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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査18巻1号

1974年01月発行

雑誌目次

カラーグラフ

骨髄穿刺液中の腫瘍細胞

著者: 原島三郎 ,   中尾功

ページ範囲:P.4 - P.5

 悪性腫瘍患者の骨髄穿刺液中の腫瘍細胞陽性率は3〜8%程度であり,時期的には末期例に多い.骨髄転移の比較的よくみられる悪性腫瘍は,胃癌,乳癌,肺癌,悪性リンパ腫,神経芽細胞腫などである.悪性腫瘍患者で,貧血があり,末梢血液中に赤芽球,幼若好中球の出現をみた時には,腫瘍の骨髄転移を疑う必要がある.骨髄塗抹標本をみる時には,標本の引き終わりに腫瘍細胞群が存在することが多いので,引き終わりを注意深く観察することがたいせつである.悪性腫瘍細胞の中でも,癌細胞は結合して細胞群として存在し,肉腫細胞は孤立性に散在することが多い.

技術解説

Human leukocyte antigenの検査法—Micro lymphocyte cytotoxicity test

著者: 十字猛夫 ,   奥山マチ子

ページ範囲:P.7 - P.16

 Human leukocyte antigen system (HL-A)とは白血球を用いて,同定できるヒト同種抗原である.赤血球におけるABO式血液型,Rh式血液型と同じように,白血球にも血液型が存在し,そのうちの1つで,現在までに,最もはっきりと解明されているのが,HL-A抗原系である.1964年にP.Terasakiによって発明されたmi-cro lymphocyte cytotoxicity testが,最も再現性の高い,また最も一般に普及しているHL-A抗原の検査法である.

血液型不適合妊娠の検査法

著者: 支倉逸人

ページ範囲:P.17 - P.22

 血液型不適合妊娠検査は,血液型検査と交差試験を行っている検査室であれば,すぐ実施できるが,かなり手数と費用のかかるものである.

総説

単位の標準化—(A)国際単位系(SI)の使用をお勧めする

著者: 高田誠二

ページ範囲:P.23 - P.25

 日ごろは一市民として皆さんのお世話になるばかりなのだが,筆者の専門領域の話題が多少はお役に立つのだったら,まことにうれしいことである.その領域とは,理工学全般にかかわる"計測"の諸問題を扱う領域であって,医学とはまず無縁だと思っていたが,本誌の既刊号を拝見すると,きわめて物理的な臨床検査の記事があるし,そもそも誌名がJournal of Medical Technologyであって,理学・工学とはなかなか縁が深いようである.臨床検査精度研究会のお仕事などはまさしく計測の問題であって,これを機会に筆者もそれを勉強したくなるほどであるが,ここでは,ご注文の"単位"の問題を略述することに専念しよう.

単位の標準化—(B)WASPの提案を中心に

著者: 河合忠

ページ範囲:P.26 - P.27

 臨床検査は年々進歩,発達し,基礎科学の各分野の専門家との交流がいっそう必要となっている.しかも,臨床検査に対する臨床医の依存度もますます増大の傾向にある.したがって,臨床医が臨床検査成績を十分に理解するためには,さまざまな基礎科学の知識が必要とされるわけである.ましてや,基礎科学と臨床医学の間を橋渡しする立場にある臨床検査に従事するわれわれにとってはなおさらのことである.そこで,互に相通じ合う言葉を設定すること,すなわち標準化の動きが出てきたのも当然といえよう.
 国際標準機構(IOS,International Organization for Standardization),国際純正・応用物理学連合(IUPAP,International Union of Pure and Applied Physics),国際純正・応用化学連合(IUPAC,International Union of Pure and Applied Chemistry),国際生化学連合(IUB,International Union of Biochemistry)が協力し,過去数年にわたって討議した結果,国際単位系(SI,International System of Units)を用いるよう合議に達した.近年,すでに多くの国や専門分野において採用され始めている.

座談会

単位の標準化

著者: 長沢佳熊 ,   河合忠 ,   松村義寛

ページ範囲:P.28 - P.35

 単位は,毎日の検査データには不可欠なものであるが,その割には無頓着に扱われてきた.特に濃度や酵素の単位表記には不統一による混乱が目だち,学会発表やコントロールサーベイなどで直接影響を出している.現在,国際的にSI単位が提唱されているが,今月はこの単位の統一化,いわば,単位の標準化を検討する.

異常値の出た時・13

ナトリウム,クロール

著者: 鈴木潤

ページ範囲:P.36 - P.39

 ナトリウム(以下Na),クロール(以下Cl)は細胞外液のおもな陽イオン,陰イオンであり細胞外液浸透圧活性物質の主体をなし,細胞外液量保持に,Clはまたさらに酸塩基平衡維持に重要な役割を果たしており,血清Na,Cl濃度は他の電解質と同じくきわめて狭い範囲に調節されている.血清Na,Cl濃度は必ずしも総Na量(40mEq/kg),総Cl量(35mEq/kg)の過多,過少と一致しないことはいうまでもなく,血清Na濃度は,総Na量+総K量1)/全体水分量で表されるごとく,全体水分量総K量の影響を受ける.血清Cl濃度はNaの変化とともに変化するが,K,HCO3などの影響を受ける.本稿ではNa,Cl代謝の概要を述べ,次にNa,Cl測定上の問題,測定したNa,Cl値の評価,すなわち異常値が出た時いかなる疾患を考えるかについて述べる.

論壇

検査未来学

著者: 阿部裕

ページ範囲:P.40 - P.41

 臨床検査が医学の体系の中で重要な地位を獲得したのはきわめて最近のできごとである.19世紀の診断学上の発見が,聴診法(Laënnec,1816),体温測定(Traube,1850),血圧計(Riva-Rocci,1896)の3つしかないといわれるように,ほとんどの検査は今世紀に生まれた.すなわち,20世紀にはいるとレントゲン線の診断応用と心電図の発明に始まる各種の検査法の開発によって,臨床医学の体系は急速に客観化への道を進むことになった.
 わが国の臨床検査学の成長を大まかに3期に分けると,戦後の復興期,中央検査室の普及期,それに現在始まろうとしている再編期となろう.第1期は検査そのものが研究対象として扱われた時代であったが,この時期は検査の実用化によって急速に終わりを告げ,検査の種類が充実するにつれて検査室が作られ,これとともに専門職としての検査技師も生まれた.この過程にみられた思想の流れは,医学の客観化であり,情報化である.

臨床検査の問題点・59

Au抗原の感染防止—プール血清を中心に

著者: 福岡良男 ,   豊田幸子 ,   合川巳千江

ページ範囲:P.42 - P.47

一般に,医療従事者の中でも検査技師と看護婦は感染の頻度が高いといわれている.特に検査室では患者血清ばかりでなく,コントロール血清(市販品も)にもAu抗原の陽性が報告されている.この日常的な問題を技師としてどう対処したらよいのか,プール血清を中心に検討する.(カットはプール血清の濾過)

検査ノート

ゲラチンスライドはり付け法による凍結切片の染色法(Ⅰ)

著者: 鈴木裕

ページ範囲:P.50 - P.51

 病理組織標本作製において脂質類の染色やペルオキシダーゼ反応などを行う場合,検出する目的物の性質上凍結切片が用いられており,またその切片作製技術上より遊離切片を使用する方法が普通一般に行われているが,染色ステップの多い方法や検索組織いかんによっては切片の破損がひどく,ときには標本作製が不可能なもの,またそこまでいかなくとも写真撮影ができないもの,あるいは組織の切断面の関係から検索対照のほとんどが脱落してしまうものなどその標本作製上における技術的制約を受ける場合が往々にしてある.著者はこの凍結切片を遊離法として扱う方法の難点を解決するために凍結切片の作製にクリオスタットを使用しゲラチンスライドに薄切切片を直接はり付け,以後の処理や染色をパラフィン切片と全く同様に扱う,いわゆる"ゲラチンスライド法"としてすでに本誌第17巻2号,技術解説に詳しく紹介した.しかしその際,染色法については紙数の関係で割愛せざるを得なかったので,ここでは染色法について,ルーチンに使用されている方法を中心にして記し,またこの方法により簡単にルーチン化でき従来あまり行われていない方法についても紙数の許す限り記載しようと思う.なお以下に述べる染色法では切片をはったゲラチンスライドのゲラチン膜硬化終了以後の操作より記述し,それ以前の方法の詳細については前記"技術解説"を参照していただきたい.

研究

関東逓信病院システムにおける臨床検査データ処理(Ⅰ)—その現状

著者: 鈴木康之 ,   春日誠次

ページ範囲:P.52 - P.56

はじめに
 近年とみに,医療に対する国民の関心が高まり,病院構造の変化に追従する医療技術の充実,そして的確なる診断など高度な要求が叫ばれている.この要求を満たすためには,組織的・総合的に患者の情報を把握し,病院内における診療各科の情報交換を行い的確な診断をくだし,患者の早期治癒,予防保全につとめなければならない.情報交換を的確に行うためには,患者の病歴情報の蓄積,また,健康歴の管理などの情報処理を情報処理機械にゆだねなければならないことは,もはや医療界の常識となっているといえるであろう.
 医療への需要がますます増加する今日,病院における受入体制が,それにマッチした形で存在しなければ病院機能は失われるであろう.この中で,近代的な病院機構のひとつの条件として,臨床検査部門の充実があげられる.医師の診断に対して,客観的な資料を提供する部門の役割は重要である.患者にとっても検査などのデータが,正確に迅速に得られることは,的確な診断がなされるということで,早期治療につながり,まさに福音といえるであろう.

Pyocyanin非産生Ps.aeruginosaの同定検査法にLeifsonによる鞭毛染色を利用する試み

著者: 佐久一枝

ページ範囲:P.57 - P.59

はじめに
 最近,分離率の高くなったPs.aeruginosaを同定をする際に,臨床細菌検査室においてはどの程度まで性状検査を行うことができるかが問題となっている.
 現在,検出されているPs.aeruginosaのうち多くの株は,Ps.aeruginosaのみに特有な色素であるpyo-cyaninを産生するので,King培地などの色素産生用培地を使用することによって,大半の菌株を同定することが可能である.しかし,色素(pyocyanin)を産生しない株とfluorescinのみ産生株の同定には,いくつかの性状検査を行わなければならない.私はこれら性状検査のうち,特に鞭毛染色(後述)を行うことによって同定検査が容易になるのではないかと考え,臨床材料から検出された腸内細菌以外のグラム陰性杆菌について検討した.従来より,鞭毛染色は熟練を要するめんどうな検査法と考えられていたが,Leifsonによる方法では,2,3の注意を守れば容易に鞭毛を染色することができる.

癌患者の体腔液の一般的性状と癌細胞の有無との関係について

著者: 岩谷靖央 ,   山岸紀美江 ,   田嶋基男 ,   黒木須雅子

ページ範囲:P.60 - P.63

はじめに
 癌患者においては,肋膜や腹膜に癌の侵襲がなくても貯留液を認めることが相当にあり,そのことに関してはSaphir1),Koss2)の論文に詳しい.理由として考えられていることは,腫瘍による静脈やリンパ管の圧迫,腸間膜の巻縮,ある種の化学物質の産放,血液成分の変化など記載されているが,そのほかに心機能,肺機能,肝機能,腎機能の不全も加わることであろうし,立場を変えて考えると,癌と別個の疾患の合併は,癌年齢においては日常茶飯事と言わなければならない.したがって,胸腹水の細胞診は,癌患者に関しては,個体における癌腫の存否を問うものではなく,漿膜侵襲の有無を知ることに第1のポイントがある.漿膜侵襲の有無は"手術の価値""予後の測定"に重大な情報となる.ところで,胸腹水の性状に関しては,一般に3-5)"血性である""浸出液である"などの記載があるが,実はそのような記載の中に,漿膜侵襲の有無を区別した立場から,厳密な分類を行ったものはなく単に"癌患者の胸膜水は"というばく然とした視点で捕えたものが多かった.

小川培地における通気条件の検討

著者: 中森純三

ページ範囲:P.64 - P.67

はじめに
 小川培地上での結核菌の発育の良否が培地の施栓・通気の条件に左右されることは周知のごとくで,これは,培養環境要因としての酸素・炭酸ガス分圧や培地の湿潤度などに起因するものと思われる.これらの影響は集落の初発時期,集落の形態,発育菌量,ひいては培養陽性率の差として現れる.したがって,正確・迅速な検査成績を得るためには,最良の施栓・通気の条件を選ぶことが必要となる.
 これらの観点から結核菌培養における施栓あるいはガス環境条件の優劣を比較した報告は数多いが,その成績は必ずしも一致していない.すなわち,密栓培養もしくは炭酸ガス培養がよいとするHoraiら1),Cohnら2),Tsujimotoら3),小川ら4)の各報告と,これとは逆に,通気培養のほうがすぐれるとする原田ら5),水之江ら6)の成績,さらには集落の発生は密栓培養のほうが早いが,個々の集落の発育は通気培養のほうがすぐれるとする二村ら7),間瀬8),合田9)の各報告の3群に大別することができよう.

γ-GTPの微量測定について

著者: 松尾武文 ,   瀬合秀昭 ,   山本勝一郎

ページ範囲:P.68 - P.70

はじめに
 γ-Glutamyl transpeptidase (γ-GTP)は,肝疾患の診断に最近注目されている酵素検査の一種である.本酵素は,腎・膵・腸・肝などの臓器に広く存在しているが,肝疾患や胆道系病変や膵疾患などに対して特異的に流血中に増加することが知られている.
 特に肝細胞のマイクロゾームの損傷に対して鋭敏に反応し,たとえばエタノールの摂取やある種の薬剤(phe-nytoinなど)の常用によってマイクロゾームの損傷が起こると,血中のr-GTPの増加が起こることから,本酵素は肝細胞のマイクロゾームの損傷の度合を知る鋭敏な検査であると考えられている1)

新しい機器の紹介

Reflectance Meter法とAuto Analyzer法による血糖測定の比較検討

著者: 調けい子 ,   三村悟郎

ページ範囲:P.71 - P.73

緒言
 血糖測定は,糖質代謝における病態解明に直接的な多くの情報を与える.特に,糖尿病においてはその病状を管理するうえに,臨床検査の中でも古くから,最も重要な検査法として数多くの測定法が紹介されてきた.
 血糖測定法1)には,還元法(Hoffman法・HagedornJensen法),直接測定法(o-Toluidine法),酵素法(Glu-cose-oxidase法)などがあるが,いずれも高濃度のタンパク質のため,除タンパク操作を要し,少なくとも20〜30分の測定時間がかかり,小規模ながら実験室が必要であるところから,簡単には情報が得られない欠点があった.また,糖尿病昏睡や低血糖など,刻々の変化を把握する必要のある場合には,正確かつ迅速に情報を得る必要性のために,簡易測定法が考案されてきたが,あくまでもスクリーニングの域を脱し得ない状態にあった.

新しいキットの紹介

市販フィブリンカンテン平板を用いたプラスミンの測定法に関する検討

著者: 宮谷勝明 ,   高畑譲二 ,   福井巌

ページ範囲:P.74 - P.76

緒言
 プラスミン測定法のひとつとしてフィブリン平板法があげられるが,この方法はAstrupら1,2)によって考案され,それ以来,多くの研究者3-5)によってさらに吟味が加えられてきた.これとは別に,安河内6)はガラス管を用いた一次元拡散法を報告し,太田ら7)はカンテンゲルをフィブリン平板の支持体に用いたフィブリンカンテン平板法の有用性について報告を行ったが,著者らは市販フィブリンカンテン平板のフィブリン溶解などに及ぼす諸因子の影響について検討を加えたので,その成績を報告する.

Cibachron Blue F3GA-Amyloseによる体液アミラーゼ測定法

著者: 稲垣美津 ,   中根清司

ページ範囲:P.77 - P.81

はじめに
 体液アミラーゼ活性の測定法として1967年Rinder-knecht1)らによって色素を交差結合させた着色不溶性デンプン粉を基質とする方法が報告されて以来,Ceska2),Babson3),Klein4,5),Take6)らにより,新しいchro-mogenicな基質7-9)がいろいろ開発されてきた.わが国でも,アミロペクチンに色素を結合させた基質"Dy-Amyl"10-12)デンプンに色素を結合させた基質"BlueStarch"12-14)がよく検討されている.今回,われわれは,Klein4,5)らの報告に基づいてRoche社から発売されたアミロースに色素を結合させた基質"Amyloch-rome"について検討した.

臨床化学分析談話会より・5<関東支部>

検査室からの新しい提言—LDHアイソエンザイム分画

著者: 菅野剛史

ページ範囲:P.83 - P.83

 167回の関東支部例会(48.10.16)はLDHアイソエンザイムを中心に3人の演者によって話題が提供された.この分画を実施する施設がふえ,各種のLDH異常症が見出されるとともに,臨床的な評価のうえでも問題にされねばならぬ点が多少とも生じているという背景でこのような話題が取り上げられたのである.

霞が関だより・20

ある時期のある断面—予算成立まで

著者:

ページ範囲:P.84 - P.84

 毎年のことながら12月の下旬ないし翌年の1月上・中旬は中央官庁が次年度の予算編成のため総力をあげて仕事に取り組む時期である.もちろんふだんの日がそうではないということではない.ふだんの日は予算の執行つまり事業の実施の時期に合わせて仕事をするので力が分散されるかたちになるので,そう目だたないのである.国が予算を組むということは国が事業を行ううえで必要な財源支出の裏付けをするということであるが,このことは新聞やテレビなどで大々的に報道されることでもあるのでご存知の方も多いであろう.今回は新聞などで報道されない裏方の実態をお知らせしてみることにした.
 "予算は夜つくられる"という俗語があるが,たいていの場合このようなことが多い.それは,大蔵省原案が閣議を経て,各省庁に内示されるが,この第1次の内示を受けた各省庁(会計課)はこれを持ち帰り,各行政部局を経由して,各担当課へ通知するという方式がとられるからである.この間会議が持たれたり,また当然のことながら数字の書き写しなどが行われたりするのがおもな原因であろう(ここに至るまでの間,担当課では次の作業を予想して記入書式を整えたり,復活要求をする額などについてある程度楽しみながら協議したりしている).

質疑応答

尿中エストリオール値について

著者: A生 ,   石束嘉男

ページ範囲:P.85 - P.85

 問 ①E3キット(帝臓)を用いて予定日不確実な妊娠尿の早朝尿を調べた結果,40mg/l,24mg/l,66mg/lと測定日ごとに異なる値を得た.40mg/lと66mg/lとの差(26mg/l),つまり40mg/l以上における差は臨床的にどれだけの意味を持っているのでしょうか.
 ②エストリール(持田)20〜30mgのエストロゲンを筋注した場合,その日の蓄尿または翌朝尿の尿中エストリオール値は注射によるエストロゲンの影響で代謝産物のエストリオールもプラスした値になるのでしょうか.

日常検査の基礎技術

標準液の検定

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.87 - P.89

 化学分析の基本として標準液が作られる.日常検査では市販のものが正しく作られているので,信頼して使用しているわけであるが,もし何らかの疑問が持たれた場合には,自ら検定しなければならないことも起こる.いったん開封したものはどんな異変が起こっているかわからない.
 マグネシウムの標準液には光電比色計用の1mg/mlのものと,炎光分析の標準液作製用の0.1mol/lのものとがある.これらのマグネシウム含量を検定する一例を示しておく.

検査と主要疾患・13

ネフローゼ症候群

著者: 上田泰 ,   石本二見男 ,   井上真夫

ページ範囲:P.96 - P.97

 "ネフローゼ症候群"とは次に述べるような定義の病態に名づけた症候群の名称であって,ひとつの疾患名ではない.したがって本症候群には原因疾患が必ず存在するわけで,診断にはもちろんのこと,予後の解析,治療法の選択には可能な限り原疾患を明らかにすることが必要である.成人患者を本症候群と診断するための必要な条件は,1)持続する多量のタンパク尿(1日3.5g以上),2)低タンパク血症(血清タンパク6.0g/dl以下,アルブミンなら3.0g/dl以下),3)高脂血症(血清総コレステロール250mg/dl以上),4)浮腫,の4つで,このうち1),2)が必須条件である.他に尿沈渣中の卵円型脂肪体,重屈折性脂肪体などの存在も診断の助けになる.
 本症候群の原因疾患では糸球体腎炎が最も多く(約70%),次いで代謝性腎疾患(糖尿病性糸球体硬化症,アミロイド症,骨髄腫など),膠原病(ループス腎炎など)があげられ,他に妊娠中毒症,腎静脈血栓症,中毒性腎障害,腎腫瘍,移植腎などもまれではあるが認められる.

検査機器のメカニズム・25

バイブロミキサー—試験管用を中心として

著者: 水野映二

ページ範囲:P.98 - P.99

 臨床検査の機械化,自動化が進み,私たちの周辺は多種多様の検査機器が増加している.ゆえに,検査機器なしに結果を得ることは困難になりつつある.これからは検査の手段として機器を使用しなければならないので,敬遠することなく,構造,性能を学び,簡単な故障は修理し,維持していかなければならない.
 日常使用する簡単な装置として,攪拌条件を整え,能率化する別表のような試験管用バイブロミキサーがある.その一例の最も簡単な構造の装置についてのバイブロミキサー(Vibro-mixer)について述べる.

検査室の用語事典

常用病名

著者: 伊藤巌

ページ範囲:P.101 - P.101

1)亜急性細菌性心内膜炎;subacute bacterial endocarditis (SBE)
 心内膜,特に弁膜の細菌性炎症性疾患で,病原菌はおもに緑色レンサ球菌である.リウマチ性弁膜症や先天性心疾患を持つ患者に発生することが多い.持続性の発熱を呈し,貧血・脾腫を伴う.しばしば血液培養により病原菌が証明される.早期にペニシリン治療を行えば,大部分は治癒せしめうる.

血清学的検査

著者: 伊藤忠一

ページ範囲:P.102 - P.102

1) Absorption;吸収
 溶液中に溶けている抗体を対応する特異抗原と反応させ,不溶性にして取り除くことをいう.ある抗体溶液(抗血清)を抗原Aで吸収した時,抗原Bに対し,また逆に抗原Bで吸収した時,抗原Aに対しどのように反応するかを調べることを"Castellaniの吸収試験"と呼ぶ.最近,可溶性抗原(抗体)を不溶性の基質に吸着させたものを用いて対応する抗体(抗原)を除去する方法が開発された.immunoadsorptionという.

走査電顕の目・13

尿沈渣—扁平上皮細胞

著者: 木下英親 ,   田崎寛

ページ範囲:P.103 - P.104

 尿沈渣検査が,腎実質,尿路系疾患の,診断,鑑別,経過観察のうえに欠くことのできない検査であることはいうまでもない.尿沈渣観察法として,通常の検鏡,位相差顕微鏡による観察,ギムザ染色,パパニコロウ染色をはじめとする染色による細胞観察が行われている.
 遊離細胞の走査電子顕微鏡による観察はすでに,主として血球などで行われており,尿沈渣の走査電顕による観察も,これに準じて行うことが可能であると考えられる.しかし,尿沈渣についても,固定,脱水など試料作製に関して,なお検討の余地があり,数多くの観察とその所見の解釈が重ねられる必要がある.

シリーズ・一般検査 ふん便検査・1

便潜血反応検査の要点

著者: 猪狩淳

ページ範囲:P.105 - P.106

 便の検査はだれもやりたがらない,早く済ませてしまいたい検査のようである.しかし消化管や肝胆道疾患には欠かせない検査であり,好なと好まざるとにかかわらず慎重に,正確に行われなければならない.今回は便潜血検査を取り上げたが,この種の検査は患者の摂取物,薬剤や試薬や手技の良否により成績が左右されやすい.

組織と病変の見方—肉眼像と組織像の対比

造血器とその病変(2)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.107 - P.110

 造血器の疾患として最も多く遭遇するのはリンパ節の病変であろう.非特異性炎をはじめ,結核,サルコイドーシス,ホジキン,細網肉腫などは決して少ない病気ではない.
 細網肉腫は,一般に癌腫に比して少ない肉腫の中でも,数多く見られるもので,生まれたての小児でも老人でもできる.細網肉腫,リンパ肉腫,ホジキン病などを一括して悪性リンパ腫(malignant lymphoma)とも呼ぶ.

付・組織と病変の見方

病理解剖と病理医

著者: 金子仁

ページ範囲:P.111 - P.111

 ひと口に解剖といっても次の4つの種類がある.
1.系統解剖

Senior Course 生化学

自動化学検査・1—自動化の基礎(1)

著者: 中甫

ページ範囲:P.112 - P.113

 自動分析機とは,基本的には,用手法で行う操作を代行させるように設計された機械と考えてよい.したがって,用手法で起こる問題点は,自動分析にも同様に起こることを想定しなければならない.ここではディスクリートシステムを中心に,機械の導入後,ルーチン化するまでのステップについて,私見を加えながら解説する.ディスクリートシステム自動分析機のおもな機構は,次の部分から成り立っている.
1)サンプリング,2)試薬分注および混和,3)恒温装置,4)吸光分析装置,5)データ記録,6)その他,サンプルID,濃度計算機構など

血液

白血球数の増加と減少—顆粒球—好中球

著者: 中島弘二

ページ範囲:P.114 - P.115

 顆粒球数が異常値を示した時その解釈にあたってまず顆粒球の生体内でのカイネテックスについて理解しておかねばならない.顆粒球(主として好中球で好酸球,好塩基球も含む)は図1に示すごとく骨髄内で種々の刺激により幹細胞より分化した骨髄芽球が分裂増殖するとともに成熟し正常顆粒球となる.分裂能力のあるものは骨髄芽球,前骨髄球,骨髄球であり骨髄芽球から後骨髄球になるまで約3日,杆状球から分葉球になるまで4〜5日骨髄内でリザーブとして貯蔵される.末梢血に供給された顆粒球は血管内を血流に乗って組織に供給される.1度血管から組織に出た顆粒球は2度と血管内に帰ることはなく,そこで生体防御のため貪食作用,消化作用をいとなみ死滅していく.また血管内では流血に乗って流れている顆粒球circulating granulocyte pool(CGP)と毛細血管内皮に接着しているmarginal granulocytepool(MGP)が互いに交換しながらほぼ等量に分布している.すなわち,末梢血において検査できる顆粒球は骨髄から生体の組織に供給される途中の一部分であることを忘れてはならない.それは生体内の全顆粒球の1%以下にすぎない.
 末梢血管にはいった顆粒球は遅くとも10時間以内には組織へ出ていき,その量だけが骨髄より供給され,末梢血内には一定量の顆粒球数が保たれている.しかしそのバランスは日内変動があり,さらに14〜23日の周期的変動がある.

血清

ウイルスの血清学的検査

著者: 中村正夫

ページ範囲:P.116 - P.117

ウイルス性疾患の実験室内診断法,特に血清学的検査
 一般に行われているウイルス性疾患の実験室内診断法としては,1)ウイルス分離,2)血清学的診断,3)形態学的診断,封入体の検索,電顕による形態学的観察も応用されつつあり,螢光抗体法も利用価値が高い.4)皮内反応その他の方法が用いられている.ここではこれらのうち,血清学的診断について述べたいと思う.
 血清学的検査としておもに用いられているのは,補体結合(CF)反応,赤血球凝集抑制(HI)反応および中和試験(NT)である.その他,凝集反応,沈降反応,免疫吸着反応,ラジオアイソトープ沈降反応,感作血球凝集反応および螢光抗体法などが応用される場合もある.CFは最も広く用いられ,使用器具としても,梅毒血清反応のCFが実施できるところならば行いうる.しかし,血清学的に多くの形があり,類属反応を示す場合,また血清診断をするために多くの抗原を必要とする場合などには実用的価値は少なくなる.HIは赤血球凝集能を有するウイルスについて行いうるものであるから,その応用にも限界がある.NTは大部分のウイルスについて行いうるが,そのためには感受性動物,発育鶏卵または組織培養を必要とし,手間と費用の点からも一般臨床検査として利用しがたい場合も多い.

細菌

臨床細菌学的検査の基準化への道

著者: 三輪谷俊夫

ページ範囲:P.118 - P.119

 編集部の方から今年いっぱいこのsenior course (細菌)を担当するよう依頼があった.そこで早速今までにこの欄で取り上げられてきたテーマや内容をあらためて読み直してみた,緑色→黄色→緑色とページの色もさりながら,"入門講座"時代から,より広範囲の高度な内容を取り入れるべく"1ページの知識"へと脱皮し,さらにより専門的な"senior course"へと発展し,読者の要望に応えて今年度からは1ページから2ページになり,担当者としてその責任の重大性を痛感するしだいである.
 そこで私は責任を回避するわけではないが,ひとりよがりのドグマに陥らないよう検査現場の第一線に立っている人々と組んでこの欄を担当することにした.幸いなことに,永年懸案であった感染症研究会も昨年(1973年)4月にようやく発足し,研究部会のひとつである"検査部会"では当面の重要な研究テーマとして"細菌学的検査法の基準化への道"を取り上げてきた.

病理

臨床病理学的立場よりみた電子顕微鏡学・1—序説電顕室のレイアウト管理,臨床検査における電顕の占める位置について

著者: 相原薫

ページ範囲:P.120 - P.121

 1932年ドイツのRuskaとKnollにより初めて磁界型電顕が組み立てられて以来40年を経過しており,世界全体で使用されている電顕は10,000台に達しているものと推定される.わけても医学生物学への応用はガラスナイフにより超薄切片を作成する方法を創始したLattaおよびHartmann(1950)の努力に負うところが多い.その後電顕の鏡体に関する技術の向上,解像力の飛躍的上昇,すぐれた包埋用樹脂の導入,超薄切片の作成技術の向上により,その後の飛躍はめざましいものがある.しかしながら医学ことに臨床検査に電顕が十分活用されていたかは疑問であり,電顕検査(Service E/M)が臨床検査のうえで重要な役割を果たすという認識が出てきたのはごく近年である.

生理

ポケット心電計

著者: 岸田浩

ページ範囲:P.122 - P.123

 狭心症や各種不整脈の診断には心電図記録が必要であることはいうまでもない.これらの疾患は発作的に起きるので,そのため発作中の心電図を記録しなければ正確な診断をつけることができない.しかしこのような心臓発作は日常生活中いつ起こるかわからず,かつ短時間であるためにこれらの発作を記録するには,よほど偶然でもないかぎり心電図をとることはできない.そういう目的にかなうような心電計としては,常に患者が携行可能で,発作が起きたらただちに心電図記録ができるようなものが要求される.したがって患者自身に携行させるにはポケッタブルな超小型,軽量,操作の簡単なものでなければならない.このような心電計を患者携帯用心電計という.
 われわれは約4年前に患者携帯用超小型心電計を開発し,実地診療に供している.それに関する詳細な論文はすでに発表してあるので1,2),ここでは装置の概要と使用方法および臨床応用について述べることにする.

My Planning

現場における技師教育について

著者: 小栗豊子

ページ範囲:P.124 - P.125

 パラメディカルの一翼を担う臨床検査技師の養成(3年制)は現在,その職種の特殊性から教育内容,教育期間について関係者の間で活発な論議がたたかわされている.特に,病院実習は,学校側と受け入れ側(病院)とのおのおのの立場で異論の多いところである.
 また,技師の卒後教育については,現在のところ野放し状態といってもいいくらいである.学生生活から離れ,社会人,職業人として,円滑に進むために,また激しい進歩発展を続ける臨床検査に立ち遅れないためにも,卒後教育は不可欠であるといえよう.私自身,長年細菌検査に従事し,その間に新任の技師を受け入れ,また学校の実習生の指導を担当してきた.これらの経験から現場(病院検査室)における技師教育について,私なりの意見を述べてみた.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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