電気回路のノイズを示し,そのドリフト(一方向にしだいにずれる現象)は主に電気回路の不安定性や試薬の経時的劣化をあらわすから,分析値の管理,補正にも利用される.

細菌学的検査

著者: 坂崎利一

ページ範囲:P.232 - P.232

8) Antistreptolysln O;抗ストレプトリシンO
A群レンサ球菌に感染した患者血清中には,ストレプトリシンOに対する抗体価の上昇が見られる.そのような患者血清とストレプトリシンOとを混合すると,ストレプトリシンOが中和されて,その溶血作用が消失する.その際の抗体価をASLO価といい,リウマチ熱,急性腎炎,結節性紅斑,その他膠原病,しょう紅熱などのA群レンサ球菌感染症の診断に用いる.

Senior Course 生化学

モノアミンオキシダーゼ

著者: 正路喜代美

ページ範囲:P.233 - P.233

 Monoamin oxidase (MAO)は常用名で,分類番号1.4.3.4で,系統名はMonoamine:Oxygen Oxido-reductaseという.血清MAO活性に関する臨床的意義が明らかになり,そろそろ日常検査として普及するように思われる.MAOはCuを含むPyridoxa1酵素で,一般に次の反応を触媒する.
 R・CH2・NH2+O2+H2OMAO/pH 6,8-7.2→R・CHO+NH3+H2O2
 生体内では,肝小葉全般,特に門脈中心静脈周辺や脳,腎などの細胞内顆粒分画中に存在する.生体内では,芳香族アミンを酸化し薬理学的に重要な酵素である.カテコールアミン代謝に関与し,3-Methoxy-4-hydroxy-mandelic acid (VMA)を尿中に排泄するサイクルにも関与しているので,尿中VMA測定は,生体内MAO活性の指標になる.また結合組織中でコラーゲン線維成熟の最終段階の架橋形成に,ある種のMAOが関与することが明らかにされ,血中MAOは,この結合織中のMAOときわめて類似しているといわれる.肝ミトコンドリアにあるMAOと血中MAOとは,基質特異性や阻害作用に相違があり,電気泳動でも移動度が異なる.

血清

骨髄像の見方,考え方(2)造血細胞の分化と成熟

著者: 桑島実

ページ範囲:P.234 - P.234

 赤血球,白血球,血小板などの起源をたどれば,どの細胞にも分化することのできる1つの幹細胞があるとする一元説と,それぞれの細胞は,それぞれ別の母細胞があるとする多元説がある.後者の説は胎児の造血組織の形態的研究から発したものであるが最近,放射性同位元素を用いたり,染色体分析を行なったり,致死量の放射線を動物に照射したのち,同種の動物の骨髄液を血管に注入し脾臓にできる造血細胞のコロニーをみる方法などの発達に伴い,幹細胞の存在が考え方のうえで必要になってきた.幹細胞とは自己と同一な細胞に増殖することができるとともに,何らかの因子,刺激などで分化,成熟した細胞となる能力のある細胞をいう.しかし現在,幹細胞を形態的にとらえるまでには至っていない.
 骨髄像を形態的に観察する場合には,幹細胞なり母細胞からの分化と成熟の過程について知っておくことが必要である.これについては細胞のDNAに放射性同位元素をラベルしては,その消長をみる研究の成果によるが,まだ完全に解明されているわけではない.いずれにしても,分化とは,核分裂を伴う場合と伴わない場合があるが,ある細胞が形態的,機能的にやや異なる次の段階の細胞になることをいい,成熟とは,ある細胞がその細胞のもつ特徴を表わしていく過程をいう.

細胞性免疫のにない手(1)

著者: 伊藤忠一

ページ範囲:P.235 - P.235

 最近までリンパ球の役割は不明であったが,現在では細胞性免疫(CMI)のにない手はリンパ球であることが多くの学者によって確かめられている.リンパ球には2つの種類があるが,もともとは骨髄に由来する幹細胞(stem cell)であると考えられている。骨髄で最初に作られたこの幹細胞のあるものは胸腺に至り,そこを経て全身のリンパ組織に分散される(図1).
 一方,その他のある幹細胞はファブリキウス嚢(bursaof Fabricus)を経て全身のリンパ組織に至る.胸腺はすべての哺乳動物にあるが,ファブリキウス嚢は鳥類にのみ認められている器官である。しかし,すべての哺乳動物でファブリキウス嚢に相当する器官ないしは組織(bursa equivalent)があると考えられている.人間ではbursa equivalentがどこであるか,まだ確かめられていない.胸腺とファブリキウス嚢(またはそれと相当する器官)は,

細菌

緑膿菌の同定(1)

著者: 五島瑳智子

ページ範囲:P.236 - P.236

 前号の緑膿菌の分離にひき続いて,今回から同定に必要な性状およびその検査法について,順次記述する.

病理

細胞組織化学の歴史(2)

著者: 畠山茂

ページ範囲:P.237 - P.237

 前回の,1910年ごろから始まった酸化酵素に関する研究を組織化学研究史の前期とすると,この方面の近代的学問は,1940年ごろに高松(1938),Gomori(1939)のホスファターゼに始まり,1960年代に至って開花しつつあるといえよう.話が酵素の組織化学に集約されてくるのは,細胞の機能を直接的に媒介しているのが酵素であるため,学問的努力がもっばら酵素の染着と構造の関係にはらわれてきたからである。
 高松,Gomoriの方法が近代的組織化学の方法論の基礎になった理由は,酵素反応による反応産物をただちに捕捉し,酵素の局在する個所に沈着させて,顕微鏡下に観察を可能にする一般方式を打ち出したところにあった.すなわち酵素特異作用による酵素の局在化の一般的原理を見いだしたことによって研究の端緒が開かれ,その後続々と成果があげられるに至ったのである.

生理

非観血的血圧測定法

著者: 三浦茂

ページ範囲:P.238 - P.238

 1896年Riva Rocciが上腕にカブをまく血圧測定法を開発して以来,広く臨床に用いられている.
 カフを加圧して最高血圧を超えると動脈が押しつぶされて血行が停止し,のちカフ圧を徐々に下げて最高血圧値よりもわずかに低くなると末梢側へ血液が噴射され,水槌作用が起こって減衰振動が現われる.これがKoro-tkov音である.

My Planning

自動化検査室のローテーション

著者: T生 ,   菅沼源二

ページ範囲:P.239 - P.239

ローテーションの問題は私たちの検査室でも,各人の適性,技量の差,実施時期などで苦労していますが,特殊な技術や知識を必要とする自動化検査室のある検査部では,特にローテーションに配慮が必要ですが……

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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