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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査17巻3号

1973年03月発行

雑誌目次

カラーグラフ

血小板と骨髄巨核球

著者: 塚田理康

ページ範囲:P.246 - P.247

 骨髄巨核球はその成熟度により,骨髄巨核芽球(megakaryoblast),骨髄前巨核球(promegakaryocyte),骨髄巨核球(megakaryocyte)に分類されている.血小板の大部分は巨核球,一部は成熟した前巨核球の細胞質より分離され形成される.以下塗抹標本の骨髄巨核球の各成熟段階を示す.巨核芽球と未熟な前巨核球は遭遇する機会が少なく,両者の区別が困難な場合が少なくない.図2-5は本態性血小板減少性紫斑病で幼若骨髄巨核球の増加,血小板生成不良を認めた症例の標本である.染色法はライト・ギムザ染色により,倍率は同じに統一した.他細胞の大きさと比較してほしい.

技術解説

染色体検査法—標本の作り方と分析法

著者: 山田清美

ページ範囲:P.249 - P.258

 染色体分析は最近の技術的進歩により,昔とは異なってだれにでも容易に信頼度の高い解析ができるようになった.種々の先天異常や白血病におけるこれまでの研究成果を土台として,実際に染色体検査による結果は患者の診断に活用されたり病因を正しく把握するうえに役だっており,実用化の時代にはいっている.先天異常などでは染色体異常に起因する疾患が体系づけられており,将来ますます医学の各分野において,染色体検査の必要性が増大すると思われる.
 ヒトの染色体は形態的特徴から分類され同定されるが,これまでの分析法ではすべての染色体を同定することができなかった.したがって,C群やE群に属する染色体の異常というように表現されていたが,最近,新しい染色法が開発されてすべての染色体の同定が可能になり,ようやく染色体同定法が確立されたといえよう.

ウイルス検査のための検体の取り扱い方

著者: 石井慶蔵

ページ範囲:P.259 - P.270

 各種の臨床検査が年を追って盛んになり,簡易化されているなかで,ウイルス検査の普及度が低いのには,特殊な設備,技術を要すると過度に考えられていたきらいがある.しかし,遅ればせながらしだいに利用されるようになってきた.それにはマイクロタイター法による手技の簡易化,試料の微量化も大いに寄与したと思う.また急性症だけに用いられていたウイルス検査が,亜急性硬化性全脳炎が麻疹ウイルスによって起こる1)ことがわかって以来,亜急性または慢性疾患においてもウイルスの関与がいくつかの疾患で疑われてきた.多発性硬化症がその一例で2),この方面からもウィルス検査の必要性は高まるであろう.
 ウィルス検査を正しく行なうには3つの段階がある.第1は臨床的にウイルス性疾患が疑われたなら,ウイルスが検出される材料を早期に採取することである.この採取材料を正しく保管,検査施設に届けることが第2である.第3は材料の検査(ウイルスの分離または血清検査)で,以上の全段階が適切であった時,はじめてよい成績が期待できる.言いかえると,検査施設で努力しても,適切な材料が採取され,検査まで正しく取り扱われないかぎり,よい成績は得られない.

Au抗原のラジオイムノアッセイ

著者: 瀬戸淑子

ページ範囲:P.271 - P.274

 Blumberg1)により1964年にオーストラリア抗原(Au抗原)が発見されて以来,その本体および疾患との関連などについて多くの研究がなされてきた.しかしながら,従来の検出法の鋭敏度が低くかったことなどから,Au抗原と最も関係深い疾患と考えられている輸血後肝炎(血清肝炎)との関連についても,今ひとつ確定的証明が得られなかった.それゆえに,より鋭敏な検出法の開発が強く望まれ,昨年初めころからすぐれた感度を示すいくつかの方法が確立され,報告されている.なかでもラジオイムノアッセイ(RIA)法は,Au抗原と抗体の両方の測定にきわめて鋭敏であり,今やRIAを用いることによりAu抗原と肝炎との関係もより明確にされてきている.

総説

病院病理部のあり方

著者: 安倍弘昌

ページ範囲:P.275 - P.279

はじめに
 現在,大きな総合病院では病理部がおかれていて,専任の病理医が働いている所が多くなっている.しかし全国的にみれば,大都会あるいはその周辺の大病院に限られ,まだまだ地域的な偏在が目だつのが現状である.
 わが国の病院で病理部門の検索が終戦前にも行なわれていなかったわけではないが,臨床医師が兼務で仕事を担当するか,大学病理学教室へその仕事が依頼され,院内に専任の病理医がいて,業務を担当する制度は確立されていなかった.

臨床検査の問題点・49

尿の一般検査

著者: 橘敏也 ,   池田恭二

ページ範囲:P.280 - P.285

 尿の一般検査は,大づかみな診断の方向,治療経過を知るうえで最も基礎的な検査といえる.測定器種による比重の差,pHを変動させる諸条件,色の見わけかたなど,検査室の日常的な問題を検討する.

異常値の出た時・3

血清タンパクの高い時低い時

著者: 水田亘

ページ範囲:P.286 - P.290

 ほとんどすべての疾患の場合血清タンパクに質的変化を生じアルブミンの減少,グロブリンの増加を伴う場合が多い.したがって総タンパク濃度としては正常域から著明に逸脱することは比較的少ないばかりでなく,逸脱しても疾患特異性があることも少ない.ゆえに総タンパク異常だけから疾患を追求することは,多くの疾患をとりにがした残りの疾患を追求することとなるので効率のよい方法とは決していえないが,異常値であった時には症状と関係なく検査室サイドで精査が可能な症例も存在する.

私のくふう

第5回"私のくふう賞"発表

著者: 「臨床検査」編集委員会

ページ範囲:P.291 - P.291

入賞(正賞賞状および賞金1万円,副賞本誌1年間贈呈)なし選外佳作(賞金5000円副賞本誌1年間贈呈)

毛細管による血液型判定法

著者: 鹿川攻

ページ範囲:P.322 - P.322

 従来,血液型判定には,ガラス板上で凝集を見るのせガラス法,および試験管法が行なわれている.ここに紹介する,Capillary Vessel法(毛細管:CV法)は,ヘマトクリット毛細管を用い,管内で反応させ,血液型判定用紙上に直接凝集塊を落とし,広げて乾燥させるので,まわりもよごさず,仕上がりがたいへんきれいで,従来の方法で作成したものに比べ,きれいに保存できる.特にRh式での紙上における凝集塊の判定は,すばらしい仕上がりである.使用後の毛細管は,使い捨てでき手技も簡単である.CV法には以上のような利点がある.

論壇

充実した教育と具体的目標を

著者: 尾辻省悟

ページ範囲:P.292 - P.293

 私が検査技師と直接かかわりあいをもったのは昭和35年だからやがて13年も前のことになる.私はその頃,米国のある病院で研究に従事するかたわら,臨床病理の分野でも仕事をもっていた.病理解剖,外科病理,臨床化学,臨床血液学などまったく息つくひまもない程のルーチンをかかえて夢我夢中であったことを思い出す.異質の体系の中で,しかも臨床病理学の教育をまったくうけていなかった者にとっては苦労の連続で,毎日技師諸氏のお世話になったものである.
 その後,わが国の臨床検査の分野で働くことになったが,初めはそのギャップに悩みぬいた.しかし何かを創り出そうとする悩みは一面むしろ楽しいもので,技師諸氏との接触を通して教育そしてその標準化の重要性,技師として自己の‘領分’における責任と自覚,そして‘協力’の必要性を機会ある毎に説いてきた.

座談会

—第8回国際臨床化学会議—臨床化学に新しい指針

著者: 山村雄一 ,   佐々木禎一 ,   福井巌 ,   奥田清 ,   松村義寛

ページ範囲:P.294 - P.301

 3年ごとに開かれる国際臨床化学会議は,昨年6月に臨床化学のメッカ・北欧のコペンハーゲンで行なわれた.わが国から30名の専門家が出席したが,その参加者に学会の印象と最近の臨床化学の動向を語っていただく.

学会印象記 第19回日本臨床病理学会

医療情報処理はマクロダイナミックに

著者: 舟谷文男

ページ範囲:P.302 - P.302

 今学会(1972,10.8-10)では,シンポジウム,一般演題合わせて337演題の発表があり非常な盛会であった.シンポジウムは4テーマあり,シンポジウムIではRIの臨床検査への応用というテーマで11演題が報告された.ここでは,前葉ホルモンおよびT3,T4の測定上の問題点,応用,臨床的評価などが論じられた.またAu抗原・抗体のSolid phase RIが報告されユニークな方法として注目をひいた.その他血清鉄結合能,ビタミンB12,酵素,タンパク質・脂肪同時吸収試験,赤血球寿命と脾・網内系機能検査および内因子・内因子抗体の演題で多岐にわたって報告があった.シンポジウムⅡでは電気泳動法の臨床的応用がテーマで,Mタンパク,リポタンパク,糖タンパク,異常ヘモグロビン,尿タンパクについて8演題が報告された.シンポジウムⅢでは最近臨床的に注目されている酵素としてMAOとγ-GTPがとりあげられ,それぞれの測定法,臨床的意義,アイソザイム,組織由来などについて10演題もの発表があり,教育的な内容をもったものであった.シンポジウムIVでは脳波検査の価値と限界というテーマで6演題が報告された.
 一般演題は,内分泌,酵素,血液,糖・有機酸,肝機能,腎機能,脂質,含窒素タンパク,正常値精度管理,自動化,無機物一般,病理,生理,細菌,血清について8会場に分かれて302演題が報告された.

化学検査のうつりかわり・3

尿素

著者: 坂岸良克

ページ範囲:P.303 - P.310

まえがき
 尿を加熱濃縮し,放冷するか,乾固物をアセトンで抽出して放置しておくと針状の大きな結晶が析出してくる.これが尿中成分としてみいだされたのは1733年とされている.ドイツ語Harnstoffは尿Harn中の物質Stoffとして現在の尿素Ureaを表わすために使われてきた.
1828年,Wöhlerは尿素が加熱分解によって二酸化炭素とアンモニアを生ずることから,シアン酸アンモニウム(アンモニア水とシアン酸カリウムを原料とする)を使って尿素に変えることに成功した.この変化は

特別寄稿

‘私の趣味は免疫学’—F.Peetoom博士の講演を聞いて

著者: 伊藤忠一

ページ範囲:P.312 - P.313

 ‘Immunology is my hobby’これは昨年8月19日,日大駿河台病院の講堂で開催されたF.Peetoom博士の‘Immunology as a laboratory tool’と題する講演の冒頭のことばである.本講演会は電気泳動学会主催,日本臨床病理学会血清専門委員会および東京都衛生検査技師会血清反応研究会共催のもとで行なわれたものであるが,同様の講演会は東京以外でも数か所で行なわれた.しかし地理的な理由で本講演を聞くことのできなかった読者も多くいよう.筆者はこのような人のために本講演の内容を紹介しようという編集者の意図に賛成し,不得手な英語もかえりみず,あえてこの仕事を引き受けた次第である.F.Peetoom博士の講演の内容をいかほど正確に紹介できるか筆者も自信はないが,以下に逐一訳出することはやめ,その要点を筆者の感想なども加えつつ書きつづってみたいと思う.なお,本講演の基礎的部分についてはAmerican Journal of Medical Te-chnology37巻12号(1971年)誌上で詳細に論じられているので参照されたい.

研究

自動血球計数器による血小板算定法の検討

著者: 榊尚男 ,   飛田正子 ,   松田百合子 ,   小林詳子 ,   柴田昭

ページ範囲:P.314 - P.318

はじめに
 血小板の自動計数法は1960年Fossらにより初めて報告され,以来わずか10余年の間に急速な進歩をとげた.わが国においても,近年自動計数器の開発,国産化が行なわれ広く普及しつつある.現在本邦で用いられている機種には,アメリカ,Coulter社製Coulter counterModel B, Model FN,東亜医用電子社製Toa Microcell counter II型血小板ユニット,アメリカ,Techni-con社製Auto Analyzerなどがある.
 最近われわれはCoulter counter Model FNを導入し,血小板数の測定を行なっているが,今回,ToaMicro cell counter血小板ユニットPA−701を同時に使用する機会を得たので,両者を比較しながら,おのおのによる測定方法の吟味,再現性,経時変化,希釈液の違いによる変化,温度による変化,累積粒度分布などの基礎的検討を行ない,さらにこれと従来実施していた間接法および直接法との比較を行なった.

システインを用いたMichaëlsson変法による血清ビリルビン定量法の検討

著者: 尾辻省悟 ,   小園時夫 ,   黒木辰雄

ページ範囲:P.319 - P.322

はじめに
 Jendrassik-Gróf-Nosslin1,2)の血清ビリルビン測定法を改良したMichaëlsson変法3)は特異性が高く,溶血による影響が少なく,試料による濁りや試薬間の呈色反応を除外できる点などにおいて,前者にまさるものであるという.しかし,著者らの経験によればMichaë-lsson変法におけるジアゾ反応停止剤アスコルビン酸の安定性に問題があり,これがブランクその他に影響を与え,日常測定結果にしばしば少なからぬ不定の負誤差を引き起こしていることがわかった.そこでアスコルビン酸のかわりにシステインを用いて検討を加えたところ,この問題が解決されるとともに,より安定した測定が可能となり,ヘモグロビンの影饗をさらに排除できるなど良好な結果を得たので報告する.
 以下,血清総ビリルビンをTB,直接ビリルビンをDB,システインあるいはアスコルビン酸を用いたMi-chaëlsson変法をそれぞれ‘C’および‘A’,Malloy-Evelyn法4)を‘ME’と略す.

新しいキットの紹介

FeキットNによる血清Feの測定

著者: 小田野武郎 ,   大水幸雄 ,   佐々木禎一

ページ範囲:P.323 - P.325

 標準法を基盤にしたFeキットNを用いて血清Fe測定時の基礎的諸性状を検討し,正確度上少々高めに測定されるような成績も得られたが,測定操作,発色性状(直線性,波長特異性,呈色の安定性など),再現性などの点で満足できることを認めた.臨床検査用キットとしての今後の有用性に期待できるものと思う.

リウマチ様関節炎の血清学的診断試薬‘ロイマトン’の評価

著者: 只野寿太郎 ,   真田宜明

ページ範囲:P.326 - P.328

 リウマチ様関節炎(以下RA)の臨床的診断は必ずしも容易でなく,補助診断法として種々の血清学的検査が行なわれている.これらの検査はRA患者血清中に出現するリウマチ様因子を検出するものであるが,この因子は単一な物質でなく,検査の特異性も方法によって多少の差はあるが70-80%1)にとどまっている.現在,臨床検査室で広く行なわれている方法には,ヒト-γ-グロブリンを用いる方法であるLatex Fixation Test(LFT)やBentonite Fixation Testとウサギ-γ-グロブリンを用いたWaaler-Rose反応2)やHellerの変法3)がある.
 LFTはSingerら4)によって開発されたもので試薬保存の容易さ,検査の簡易性,迅速性の点から広く用いられている.一方,Waaler-Rose反応はLFTより特異性が高いことは認められているが,ヒツジの新鮮血球が必要なことと手技が複雑なことからスクリーニングの目的では使いきれない.しかし最近,Milgromら5)はヒッジ赤血球をホルマリンで処理し,これにウサギ-γ-グロブリンを感作した試薬を開発しWaaler-Rose反応の簡易型として発表した.この試薬はロイマトンという名称でWampolle社から市販されている.われわれは杏林製薬からこの試薬の提供を受けWaaler-Rose反応,RAテストと比較検討したので報告する.

走査電顕の目・3

ハインツ小体

著者: 小川哲平

ページ範囲:P.329 - P.330

 血液をブリリアントクレシル青,ブリリアント緑やニューメチレン青などで超生体染色を行なうと,直径0.3−3μの封入体が赤血球内にまたは赤血球膜に付着しているのがみられることがある.これがハインツ小体である.
 ハインツ小体はヘモグロビンの酸化的分解産物であり,老化赤血球でNADH,NADPHの産生が低下して赤血球内の重要な物質を酸化による障害から保護する作用が失われる結果生じたものといわれている.しかし,正常人では脾臓で除去されてしまうため末梢血中にハインツ小体をはっきり認める赤血球はない.

シリーズ・一般検査 寄生虫卵検査・3

鈎虫卵と東洋毛様線虫卵

著者: 鈴木黎児 ,   三瓶孝明 ,   鈴木了司

ページ範囲:P.331 - P.332

私たちの検査室

最新技術にソフトムードを加えて—PL大阪健康管理センター

ページ範囲:P.333 - P.336

 人間ドックの所要時間は当初の7日間から今や3時間に縮まってきている.当センターは検診成績(X線所見,診察所見を含む)をPLDAS MARK−1で収集,HITAC8400で処理して,成績表印字,異常成績のマークづけ,過去の検査成績との対比,値の変動幅の検討などのリストを作成して,総合判定にあたる医師への便をはかっている.したがって被検者は検診開始から3時間で,検診成績書を受け取り,医師との面接で総合判定の解説やX線写真の説明をうけ,さらに医師説明の要約のコピーを手渡される.救急治療の参考資料として,血液型ほかだいじな項目の結果をまとめた手帳もライン・プリンターで打ち出され,サービスされている.

検査と主要疾患・3

膵炎

著者: 畠山茂

ページ範囲:P.338 - P.339

 従来膵の外分泌は,主として自律神経の調節を受けていると考えられていたが,消化管ホルモンの発見により,膵の外分泌機能は自律神経のほかに,これらホルモンによっても支配されていることがわかってきた.
 すなわち,胃幽門部より分泌されるガストリンは,胃の塩酸を分泌させ,塩酸は十二指腸にはいり,十二指腸と小腸粘膜を刺激して,セクレチン,パンクレオザイミンを分泌させ,血中に吸収されたこれらのホルモンはさらに膵に作用して,セクレチンは細葉中心細胞や膵毛細管上皮などから水や重炭酸などの電解質を分泌させる.またパンクレオザイミンは,膵細葉細胞からアミラーゼ,リパーゼ,トリプシノーゲン,キモトリプシノーゲンなどの膵酵素を分泌させる.しかし迷走神経の刺激によっても,同様に酵素系の分泌が増す.トリプシノーゲンは,十二指腸粘膜から分泌されるエンテロキナーゼの作用で活性化されトリプシンに変わり,キモトリプシノーゲンは,このトリプシンによってさらに活性化されるという連鎖反応を生む(表,図1).以上のホルモンを分泌する細胞は,光学顕微鏡でも,好銀性又は銀嗜好性細胞として観察でき,通常の上皮細胞間に介在する.

検査機器のメカニズム・15

温度調整器

著者: 荒木仁子

ページ範囲:P.340 - P.341

 恒温装置はふつう熱源,媒体,温度調整器,温度指示装置,撹拌装置からできている(図1).
 温度調整器は温度変化を感知する感温部とその指令によって加熱・冷却電流を開閉するリレー部とに分けられる.図2はローリー式の温度調整器でガラスからできており,Aは感温部で膨張係数の大きい液体としてトルエンなどを満たし,その他の部分には水銀を満たしてある.液体が目的の温度に達したとき水銀の上端がちょうど細管Dの内にくるように活栓Cで水銀溜B内の水銀量を調節しておく,Eはガラス管内に白金線を熔封したもので上端は銅線Fと電気的に接続する.Gも白金線でこれは管に挿融して管中の水銀と接続している,FとGの間には電池が入れてある.電熱器で恒温槽の温度が上昇すればA内のトルェンおよび水銀が膨張し,D内の水銀柱とEの白金線の下端が接触すれば電流はそこを流れる.電流が通ればリレーの磁石が働き電熱回路が切断し,したがって温度は下がる.その結果水銀糸頭が下がって水銀とEとが離れれば再び電熱器に電流が流れて温度が上がる,Dの内径は細いほうが理論的に感度が高いが,実際上は細すぎると何かの具合で温度が上がりすぎ太い部分にきた場合そこで水銀が切れて上に残り,再び冷えたとき細管中の水銀量が減り,以前よりも温度の高い点に設定されることになるので注意する.

検査室の用語事典

自動化学分析

著者: 北村元仕

ページ範囲:P.343 - P.343

12) Contamination;汚染
 分析値に誤差をもたらすような試料中への異物の混入をいう.自動分析の立場からすると,異物としてもっとも問題となるものは,(1)前行試料と,(2)試料に加えられる試薬,の2つである.前行試料による汚染は,各検体が連続して採取される時につねに問題となるもので交差汚染cross contaminationとよばれる.試薬による汚染は,特にdiscretesystem*におけるサンプリングのさい,diluter*によって検体が吸引され,試薬(または蒸留水など)によって希釈されながら反応容器に移されるが,この試薬(希釈液)の残液が次の検体に混入することをさし,sample diluent contaminationとよぶ.crosscontaminationは,キャリーオーバーの原因の一つとなるものであるが,用語としては混同されて用いられることが多い.

細菌学的検査

著者: 坂崎利一

ページ範囲:P.344 - P.344

14) Blood agar;血液カンテン
 適当な基礎培地(ハートインヒュジョンカンテン,カゼインソイ混合ペプトンカンテンなど)を溶かして,約45℃に冷やし,5-10%にヒト,ヒツジ,ウマまたはウサギの脱線維血液を加えて,平板あるいは斜面培地にする.普通のカンテン培地に発育が悪い菌(肺炎球菌,レンサ球菌など)の培養,および溶血性のテストに用いる.しかし,血液の種類によってはかえって発育を阻害されることがある.また菌の溶血性が血液の種類によって異なることがある.血液カンテンでの菌の発育が促進されるのは,多くの場合,カンテン培地中に含まれる菌に対する抑制物質を血液が吸着または中和するためである.

Senior Course 生化学

分光光度計の正確度

著者: 正路喜代美

ページ範囲:P.345 - P.345

 分光光度計を一般比色分析に用いる場合,紫外から近赤外に至る任意の波長が得られて便利である.吸光係数による吸光分析では,セルの厚さや波長目盛りの正確性,波長純度が測定値に関係してくるので,分光光度計の正確度のチェックが必要である.

血液

骨髄像の見かた考えかた—(3)骨髄検査の手技

著者: 桑島実

ページ範囲:P.346 - P.346

 骨髄検査のうちで最も基本になるものは,いうまでもなく塗抹標本のライト・ギムザ染色による細胞形態の観察である.他の染色法や位相差顕微鏡,電子顕微鏡を駆使した形態検査や骨髄培養などによる場合でも,ライト・ギムザ染色で得られた細胞形態を十分に把握しておかなければ混乱が生じる.しかし,定量検査と違い,形態検査では,個々の細胞の解釈や名称が人によって微妙なところで,食い違っている点にも留意する必要がある.細胞形態については後述することにし,ここでは骨髄穿刺液検査の代表的な方法について概説する.

血清

細胞性免疫のにない手(2)

著者: 伊藤忠一

ページ範囲:P.347 - P.347

 新生児または胎生期に胸腺を摘出してしまうと(thy-mectomy),末梢のリンパ球数が減少しリンパ節の傍皮質部(paracortical area)の発育は阻止されるけれども形質細胞の増殖は正常に保たれる.このような胸腺摘出動物ではやがて成長が止まり,体重減少,立毛,下痢などのいわゆる消耗症候群(wasting syndrome)を起こして死亡する場合が多いが,幸いにして死亡を免れた場合でも次のようないろいろな免疫学的生物反応の異常が起こってくる.
(1)遅延型過敏反応の低下:ツベルクリンや2,4ジニトロクロロベンゼンに対する遅延型過敏反応が起こりにくくなる.

細菌

緑膿菌の同定(2)

著者: 五島瑳智子

ページ範囲:P.348 - P.348

1.OF試験(ブドウ糖)
 この試験はブドウ糖の分解性を調べるためのもので,特にTSIやクリグラーでブドウ糖非発酵(—/—)となったもののうち,酸化的分解か,あるいは全く分解しないかを区別するために用いる.試験法は省略する.
培地:OF basal medium (Difco,BBL)

病理

細胞化学の特徴

著者: 堀浩

ページ範囲:P.349 - P.349

 細胞化学ということばは人によってかなり違った意味に使われるが,本稿では組織化学と同意のものとして用いる.
 すなわち,細胞または組織,あるいは器官の構造を損うことなく,それらの化学的性状を究明する学問であって,その点,細胞や組織の抽出物を扱う生化学とは方法論上異なっている.

生理

血流量の測定—電磁流量計

著者: 三浦茂

ページ範囲:P.350 - P.350

 血流量の測定は,いわゆる流体工学的な測定技術をもってしてはいかんともしがたい面がある.
 電流の場合には電線を切断しなくても計ることができるし,太いパイプを流れる流量は羽根車を入れたり,流れに入れたbarの曲がりから計ることができる.またピトー管やベンチュリー管を用いる方法もある.

My Planning

ソフトウエア開発に技師はどう対処すべきか

著者: Y生 ,   菅沼源二

ページ範囲:P.351 - P.351

検査室にコンピューターははいったが,その効果を十分に発揮させるには,われわれ検査技師はどうしたらよいか.ハードウェアはともかく,その検査室の要望にあった入力技術(ソフトワウェア)の修得がたいせつと思われるが……

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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