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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査19巻7号

1975年07月発行

雑誌目次

カラーグラフ

pHの調整と染色

著者: 高田多津男 ,   相賀静子

ページ範囲:P.692 - P.693

技術解説

検査室レベルでのT細胞とB細胞の測定

著者: 岡部洋太郎 ,   河野均也 ,   大塚昌子 ,   大和田礼子

ページ範囲:P.695 - P.703

 形態学的にリンパ球として一括して考えられてきた細胞集団は,近年その免疫応答,免疫監視という機能的な面から,大きく2種類に分類されるようになった.すなわち,胸腺に支配されるT細胞(thymus derived lymphocyte)と,ヒトにおいては未だその支配器官は確認されていないが,トリにおいてはファブリチウス嚢に支配されるB細胞(bone marrow derived lymphocyte)である.免疫応答を大きく細胞性免疫と体液性免疫とに分けるなら,T細胞は前者,B細胞は後者に主として働く.したがって,生体の免疫機能を知るうえには①T細胞およびB細胞の絶対数算定,②T細胞およびB細胞の機能測定という組み合わせが必要になる.T細胞,B細胞の検索には多数の方法が開発されているが,ここでは臨床検査として実施可能なロゼット形成試験,PHA添加リンパ球培養試験,および細胞表面免疫グロブリンについて簡単に述べる.

第3回樫田記念賞受賞論文

穿刺細胞診における肺癌細胞の形態と問題点

著者: 柳川弘

ページ範囲:P.704 - P.710

 肺癌の細胞診は,癌の早期診断に,また組織型の推定による治療および予後の判定に重要な役割を果たしている.更に最近,診断成績の向上を目的として試料採取法に工夫がなされ,病巣の擦過および穿刺技術が著しく進歩した.
 しかし穿刺あるいは擦過細胞診は喀痰細胞診に比べて新鮮な細胞を対象とするため,1969年に肺癌学会の発表した肺癌細胞の判定基準が組織型によってはそのまま当てはまらず判定に混乱を来す場合がある.また従来,肺癌細胞の判定に用いられてきたパパニコロウの判定基準は,喀痰などのように自然に剥離した細胞が時間的経過によって変性した所見,例えば核膜の肥厚,輪郭の不規則性,クロマチンの融解などを基礎としている.

総説

細菌尿

著者: 上田泰 ,   松本文夫

ページ範囲:P.711 - P.715

 感染症における原因菌の確定は診断のみならず,治療にも直結した重要事項である.
 尿路感染症は呼吸器感染症と並んで日常最も多く遭遇する疾患であり,しかもグラム陰性杆菌がその主要菌種であることを考えると診断根拠である細菌尿の正確な証明は極めて重要である.

座談会

尿の細菌検査

著者: 上田泰 ,   松本文夫 ,   名出頼男 ,   星野辰雄 ,   清水喜八郎

ページ範囲:P.716 - P.723

 尿の細菌検査は感染症などにおける診断,治療には欠かせない検査法の一つである.これには尿の細菌定量培養法が一般に実施されているが,この定量法にもいろいろな方法があり,またこの検査に用いる尿の採取方法にも問題は多いと思われるが"総説"(23ページ)をもとに標準化へのアプローチを試みた.

臨床化学分析談話会より・23<関東支部>

新人教育のカリキュラム作成へ—関東支部の将来計画

著者: 菅野剛史

ページ範囲:P.724 - P.724

 1957年東京地区で,臨床分析に従事する人たちの集まりとしてささやかながら発足した談話会も,現在では,全国的な組織として関東をはじめ,大阪,北海道,東海,山陰に支部が設けられ,日本臨床化学会の教育プログラムとしての位置づけまでなされるに至った.「臨床検査」にこの臨床化学分析談話会よりという欄を設けていただいたのも,更にこの会が,多くの人たちの要望に答え,わが国における臨床化学の発展に寄与したいと願う会員の希望が一つかなえられたような感で考えられよう.この紙面は大部分が関東支部の活動で占められているが,必ずしもそれは我々の当初の意図を反映しているのではないことを,この際に各支部の方々に知っていただきたいのである.そしてこのような会員の臨床化学の発展を願う気持は,この2年間に談話会に2つの新しい試みを導入したことによってもそれを伺い知ることができる.
 その1つは夏期合宿である(Vol.18 No.12).昨年始めに計画された時点では関東支部の会ということでもあったが,やはり全国的にということで山陰支部を除いた各支部より人が集まるという結果になってしまった.1泊2日の会が,この次は2泊3日ということで今年は8月7,8,9日の3日間を昨年と同じ慶大立科山荘で予定されている.宿舎の関係上人数に制限は出てくるかもしれないが,多くの人たちの参加と熱心な討論を期待したいと考えている.

異常値・異常反応の出た時・31

基礎代謝の異常値

著者: 井川幸雄

ページ範囲:P.725 - P.727

 現在,基礎代謝測定の臨床的意義については,これがやや時代遅れのもので,測定誤差も大きいとしてむしろ廃止してもよいのではないかという意見も多い.その理由としては基礎代謝率(BMR;Basal Metabolic Rate)の測定は甲状腺ホルモンが生体に働いて起こす反応をみるもの8)で,甲状腺ホルモンそのものの定量が可能になった今日,その必要性(甲状腺機能検査法としての必要性)が疑われているわけである.
 基礎代謝率の測定での第1の問題点は酸素消費量の測定そのものの精度あるいは正確度ではなくて,測定の条件が正しく基礎条件にあるか否かである4,7).つまり朝早くの空腹状態で,しかも心身ともに安静(ただし眠ってはいけない)という条件を完全に実現することが意外に難しいのである。外来で簡単に測るというのが本来間違っていて,入院安静のうえ,ストレスを避けるため,マスクにも十分慣れるまで練習してからということになると,実際は行うことが困難となる。現実には外来で測定した場合,正常の上限を高目にして(例えば+20%)判断するということになってしまう8)

中検へ一言・中検から一言

Radioimmunoassay法のルーチン化,他

著者: 小出輝

ページ範囲:P.728 - P.729

 最近の病院における臨床検査の進歩は実に目覚ましいもので,わが国の医学の歴史の中で最も進歩の著しいものの一つであろうと著者は考えている.思い起こせば,著者がインターンのころ,尿毒症や糖尿病の患者を受けもつとそれこそ大変で,慣れない手つきで血清残余窒素を,Parnas法で測定したり,血糖をHagedorn-Jensen法で測定したりして,朝から晩までかかった.あげくのはてに,回診では教授から"この測定法は当てにならないな"などと皮肉を言われて意気消沈したものである.それが今では,検査項目に印をするだけで,正確な結果が迅速に得られるようになった.まことにご同慶のいたりである.しかし,このことにも問題がないわけではないが,これについて述べることは,またの機会として,ここでは臨床検査室の将来についての注文を述べたいと思う.近年,Radioimmunoassay法,あるいはprotein-binding assay法が開発され,ホルモンをはじめ種々の物質の微量定量に用いられ始めている.そして,今日の内科学では,血中のホルモンをはじめとする微量活性物質を測定することは,疾患の診断や治療判定に欠くべからざるものとなってきている.しかし,現在,臨床検査室でRadioirnmu-noassayを用いてホルモンの定量を行っているところは極めて少ないのではないかと考えられる.

臨床検査の問題点・73

pHの調整と染色

著者: 畠山茂 ,   高田多津男 ,   相賀静子

ページ範囲:P.730 - P.736

 染色の仕上がりぐあいは組織標本にしろ塗抹標本にしろ,緩衝液のpHが大きく左右する.今月は,最も知られているヘマトキシリン・エオジン染色,ライト・ギムザ染色を取り上げ,至適pH,pHの高低による染色性の変化,失敗の原因など検討する.

研究

細胞診にて子宮頸部ヘルペスウイルス感染症と考えられる1例

著者: 岩信造 ,   飯島陽子 ,   斉藤雅子 ,   西浦治彦 ,   那須健治

ページ範囲:P.737 - P.738

はじめに
 細胞診は日常簡便,迅速かつ一般的な診断方法として産婦人科領域において最も広く用いられているが,子宮癌のスクリーニングはもちろん,ホルモン環境や,性器の感染症の検索にも用いられている.特にウイルス感染の早期発見には細胞診に頼らざるを得ず,中でも陰部単純疱疹ウイルス(HSV)は妊産婦や胎児新生児に及ぼす影響も大きく,また最近では,HSVと子宮頸癌発生との密接な関係が論ぜられているのでより重要である.
 HSVによる外陰炎,膣炎はSlavin and Gavett (1946)をはじめとして,欧米では多くの研究者によって報告され,詳細な細胞所見が記載されている.

オートアナライザーSMA12/60およびジェムサック高速分析装置による自動分析法—酵素による血清総コレステロール定量法の検討(Ⅱ)

著者: 宮原洋一 ,   中村美好 ,   安田美知子

ページ範囲:P.739 - P.742

 酵素によって血清総コレステロールを直接比色定量するキット試薬「デタミナーTC」を使用して,オートアナライザーSMA12/60およびジェムサック高速分析装置による自動化について検討したところ,用手法より試薬消費が少なく経済的で,高精度の自動分析法を考案し,次のような結果を得た.
(1) SMA12/60法の試薬消費量は1件当たり1.2mlで,測定前の洗浄ロスを考慮しても用手法より経済的であった.
(2)ジェムサック高速分析装置による反応速度分析は不可能であったが,0.7mlの試薬で15分のエンドポイント分析が良好な成績であった.
(3)直線性はSMA12/60法で600mg/dlまで,ジェムサック法で900mg/dlまで確認した.
(4) SMA12/60法における前試料の残存率は+3.0%,−3,1%で,基線および呈色記録図にノイズはみられなかった.
(5)2つの自動分析法の再現精度は,CV1.7%以下であった.
(6) SMA12/60に適用した本法(y)と,SMA12/60原法(x)の相関関係はr=0.976,y=1.08x−10と良好であった.

頸静脈波と右房圧波および頸静脈圧波との対比—各波形間の間隔および各波高の振幅を中心に

著者: 山本誠一 ,   入江淑恵 ,   沢山俊民 ,   唐原優 ,   鼠尾祥三

ページ範囲:P.743 - P.746

緒言
 心音図に心尖拍動図,頸動脈波および頸動脈波を組み合わせて記録する心機図法1,2)は,非観血的心機能検査法として心臓超音波法などとともに盛んに行われている.この中で頸静脈波3,4)は右心系の血行動態を反映する唯一の情報源として臨床上,非常に有用である.
 頸静脈波の成因には種々の血行学的因子が関係しているが,右房圧波の伝播が主因と考えられており,右房圧波形と非常に類似しているとされている.しかし頸静脈波と右房圧波を同時記録し比較検討した研究5)は少ない.そこで著者らは頸静脈波(external jugular ven-ous pulse,ext.JVP)と右心カテーテル法による右房圧波(right atrial pressure wave,RA)および同じく頸静脈圧波(internal jugular venous pressurewave,int.JVP)についてそれらの波形間の間隔および各波高の振幅を対比検討した.

Enterotubeによる腸内細菌の同定—ENCISE-Systemを中心に

著者: 向島達 ,   藤井裕子 ,   植園健一 ,   大倉久直 ,   中山昇 ,   沢部孝昭

ページ範囲:P.747 - P.752

はじめに
 腸内細菌の同定は,種々の生物学的性状の組み合わせで行われている1).つまり各種性状より細菌を分別し,菌種が確定するまで更に鑑別に必要な培地,抗血清を用いて行う.したがって臨床検査において,腸内細菌同定に適した各種培地の組み合わせが検討されており,キットとしては,アナリタブ・チューブ2),Enterotube3,4)などが紹介されている.そのなかで,Enterotubeは,8種類の生培地から成り,11項目の性状検査が可能である.最近,このEnterotubeによる同定を従来のごとく技師の経験に基づく選択によらず,全く自動的に行えるようEncise System5)(Enterotube NumericalCodlng and Identification System for Enterobacte-riaceae)が検討されている.本方法は,Enterotubeの各性状を1つの数字で表現し,その和によって腸内細菌を同定しようとする試みである.つまりEnterotubeの各性状項目を,それぞれ2進法の桁数とみなし,陽性の場合を1,陰性の場合を0と表現し,2進法の11桁の数値,あるいはこの2進法値を10進法値(assignedweight)に換算し,その陽性性状のassigned weightの和(Add Value)に相当する菌種を,Manualから引いて求めるシステムになっている5)

私のくふう

ネフェロメーターにアスピレーターを用いたドレン方法

著者: 中嶋精一 ,   三山恒

ページ範囲:P.746 - P.746

 最近注目をあびている成人病検査の一つとしてTGがある.現在我々が使用しているのは東芝のマイクロネフェロメーターである.この比色計の欠点は1検体ずつ瀘液をセルの中に入れる煩わしさと,瀘液量の一定しないことによるデータのバラツキである.そこで我々が考案したのが次の方法である.CFはそのまま使用し,検体は上から流し込み,この時できた気泡は常時吸引されているアスピレーターにより除かれ,常に一定量の瀘液を保もてる.排出時はディスポシリンジを押し下げることにより,この押した長さだけチューブが下がり,このチューブでセルの底から全量排出することができる(つまり,押した状態でチューブがセルの底につくこと.またスプリングでチューブが上っている距離だけ液量が残るということである).

新しいキットの紹介

"便潜血スライドシオノギ"の使用経験について

著者: 今井宣子 ,   青木恵子 ,   小嶋節子 ,   杉本恵子 ,   林長蔵

ページ範囲:P.753 - P.756

目的
 便潜血反応は,胃腸系の癌および潰瘍の発見とこれらの疾患の経過観察のための検査として極めて重要である.便潜血反応には,従来から,ベンチジン法およびグアヤック法の二者併用が主として行われてきた.
 しかし,ベンチジンは,1972年にその発癌性のゆえに製造禁止となり,現在全く入手不可能となっている.一方,グアヤック法は,試薬の品質,試薬濃度によって反応の感度にバラツキがみられ,常に一定した信頼できる成績を得ることはむずかしい.したがって,これらに代わる検査法が再望される現況にある.

新しい機器の紹介

IL meter 513型による血液ガス分析の検討

著者: 松本伸也 ,   甲谷憲治

ページ範囲:P.757 - P.760

はじめに
 血液ガス分析は,ガラス電極の開発に伴って分析が容易になり,呼吸性,代謝性酸塩基平衡障害などの評価に欠くことのできない検査項目になってきている.しかし,測定値については,検査採血から測定までの時間,術者の熟練度,使用する機種などにより異なることが考えられる.このたび我々は新しく市販された血液ガス分析装置IL meter 513型(IL社)を用いてこれらの問題を含め一連の基礎的な検討を行ったのでその結果を報告する.

TGメーターによるフィブリノゲン測定法の検討

著者: 一瀬博 ,   岩美奈子 ,   藤田宣士 ,   糸賀敬

ページ範囲:P.761 - P.765

緒言
 近年,D.I.C.を初めとして,悪性腫瘍あるいは動脈硬化性疾患などにおいても凝固,線溶動態の重要性が指摘されており,その接点であるFibrinogen (以下,Fbgと略す)の測定法も迅速,簡便かつ正確であることが要求されている.しかしながら,Fbg測定法として一般に行われているTyrosine法(以下,T法と略す)は手技が複雑で,測定に長時間を要し,ルーチンに行う検査法としては問題点があった.
 今回,著者らは散乱光を利用したTGメーターによるFbg測定(以下,TG法と略す)を行い,本法がルーチンの検査法として採用しうるか否かについて検討を加えた.

質疑応答

結核菌と非定型抗酸菌の同定

著者: T生 ,   今野淳

ページ範囲:P.766 - P.766

 問 結核菌と,結核菌でない広義の非定型抗酸菌(非病原菌を含む)の各々の同定について,日常検査でぜひ行わなければならない検査方法をお教えください.

追悼

古畑種基先生を偲ぶ

著者: 三木敏行

ページ範囲:P.769 - P.769

 去る5月6日,古畑種基先生は83歳で永眠された.ご永眠後今更のように,その高邁であられたご人格と,偉大な学問的ご業績が偲ばれる.先生はわが国の法医学界における文字どおりの第一人者として,法医学の発展のために尽くされた.純学問的な枠内にとどまらず,法医学の実際面でも活躍され,先生の関与された犯罪事件は数多く,その中には世間の目をひいた難事件もあり,法医学の目的とする社会の治安の維持,福祉の増進に貢献されるところが大きかった.
 先生は単に法医学界のみならず,遺伝学,人類遺伝学,人類学,犯罪学,医事法学,臨床病理学にも強い関心をもたれ,それらの領域におけるご研究も少なくない.更に晩年には医学の領域を越え,広く自然科学の知見の犯罪捜査上への導入に尽力された.

日常検査の基礎技術

検査室における消毒法

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.771 - P.778

 臨床検査室の中で,最も感染の危険に関して安全な所は,細菌検査室であろうとよくいわれる.この検査室では感染の危険にさらされている意識があり,常に対応策を実施しているからである.他の検査室に来る検体が,細菌検査室に来る検体よりも安全だという保証はない.特に結核菌,肝炎ウイルスに注目する時,検査室に適した消毒法を検討しておくことが必要である.消毒法には,病原菌を殺す方法として,以前外科で用いられた煮沸消毒法がある.これは炭疽菌芽胞を殺すことができるので,十分であるとされた.肝炎ウイルスに関しては,大量の水で洗浄する方法が選ばれる.殺すとか,不活化する方法の確立していないウイルスについては,このような方法で,感染の危険のなくなるまで希釈する方法が消毒法として考えられるが,多くの微生物について考えると,水で洗いそれを下水に導くことは,人間の生活から切り離すことで,人の疾患と縁を切る点では同じであろう.とにかく,具体的に,人に再び感染症を起こすことのないようにすることが消毒だといってよい.細菌検査室のみでなく,他の検査室も,何らかの消毒手段を講ずるべきなのであるが,高圧滅菌が常に最適の手段ではなく,より能率的な方法があるはずである.

検査と主要疾患・31

日本住血吸虫症

著者: 井内正彦

ページ範囲:P.780 - P.781

 日本住血吸虫は吸虫類に属し,経皮的に人体に感染し,リンパ路を経て感染3〜4日で門脈,腸間膜静脈に達する.ここで成虫に発育し,感染後5〜7週で産卵を開始し,その一部は体外に排泄される(図1).人体内での虫体の生存期間は今なお不明であり,長い例では5〜7年とされている.本症は感染から産卵期の急性期と,それ以後の慢性期に分かれる.

検査機器のメカニズム・43

ガス漏れ警報器

著者: 杉本裕治

ページ範囲:P.782 - P.783

 可燃性ガスを検知して,警報を発するには,可燃性ガスの濃度をまず電気出力に変換しなければならない.変換する方式は,主として,接触燃焼式と半導体式が採用されている.

検査室の用語事典

臨床化学検査

著者: 坂岸良克

ページ範囲:P.785 - P.785

50) Epinephrine;エピネフリン
 副腎髄質から分泌されるカテコールアミンの代表アドレナリンの別名.外国では広く採用されている.Epiは「上」の意味.Epinephrosは副腎.アルミナカラムで分離した後,フェリシアン化カリウムで酸化し,螢光比色法によって測定するEuler法が定量に利用される.

病理学的検査

著者: 東北大・病院病理部

ページ範囲:P.786 - P.786

57) Howell-Jolly bodies;ハウエルージョリー小体
有核赤血球の核はmetarubricyteの時期に胞体内で壊されるか,あるいは外に飛び出して消失する.metarubricyteの時期には多核からクローバー型まで種々の核形を示すが,1つの核片のみが存する場合,これをHowell-Jolly bodiesといっている.

細胞診セミナー・1【新連載】

細胞診スクリーニング—観察と判定の仕方

著者: 浦部幹雄 ,   高橋正宜

ページ範囲:P.787 - P.791

 ばらばらに剥離した単細胞で癌の診断がなされようとは半信半疑であったのも,そう遠い昔ではないように思われる.臨床病理学と臨床細胞学会の主催による細胞検査士の資格試験が始められたのは昭和44年であるが,49年度までに439名の登録がなされており,その人たちを中心に勉強している潜在人口も考えると感無量である,実技の点からみても,婦人科細胞診ではパパニコロウ判定区分,クラスIからVまでの分類が普及し浸透したと思ったら,その徹廃がなされれつつある,国際細胞アカデミーのその主旨の是非はともかく,細胞診の判定がかなり詳細で病態を把握できるようになった結果,ばく然としたパパニコロウ区分では不十分になったためとも解せられる.一方,病理診断と同一に解釈すると患者の治療の面で過誤を招きかねない.細胞診を読む時,決して当てものであってはならないし,見方から判定主での道があるわけで,"細胞診は除外診である"とく,いわれるように,類似病変をふるい分けて病態を判定するという道を辿るものであろう.
日常検査の中で,読みすぎ,読み足りなさ,組織像との対比などを検討し勉強しようという会の記録を編集室のほうで載せてくださることになって,感謝するとともにこの機会に読者の皆様から広く,「あの細胞の読み方は間違っている」とか「こういう解釈はどうだろう」という疑問とか意見もいただければ幸甚である.(隔月号掲載)

学会印象記 第24回日本衛生検査学会

目立つ生理関係演題の充実

著者: 松本伸也

ページ範囲:P.795 - P.795

 第24回日本衛生検査学会(国立横浜病院中橋勇次郎学会長)は5月17,18日両日,東京湾にのぞむ国際港都ヨコハマで,神奈川県民ホールをメイン会場とし,8会場に分かれ約4,000名の会員が参加して開催された.
 今回は,特別講演が1題,シンポジウムは検査業務の管理を主体においた10題,全国9研究班の活動報告,新しい企画として日常業務の中の身近かな問題点をテーマとした9部門の分科会講演が行われた.また展示会場は動く検査室をテーマにモデル検査室を設営し,メーカーの協力によって器械,試薬などが自由に扱えるなど,数々の創意工夫が行われていた.

Senior Course 生化学

—酵素の初速度測定—LDH Ⅱ

著者: 大場操児

ページ範囲:P.796 - P.797

1.市販キットについて
 LDH紫外部測定法キットは1972年に4社5キットあり,そのすべてが輸入品であった.本年の調査では14社となり,国産キットは7社でまだまだ増加の傾向にあると思う.
 キットに明示された試薬組成を表1に示した.ウオーシントン社以外が,ピルビン酸→乳酸の反応系を処方している.参考のために,GSCC法,SSCC法,Wroblewski,Henry,AutoAnalyzerの各処方を例示した.表示のごとく国際生化学連合により測定温度が30℃と勧告されたにもかかわらず,ドイツ系のベーリンガー,ロッシュの2キットは25℃を指示している.

血液

—検査室からみた血液疾患の特徴—白血球減少症

著者: 松原高賢

ページ範囲:P.798 - P.799

 白血球数の正常値は5,000〜9,000とされているが,健康者でも4,000台のことがまれでない.4,000以下になったら白血球減少症として原因を探る必要がある.白血球数を圧倒的に支配するのは好中球であるから,白血球減少症即好中球減少症と考えてよい.他の種の血球の減少はそれだけでは白血球数の明らかな減少を来たすには至らない.

血清

—最新の免疫学的検査法—免疫不全症候群Ⅰ—基礎

著者: 冨永喜久男

ページ範囲:P.800 - P.801

 1952年,ウォーター・リード陸軍病院(ワシントン)の小児科医Col Ogden C. Brutonは,肺炎および肺炎による敗血症を繰り返す8歳の男児について当時としては可能なあらゆる検査を行ったがほとんど異常がなく,ただ一つ血清のチゼリウス電気泳動法による検索でγ-グロブリン分画が全く欠如していることをつきとめた.この症例は事実,γ-グロブリンの定期的注射を受けることによって感染症に罹らなくなったと報じられているが,その後,多くの類似の病態ないし症例が報告され,一時,抗体欠乏症候群と呼ばれたこともある.しかし,近年における免疫学の進歩,殊にリンパ球に関する知見の進展に伴いこの病態も新たに見直されるようになってきた,周知のように,生体が示す免疫反応には,抗体性免疫反応と細胞性免疫反応とがあるが,これらの反応におけるeffector,すなわち抗体とリンパ球の産生障害により引き起される病態が免疫不全症候群(Immunologic deficiency syndromes)あるいは免疫不全病(Immunologic deficiency diseases)である.

細菌

—病原性球菌の分離・同定—腸球菌の分離,同定法および生物学的性状

著者: 小沢恭輔

ページ範囲:P.802 - P.803

 腸球菌(enterococci)は,Thiercelin1)によってヒトの腸管内由来の通常卵円形で双球菌状の配列を示すグラム陽性球菌に与えられた菌名であるが,その後腸球菌とStreptococcus faecalisは同意語であると言われたことや,D群レンサ球菌と同一視されていること,更にBergeyの分類(7版)においてLactobacilluceae (乳酸菌科)に編入されていた(8版ではStreptococca-ceaeに編入)ことなどから腸球菌の定義については,多少混乱がみられる.ここでは一応Hartmanら2)に従って,腸球菌として3菌種,2変種を規定する(表2).なおこれらの他に腸球菌に酷似するものとして,Stre-Ptococcus bovis,S.equinus,S.mobilisがある.

病理

—新しい病理組織標本の作り方—染色 Ⅰ

著者: 平山章

ページ範囲:P.804 - P.805

1.色素について
 昔は色素としてはサボテン類に寄生するエンジムシの雌の体に含まれるカルミンという紅色の色素とか天然の植物あるいは鉱物からとれる色素が用いられていたが石炭タールからの色素の製造が行われるようになって以来人工色素の種類は極めて豊富になってきた.
 タール色素の成分はクレゾール,ナフタリン,アントラセンなどで,その基質に-NH2(アミノ基),-OH(水酸基),-NO2(ニトロ基),-SO2OH(スルフォン基)などを結合させたものが色素の製造に用いられ,これらは色素製造の中間産物とみなされている.

生理

スパイロメトリーと換気力学 Ⅰ

著者: 西島昭吾

ページ範囲:P.806 - P.807

 スパイログラムでの1秒量(FEV 1.0),1秒率(FEV 1.0%),ならびにMMFなどは,気道および肺の抵抗/肺気量(Specific Resistance)と逆相関がみられ,また,肺活量,機能的残気量は,肺のコンプライアンス(Compliance)との相関がみられるなど,スパイロメトリーは肺の換気力学的特性と関連することが知られている.
 反面,スパイロメトリーは,被検者の十分な協力を必須条件とし,被検者の作りうる最大の駆出圧(Driving Pressure)に依存し,加えて技術者の熟達の度合,および機械そのものの特性(ベルの慣性)などの影響を受けるため,データーのバラツキ幅が広く1),異常値の検出能力に大きな制約がある.近年,Small Airway Diseaseなど末梢病変,および肺内の換気不均等性の問題の重要性が認識されるに及び,それらの探知能力に関して,スパイロメトリーはほとんど無力に近く,V-V曲線(気流―気量曲線),Closing Volumeおよび呼吸数増加時の動的コンプライアンスなどが,新しい検査法として臨床検査に登場した.これらの検査法の理解と評価へのアプローチの一手段として,今日まで換気機能検査の基本的検査法として最もルチーン化されてきたスパイロメトリーに関し,換気力学的にその関連性を考えてみたい.

My Planning

私の新人教育—細菌検査室

著者: 今井トシヱ

ページ範囲:P.808 - P.809

 4月に新人として検査室に入ってきた技師たちが,そろそろ職場に慣れはじめ,臨床検査という現実に直接タッチし,多くを感じる季節になった.今月は,3号の血液検査室の新人教育に続き,細菌検査室ではどのようにトレーニングしたらよいか,具体的な例をもとに考えてみた.
 4月の検査科のオリエンテーションが済んだ後いよいよ臨床検査技師として,日常検査を担当することになるが,私のパートは臨床検査の中で最も近代化が遅れている細菌検査で,自動化や迅速化はもちろんのこと精度管理の方法さえもまだ確立されていない現状である.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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