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雑誌目次

論文

臨床検査18巻12号

1974年11月発行

雑誌目次

カラーグラフ

M.kansasiiの同定—一症例から

著者: 松井晃一

ページ範囲:P.1266 - P.1267

 非定型抗酸菌ならびに非定型抗酸菌症は,近年その発見頻度が高まってきており,これは検査面の開発,普及そして関心の高まったことによる1〜3).特に1972年に日本結核病学会抗酸菌分類委員会から出された試案4)は私どもの細菌室では手引きの一つとなっている.本症例もこの試案により鑑別同定したものである.患者は59歳になる女で48年7月に入院し6か月後に退院,入院時X線所見で右上肺野に空洞を認めており,微熱,咳があった.既往歴としては2年前に右乳癌で手術施行以後は60Cによる放射線治療を行ったことがある.入院時3回の喀痰検査では2回連続して本菌を検出,結核菌は認めなかった.入院後内視鏡検査による材料についても培養を行ったが,本菌も結核菌も分離できなかった.なお抗結核薬の感受性は,INH,PASは耐性,SM,KM,EB,CPMは不完全耐性,TH,VM,RFPは感性であった.また本菌が標準株P.18に比してS型集落であったことは下出5)の報告とも一致していた.

技術解説

院内感染源の検査法

著者: 金子有之 ,   大貫寿衛

ページ範囲:P.1269 - P.1276

 抗生物質の開発とともに,薬剤耐性菌による院内感染がふえている,その原因は,各種血液疾患,腎不全,糖尿病などの本来感染に対して抵抗の弱い疾患のみでなく,抗癌剤の使用,レントゲン線の照射などにより,患者が細菌の感染に対して抵抗が弱くなっていることと,抗生物質の多用によって耐性菌がふえていることにあると言えよう.
 院内感染の起因は,病原菌の付着している診療器具,あるいは医療薬品などで患者を治療する時に,病原菌を患者に,医療従事者が健康保菌者となり患者に接する,患者が細菌の付着している物に触れるなどの何らかの方法で患者が病原菌に接するところから始まる.病原菌保菌患者から医療器具,医薬品,医療従事者などを介して他の患者へ,また病原菌保菌患者から直接他の患者へと感染を起こしていく,このようにして院内感染は広がっていく.

NBT還元試験

著者: 松田重三 ,   河合忠

ページ範囲:P.1277 - P.1284

 NBT還元試験(nitroblue tetrazolium re-duction test)は,好中球機能検査法の一つであり,数多い好中球機能のうちでも,とりわけ食食能と好中球内酵素系の働きをみる検査である.
 好中球が黄色のNBT色素を取り込んでのち,還元作用により黒色のformazanを形成するが,この現象を好中球機能として間接的にとらえる方法である.

総説

プロスタグランディン—その生理的機能について

著者: 山本皓一

ページ範囲:P.1285 - P.1290

 プロスタグランディン(PG)は最近の医学,生物学領域におけるトピックスの一つで,すでに膨大な数の研究発表があり,現在なお続々と新しい知見が発表されている.紙数の関係上,それらの詳細にわたることは不可能で,きわめて表面的な概観に止めざるを得ないが,すぐれた単行書や特集,総説1〜3)が多数あるので,問題の細部についてはそれらを参照していただきたい.
 PGは図のような構造を有し,1個の5員環を持った炭素数20のモノカルボン酸で,二重結合,水酸基,ケト基などの位置の違いによりA〜Fの6群に分けられ,さらに各群に3種類が区別される.いずれの群も多彩な作用を示すが,その作用スペクトラムはそれぞれ異なり,生物活性と構造の関係を明確な規則として整理することは困難である.いずれのPGも細胞内のマイクロゾームで,アラキドン酸などの長鎖不飽和脂肪酸から合成される.生体内のほとんどすべての臓器や体液中に存するが,その濃度は10−6〜10−9/g程度であり,精嚢,腸,肺などに比較的多い.現在,F群などは合成されて市販されており,産婦人科領域で使用されている.PGの拮抗物質あるいは阻害剤として7—oxa-PGおよび5—oxa-PGの類縁体があり,またアスピリンやインドメタシンもPGの生成,放出を阻害することが知られている.

私のくふう

計算尺を用いた血色素指数の求め方

著者: 小林重光

ページ範囲:P.1290 - P.1290

通常,血液検査をしていて意外に時間のかかるのが色素指数,平均赤血球容積などの計算である.特に色素指数の計算は,計算式
CI=Hb (g/dl)/R×3.2
 の分母,R×3.2を計算してからその分子を除すために,なかなかめんどうである.

臨床検査の問題点・69

睡眠脳波のとり方

著者: 遠藤四郎 ,   河越弘

ページ範囲:P.1292 - P.1299

睡眠脳波をとるには,やはり慣れによるコツが必要であろうし,患者検査のむずかしさも多いと思う.そして睡眠脳波のパターンがどういうものであるか,また睡眠剤や,疾患によっても現れるパターンは異なってくるものであるので,これらをよく見きわめ,知っておかなければ記録するうえで支障をきたしてしまう.それを認識するとともにコツを話し合っていただいた.(カットは覚醒から睡眠にいたる脳波と眼球運動を示している.EOGは眼球運動)

異常値の出た時・24

血小板数の変化と形態異常

著者: 塚田理康

ページ範囲:P.1300 - P.1305

 末梢血液中の血小板数の算定は,血液疾患のみならず,血液疾患以外の疾患の診断や治療に欠くことのできない重要な情報を提供してくれる.しかし血小板数の算定法は他の血球の算定法に比べて数多く存在し,このことは血小板という互いに凝集しやすく,壊れやすい,埃などとの区別がむずかしい小片を測定することがいかに困難であるかということを示している.
 ここでは現在使用されている測定法の優劣を比較しながら,見かけ上の異常値が得られる可能性について考え,真の異常値と区別する方法についておもに述べてみたい.

論壇

臨床検査に想う

著者: 入久巳

ページ範囲:P.1306 - P.1307

 1958年に検査を専門とする職種が初めて制度化されて,年々その内容は充実され,また検査技師を志す人たちも多くなり,医療の発展,充実に大きな貢献を果たしている.そして医療がさらに進歩し発展するに従って,臨床検査の役割もますます重要となり,より広い深い知識,より高度な技術も要求されてきている.
 先輩医療人がいち早く臨床検査の医療における重要性を察知し,医学教育の最初がそうであったように,検査に携わる人たちを徒弟制度的にそれまで教育していたのを,初めて学校教育として育成し,さらに制度化した功績は実に大きい.このようにしてできあがった検査を専門とする職種,衛生検査技師法成立の時期は,それ以前の徒弟制度的教育を検査の立場から第1期とすれば,第2期に相当するものと思われる.この第2期の期間中にも,ますます医療が進歩し,ついに第3期の変革が望まれ,衛生検査技師法から,修業年限も1年延長されて,臨床検査技師法が制定された.しかし第3期はまだ始まったばかりで,その成果に関して論ずることはできないが,りっぱな臨床検査技師が育っていくことはまちがいないと思われる.

新しいキットの紹介

クレアチンホスフォキナーゼのC-ZymeTM Enzyme Reagent測定法の検討

著者: 村上郁子 ,   竹久元彬 ,   八島弘昌

ページ範囲:P.1308 - P.1312

はじめに
 1934年にLohman1)がクレアチン+ATPCPK⇔クレアチンリン酸+ADPの反応が筋収縮に関与することを見出して以来,各種神経筋疾患の診断のために血清クレアチンホスフォキナーゼ(以下CPK)の測定法が研究されてきた.
現在繁用されている測定方法としては (1)正反応系における方法
 a)クレアチンリン酸からリンを遊離させて測定する2)

赤血球凝集反応によるα-フェトプロテイン測定法の検討

著者: 河合忠 ,   松田重三

ページ範囲:P.1313 - P.1318

はじめに
 胎児期に生理的に存在するα1-Fetoprotein (以下α-Fp)は生後間もなく消失し,以後健康人には証明されないが1),ある病的状態において再び出現することがわかってきた.
 特にAbelev2)およびUrielら3)などによる広範な検索の結果,ヘパトーマ患者に高頻度に検出されることが報告され,α-Fpはヘパトーマに特異的な病的タンパクとして注目されるようになった.

新しい機器の紹介

散乱光の測定を応用した中性脂肪の簡易測定法に関する検討—TGメーターおよびマイクロネフェロメーターについて

著者: 梶山梧朗 ,   水野敏之 ,   松浦千文 ,   三好秋馬

ページ範囲:P.1319 - P.1321

はじめに
 今日,血清中性脂肪の測定はコレステロールと並んで動脈硬化の臨床上不可欠のものと考えられ,その測定法にもVan Handel法,アセチルアセトン法,酵素法などが次々と登場し,すでにキットとして市販されているものも多数にのぼっている.
 さらに近年上記の方法とは全く異なった原理で,かつこれらの方法に比べ,非常に測定操作が簡単な,散乱光の測定を応用した中性脂肪の測定法が考案され実用化され始めた.

臨床化学分析談話会より・16<関東支部>

尽きない管理血清の議論—第1回分析談話会夏期講習会

著者: 菅野剛史

ページ範囲:P.1322 - P.1322

 臨床化学分析談話会関東支部の夏期講習会は8月2,3日の2日間にわたり,慶応大学立科山荘(長野県)において,近畿支部,東海支部,北海道支部より若干の参加者を加えて行われた.参加者は約75名であり,高原の涼しさにもかかわらず,教室は熱気と活気に満ちた討論で終始した.
第1日は 1.臨床検査のあゆみと今後の問題点               北里大 斎藤 正行 2.SI単位の最近の動き               昭和大 石井  暢 3.内分泌検査の現状            北里ブリストル 佐藤 誠也 4.世界の臨床検査室              札幌医大 佐々木禎一と4氏の講演と質疑が行われ,特にSI単位の問題については活発な討論が行われ,今後の問題点として臨床家へのアピールの方法まで具体的な問題提起がなされた.

霞が関だより・29

診療報酬の改定と臨床検査の今後の方向

著者:

ページ範囲:P.1324 - P.1324

 最近の医療の中で各種の臨床検査が占める割合が急速に増加しており,医療機関1施設あたりの検査件数は以前に比べると飛躍的に増加してきている.この現実に対してこれまでの健康保険の医療費体系における検査料は必ずしも十分なものではなく,臨床検査技師会や衛生検査技師会を初め各方面から検査料を引き上げてほしいという要望が出されていた.ところが今回1974年10月1日に行われた健康保険の診療報酬点数の改正では特に技術料の引き上げに重点がおかれており,平均して全体では16%の診療報酬点数の引き上げが行われたのに対して検査,麻酔,手術の3つの医療報酬点数は平均40%の引き上げが行われた.この中で臨床検査に関係の深いおもなものをあげると,次に述べるように新設されたものや2倍あるいは3倍に引き上げられた特殊な検査がある.

質疑応答

外傷性てんかんと異常脳波

著者: K生 ,   和田豊治

ページ範囲:P.1326 - P.1326

 問 外傷性てんかんには小発作型の異常脳波は現れないといわれますが,その理由をご教示ください.

日常検査の基礎技術

免疫グロブリンの定量法

著者: 浜崎泰昶 ,   尾辻省悟 ,   山下巧

ページ範囲:P.1329 - P.1336

 血清免疫グロブリン(Ig)は,正常な免疫反応として諸種の抗原刺激に対して発現するいくつものクローンから分化した形質細胞で産生されて血中に増量するか,骨髄腫やそれらの類似疾患の時に,正常Igとは少し違ったIg,すなわちM成分として血中に出現する.一方,われわれが日常繁用するセルローズアセテート膜電気泳動像にみられるγグロブリンの増減は確かに生体内での免疫反応の亢進または低下を知らせてはくれるが,Igのクラス別の増減は十分に教えてくれない.たとえば骨髄腫の時は特定のIgだけが増えていることが多く,γグロブリンは増加している場合も正常域にある時もあり,逆に低下している場合もある.また疾患によってはIgのどのクラスが増加または減少しているかを知ることがその重症度判定や他の疾患との鑑別に有力な手がかりとなることがある.したがって各種の高および低γグロブリン血症時のIgを測定することは臨床上重要な意義を持っている.今日,IgにはIgG,IgA,IgM,IgDおよびIgEの5クラスが知られており,それらの測定には抗原抗体反応の特異性を応用した免疫学的方法が用いられている.
 本稿ではIgG,IgA,IgMあるいはIgDの定量法を,最も一般的なゲル内拡散法のうち一元平板免疫拡散法と試験管内単純拡散法について,おのおの既製キットの1つをとって具体的に述べる.

検査と主要疾患・24

痛風

著者: 御巫清允

ページ範囲:P.1338 - P.1339

 15年前の検査室を考えてみると,尿酸の測定がルーチン化している所は,日本中で数えるほどしかなかった.ところが,最近では尿酸の測定がかなり重要な検査項目となったことはご承知のとおりである.尿酸はプリン代謝の偏倚を知るためにたいせつであり,また組織崩壊の様相を示す一つの指標でもあるから,痛風のみならず,悪性腫瘍の治療上の一つの指示でもあるわけである.ここでは痛風についてのみ言及したい.
 痛風は,私のごとく特殊なクリニックでの頻度(図1)は極端としても,しだいに,その数が増しつつあることはだれも否定しない.そして,その診断にもいろいろ異論はあるにしても,その基礎には尿酸値の上昇というものがあることを否定する人はいない.

検査機器のメカニズム・36

自動染色装置—ヘマテックスライドステーナー(ヘマテック)

著者: 末廣雅也

ページ範囲:P.1340 - P.1341

1.ヘマテックの特徴
 ヘマテックは,専用の染色キット"ステインパック"を使用し塗抹標本の染色,水洗,乾燥操作を自動的に行う機器である.従来,染色液を調製した時の勘により染色時間を加減してよい標本を作製するコツを体得したものであるが,この装置はだれにでも常に均一な染色標本を作製できるように設計されている.また染色液槽を使用せず常に新しい染色液が自動的かつ連続的にしかも経済的な量が塗抹標本に流出して染色操作が行われる.

検査室の用語事典

常用病名

著者: 伊藤巌

ページ範囲:P.1343 - P.1343

98)貧血;anemia
 流血中の赤血球数および血色素量が減少した状態で,血液あるいは造血臓器に原発性の病変があると考えられる原発性貧血(原発性再生不良性貧血など)と,他の臓器,組織の病変によって貧血が一つの症候として発生する続発性貧血(失血性貧血など)に大別される.また赤血球の平均容積(MCV),平均血色素量(MCH),平均血色素濃度(MCHC)を基準とする分類がなされる.

血清学的検査

著者: 伊藤忠一

ページ範囲:P.1344 - P.1344

94) Tolerance (lmmunological Tolerance);免疫学的寛容
 免疫学的無反応状態の一種で,その状態にある特定の個体に本来ならば抗原として働くはずの物質を作用させてもその個体は全く免疫学的に反応しない.免疫学的寛容を誘導しうる性質を寛容原性(tolerogenicity)というが,この性質はある物質が抗原であるための重要な条件の一つである.

組織と病変の見方—肉眼像と組織像の対比

肉腫

著者: 金子仁

ページ範囲:P.1345 - P.1348

 肉腫は非上皮性悪性腫瘍である.骨肉腫,軟骨肉腫,線維肉腫,筋肉腫,リンパ肉腫など種類は多い.しかし悪性腫瘍の内では癌腫に比べれば圧倒的に少ない.肉腫の内,最も多いのは細網肉腫であるが,骨肉腫とともに前に述べてあるので今回は軟部組織肉腫の代表例を掲載する.軟部肉腫で最も多いのは線維肉腫と脂肪肉腫である.特異なものに滑膜肉腫(synovial sarcoma)がある.組織学的に肉腫ではあるが腺形成がある.また蜂巣状軟部肉種(alveolar softpart sarcoma)も肉腫であるが蜂巣状構造を示す.このほか,横紋筋肉腫,血管肉腫を出した.

病理学総論(その3)

著者: 金子仁

ページ範囲:P.1349 - P.1349

腫瘍
1.腫瘍の定義
 細胞の自律的増殖を腫瘍と呼ぶ.自律的とは自分勝手という意味である.たとえば,手や足にケガをして欠損部ができたとすると,その反応として上皮性細胞や非上皮性細胞が増殖し欠損部を埋めてくれる.十分に欠損部を満たしたらもはや増殖しない.また,文筆家によくペンダコができるが,常にペンを持っていると最もよく当たる部分の扁平上皮が増殖する.これは当たる部分をカバーする目的で増殖したもので,ペンを捨てればもはや増殖しない.このように手足のケガを修復したり,カバーする意味で増殖するのは合目的増殖とか,反応性増殖とか呼んで腫瘍性増殖とは厳重に区別している.

Senior Course 生化学

自動化学検査・12—総括

著者: 中甫

ページ範囲:P.1350 - P.1351

 過去11回にわたってディスクリート方式自動分析機を中心に自動化学検査について述べてきた.内容は決して十分とはいえなかったが,自動分析の場合は用手法の問題点に加え分析機にまつわる問題点が含まれるので記述すべき内容が膨大なものになる.したがって自動分析における特徴的な問題にのみ焦点をしぼり,われわれの経験をおりまぜて記述した.今回は自動分析におけるフィロソフィーを含めて総体的な問題を述べまとめとしたい.

血液

リゾチーム

著者: 中島弘二

ページ範囲:P.1352 - P.1353

リゾチームとは
 lysozyme (ライソザイム)またはmuramidaseと一般に呼ばれ分子量14,000〜15,000の強塩基性低分子酵素であり,ある種の細菌の細胞膜物質を溶解する.細胞膜中のN—アセチルグルコサミンとN—アセチルムラミン酸間のβ−1,4結合に作用する.成熟顆粒球および単球にありAおよびB顆粒に含まれphagosome中に放出される.非病原性のMicrococcus lysodeikticusなどをよく溶解する.貪食された他の細菌の殺菌にもある種の役割を持っていると思われるが,詳細は不明である.
 健康人の血清または血漿中の測定可能なりゾチーム活性は生体内での顆粒球のturn overによるものであり(図),顆粒球または単球の崩壊によりリゾチームは血漿中にはいってくる.もし正常の3倍以上になれば尿中にリゾチームが出現する.

血清

ウイルスの血清学的検査

著者: 中村正夫

ページ範囲:P.1354 - P.1355

ウイルス検査の問題点
 ウイルス学の進歩はめざましいものがあり,これに伴って,臨床ウイルス検査に関しても,方法あるいは技術面に多くの進展がみられている.現在,ウイルス検査の必要性も認められ,その目的も理解されつつあると思うが,一方においては,なお問題点も多い.そのため,ウイルス検査が日常検査として,一般病院検査室などで行われる場合の障害となっている.これはウイルス血清学的検査に限った問題ではなく,ウイルス検査全般に関係していると思われるので,全体の立場からの問題点を考え,さらに,このうち特に血清検査に関係すると思われる点についても述べたいと思う.

病理

臨床病理学的立場よりみた電子顕微鏡学・12—細胞病理学概説

著者: 相原薫

ページ範囲:P.1356 - P.1356

I.細胞内の膜構造
1.細胞膜(形質膜)(cell(Plasma) membrane)
 細胞の全表面を被覆しており,中に透明帯をはさんだ2本の平行に走る暗線として認められ単位膜(Unitmembrane)とも呼ばれる.平均85〜120Åの間でその表在面にcell coat(Fawcett),extracellular polysac-charide(Bennet)が存在するといわれる.

付・細胞病理学概説—I.総論

ページ範囲:P.1357 - P.1361

細菌

一般病原細菌の抗生物質感受性試験

著者: 竹田美文 ,   三輪谷俊夫

ページ範囲:P.1362 - P.1363

 抗生物質(薬剤)感受性試験には,希釈法,拡散法,比濁法があり,希釈法には寒天平板希釈法と液体培地希釈法が,拡散法には感受性ディスク法,傾斜平板法,直立拡散法などがある.このうち日常検査室で最も頻繁に使用されているのは,感受性ディスク法である.その他の方法は,特別の検査以外にはたいていの検査室でほとんど利用されていないと老えられる.果たして,感受性ディスク法による検査は,抗生物質感受性試験の本来の目的を十分に達しているであろうか.
 日常,検査室で行う抗生物質感受性試験の目的は,ほとんどの場合が,感染症の原因菌に対する各種の抗生物質(薬剤)の感受性を調べ,当該の感染症の治療に適切な抗生物質(薬剤)を選択する資料を提供することである.この目的のためには,①検査結果が正確であること,②病原細菌本来の感受性を正しく反映した結果であること,③できるだけ迅速に結果を臨床医に報告できること,などが最低限要求される条件であるといえよう.

生理

フィシュバーグ濃縮希釈試験

著者: 小船善弘

ページ範囲:P.1364 - P.1365

 濃縮および希釈試験は,水制限あるいは水負荷した際に,腎がどの程度高い濃度に,または低い濃度に溶質を尿中に排泄しうるかという腎の能力を調べる検査である.この濃縮希釈試験について述べる前に,その基礎生理学的な事項について若干の知識を得ておく必要があろう.
 糸球体からボーマン氏嚢に瀘過された液は血漿の成分と等しく,浸透圧を290mOsm/lを示すのであるが,続く近位尿細管を通過する間に,その約85%が等浸透圧的に再吸収される.近位尿細管からヘンレの下行脚にはいると,しだいに高張となり,その先端では1,200mOsm/lという高い浸透圧を示す.次いでヘンレの上行脚にはいった尿細管液は,特殊な尿細管細胞の性質によってNaのみが間質へ汲み出され,しだいに低張となる.汲み出されたNaは,一部ヘンレの下行脚にはいって尿細管液の高張化に関与し,一部は間質内にはいって髄質間質の高張性の形成に関与する.hairpin型をしたヘンレ氏係蹄の各部位でこのような浸透圧濃度勾配が作られる過程を名づけて,尿濃縮の対向流増幅(coun-tercurrent multiplier)と呼んでいる.

My Planning

技術を見直す

著者: 巴山顕次

ページ範囲:P.1366 - P.1367

 臨床検査の機械化,自動化が進むにつれ,検査業に対する技師の姿勢の転換が求められている.機械にまかせられる日常検査は積極的にオートメ化し,まかせられない検査を技師自身がやる,いわゆる"考える検査"がいわれている.

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「臨床検査」 第18巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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