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雑誌目次

論文

臨床検査17巻6号

1973年06月発行

雑誌目次

カラーグラフ

ヘルペス細胞の特徴とその鑑別

著者: 石束嘉男

ページ範囲:P.590 - P.591

近年,婦人科領域では膣あるいは外陰部の感染症のうち,単純ヘルペスによるものが増加の傾向にあり,ますます重要なものとなりつつある.
細胞診上,本感染症の特徴
(1)特異な単一の核内封入体(Intranuclear inculusion body)—その核は大きく,重積性で,形は円形あるいは楕円形.核縁にそってクロマチン集積がみられる.封入体の染色性は好酸窪,好塩基性いずれにもなりうる.核の内部は封入体を残して空洞化し,一見いわゆる洗い流された(Washed out)ような感じをあたえる.(2)多核巨細胞型の細胞型をとる一見ジンチチウム型トロボブラストに似ているが,それよりも核は大きく,また細胞質ははるかに少ない.(3)核内封入体出現に先だって一核は少し大きくなり,形も不同化し,核内部が霞がかかったような,あるいは汚れたような(Smudgy)状態になる.(4)本感染の水疱形成期にその水疱をやぶり疱疹の底部より資料を擦過して採取すると核内封入体をみつけやすい.これはだいたい,感染の第2週めの初め頃にみつかることが多い.(5)すべての変化はだいたい2週間程度で自然に消失するものである.

技術解説

Auto Analyzerの不調点検の要領

著者: 野本昭三

ページ範囲:P.593 - P.601

 自動分析装置として現在一般に市販されているものは,Auto Analyzer (Technicon社)のほか30社にも及ぶといわれているが,今回は,特にAuto Analyzerを取り上げてその不調点検の要領について述べることになった.
 Auto Analyzerは,Continuous flow方式と呼ばれる独特の原理に基づくもので,これまでの試験管で行なう用手法を,そのまま機械に操作させている,いわゆるdiscrete方式の自動分析装置とは,かなり異なった特色(生体の循環器系を思わせるような)を持っていて,その特色をよく理解した場合は,この方式の上に多彩な可能性を感ずることのできる装置であるが,その原理と特色をよく理解することなく,手にした場合は,とかくこの方式の弱点とされている,carry overcontamination (前後試料間の影響,コンタミと呼ばれる)とか,ノイズ(ベースラインのゆれ)などが必要以上に気にかかり,問題にされるものと思われる.しかしこれらの現象は,オペレーターのわずかな学習と留意によって解決されうるものであるから,以下,コンタミ,ノイズ,そして自動分析装置全般に共通すると思われる試料吸引チューブの‘つまり’などに関連する事項について順を追って述べ,合わせて機械の保守についても付記する.

ニュクリポアー・メンブランフィルターの利用法

著者: 古橋正吉 ,   佐藤久雄 ,   土崎南

ページ範囲:P.602 - P.608

ニュクリポアー・メンブランフィルターと既存セルロース系メンブランフィルターとの比較
 ニュクリポアー・メンブランフィルター(ニュクリポアーと略す)はポリカーボネートの超薄皮膜(厚さ10-13μm)に,原子炉中で発生させた荷電粒子を照射してつくり出された飛跡を,ある種の化学薬品槽に浸して侵触させることによって穿孔されるものである.こうしてできたニュクリポアーは均一な孔径を持った円筒状の孔が1cm2当り数千万—数億個あいており,完全なスクリンフィルターとなっている.このため,孔径より大きな粒子はすべてフィルター表面に捕捉される.このような特長は従来のセルロース系メンブランフィルター(ニュクリポアー以外のもの)には見られなかった点である.
 図1はニュクリポアーの走査型電子顕微鏡による所見である.均一な孔径を有する孔が垂直にあいているのがわかる.図2は孔径より大きな粒子がフィルター表面に完全に捕捉された状態を示す走査型電子顕微鏡による所見である.これと比較する目的で既存のセルロース系メンブランフィルターの走査型電子顕微鏡所見を図3に示す.これで明らかなように均一な孔径の孔が垂直にあいているとは認め難い.このために粗大粒子ならば表面に捕捉されるが,微生物やほかの微細な粒子はフィルター内部に捕捉されることが容易に推測される.

好冷菌の細菌学

著者: 矢野信礼

ページ範囲:P.609 - P.613

 好冷菌(Psychrophile)あるいは低温菌(Psy-chrotroph)と呼ばれる一群の細菌は10℃以下の低い温度でも比較的すみやかに増殖するのが特徴であり,これまで主として冷蔵食品などの腐敗菌として多くの研究がなされてきている.しかし好冷菌に起因する食中毒の事例は現在までのところないようであり,また好冷菌の中には植物や魚類に対して病原菌となるものはあるが,人に対して病原性を有する好冷菌はまだ知られていない.しかし医学あるいは医療の領域でも好冷菌は保存血の腐敗による事故などの面で無視できない存在なのである.筆者は食品微生物ないしは食品衛生の面から好冷菌関係の研究に携わってきているので,好冷菌の一般的な性質や特徴などを中心に保存血の問題も含めて解説し,読者諸兄姉の御参考に供したい.

総説 免疫の基礎理論・1

免疫機構—T細胞およびB細胞免疫系

著者: 山口康夫

ページ範囲:P.614 - P.620

 免疫能は生体が自己,非自己を識別して自己の完全性を保つために備えている巧妙なしくみであるが,ときにその異常は病的過程を惹起することもある.原理的にみて免疫能の作動様式はEffectorが細胞抗体活性をもつ感作リンパ球であるか,免疫グロブリン抗体であるかによって,それぞれ細胞性免疫(Cell-mediated immu-nity),体液性免疫(Humoral immunity)に分けられ,近年前者には胸腺由来リンパ球(T細胞),後者にはファブリシウス嚢(鳥類)またはその相当器官(哺乳動物)由来リンパ球(B細胞)が主役を演ずることが明らかにされつつある.
 本稿では今日免疫学領域において中心課題のひとつとなっているT細胞およびB細胞免疫系の成立,性状,免疫応答,T&B協同作用に焦点を合わせて,最近の諸知見を解説的にまとめてご紹介する.

私のくふう

コンパスを使った脳波電極装着

著者: 大竹敬二

ページ範囲:P.621 - P.621

 近年電極などを取り付けて行なう検査が多くなり,中でも脳波検査での電極取り付けは最も技術を必要とし,電極の取り付け位置も各科の主治医により異なり,外傷などある場合には複雑になり,主治医と呼吸を合わせるには,いっそうの熟練が要求される.
 そこで,簡単な器具を用いることにより,早く楽に装着できるようくふうしたので報告する.

流動パラフィンを油浸系に使用

著者: 田中昭 ,   本誌編集委員会

ページ範囲:P.676 - P.676

 Nikonで発売されていた"Cargil-le's OIL"の成分にPCBが多量に含まれていたということで,回収されたのはまだ最近のことである.
 それまでは,無乾燥,無臭,簡単に拭きとれるなどの点でツェーデル油にない便利な点を有していたので,何かと使用していたものだったが,今度の件で,内心ガッカリしたものだった.

臨床検査の問題点・52

カンテン培地

著者: 高橋昭三 ,   望月一雄

ページ範囲:P.622 - P.627

細菌検査において欠くことのできないカンテン培地(おもに分離培地)について,その作るうえでの注意,問題点や保存法などについて話し合っていただいた.(カットは血液カンテン培地の流し込み)

異常値の出た時・6

血清コリンエステラーゼの高い時,低い時

著者: 玄番昭夫

ページ範囲:P.628 - P.633

血清コリンエステラーゼ活性測定の意義
 血清コリンエステラーゼ(cholinesterase,ChE)の測定が臨床的に必要な場合は,主として次の2つの場合であり,いずれも正常健康時よりも活性が減少している時である.
(1)パラチオンのような有機リン駆虫剤(農薬)による中毒の時

論壇

臨床検査の合理化

著者: 降矢震

ページ範囲:P.634 - P.635

検査機器の進歩と診断作法の変化
 以前は医師が診察して病変を推定し,その確認のために検査を行なった.名医ほど少ない検査で適確な診断が下せた.近ごろはスクリーニング,プロファイリングという方式が賞用されている.多種目の検査の網で篩い分ける.原因以外のものを除いてゆくから未熟な医師でも取りこぼしがない.前者の演繹的推理に対して帰納的判定ともいうべぎこの方式はより合理的といえる.
 プロファイリングは戦前でも米式病院で行なわれていたが,現在のようにスクリーニングの網目を細かく,広い範囲に行なえるようになった背景には自動機器の進歩がある.またその要求が機器の進歩を促がす.電算機による解析もあるものでは可能となり,進んで診断までさせようという試みもある.将来は医師はもちろん,臨床検査技師の手に負えない高度のメカニズムに発展してゆくかに見える.

座談会

超音波検査の現状と将来

著者: 室岡一 ,   畑宏 ,   山中義忠 ,   古木量一郎 ,   樫田良精

ページ範囲:P.636 - P.643

超音波検査の実際について臨床各科での診断への応用の現状をそれぞれの専門家から解説いただき,検査部でのルーチン検査としての現状をお話しいただいた.これは技師法改正により近い将来検査部に普及の予想される業務としての意味から今回特に取り上げたものである.
さらに関連学会の構成と講習会の現状,また超音波検査の実施上の問題点などにもふれて将来への展望をさぐってみた.

化学検査のうつりかわり・6

コレステロール

著者: 菅野剛史

ページ範囲:P.644 - P.651

 コレステロールが動物組織の不鹸化物質として分離されたのは1812年M.E.Chevreulによってである.しかし実際にコレステロールの化学的な構造などの研究がなされたのは1903年以降Adolf Windaus1)とOtto Diels2)らによってであり,digitonide生成,dibromideによる精製その他官能基の追求など単にコレステロールに限らず多くのステロイド化合物が生物界より単離されその構造が決定された.
 一方医学の領域においては1878年にXantho-matosisと血清脂質との関係がQuinquaudによって考えられ,1908年にはPick and Pinkus3)によって高コレステロール血症とXanthomaの関係は実証されている.またAnitschkow4)によって高コレステロール食飼にて飼育した家兎において,実験的粥状硬化症が生成することが1913年に報告され,以後脂質代謝と高コレステロール血症,さらにその病態について多くの研究がなされ今日に至るのである.しかしこれらの研究においてコレステロールはどのような方法で測定されていたのであろうか.血糖の測定法の歴史と,コレステロール測定法の歴史はそれ自体で戦国時代の群雄割拠の観をなすものであり,コレステロールにおいてはまだ諸国の統一はなされていないのである.

レポート

自動器械の稼動状況などに関する研究(第1報)

著者: 佐藤乙一 ,   篠崎幸三郎 ,   下杉彰男 ,   丹羽正治 ,   柴田久雄 ,   星野辰雄 ,   中橋勇次部 ,   吉沢藤平

ページ範囲:P.652 - P.657

 当研究班は前年度において自動器械の導入が官公私立病院のなかでどう行なわれているかを知るために関係機関のご協力を願って検討をすすめ,すでに発表してきたところである1-2)
 本年度はこれらの実績を基礎にして,各医療機関が導入した自動検査器械がどのように活用され,どのような役割を果たしているかをさらに調査して,それが稼動量の面でどう役だっているかを見るための検討を詳細にわたって行なってきた.

霞が関だより・13

日かげのニュース—新設医科大学など

著者:

ページ範囲:P.658 - P.658

 国民福祉の向上ということを第1の目的に掲げてスタートした昭和48年度も,すでに1か月あまりを経過した.予算編成終了後1か月にして為替レートの変動性の実施など当初とは違った要素も加わったため,国家としては今後多難な運用が予想される.
 さて,話は古めくが,48年度の予算編成の際脚光を浴び,かつ派手に報道された各種の事業計画がある.その一方では紙面の片すみにひっそりと項目だけ報道された事業計画もある.紙面の片すみの報道はそれなりに詳しい内容は伝えられていない.しかし場合によっては関係者の間で注目を浴びることがらも少なくない.そこで今回はそれらのうち話題となりうる性質のもののいくつかを拾いあげ,紹介してみることとした.

研究

頭部外平衡不関電極法に関する研究

著者: 吉井信夫 ,   村山利安 ,   西尾いと子 ,   石井久江

ページ範囲:P.659 - P.663

 脳波の誘導法には単極誘導法と双極誘導法があるが,なかでも単極誘導法の役割はきわめて大きい.現在使われている主な不関電極は耳朶であり平均不関電極も用いられているが,いずれも種々の利点や欠点がある.われわれは数年来不関電極について研究を行ない,平均不関電極,その他について発表1-7)してきたが,ここでは頭部外平衡不関電極法(以下BNと略す)について研究を行なったのでここに報告する.

新しい機器の紹介

国産6チャンネル自動分析装置Mediac 610

著者: 村井哲夫 ,   菱田久美子 ,   小幡雅祥 ,   町田孝夫

ページ範囲:P.664 - P.667

はじめに
 近年臨床検査の進歩による新しい検査法の開発と,その件数の飛躍的な増加に伴い,いわゆる自動分析装置が病院検査室,検診センター,検査センターなどで利用されるようになってきた.わが国においても数種の多チャンネル自動分析装置が開発され,実用に供せられるようになった.著者らの藤沢市民病院臨床検査科においても新しく開発された国産6チャンネル,ディスクリートシステム自動分析装置Mediac 610(DKKヤトロン)を購入した.
 本装置を日常検査に利用するにあたり,LDH, GPT,ALP,アルブミン,U-N, GOTの6種目の検査方法に検討を加えた.その結果LDH, GPT, ALP,アルブミン,U-Nの5種目については満足すべき成績を得ることができたので日常検査への移行にふみきった.その後約6か月間に6,000件の検体を処理し,その間の測定方法の検討成績および,日常検査移行像の問題点などを述べ,本装置の概略を紹介する.

Rapid Blood Analyzer(Ra BA)による血清中諸成分の迅速簡易定量法の評価

著者: 佐々木禎一

ページ範囲:P.669 - P.674

はじめに
 検査件数の急増と検査種目の多様化は,検査操作を次々と自動化することを不可避な課題としている.この傾向は生化学検査において特に顕著であるといえよう.また各種の測定試薬のキット化も,最近再び増加しはじめている現状である.
 しかしかような自動化や機械化は,経済的な点も含めて規模の大きい病院でこそ,その効果をあげうるものであるが,小規模な病院,地方病院,あるいは個人病院などでは,検査の近代化は異なった次元で考えなければならないであろう.さらに集中化,自動化の進んだ病院検査部においても,緊急検査,ベットサイドでの迅速検査,あるいは散発的に提出依頼される検査などの場合もあり,十分な検査体制は必ずしも大型の自動化,機械化のみでは成り立たないということも明白である.

新しいキットの紹介

広島赤十字病院におけるオーストラリア抗原の発現頻度および検出法に関する検討

著者: 木村直躬 ,   船津修朗

ページ範囲:P.675 - P.676

はじめに
 Blumbergらによって発見されたオーストラリア抗原(以下Au抗原と略す)は,その後の検索が進むにつれて,肝炎ウイルスと密接なる関係を有することが,ほぼ確実になってきたが,かなりの地域差,人種差および検出法による差があることが判明してきた.
 一方,Au抗原への,一般の関心が高まるにつれて,数多くの簡便な検出法が老案され市販されている.今回私達は,一般病院において,これらの検出法を用い,Au抗原を検索する機会を得たので報告し,あわせて検出法についての検討を行なってみた.

一般検査 寄生虫卵検査

寄生虫卵写真のとり方

著者: 鈴木了司

ページ範囲:P.677 - P.679

 寄生虫卵写真のとり方といっても,普通の顕微鏡写真のとり方と本質的には変わりない.
 著者は顕微鏡写真の専門家でもなく,また顕微鏡写真のとり方,特に理論的な面については多くの参考書もあるので,そちらを参照してもらうことにして,ここでは寄生虫卵写真をとるにあたって注意しなければならない一般的なことを書いてみたい.

質疑応答

血液型判定,交差適合試験での資格者とその責任

著者: H生 ,   井ケ田勝弘

ページ範囲:P.680 - P.680

 問 血液型判定,交差適合試験について次の2点の法的な解釈をお願いします.
1)無資格者が実施してもさしつかえないか.

走査電顕の目・6

鉄欠乏性貧血の赤血球

著者: 小川哲平

ページ範囲:P.681 - P.682

 鉄欠乏性貧血はきわめて多い貧血である.従来,萎黄病,胃酸欠乏性萎黄貧血,本態性低色素性貧血などと呼ばれる原因不明のもの,さらに無胃性低色素性貧血,鉤虫症貧血,妊娠性萎黒貧血などもその本態は鉄欠乏とみなされこれに含まれる.
 体内の総鉄量は健康成人で3-5gで,そのうちの約3gがヘモグロビン鉄,約1gが貯蔵鉄として存在し,血清鉄は全量約3mgである.血清鉄値は100-120mcg/dlであるが,血漿は300-360 mcg/dlまでの鉄を結合しうる能力があり,これを総鉄結合能と呼び,この両者の差を不飽和鉄結合能と呼ぶ.1日の食餌は約10-20 mgの鉄を含んでいるが,実際に吸収されるのは約1mgにすぎない.鉄は2価のイオンとして十二指腸壁から吸収されるが,胃酸の欠乏は鉄の吸収に妨げとなるといわれ,胃切除,慢性胃炎などは鉄欠乏の原因となる.吸収された鉄は,粘膜上皮細胞内でアポフェリチンというタンパクと結合してフェリチンとなり,フェリチンは鉄を血流中に放出し再びアポフェリチンとなる.鉄は血漿中のβ-グロブリンの一種であるトランスフェリンと結合して骨髄に運ばれ,ヘモグロビン合成に用いられ,またその一部はフェリチンまたはヘモジデリンの形で肝,脾,骨髄に貯蔵される.赤血球が崩壊して遊離した鉄は再び造血に用いられるため,生体からの鉄の排泄はわずかで,1日0.5-1.5mgで,吸収と排泄とは平衡を保っている.

シリーズ・一般検査 寄生虫卵検査・6

日本住血吸虫卵ほか

著者: 鈴木黎児 ,   三瓶孝明 ,   鈴木了司

ページ範囲:P.683 - P.684

グラフ

超音波図譜—座談会付図

著者: 畑宏 ,   山中義忠 ,   室岡一

ページ範囲:P.685 - P.688

検査と主要疾患・6

クッシング氏病

著者: 畠山茂

ページ範囲:P.690 - P.691

 人間の場合,糖質コルチコステロイドは大部分がコルチゾールとコルチゾンから成っているが,その過剰な分泌によって起こるのがクッシング氏病である.
 糖質コルチコステロイドは,異化ホルモンなので筋肉や骨梁への異化作用によって,アミノ酸を引き出すので,筋肉は弱くなり,骨質の吸収による骨多孔症を起こす,これらのアミノ酸は,肝で糖に変えられるので高血糖症の原因となり,余分の糖は脂肪となって蓄積されるので,この病気に特有な体幹を中心とした脂肪蓄積が目立ち,buffalohumpとかmoon faceと呼ばれる状態になる.また皮膚の弾力線維が弱くなって断裂するので,皮膚に赤い線条(striae)ができる(図1).またよくみられるステロイド性胃潰瘍は,胃酸とペプシン分泌が高まった結果である.

検査機器のメカニズム・18

AD変換器

著者: 又吉正治

ページ範囲:P.692 - P.693

 AD変換器とはアナログ(Analogue)量をデジタル(Digital)量に変換する装置である.アナログ量とは,メーターの指示やレコーダーに描かれる検査曲線のように目盛で表わされるようなものをいい,デジタル量とは,血球カウンターによる計数結果のように,数値そのもので表わされる量をいう.デジタル形電子計算機が病院の自動化に使用されるようになってきたが,検査室において,検査機器を電子計算機と接続して自動的に検査データの収集を行ない,補正,統計などの処理を行なおうとする時にAD変換器が必要となってくる.このときデジタル量としては0,1だけで表現される2進数のことをいう.
 AD変換器は,その方法により次のように分類される.

検査室の用語事典

自動化学分析

著者: 北村元仕

ページ範囲:P.695 - P.695

28) Flow diagram;フローダイアグラム,流れ系統図流れ作業の作業系統を図解したもので,フローシート(flow sheet)とも呼ばれる.この語は,事務系,技術系を問わず一般に使われるものであるが,自動分析において,工程自体が連続したflow sys-temであるオートアナライザーの分析操作を一覧するのにきわめて便利なため,好んで用いられる.

細菌学的検査

著者: 坂崎利一

ページ範囲:P.696 - P.696

34) Fimbriae;線毛
ある種の細菌には,べん毛とは異なる線維状の構造物が菌体に付着している.これを線毛という.線毛の形成は培養条件によって異なり,ブドウ糖を含まないブイヨンで48時間好気的に静置培養したときに,最も豊富になる.線毛には一般に動物(とくにモルモット)の赤血球を吸着する作用がある.

Senior Course 生化学

血清酵素活性測定の問題点(2)

著者: 正路喜代美

ページ範囲:P.697 - P.697

 酵素活性測定に自動分析装置を活用すると,試料と反応液の混和や,反応温度,時間を一定に保つことができ測定精度を高めることができそうである.では現実に自動分析装置による酵素活性測定が正確で精密度の高いものなのか考えてみたい.

血液

骨髄像の見かた考えかた(6)—塗抹標本のライト・ギムザ染色による骨髄像の見かた・2

著者: 桑島実

ページ範囲:P.698 - P.698

 前回につづき,今回は有核細胞の個々の形態の観察法について概説する.

血清

Lymphocyte Mediators (3)—マクロァージ遊走阻止因子(macrophage migration inhibitory factor,MIF)について

著者: 伊藤忠一

ページ範囲:P.699 - P.699

 細胞性免疫の試験管内検査法のひとつとして最近,マクロファージ遊走阻止試験(MIT)が盛んに用いられるようになってきた.
 RichとLewis (1932年)はツベルクリンで感作されている動物の脾切片をツベルクリンを加えて培養すると,その脾からマクロファージの遊走するのが抑制されることを観察した.この現象の意味するところはその後長い間,不問にふされてきたがGeorgeとVaughan(1962年)によって感作動物のリンパ球をマクロファージとともに毛細管につめて培養するという手技が開発されるに及び数多くの研究が行なわれた.その結果,マクロファージの遊走阻止現象は細胞性免疫の代表的表現型と考えられている遅延型の皮膚反応と密接に相関すること,さらにこの現象の機構については抗原に特異的に感作されたT細胞が抗原に再び遭遇するとMIFを生産遊離しマクロファージの遊走を阻止するということが明らかにされた.したがって本現象の特異性は抗原と感作リンパ球によって規定されるものであり,マクロファージは単なる指示細胞にすぎず抗原特異性はもっていない.指示細胞としてはマクロファージ以外でも遊走能力をもった細胞であればなんでもよいと考えられるが,実際に末梢血のbuffy coat (主に好中球より成る)や培養細胞(バーキットリンパ腫より培養樹立されたHR−1細胞など)を用いる手技も報告されている.

細菌

緑膿菌の同定(5)—付Flavobacterium meningose pticumの同定

著者: 五島瑳智子

ページ範囲:P.700 - P.700

 緑膿菌を目標とした検索コースを図に示した.
 フルオレスシンのみ産生する株については,ゲラチンの液化,41℃での発育の有無をしらべ,P.aeruginosa, P.fluorescens, P.Put-idaの区別を行なう.緑膿菌はさらにこれまでに記した各種試験を行なえば同定は容易であるが,あとの2菌種の鑑別にはトレハロースの分解(P.fluorescensの多くは陽性)も参考になる.

病理

凍結法の実際(3)

著者: 堀浩

ページ範囲:P.701 - P.701

4.固定組織の凍結法(前号より)
 すでに固定されている組織の場合は別として,新たに固定しようとする時は,固定液の浸透がよいようにできるだけ組織を薄く切る(3-5mm).
 特にグルタールアルデヒドは浸透力が弱く,ごく表面のみが良く固定されるにすぎない.したがって一般にはホルマリンのほうを推奨する.

生理

多現象の記録

著者: 戸崎丑之助

ページ範囲:P.702 - P.702

 多現象の記録ということをここでは次のように定義しよう,‘物理的な性質がそれぞれ異なる2つ以上の現象を同じ時相の上に並べて記録すること’.生体の内外には互いに関連し合っている多くの物理,化学的現象があるが,限られた記録チャンネルに対し現象を効果的に配置しなければならない.たとえば(1)目的とする現象(発汗量),(2)それに直接影響を与える現象(温度,湿度),(3)派生的に影響される現象(心拍,呼吸数)およびモニターとして併記したい現象(心電図,脳波)などである.この時(1)が直接記録できない場合には代用現象(体重)または原始情報を処理(現体重−初期体重=発汗量)して用いる.また初めから相関がつかめない時は入手しうる情報で記録をくり返しながらチャンネルを整理するよう心がけることになろう.

My Planning

自動化機器を真に生かすには

著者: 舟谷文男

ページ範囲:P.703 - P.703

自動化機器が検査室に導入されて久しいが,果たして使いこなされているだろうか.機器に人間が振り回されたり,メンテナンスに追われていないであろうか.大量検体を正確・迅速に処理するという真の目的を遂行するにはどう対処したらよいか……(大阪・S生)

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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