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雑誌目次

論文

臨床検査19巻3号

1975年03月発行

雑誌目次

カラーグラフ

リンパ節腫脹の細胞診

著者: 天木一太

ページ範囲:P.244 - P.245

 リンパ節の細胞診は,リンパ節穿刺材料の塗抹標本あるいは手術材料のスタンプ標本で行われる.そこに出現する細胞は,リンパ球,細網細胞,形質細胞,その他血流からの血球,またそれらの腫瘍化した細胞や転移による癌細胞がみられる.これらのうちリンパ球と細網細胞は変異が著しいうえに,それぞれの細胞は似ているところがあって,鑑別が難しいが,それでも組織像の細胞所見よりは特徴がはっきりしていて,細胞像としては優れている,そのため細胞診は組織学的診断の補助として重要である.
 診断の実際は,まず反応性変化か腫瘍か,反応性とすればどのような反応か,腫瘍とすれば原発性のものか転移によるものか,また腫瘍とも反応ともいい難いホジキン病か細網症かなどが問題になる.

技術解説

二波長分光光度計による化学分析

著者: 横山宏 ,   斎藤徹 ,   小田切節子

ページ範囲:P.247 - P.255

 近年,自動分析装置の導入により省力化,迅速化が計られ,またこれにコンピューターを接続してデータ処理を計るなど,臨床検査室の自動化はめざましいが,まだまだ用手法による検査も多く残され,それら自動分析装置にのらない多くの検体をいかに能率よく,しかも正確に処理するかは今日の大きな問題である.
 二波長測光法は1954年Chance, B.1)により考案されたが,最近になって本法が吸光度測定時に各種干渉を避けうるのでその有用性が認識され,本川ら2)は一般臨床化学分析を目的とした二波長分光光度計を完成させた.

リンパ節の細胞診—(カラーグラフ参照)

著者: 天木一太 ,   岩永隆行

ページ範囲:P.256 - P.262

 リンパ節はいろいろの疾患で腫脹する.局所の単なる化膿性炎症ではその領城のリンパ節が腫脹するし,頸部では結核性リンパ節炎があり,また膠原病でもリンパ節腫脹がなられ,伝染性単核症では全身各所のリンパ節が反応性に腫脹する.またリンパ肉腫,細網肉腫,ホジキン病などは悪性リンパ腫といわれ,多少とも系統的にリンパ節腫脹がみられるし,白血病では時々全身性のリンパ節腫脹がみられる.更に癌があるとその転移はまず領域のリンパ節に起こる.
 これらのリンパ節腫脹の診断は,臨床的に,また臨床検査データから推定されるが,最後的には試験切除をして,そわを病理組織学的に検査することによって決められる.しかし,リンパ節腫脹のならわる疾患は多く,組織所見はそれぞれかなり似ていて,特徴的所見のないものもあるから,組織像による診断革,万能ではない.特に組織像では細胞所見が不十分なことが弱点である.そこで,リンパ節穿刺材料や手術材料を塗抹標本にして,Wright-Giemsa染色にしたり,また位相差顕微鏡によって細胞学的に観察することが補助診断として役立つのである.

総説

ビリルビンの測定

著者: 福井巌 ,   久城英人

ページ範囲:P.263 - P.267

 血清ビリルビンの定量法は測定原理に基づいて,①酸化法,②ジアゾ法,③直接法,④分別法,に大別される1)
 現在,これらのうち日常の臨床化学検査にはジアゾ法と直接法が繁用されている.

座談会

ビリルビンの測定

著者: 西村昂三 ,   久城英人 ,   松村義寛

ページ範囲:P.268 - P.274

 ビリルビンは黄疸に関連して血中に増加してくる物質であり,内科はもちろんのこと,殊に小児科において新生児黄疸などの診断には欠かせない検査項目ではあるが,果たしてそれを使用する場合において同一病院内での標準値があり,正確な値であっても,いざ一般に発表したり,患者の転入,出などの場合の数値の理解と利用がスムースでない場合があると思われる.この点の標準化の方向をさぐってみた.

異常値・異常反応の出た時・27

梅毒血清反応—STS反応とTP反応との違った時

著者: 小野田洋一

ページ範囲:P.275 - P.279

 STS室から出た結果とTP反応室から出た結果とをもらって,機械的にそれをまとめているのは事務系の仕事をしている人である.結果が双方ともに陽性であろうと陰性であろうと,あるいは一部一致していなかろうと,そのとおりに間違いなく転載するのがその人の仕事である.
 その結果をもらった医師は判断に苦しんだ末に,疑問を差しはさむことがときにある.間違いと気違いとはどこにでもある,といって反応結果の違いを簡単に見逃してしまうことができないのが臨床検査結果なのである.梅毒ならば,STS反応の結果もTP反応の結果も必ず一致すると考えるのは間違いであるが,人情として同じ結果が出ていれぽ安心し,結果が違っていれば不安に感じるはずである.

臨床検査の問題点・71

血液型検査の精度管理

著者: 遠山博 ,   瀬戸幸子

ページ範囲:P.282 - P.288

 輸血ということは一種の移植手術と同じような意義を持つものであり,そして血液は各個人によってみんな違うもので,輸血の際には当然多くの危険を伴うものである.その輸血を安全に行うためには非常に精密な検査を行う必要があり,とりわけ血液型の検査は最も基礎となり柱となるものである.この輸血を安全に行うためにはどういう検査を,どのようなやり方ですべきか話を進めてみた.
(カットはRh式血液型判定での陽性(右)と陰性(左))

レポート

臨床検査付随業務などの評価方法に関する研究(第2報)

著者: 佐藤乙一 ,   篠崎幸三郎 ,   下杉彰男 ,   大橋成一 ,   丹羽正治 ,   星野辰雄 ,   中橋勇次郎 ,   吉沢藤平 ,   竹田直彦

ページ範囲:P.291 - P.293

まえがき
 本研究班は前報において臨床(衛生)検査技師(以下検査技師)が日常業務を行うに当たって,元来検査技師法に定めていない付随業務や,他の関連職種との谷間的業務となっている曖昧業務を行った場合には内規ですべて健康保険点数に準じた点数を定め,本来業務の稼動量に加算評価するべきではないかとして一試案を述べた.
 検査部門の実績評価,評点は一般的に検査技師1人当たりの検査件数,点数のみを対象とし,その業務を行うために当然つきまとったり,運営上行わなければならない曖味業務が評価されないため,これらの業務はとかく敬遠される傾向にあった.

研究

Double Albuminemiaの一家系について

著者: 岡本憲雅 ,   森田文雄

ページ範囲:P.294 - P.295

緒言
 Zone electrophoresisが開発されて以来Double Al-buminemia (以下D.Aと省略)に関する報告例が多くなってきている.現在,rapid型とslow型が報告されており,正常と同じ易動度のアルブミン(以下Albと省略)(Aln)とともに易動度の高いAlb (Alra)あるいは低いAlb (Alsl)がある.我々は,日常提出される可検物の中よりセルローズアセテート膜電気泳動にて図1のごとき所見を得,更にその家族調査からD.Aの尿系と老え若干の成績を得ているので報告する.

血清トランスアミナーゼの微量測定について

著者: 松尾武文 ,   森崎栄子

ページ範囲:P.296 - P.297

はじめに
 トランスアミナーゼの定量には,Reitman-Frankel(1957年)の方法が広く用いられている.わが国では日本消化器病学会で標準法が定められており,測定条件について詳しく規定されている.標準法による血清試料の必要量は100μlであり,UV法に比較すれば少量である.しかしトランスアミナーゼの定量は日常検査として繁用されているため,微量定量化には大きな利点がある.一方Reitman-Frankel法を改良した超微量定量法も考案されている1).それによると,血清は20μlの微量であるが,ジニトロフェニルヒドラジンや基質の濃度が標準法と異なっているため,標準法の試薬がそのまま利用できないのが難点である.私どもは,エッペンドルフのマイクロリッターシステムを用いて標準法で定められた試薬を改良することなく,使用量を規定の1/5量で定量できることを報告した2).しかし,この方法でのピルビン酸検量線は,勾配が緩いため低単位での読み取りに難点があった.これは微量法では血清からのピルビン酸生成速度とピルビン酸検量線との間に,測定条件の差異による不一致が生じたためと考えられた,今回は標準法の試薬のままで,日常検査として標準法とかわらぬ精度で定量できるトランスアミナーゼの微量法を考案したので以下に述べる.

臨床細菌検査体制の実態とその問題点について

著者: 中森純三 ,   室木邦生

ページ範囲:P.298 - P.301

はじめに
 臨床細菌検査は,個々の患者の診定手段としてのみならず,伝染性疾患の診定という公衆衛生学的意義が大きい点からも,第一線の臨床検査機関における細菌検査の重要性は特に強調されるべきであろう.
 また,臨床検査全般の規格化・簡易化傾向のなかで,細菌検査はそれらが著しく困難な分野であり,深い経験と熟練とが要求されると同時に,その検査体制が合理的であるか否かによって検査の精度や能率に差を生じやすい.このことは,先に日本衛生検査技師会によって行われたコントロール・サーベイ1)の結果からも容易に推察される.

臨床材料から分離されたKlebsiella属の分類—第2報VP反応陰性株について

著者: 竹森紘一 ,   横田英子 ,   高安敦子 ,   筒井俊治 ,   沢江義郎

ページ範囲:P.302 - P.305

はじめに
 既に第1報1)で述べたごとくKlebsiellaはCowanとSteel2)や坂崎3)によると6菌種に分類されている.この6菌種の中でVP反応陽性を示すものはKl.Aero-genesとKl.edwardsiiであり,VP反応陰性を示すものはKl.Pneumoniae, Kl.edwardsii var.edwardsiiの一部,Kl.ozaenae, Kl.rhinoscleromatisの4菌種とされている.
 一般に検出されるKlebsiellaの大部分はVP反応陽性であり,Kl.aerogenesである.しかし,VP反応陰性でKlebsiellaではないかと思われる菌株をときとして検出し,その同定と分類にとまどうことがある.我々は先にVP反応陽性のKlebsiellaについて,インドール反応陽性株を中心にその分類と薬剤感受性について報告したが,今回はVP反応陰性を示すKlebsiellaと思われた菌株について,種々の検討を加えたので報告する.

臨床化学分析談話会より・19<関東支部>

臨床化学分析のむずかしさ—Caの測定法と臨床的評価

著者: 野間昭夫

ページ範囲:P.306 - P.306

 あいにく国鉄のストライキと重なり,流会とせざるを得なかった11月の第178回分析談話会関東支部会が,1か月延期となって12月17日に東大薬学部講堂において行われた.「測定法と臨床的評価」シリーズの第6回目として当日のテーマにはカルシウムが取り上げられた.
 まず測定法に関して北里大学斎藤正行先生が講演され時の流れに沿ってCa測定法がいかに改良されてきたかを,分かりやすく,かつ楽しく話された.シュウ酸沈殿法,ヨード滴定法,EDTAキレート滴定法,比色法,〔グリオキサールビス(3・ヒドロキシアニル)法,NFR法,OCPC法など〕,原子吸光法などが解説された.斎藤先生の講演中にもあったし,その後のディスカッションで問題になったことは,

質疑応答

サルモネラの同定をめぐって

著者: T生 ,   坂崎利一

ページ範囲:P.307 - P.307

 問 サルモネラと疑わしい集落が生えたので,ためし凝集反応をしたところ(+)になりました.どこへ同定をお願いしたらよいのでしょうか.その施設,書式,費用などをお教えください.

日常検査の基礎技術

真菌菌株の保存法

著者: 横山竜夫

ページ範囲:P.311 - P.318

 菌株の保存は,少なくと4,微生物を取り扱う限りけ避けて通ることができないことでありながら,煩わしざが先に立ち,ややもするとなおざりになりがちのものである.
 細菌,酵母と同様,真菌の培養も,その菌が最も良く発育し,形態的にも生理的にも望ましい限りの最良の性質を発現するための最適条件──培地,温度,光,通気など──を選び用いているが,こういう条件下では同時に自然突然変異率が最も高く,形質の変化が起こりやすい.また培地中に蓄積される物質によって菌自体の発育が阻害されたり,変異が誘発されたりする他,培地の枯渇や養分の消費,急激な温度変化,あるいは雑菌やダニの侵入による菌株の死滅や汚染という不都合が種々発生し,培養即保存とはなかなかうこたくいかない.

検査と主要疾患・27

腸チフス

著者: 中溝保三

ページ範囲:P.320 - P.321

 腸チフスはチフス菌の感染によって腸管のリンパ組織に特有の潰瘍性病変を起こすとともに,菌血症による全身性の疾患に発展して,独得の熱型,徐脈,バラ疹,脾腫などの症状を呈する急性の伝染病である.本症は近年その発生が激減しているが,最近東南アジア方面において,チフス菌が本症の特効薬であるクロラムフェニコールに対する耐性を獲得しつつあるとの情報も伝えられているため,もしも近い将来にクロラムフェニコール耐性のチフス菌が,わが国においても流行を引き起こすことになれば,治療困難な腸チフスの発生も予想せざるを得ないことになろう.
 本症の臨床診断は,難しい場合が多いので,その確診は菌の検出と血清学的診断に待つところが大きいといえる.

検査機器のメカニズム・39

カラーフィルム自動現像処理装置

著者: 菅沼源二

ページ範囲:P.322 - P.323

1.カラー自動現像機の種類と現像行程
 ①ハンガー方式,②ローラー方式,③マガジン方式.①および②の方式はいずれも大量処理を目的として作られたもので,市中のカラーラボ向けの現像処理機である.③は少量の自家現像処理機で,病院や一般の医療機関などで使用するには極めて簡便である.現在市販されているこの種のものは2種類あるが,1種類は1本ずつの35mm専用現像機であるが20枚撮り専用で36枚撮りは現像できない.
 今回は36枚撮り,20枚撮り,16mmなど現像可能なもので,同時に35mm 3本までの現像ができる機種について紹介する.

検査室の用語事典

臨床化学検査

著者: 坂岸良克

ページ範囲:P.325 - P.325

21) Auxiliary Reaction;補助反応
クレアチンホスフォキナーゼ(CPK)を例にあげると            CPK (a)クレアチン+ATP→クレアチンリン酸+ADP

病理学的検査

著者: 若狭治毅

ページ範囲:P.326 - P.326

20) cleor cell carcinomo;淡明細胞癌
 腎から出る悪性腫瘍でGrawitz腫瘍とも呼ばれる.臨床的には血尿を主症状とすることがある.細胞診の際,注意を要することは,この腫瘍の構成細胞が名前のとおり,非常に明るい胞体とむしろ小型の核を要する点で,通常の判定基準とは異なっている.しかし,実際において尿中に出現することは極めて少ないとされている.

追悼

村田正太先生を偲んで—村田反応創始者

著者: 松橋直

ページ範囲:P.327 - P.327

 梅毒の血清学的検査法に一時代を画した村田反応の創始者・村田正太先生が長い研究生涯の幕を90歳で昨年12月22日に閉じられた.
 村田正太先生のお名前を知ったのは,学徒動員があった昭和18年の終わりころであった.当時の東大医学部は,戦時中のこととて,外科学総論の講義が2年になったばかりから始められていた.とりわけ都築正男教授は名講義で,学生に深い感銘を与えていたが,その一駒であった,梅毒が関係する何かの病気が,グンマであったように思うが,外科学の立場から講ぜられた.その折,梅毒の血清学的検査法にふれられる."現在最も広く用いられ,また,最も信用されているものに村田反応というのがあるが,これは伝研(現在の医科研)におられた村田正太博士が発明したものです".そして話は,はずみ出した.記憶に誤りはあるかもしれないが,その大筋は次のとおりである.

Senior Course 生化学

—酵素の初速度測定—初速度測定に必要な知識 Ⅱ

著者: 大場操児

ページ範囲:P.328 - P.329

1.阻害と活性化
 試薬中に,洗浄不良によるガラス器具に付着した汚染が反応を妨害したり,発色を助長することは既に指摘されている.これとは別に反応過程において添加し,その結果として反応を高めたり停止したりすることができる物質を活性化剤とか,阻害剤と呼んでいる.
 無機金属イオン,SH化合物は酵素を活性化する.Na,K,Mg2+,Zn2+,Mn2+,Fe2+,Co2+,システインなどは活性化剤として一般にあげられている.そしてこれらの活性化剤で活性化される酵素の活性測定時には,一般に活性化剤を添加して測定することになっている.ただ,同一金属イオンでもある酵素には活性化因子として働き,他の酵素には阻害作用を現すものもある.また,その物質の濃度により活性化したり,阻害化したり,阻害化したりすることがあり,よく酵素の性状を調べてから用いるようにする.

血液

—検査室からみた血液疾患の特徴—再生不良性貧血

著者: 松原高賢

ページ範囲:P.330 - P.331

1.再生不良性貧血とは
 "再生不良性貧血の定義は"と問われると答えに窮する.下そうにも定義がないからである.いま,一つの疾患の概念が確立される過程を考えてみよう.鉄欠乏性貧血を例にとると,貧血患者の中には赤血球小さく,大小不同はなはだしく,ギムザ染色の染まり淡く,鉄剤によく反応するもののあることが以前から知られており,一つの独立した貧血の型ではないかと老えられ,低色素性貧血と名づけられていた.この段階で"低色素性貧血の定義は"と問われたら,診断に役立つ特徴的所見──診断基準──を列挙して,こういう所見を備える症例を一括して低色素性貧血と呼ぶ,と答えるほかはない,しかし定義とは,その疾患に共通に存在する本質的なもの──診断基準に掲げた所見を呈するに至らない軽症の症例にも存在すべき──を指摘することであるから,診断基準は正しい意味の定義ではない.
 その後低色素性貧血患者の血清鉄低く,諸臓器の鉄分少ないこと,動物を鉄不足の食事で養うとヒトと同様な貧血の起こることから,本貧血が体内の鉄不足によって発生することが明らかになり,ここに鉄欠乏性貧血の概念が確立した.この段階に達して初めて正しい意味の定義を下すことができる.すなわち,"鉄欠乏性貧血とは体内の鉄の不足によって発生する貧血である"と.

血清

—最新の免疫学的検査法—免疫グロブリンの一次構造

著者: 冨永喜久男

ページ範囲:P.332 - P.333

 ヒト血清中には構造の異なる多種類の抗体が存在するが,抗体の大きな生物学的特徴は"特異性",すなわちある1種の抗原とは反応するが他種の抗原とは反応しない性質である.そして現在の分子免疫学の最大の課題はIgないし抗体の構造上のこの多様性がどのような遺伝的支配を受けるのか,その多様性が特異性といかに関係するかの解明である.このためには何よりも構体分子の一次構造,すなわちアミノ酸配列が調べられなければならない.しかし,ある特異性を帯びた抗体分子を,この種の研究が可能なほど大量に分離することは不可能であるので,骨髄腫やマクログロブリン血症の患者の血清や尿にみられる,いわゆるM成分(BJタンパクを含め)がかわりに用いられてきた.これらM成分のほとんどは抗体活性を有しないが,単一種類のIgを大量,純粋に入手できるためである.
 1960年代の前半はこれらのタンパクのポリペプチド鎖ないし"フラグメント"の構造に関する,いわばマクロの研究が主であったが60年代の後半からはアミノ酸の配列,いわばミクロの構造が盛んに調べられつつある.1966年にはBJタンパク(Ag)──κ鎖の1種──214個の,また1969年にはIgG1骨髄腫タンパク(Eu)の(660×2)個のアミノ酸全構造が定められた.

細菌

—病原性球菌の分離,同定—βレンサ球菌の分離,同定,型別法 Ⅲ

著者: 宮本泰

ページ範囲:P.334 - P.335

 前号に続き小林分類を表に示した.今回は凝集反応群別法と型別法の凝集原作成法および沈降反応群別法と型別法を述べる.

病理

—新しい病理組織標本の作り方—組織処理 Ⅰ

著者: 平山章

ページ範囲:P.336 - P.337

 組織処理は大きく分けると脱水(脱脂),透徹とパラフィン浸透に分けられる.これらの過程が正しく行われないと次の薄切,染色に大きな影響を与えることになるが,これについては後にふれることにして,ここではまず固定された組織標本の水洗から述べてみる.

生理

運動負荷心電図

著者: 原文男

ページ範囲:P.338 - P.339

 狭心症のうち最も多いのは労作性狭心症である.狭心症の患者でも安静時には,心筋の酸素需要がなんとか間に合っているので,心電図に必ずしも異常が現れない.そういう場合には運動を行わせて,心電図に変化が起こるかどうかを調べることになる.これが運動負荷試験である.

My Planning

私たちの新人教育

著者: 織田島弘子

ページ範囲:P.340 - P.341

 人員は欲しい,しかし毎日の検査業務に追われて十分な新人教育はままならないというのが一般的である,私の所(血液)は検査技師5人,経験年数の最長7年という若い検査室で,多量の検体処理,新しい問題の取り組みに悪戦苦闘している.その中で迎える新人は,いかにして同僚にするかが新人教育のポイントと考える.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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