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雑誌目次

論文

臨床検査19巻8号

1975年08月発行

雑誌目次

カラーグラフ

白血病が疑われる血液像—前白血病状態と寛解期白血病骨髄像

著者: 伊藤宗元

ページ範囲:P.814 - P.815

 白血病を疑われる血液像はこれであるとしてカラー写真に示すことは,本文でも繰り返し述べたように全く至難のことである.白血病細胞の異常増殖の認められない時期に,必ず白血病に移行するという断定はもちろん不可能である.ただ,注意すべきことは,細胞個々の形態学的異常性も重要であるが,その異常性は白血球系というよりも他の赤血球,血小板系列細胞の成熟のあり方,原形質,核とバランスなどの異常性を特に注目する必要がある.反面,我々はある患者の標本を見る時,それが白血病に移行するか否かをいう場合,それは患者にとってはもちろん,我々にとってもあまりにも大きな"かけ"であり,慎重の上にも慎重を期さなければならない.そこでここにあげるカラーグラフは,前白血病状態から白血病に移行した2例の骨髄血標本と,長期間の白血病完全寛解期から白血病再発した2例,完全寛解期の持続でなお再発を示してない1例の骨髄標本を示した.その他,癌による白血病反応,伝染性単核症にみられた異型リンパ球増加例の末梢血を示した.

技術解説

尿の定性検査の実際

著者: 降矢震

ページ範囲:P.817 - P.825

 尿の成分の変化は,その由来する血液よりもはるかに早期に出現する.尿への排泄は血漿の恒常性を保つ大きな因子だからである.また糸球体瀘液が百分の一にも濃縮されることは,その変化を非常に増幅する.尿の定性反応が,ときとして血清の精密検査に勝ることがある所以である.
 かつては尿検査に携わる技師は,他の部門よりも何となく軽んぜられたようである.確かに用いる機器は他と比べて簡単であり,一見低級に見える.しかし,鋭敏な観察力.臨機の処置が要求される点では,いかなる高価,精密な機器を用いる検査に勝るとも劣らない.昨今試験紙法が広く行われている.簡易迅速ではあるがこれにも多くの問題がある.今我々の日常経験したことにつき本稿を記した.その内容は限られた少数についてであり,常識化したことも多い.指導者のいない小検査室の方々に,もし何らかでもお役に立てば幸いである.

白血病が疑われる血液像

著者: 伊藤宗元

ページ範囲:P.826 - P.834

 毎日の臨床血液検査の血液標本から,白血病を疑われる標本を分別することは非常に重要なことではあるが,これをより十分に行うことは,多くの経験を持つものにとっても全く至難の業であるといいうる.我々が普通に血液検査所見からのみ白血病とまず疑う場合は,白血球が異常に多いとか,血液塗抹標本中に幼若異型細胞をある程度以上認める時で,それは決して困難ではない.
 しかし,今回編集部から求められたものは,このような定型的な血液像を示さないが,どうも白血病を疑われるものについての鑑別法という問題である.しかし,この"疑う"ということが難しいことで,どのようなものをどう疑うかということから述べることになると,何らかの血液像異常のあるものすべてを疑わなければならず,逆に,ほぼ正常に近い血液像をもつものでも決して白血病ではない,なりえないという前提はないのである.また,本項は技術解説ということになっているが,血液像,特に個々の細胞形態を判別することは,技術というよりもよく細胞成熟を念頭においた数多くの経験のうえに立つもので,個々の細胞が,細胞系列のいずれの系列の,いずれの成熟段階にあるかによって異常性が大きく左右されるために,細胞個々の形態異常にのみ捕らわれることは非常に危険である.

総説

臨床検査機器とマイクロコンピューター

著者: 猪俣博 ,   関貴和夫

ページ範囲:P.835 - P.840

 近来,医療における臨床検査の有用性が認められ,検体の増加と分析項目の多様化は著しいものがある.これに伴って臨床検査の自動化,省力化が強く望まれ,コンピューター応用技術の発展とあいまって検査装置の自動化,臨床検査室のシステム化が押し進められている.
 自動化,システム化に果たすコンピューターの役割は大きなものがあるが,結合される検査装置に比較してコンピューターの価格が高く,大きなシステムでないと引き合わない.したがってシステムは複雑となり,ユーザーにとってなんとなくコンピューターはなじめない,手が出しにくいものとなっていた.しかし,最近低価格のマイクロコンピューターが登場し,自動分析装置,ガスクロマトグラフなどに組み込まれて広く普及し始め,臨床検査に携わる方々にとってもコンピューターは無関係ではありえなくなってきている.マイクロコンピューターとはどのようなものか,臨床検査にとってどのような意味をもつものか述べてみたい.

質疑応答

術前術後の検査値の高低

著者: 天木一太 ,   T生

ページ範囲:P.841 - P.841

 問 帝王切開などの術前,術後に例記のような検査をいたしますが,術前検査の結果より術後検査の結果のほうが約500ml前後の出血にもかかわらず,上昇しています.検査ミスではないのですが,その原因が分かりません.

症例を中心とした検査データ検討会・4

低形成性骨髄に芽球様細胞がみられた症例

著者: 蓮見ゆり子 ,   岡田俊子 ,   片田美都子 ,   小笠原頼子 ,   福原延樹 ,   桑原竹一郎 ,   桑島実 ,   土屋俊夫

ページ範囲:P.842 - P.847

 司会(桑島)今回の症例は現在も入院治療中の患者さんですが,大変分かりにくい症例で,これを討論するのは,余り適当ではないんじゃないかという話がありました.しかし,病名を当てるのがこの検討会の目的ではありません.病名は詳細な病歴,身体所見,検査成績,経過から総合的に決定するものです.1回の検査データからすぐに病名をつけるという短絡を走らないようにしたいもので,そういう意味からも今回の症例を選びました.血液所見が中心になりますので,血液の討論は最後にしてまず尿一般から始めましょう.

異常値・異常反応の出た時・32

寒冷凝集反応

著者: 中村昭司

ページ範囲:P.849 - P.851

 寒冷凝集素(Cold agglutinin,CA)は寒冷赤血球凝集素(Cold hemagglutinin)とも呼ばれる.ここでは前者の呼び方,すなわちCAと略称する.
 CAは0〜4℃で最もよく赤血球凝集反応を起こし,温度が上がるにつれ反応は弱まり,32℃以上になるとほとんど反応を起こさなくなる.

座談会

コントロールサーベイの活用—標準化への第2の課題

著者: 斎藤正行 ,   舟木正明 ,   春日誠次 ,   河合忠

ページ範囲:P.854 - P.862

 臨床検査関連の団体が行っているコントロールサーベイ(外部精度管理方式)の成果をどう生かすか──つまり過去のサーベイで見つかったバラツキがどうしたら臨床検査にフィードバックできるか,サーベイの再検討から試薬・機械メーカーへの提言を含めて,広く次のステップにさしかかった"標準化への道"を検討する.

研究

心臓の電気活動が脳波記録に及ぼす影響と起因

著者: 阪本実男 ,   石川準一

ページ範囲:P.863 - P.866

はじめに
 脳波を単極誘導で記録すると心臓の電気活動(心電図)が混入するという現象に遭遇することは,珍しくない.この種のアーチファクトの原因は,次の3つに大別されよう.①電極接触抵抗値が高値である,②被検者が接地された金属に触れている,③被検者の体格や機能的・生理学的要因により心臓の電気的位置が横位である.このアーチファクトの混入を防止する対策は,前二者では容易であるが後者は困難であろう.
 ここで,③は経験的に知られているだけで,この研究についての報告は皆無に等しい.そこで,③が体重や血圧に関係深いことが推察されるが,著者らの経験上から必ずしも断定できない.今回は,体重や血圧などの臨床的所見と無関係に,①,②の起因を除外したうえで,単極誘導法で記録した脳波図に心電図が混入するという現象と心電図との関係について,純生理学的現象上から視覚的観察により統計的に検討を試みた.

Modifying gene yの作用によって発現したと考えられるAm型の一家系について

著者: 河瀬正晴 ,   原功 ,   東郷久弘 ,   土肥勝美 ,   上月嘉恭 ,   亀野都 ,   姿幸子

ページ範囲:P.867 - P.869

はじめに
 1956年,Wienerら1)は僧帽弁狭窄症と慢性骨髄性白血病の1患者の血液が一見O型のような反応を呈するが,血清中には抗B凝集素が認められず,唾液中にはA型物質が存在する例を発見した.このように,抗原が分泌液中には存在するが,血球上には欠如している例が低級な猿に認められることから,この患者の血液型をMonkeyの"m"をとりAm型と名付けて報告した.
 1957年,Weinerら2)は父がB型,母がA1B型で,子供がAmB型である家系を発見した.Weinerらはこの遺伝形式を説明するために,A geneに作用してA抗原の発現をmodifyするrecessive gene yの存在を考え,これがhomozygous state (yy)の時に血球上のA型抗原の発現がmodifyされるが,唾液中のそれはわずかしか影響されず,BやH抗原の発現には全く影響を与えないとし,普通の人のmodifying geneは大抵,YYかYyであるので血球のA抗原には異常がないと説明した.そして,Wienerらが報告した例が,monkeyの血球に似ていることからAm型と命名されているのに対して,Weinerらは,"m"をmodify-ing geneの存在を意味する記号としての"m"のほうが適切であると述べている.

臨床化学における真空採血法の評価

著者: 辻村節子 ,   飯田初代 ,   北村元仕

ページ範囲:P.870 - P.872

はじめに
 減圧された試験管内に注射針を通して,直接血液を取り込む真空採血システムは,アメリカにおいて約10年前に開発されたが,わが国においても広く普及しつつある.この採血法は従来の注射筒による採血法に比べてワンステップの自動採血で,使用法が簡便迅速で検体の取り違えがないなどの利点があり,また溶血が起こりにくいともいわれる.更に密閉したまま血清分離までもっていけるので外からの汚染がなく,感染の危険も少ない.
 しかし,一時的にせよ血液が減圧下にさらされることなどで血球内成分の逸脱による血清化学成分の変動などはないであろうか.真空採血器そのものの汚染については二,三の簡単な報告1,2)があるが,血液成分の修飾については特に文献が見当たらないので,私たちはこの点を検討するために,真空および通常の両採血法を同一人に並行実施し,得られた血清の日常検査項目のデータを比較した.その結果,真空採血法では特に誤差を発生する要因は認められず,むしろ従来の採血法において蒸発,溶血などの問題点が存在することが指摘された.

二波長測光によるトランスアミナーゼ活性の検討

著者: 石塚民幸 ,   小沢和雄

ページ範囲:P.873 - P.875

 701形日立システム光度計を使い,ライトマンフランケル法によるGOTおよびGPT測定を行った.測定波長はλ1=600nm,λ2=505nmまたは546nmを用い,一波長測光法と良い相関が得られた.検討の結果701形の較正には,試薬ブランク(0に合わせる)および,血清の代わりに2mMピルビン酸塩溶液を入れたもの(72に合わせる)を用いると,臨床の立場から要求される最も大切な正確さと精密度を満たしたデータを迅速に提供することができる.

私のくふう

セルローズアセテート膜の流パラ除去法

著者: 谷敷輝夫

ページ範囲:P.866 - P.866

 セルローズアセテート膜を用いた免疫電気泳動検査は,カンテンを支持体とした方法よりその再現性に劣るとはいえ,簡便なため普及している.しかしインキュベーションに流パラを用いるため,その除去に労力を必要とし,作業能率の著しい低下を来しているのが実情と思われる.目的はどのようにしたらいかに能率よく流パラを落とせるかということにある.
 従来からゴム手袋などをつけて強い水流で時間をかけて膜表層の流パラを落とし,その後水流の中に長時間入れて泳がし除去していた.それでも十分に流パラを除去できず膜が汚れて染色されてしまうことはたびたび経験することであろう.アスピレーターを使うことによりこの問題が解決される.アスピレーターから生ずる無数の気泡が膜にぶつかる水の表面積を大きくし,付着している流パラを気泡がよく取り除くためか,流パラがどろどろに付着している膜をそのままアスピレーターから生ずる気泡の中に入れておいても,30分間ほどで流パラがすっかりとれてきれいになる.必要な器具はアスピレーターだけである.アスピレーターの先端は図のように1〜2lのポリビーカーの水中に入れた状態にする.そうしないと膜がビーカーから流出してしまうおそれがあるし,より効果的でもあるようだ.あとは水流を適当に調節すればよい.一度実施してみてはいかがでしょうか.

日常検査の基礎技術

睡眠脳波のとり方—電極の付け方,とり外し方

著者: 遠藤四郎 ,   末永和栄

ページ範囲:P.877 - P.884

 臨床脳波検査で睡眠脳波をとる必要がしばしば起こる.例えば覚醒状態では脳波検査ができないような場合──乳幼児,非協力な患者──である.更に睡眠によって覚醒脳波では得られないような情報が得られる場合である.すなわら,てんかんの精神運動発作の場合には睡眠時に側頭部に棘波が出現しやすい.自律神経発作と関係の深い14 & 6C/S陽性棘波も睡眠時に出現しやすい.脳腫瘍のような場合の局在決定として紡錘波や瘤波の一側性欠如(Lazy activity)が利用される.また賦活法としては薬物(ペンタゾール・ベメグライド)による賦活などのような苦痛が患者側になく,かつ筋電図などによるアーチファクトが少ないという利点もある.ここでは睡眠脳波を上手にとるために,電極の付け方について述べるが,睡眠中に体動などで電極が揺れたり,外れたりしてアーチファクトを生じない工夫をする必要がある.また睡眠時には睡眠段階(深度)を知る必要があるし,NREM睡眠とREM睡眠を区別する必要があるので,Rechtscha-ffenが述べているように,脳波以外に眼球運動,筋電図,その他の生理現象のとり方について述べ,かつ,短時間の記録をとる方法とやや長時間記録をする方法について略述する.

検査と主要疾患・32

気管支喘息

著者: 高橋昭三 ,   足立満

ページ範囲:P.886 - P.887

気管支喘息の発症機序
 気管支喘息とは,気道の可逆性の閉塞性変化により生ずる喘鳴や咳嗽を伴う発作性の呼吸困難である.このような気道の変化は,主として気管支の①平滑筋攣縮,②血管透過性充進による粘膜浮腫,③分泌物の増加,貯留により生ずる.いったんこのようにして呼吸困難を生ずと努力性呼吸による呼気時の気管支圧迫,更には空気の捕らえ込みにより過膨張した肺胞による圧迫なども加わりますます症状が悪化することになる(図1).
 喘息は外因性(アトピー性)喘息と内因性喘息とに分けられることが多い.前者は外来性のアルゲンに対する即時型アレルギー反応として,すなわちアレルゲンとレアギンと呼ばれるIgE型抗体との反応により生ずる.これに反し内因性喘息では,はっきりしたアレルゲンを証明することが困難で,40歳以後に発症したものに多く,気道感染が最も重要な発症因子と考えられている.

検査機器のメカニズム・44

水道メーター

著者: 高畑光雄

ページ範囲:P.888 - P.889

 現在使用されている水道メーターには非常に多くの種類があるが,その測定原理より推測式と実測式に大別できる.従来わが国で使用されている水道メーターのほとんどが推測式であり,その測定原理は流れている水の速度により羽根車が回転し,この羽根車の回転速度が流れている水の速度に比例すること,すなわち羽根車の回転数が通過水量に比例することを利用し,羽根車の回転数を機械的に数えて水量を知るものである.
 推測式水道メーターにはその構造により,接線流羽根車式,軸流羽根車式,ベンチュリー管分流式などがある.一般家庭に使用されている口径13〜25mm程度の水道メーターのほとんどは接線流羽根車式であるので,ここではこの測定原理について紹介する.

検査室の用語事典

臨床化学検査

著者: 坂岸良克

ページ範囲:P.891 - P.891

58) c-GMP;サイクリックGMP
サイクリックAMPに次いで見出された環状モノヌクレオチド.ホルモンの作用に対してサイクリックAMPと拮抗的に働く他,赤血球の円盤形の保持にも関係しているらしい.

病理学的検査

著者: 若狭治毅

ページ範囲:P.892 - P.892

67) Krukenberg tumor;クルーケンベルク腫瘍
 これはKrukenbergによってfibrosarcoma ovarii mucocellulare carcinomatodesとして発表され,ちょうど卵巣原発と思われたが,後に胃癌からの転移によるものと判明したものである.卵巣には線維が増殖し,その間に印環細胞型の癌細胞がびまん性に浸潤している.組織切片の粘液染色が診断上有力な方法である.

臨床化学分析談話会より・24<関東支部>

医学と分析

著者: 菅野剛史

ページ範囲:P.893 - P.893

 第181回分析談話会関東支部例会(1975.4.15)は,検査室に新たに新入生を迎えたことに対してのお祝いと,臨床分析の厳しさ,またはそのおもしろさを再認識する会として開催された.話題提供者は虎の門病院の北村先生と,神戸大学の馬場先生の両先生であり,テーマは"医学と分析"という題であった.そして両先生ともにこの難しい題に対して,それぞれ独特の味のある話題が提供されたのである.
 北村先生は分析を中心とした立場から"真に医師の要求に対して検査室が十分に反応しているかどうかという問いかけを常に自分自身に対して行うべきである."と始まって分析に偏りすぎて,全体が把握されねばならないのに部分的にしか物を見ないことがあってはいけないし,"生きものを知るためには,精密,かつ立体的,動的な観察が必要である."と述べられた.そして動的に,立体的に把握する手段として血液スペクトルに端を発した多種目平行測定からBiochemical profilingへの過程と,その組み合わせを一つのデータ管理基準として,より積極的に異常病態の発見が可能であることを強調された.

Senior Course 生化学

—酵素の初速度測定—HBDの用手法と自動化法

著者: 大場操児

ページ範囲:P.894 - P.895

 中検でルーチン検査として測定している数多い酵素検査の中で,HBDはまだ測定頻度の少ない検査項目といえよう.中検制度が採用されても,未検査項目の病院,必要に応じ外注する施設があると聞いている.
 HBD (α-Hydroxybutyrate dehydrogenase)はEll-iottらによってLDHアイソザイムの中で最も易動度の速い分画が,心筋硬塞に特異的なことが認められ命名された.この酵素はα-ケト酪酸を速やかに還元する性質を持つといわれている.

血液

—検査室からみた血液疾患の特徴—慢性白血病

著者: 松原高賢

ページ範囲:P.896 - P.897

白血病とは
1.白血病の定義および分類
 白血病とは白血球系細胞が無制限な増殖を営むようになった状態,すなわち悪性腫瘍化した状態である.白血病と診断がつく時には既に全身の骨髄に病変が広がっており,当然血液中には腫瘍細胞──白血病細胞と呼ぶ──が出現している.悪性腫瘍化するのは通常1系統の細胞種で,それによって白血病は分類される,すなわち骨髄性,リンパ性,単球性白血病の3種である.この他形質細胞性白血病があるが,これは多発性骨髄腫の一病態であるから,厳密な意味の白血病から除かれる.

血清

—最新の免疫学的検査法—免疫不全症候群Ⅱ—検査法(1)

著者: 冨永喜久男

ページ範囲:P.898 - P.899

 免疫不全症候群(IDと略す)の検査法は表に示すとおり,体液性免疫機構,細胞性免疫機構および形態学の3群に大別される.いうまでもなく,これらは生体の免疫機構が抗原情報を受け取った後の課程を示しており,抗原がマクロファージやRESの細胞で処理される間の機構は反映されていないのであるが,現在の段階ではやむを得ないことである.
 本稿ではWHOの専門委員会が推薦する検査項目について,考慮すべき点と手技を紹介する.

細菌

—病原性球菌の分離,同定—αレンサ球菌,肺炎球菌の分離・同定法 Ⅰ

著者: 小林貞男

ページ範囲:P.900 - P.901

レンサ球菌属細菌の定義
 レンサ球菌属細菌は二連〜長連鎖をなすグラム陽性球菌(古い培養では陰性になることがある)で,血液カンテン培地でα溶血,β溶血あるいはγ溶血(非溶血)を呈し,無芽胞,非運動性(運動性を示す菌種もある)であり,生化学的性状としては,オキシダーゼ反応陰性,カタラーゼ反応陰性で,多くは硝酸塩を還元せず,糖を醗酵的に分解し,ガスは産生しない.

病理

—新しい病理組織標本の作り方—染色 Ⅱ

著者: 平山章

ページ範囲:P.902 - P.903

ヘマトキシリンの代用品
 染色用のヘマトキシリンは先に述べたようにメキシコ,中央アメリカ,西インド諸島などの大西洋岸で育つHematoxylin campechianum,Caesalpiniaeeという木から作られるが,現在ではいろいろな事情で入手が難しくなりしかも価格も高騰してきている.手持ちのヘマトキシリンを経済的に長もちさせる方法は前号でも述べたが,この試薬に代わる方法もあるのでそれについて述べてみる.この方法を用いればヘマトキシリン・エオジン染色と変わらない満足な結果が得られる.

生理

スパイロメトリーと換気力学 Ⅱ

著者: 西島昭吾

ページ範囲:P.904 - P.905

動的肺気量Dynamic Lung Volume
 1.努力呼気曲線(Forced Expiratory Volume)
 スパイロメトリーによる努力呼気曲線(FEV曲線)は,最大吸気位より最大呼気位まで強制呼出させ,時間的に肺容量変化を測定した曲線であり,曲線上の任意の点の接線の勾配は,その時間における瞬間呼出速度(量変化を時間で微分)を示している.気道閉塞の定量的評価にこの曲線が用いられるが,評価のパラメーターとして,いろいろなパラメーターが用いられる.

一般検査

腹水

著者: 水野克也 ,   亀田治男

ページ範囲:P.906 - P.907

 腹水とは生理的範囲を越えて腹腔内に液体の貯留する状態をいい,狭義には非炎症性の炉出液を,広義には炎症性浸出液をも含めた遊離の状態での腹腔内貯留液をいう.腹水を来す基礎疾患は数多く(表1),臨床上その鑑別診断には詳細な検査を必要とする場合が少なくない.最近では悪性腫瘍が最も多く,次いで肝硬変症,慢性糸球体腎炎の順で,以前多くみられた結核性腹膜炎は少なくなってきている1).臨床上基礎疾患の鑑別には腹水の詳細な検査を必要とする場合が少なくない.ここでは当教室の成績を交え,腹水検査の概略について述べてみたい.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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