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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査19巻9号

1975年09月発行

雑誌目次

カラーグラフ

子宮の腺癌細胞

著者: 高橋正宜

ページ範囲:P.912 - P.913

 子宮体部腺癌と頸部腺癌の細胞学的区別は困難で検体採取の条件が参考になる.つまりCervical curettingsmearとendometrial aspiration smearを的確に行う要がある.日常の子宮腟部スミアにおける二,三のパターンは参考知見となる.体部腺癌は1)細胞の数が少なく,2)球状の集塊を作ることがある.3)頸部腺癌よりも核は比較的に小型である.4)変性空胞が胞体に著明なことがある.頸部腺癌は1)細胞の数が多く,2)大きな細胞集団を作り,3)核は並列,重積する.3)粘液産生の著明なものがある.4)小型な癌細胞で細胞質が少なく核が上皮内扁平上皮癌に類似することがある.染色法はすべてパパニコロウ法,組織標本はH・E法である.

技術解説

臨床検査での放射性同位元素の取り扱い

著者: 松村義寛 ,   栗原慎一郎

ページ範囲:P.915 - P.923

 世界で唯一つの原子爆弾被災国としてわが国民が原子核に対して抱く恐怖心によって,国内における原子力の平和利用に対してもみ異常なまでの規制,すなわち原子力基本法の制定,非核三原則──持たず,作らず,持ら込まず(持ら込主せず)──などが政策として行われてきた.それによってH−3,U−238などの原子爆弾の材料となるものはもとより,すべての放射性物質は厳重に登録され,追跡されている.しかもこれらの物質は国内にての生産量は極めて少量であるので,その管理は比較的容易に行われてきた.
 分子の行動すなわち化学変化の探究に対して安定および放射性同位元素(以下,RI)を用いる標識法によって初めて,分子レベルにおける実証的解析が行われ,化学の進歩に一代を画したのであるが,生化学についてもHahnらによるリン−32標識リン酸の植物での行動の追跡,Schön-heimerらの窒素−15,標識グリシンを用いるネズミ体内でのアミノ酸の動的平衡の研究に始まり,近代生化学の成果はトレーサーとしての同位元素の使用が極めて大きな部分を占めてきた.

血液型のうら・おもて—ABO式血液型判定と交差適合試験

著者: 村上省三

ページ範囲:P.924 - P.930

 一昨年来厚生大臣の私的諮問機関として設置されていた血液問題研究会(会長 島田信勝北里大主幹)は本年4月"当面推進すべき血液事業のあり方"について意見書を大臣に提出した.その一部として同研究会は血液型不適合による輸血事故が医療事故のかなりの部分を占めているところから,今後血液型判定法や交差適合試験をどのように改善向上させるべきかについて小委員会を作って検討を行い,一応の成案を得た.この案がどのような形で公表され,あるいはどの程度に実際に拘束力を持つようになるのかなどについてはいまだ分かっていないが,我々としては,現実面でのレベルの低さと,理想像との間のギャップの大きさに悩みながらもいろいろ検討を加えた結果,一部の委員には不本意とするところもあったとは思うが,近い将来により完全な姿に脱皮できることを念願しつつ,漸進的に向上させようとの意図のもとに現段階での立案を行った,したがって,その内容はむしろ最低基準ともいうべきものであって,それ以上のレベルの検査ができるところでは,今後ともその水準を維持してほしいものである.
 一方,輸血にからむ事故で,マスコミに大々的に取り上げられるような事態は相変わらず跡を断たない.まことに寒心に堪えぬところである.

総説

骨髄穿刺の検査

著者: 寺田秀夫

ページ範囲:P.931 - P.938

 骨髄穿刺検査は日常の臨床において,特に血液病の診断,治療の効果,経過の観察に欠くことのできないものである.
 しかし一方この検査は患者に対し,不快感と痛みを与え,検査を厭がる人も少なくない.キシロカイン注射による最初の痛み,穿刺針が骨質を通る時の圧迫感,また吸引の際の陰圧による瞬間的な鋭い疼痛などは,神経質な患者に対しては,かなりの心の重荷と不安感を与え,術前数目前から不眠を訴える場合も珍しくない.

座談会

骨髄穿刺の検査

著者: 寺田秀夫 ,   肥後理 ,   西村昂三 ,   佐野欣一 ,   桑島実 ,   天木一太

ページ範囲:P.940 - P.948

 臨床検査が非常に広く行われるようになった現在,どこの検査室で行う検査も同じような方法で行い,同じようなデータが出て,正常値もほぼ同じであることが必要になってくる……いわゆる標準化が重要なことは言うまでもないであろう.骨髄検査も今日,広く行われている検査法であり,標準化への踏み台ともなればと"総説"(32ページ)をもとにこの問題を話し合っていただいた.

異常値・異常反応の出た時・33

17-KSと11-OHCS

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.949 - P.952

臨床検査における11-KS,17-OHCS
 17-KSは17ケトステロイズまたは17-オキソステロィズ(17-OS)とも呼ばれる.血漿中17-KSはα,β両分画に分けて測定される1)が,α分画はアンドロステロン(An)とエチコラノロン(Et),β分画はデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)が主として占める.またガスクロマトグラフィーで尿中17-KS分画も測定されるようになり,こちらは代謝過程で5α系に属するAn, DHEAと5β系に属するEtに分別定量される2)が,男性ホルモン作用は前2者に大で後者は少ないと考えられる.
 しかし臨床検査に日常用いられるのは尿中のtotal 17-KSで,以下17-KSと記するものはこれを指すものである.したがって代謝産物であるから,他の副腎皮質検査法に比して下垂体—副腎系の様相を直接知るものとしては若干よわいものであるが,簡便性や,疾患動態を大づかみに把握するのに便利で,なお愛用されている.

中検へ一言・中検から一言

中央検査制度について,他

著者: 杉山民雄

ページ範囲:P.954 - P.955

 診療一般の中に含まれる検査の割合は年とともに増加しつつあるようである.これはより確かな治療方針を決定するためには,なおいっそう確実な情報が欲しいというニードに由来しているのであろう,その結果は検査項目の増加,検査件数の爆発的な増加となって検査室を襲来することになる.ことが人命に関するものであるといわれれば,ここまでがまず妥当で,これ以上は不当な要求であると線を引くことは難しいところであろう.無理に線を引いたところで,今日このごろの趨勢では,昨日引いた線を明日にでも引き直さなければならない破目に陥りそうな有様である.限られた予算,人員,スペースであれば,おことわりするか,移動できる検体であればよその検査センターに外注するしかあるまい.しかし,日常利用頻度も高いもの,検査成績がどれだけ早く得られるかが治療成績に反映してくるような検査項目に関してまで,検査を外部に依頼することは難しい.これらの検査に限っていうならば,病院内の中央検査室が解決しなければならない課題である,これは単に検査成績の精度管理のみならず,得られた成績をどれだけ早く伝達するかなど多くの複雑な問題が含まれているであろう.同時に従来研究室のなかで行われていた検査であっても,その有用性が立証された後は検査室で利用されなければ研究成果が生かされたとはいい難いし,国全体の医療水準を引き上げるには役立っているとは思われない.

臨床検査の問題点・74

pHの調整と化学検査

著者: 中甫 ,   竹下栄子 ,   長裕子 ,   松村義寛

ページ範囲:P.956 - P.963

 大部分の測定が水溶液を介して行われる臨床化学検査では,その水素イオンの濃度(pH)の変化が大きく測定に影響する,ガラス電極pHメーターなどの出現により,pHの調整がややもすると忘れがちだが,酵素反応や電気泳動を通して,調整の意義・影響などを検討する.

研究

剖検時採取血液による先天性異常児の染色体検査

著者: 阿倉薫 ,   泉好宣 ,   竹村正

ページ範囲:P.964 - P.967

緒言
 近年染色体検査はめざましい発展をとげ,一般病院の検査室でも盛んに行われるようになり,現在,それなりの成果が上げられている.しかし一方,死亡胎児や新生児死亡については,体表異常や臓器異常が認められて剖検が行われても,死後の時点で染色体分析が行われた報告はほとんどみられないのが現状である.
 最近,筆者らは,先天性異常が認められて剖検を行った死亡胎児と死亡新生児9例について末梢血の染色体検査を試みた.今回は採血手技の注意や,染色体分析の技術を含めて,成功例,失敗例について述べる.

自家合成基質およびEskalab kitによる酸性ホスファターゼのRate Assay—Roto Chem IIへの応用

著者: 下中恵美子 ,   安部彰 ,   酒井正衛 ,   川出真坂

ページ範囲:P.968 - P.970

はじめに
 血清酸性ホスファターゼ(AcP)の定量は,前立腺癌,特にその転移の診断に有用な検査法であるが,採血後の安定性に乏しく,また測定依頼件数は多くない.すなわちAcPは小数検体の緊急処理を要する検査であり,この目的にはCentrifugal fast Analyserの利用が最も適している.しかし著者らの検索した範囲ではrateassayによるAcPの適当な測定法の報告が見当たらないので,自家合成基質をRoto Chem IIに応用する方法の検討を行った.すなわちクエン酸酸性下にリン酸を遊離すると発色する基質として,β-amino-α-naphthyl phosphateを合成し,これを用いたAcP測定条件の検討を行った.その後本研究の続行中にFabing-Byrdら1)の報告に基づくと思われるSmith Kline社のEskalab kitが市販された.この方法は著者らの合成した基質と類似したα-naphthyl phosphateを基質としているが,基質溶解性および反応経過において著者らの合成基質より優れていることが認められた.ここにRoto Chem IIへの応用を目的として検討した結果を報告する.

3装置による血液PO2,PCO2,pH測定値の相関

著者: 藤川淳策 ,   折田修 ,   松尾準雄 ,   三川宏

ページ範囲:P.971 - P.973

はじめに
 近年における,血液PO2,PCO2,pHなど血液ガス,酸塩基平衡の検査は,それぞれ電極法が開発され,それらの3電極は同一装置に組み込まれ,同時に測定されるようになった.こうした装置が本邦においても,Ins-trumentation Laboratory社(ILと略),Corning社,Radiometer社などにより発売されており,臨床検査科や麻酔科の必需品となっている.特に大病院においては,数社の装置が使用されることもまれではない,そうした場合,臨床の側から,それらの測定値は一致するのだろうか,という疑問が出されることがある.このため我々は上記3社の血液ガス分析装置を使用して,同一血液サンプルにつき測定値の相関などを検討したので成績を報告する.

部分トロンボプラスチン時間の検討—第1報

著者: 塚田はつ江 ,   松尾典子 ,   鹿沼克江 ,   小林紀夫 ,   新井仁

ページ範囲:P.974 - P.979

緒言
 近年,partial thromboplastinが市販され,その入手が容易となるに従って部分トロンボプラスチン時間(partial thromboplastin time;PTT)やKaolin, ce-liteまたはellagic acidその他により活性化された血漿を対象とするPTT (以下APTT)の測定が広く行われるようになった.PTTはⅠ,Ⅱ,Ⅴ,Ⅷ,Ⅸ,Ⅹ,ⅩⅠおよびXU因子の減少を鋭敏に反応して延長すると指摘されている6)ので,この時間に関係するのは血液活性トロンボプラスチン生成に与える因子のみではない.一方,Ⅶ因子とともに血小板は全く関係しないことが知られている.しかし,血漿プロトロンビン(PT)時間測定および血小板数算定その他の血小板検査を併用して行えば,内因性活性トロンボプラスチン生成障害をトロンボプラスチン生成試験(TGT)と同様正確に判定できるといわれている5)ので,プロトロンビン消費試験(PCT)の代わりとして応用することが可能であろう.著者らは従来使用してきたPCTの代わりにPTTを採用するに当たり,PTTおよびAPTTにっいて検討を行ったのでその成績をとりまとめて報告する.

私のくふう

検尿コップ整理台の改良

著者: 宮本義雄

ページ範囲:P.967 - P.967

 一般の病院におけるスクリーニングテストの中でも,尿検査はその検体量と,それに付随する伝票の事務的処理などにおいて非常に煩雑なものになっているのが現状だと思う.したがって最も初歩的なミスである検体の事務的な取り違いが,どの病院にてもときとして起こりうる可能性がないとはいえない.
 なかでも検査室での技術者の見落としによる人為的ミスはかなり多いものと思われる.そこで,そういった事故を未然に防ぐために次の試みをしたので報告する.これは旧式の試験管立てを採尿コップ用に応用したもので,この場合のコップは市販の標準型紙コップを使用する.

ひろば

若い技師への期待

著者: 大竹敬二

ページ範囲:P.979 - P.979

 目的に仮説を立て,それに向かって独創的に検査・分析開発が進められた時に,多くの発明考案が生れ,目的が完成に近くなればなるほど,必要に応じた定形性を有する物の考えが次々と誕生するのではないか.
 専門細分化される医療において,検査手技方法も著しい変化をしており,現在はその被検者検体に最も適した,被検者のための検査・方法を選定しなければならなくなった.

新しいキットの紹介

フィブリン平板法の検討

著者: 桜川信男 ,   黒滝栄子 ,   織田島弘子 ,   一の瀬安子 ,   屋形稔

ページ範囲:P.980 - P.984

はじめに
 生体内の血液はhemostatic balanceが保たれていて,常に流動性である.しかし,あるきっかけで凝固系が充進すれば凝固亢進状態から血栓症に移り,また逆に線溶系が亢進すれば線溶亢進性紫斑(fibrinolystic pur-pura)がみられる.また血管内凝固症候群(dissemina-ted intravascular coagulation syndrome;DIC)では"引き金物質"(trigger substance)が血中に流入して凝固系が活性化されてトロンビンが出現するが,線溶系も同時に活性化されるので,hemostatic balanceは著しく崩壊して出血症状も著明である.この場合はフィブリノゲンが著しく減少し,アンチトロンビン作用を示すフィブリン分解産物(fibrin degradation product;FDP)も増加している.かかる状態での線溶系活性測定に従来用いられているユーグロブリン溶解時間測定法(Euglo-bulin lysis time method)やSerial thrombin time(STT)は正確な成績を示さなくなり,フィブリノゲン量が100mg/dl以下になると信頼性がなくなる.
 そこで検体自体のフィブリンを溶解させたり,凝固させたりする,いわゆる一段測定法ではなく,十分なフィブリンを補給して検体の線溶酵素活性を測定しようとする目的でフィブリン平板法が用いられる.

AUSCELLキットによるHBs抗原検出の検討

著者: 田中仲 ,   中島一聖 ,   久保ますみ ,   佐々木健身 ,   内田暁 ,   今関恵子

ページ範囲:P.985 - P.987

はじめに
 Hepatitis-Bs抗原(以下HBs抗原と略)が疫学,輸血領域において問題になっている昨今,HBs抗原検出のための日常検査の必要性は,急速に増大している.その検出方法については,多くの研究者1〜4)のが,種々検討しているが,まだ特異性,鋭敏性,簡易性および迅速性の4点を十分満足しうる検査法がない.
 そこで我々は,Reversed Passive Hemagglutinationを原理とし,抗HBs抗原モルモット抗体感作ヒト赤血球を使用した,ダイナボット社のAUSCELL5)(以下AuCと略)を,SRID法およびRadioimmuno-assay法(以下RIA法と略)と比較したところ,二,三の知見が得られたので報告する.

新しい機器の紹介

アガロースゲルフィルム電気泳動法によるリポタンパク分画の検討

著者: 大島寿美子 ,   元沢陽子 ,   田中博 ,   小沢憲治 ,   岩田進 ,   中野栄二 ,   河野均也 ,   土屋俊夫

ページ範囲:P.988 - P.991

はじめに
 血液その他の体液中の脂質はほとんど遊離の状態では存在せず,血漿タンパクと結合したリポタンパクとして存在している.臨床検査として血液中の各脂質は化学的に定量されているが,脂質代謝異常を知るためにはリポタンパクとして分析されることが重要である.リポタンパク分画法はいろいろな方法があり,臨床検査としては支持体電気泳動法が最もよく行われている.
 支持体電気泳動法Lee & Hatch1)の改良炉紙電気泳動法によりその基礎が確立され,更にFredrickson2)はその泳動像をもとに高脂血症の分類を行いリポタンパク分画法の臨床的意義が注目されだしたのである.しかし,汐紙電気泳動法は検体処理能力や定量的分画に難点があり,最近ではセルロースアセテート膜を支持体として用いるオゾン化シッフ法3)や,アガロースゲル電気泳動法,ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などが常用されている.

質疑応答

塗抹陽性で培養陰性の時……

著者: O生 ,   高橋昭三

ページ範囲:P.992 - P.992

 問 直接塗抹鏡検では菌が見えるが,培養では生えてこない場合,臨床検査技師は何を考え,何をなすべきでしょうか.

細胞診セミナー・2

細胞診スクリーニング—観察と判定の仕方

著者: 浦部幹雄 ,   高橋正宜

ページ範囲:P.993 - P.997

症例1腹水(中央鉄道病院出題)
 司会(浦部)この患者は17歳の女性で,38℃の熱を伴って強度な心窩部痛を訴え,腹部に腫瘤があるということで緊急手術をしました.その手術の際の出された腹水から得られた細胞です(図Ⅰ〜Ⅲ).
 大野(英治,北里大病理,技師)出てきている異型細胞は,核小体の著明なものがあって,比較的紡錘形の細胞と,円形で核偏在,クロマチン豊富な異型細胞と,2種類の細胞が川てきていると思います.

日常検査の基礎技術

125Iを用いたRIの手技

著者: 高木康史

ページ範囲:P.999 - P.1006

 パラメディカルの仕事と研究に従事する者にとって,正確な診断資料を作成することは義務であり,更に喜びであるかと考える.I−125を用いるRI検査の多くのものは生化学検査その他の日常検査では説明できない病態を早期に,確実につかまえることができる最新の技術である.放射性同位元素を使用するので少しく困難なところがある,病院内で最も上手にピペット類を操作できる検査技師,夏に血液や血清の性質を知り血清反応の知識を十分に持っている検査技師が,この技術を管理するべきであると私は確信している.
 例えば血中インスリンを検査できれば経口糖尿病薬による医事紛争など起きないし,その他各種内分泌ホルモンの測定(RIを用いる)が医療上絶対に必要なので検査技師諸君がこの分野に進出するのは医療を進歩させるために大きな戦力となることを強調しておきたい.

検査と主要疾患・33

橋本病

著者: 藤本吉秀

ページ範囲:P.1008 - P.1009

1.橋本病
 最近この疾患が難病対策の対象に指定され,その診断基準が設けられたようであるが,橋本病を広く解釈して,"甲状腺に自己免疫現象が起こり甲状腺組織にリンパ系細胞浸潤が起こった疾患"と考えれば,この中にはかなりいろんなタイプのものが入ってくる.大きく次のように分けると臨床上都合がよい(図1).

検査機器のメカニズム・45

漏電しゃ断器

著者: 小林勲

ページ範囲:P.1010 - P.1011

1.漏電しゃ断器の働き
 いろいろの電気機器,例えば電気洗濯機の絶縁が悪くなって,その金属製外箱に漏電すると,これに触れた人は感電し,条件によっては致命的な結果を来す(図1).これを防ぐため銅板や金属棒を地下に埋め込んで接地極とし,それに金属製外箱をつなぐいわゆる接地(アース)を施すことが,古くから行われてきた(図2).しかしこの接地だけでは,金属製外箱の大地に対する電圧を安全な値まで低めることは一般に難しく,感電を防ぐ効力が乏しいので,1930年ごろヨーロッパで漏電しゃ断器が生まれた.
 漏電しゃ断器は,原理上電圧動作形と電流動作形の二とおりに大別されるが,現在は,各国ともに,電流動作形のものを主として用いている.

検査室の用語事典

臨床化学検査

著者: 坂岸良克

ページ範囲:P.1013 - P.1013

66) lsotachophoresis;等速泳動法
 Displacement electrophoresisまたはTransphoresisとも呼ばれる電気泳動法の一種.毛細管内で行う分析用とカラム内で行う調整用の装置が開発きれている.いずれもLea-ding ionとTerminating ionと呼ばれる種類のイオンを含む液の間に検体を注入し,両者に挾まれたまま泳動する.その間に検体中のイオン成分が分離される.検体中のイオンは等しい速度で泳動され,その順序に従って電場の強さが階段状に変化するので不連続な境界ができ,鮮明な吸収ピークを記録することができる.無機イオン,有機酸,アミノ酸,ヌクレオチド,ペプチド,タンパクのいずれも分離検出が30分以内で可能である.

病理学的検査

著者: 若狭治毅

ページ範囲:P.1014 - P.1014

78) Metachromasia;異調染色,変色反応
組織を染色した場合,大低のものは染色液の色に染まってくるのが普通であるのに対し,染色液の色と異なって染まる現象をmetachromasiaと呼んでいる.この染色に用いられるのがトルイジン青溶液で,酸性粘液多糖類は赤,肥胖細胞め顆粒は赤または紫紅色に染まる.

臨床化学分析談話会より・25<関東支部>

測定法改正は慎重であれ—Reitman-Frankel法はなぜいけないか

著者: 野間昭夫

ページ範囲:P.1015 - P.1015

 第183回分析談話会関東支部例会(1975.5.20)は東大薬学部講堂において開催された.奇態に火曜日というと雨が多いのであるが,当日は五月晴れで,新年度ということと,テーマの関係とで,出足良好で,講堂はほとんど満員という盛況であった.
 今年度の新しいテーマである"なぜいけないか,本当に良いのか"シリーズの第1回目として,各検査室で最もなじみの深いトランスアミナーゼを取り上げ,Reit-man-Frankel法とUV法のそれぞれの長所,短所などに焦点を合わせた会合であった.まず検査法の見地から慶大菅野剛史先生,次いで臨床的見地から東大一内鈴木宏先生が講演され,その後討論に入るきっかけとして虎の門病院中山年正先生が話をされた.3人の先生方の講演およびその後の質疑応答をまとめてみると,次の3〜4点に要約することができる.

Senior Course 生化学

—酵素の初速度測定—CPK

著者: 大場操児

ページ範囲:P.1016 - P.1017

 コード番号2.7.3.2に分類され,系統名としては,ATP:Creatine phosphotransferaseが与えられ,Creatine Kinaseが常用されている.わが国ではミオパチー研究班によるとCPKの測定はLohomann反応による測定法が,従来標準法となってきたが(1966年),本法は加水分解で生じた無機リンを測定する方法で,操作法が繁雑で,かつ誤差要因が多い.しかし国産のUV法キットもでき測定がかなり容易となったため,今後,UV法による測定頻度も高くなると推定される.
 UV法による測定はNAD法(C.Gilvarg) NADH法(L.Nielsen)があり,NAD法は吸光度の減少を測定するが,NADH法は逆に吸光度の上昇を測定している.しかし,NAD法は保存血清中の低下した活性値を上昇させる賦活剤(シスチン,グルタチオン)の添加が無いため,NADH法が,毎日測定不可能な検査室としては,都合がよい.

血液

—検査室からみた血液疾患の特徴—急性白血病

著者: 松原高賢

ページ範囲:P.1018 - P.1019

 急性白血病は骨髄性,リンパ性,単球性および特殊型に分けられる.ただし臨床的にはほとんど同様な症状を呈し,鑑別診断は血液細胞学的検査によって下される.

血清

—最新の免疫学的検査法—免疫不全症候群Ⅲ—検査法(2)

著者: 冨永喜久男

ページ範囲:P.1020 - P.1021

細胞性免疫機構
 通常3種の方法が用いられる.すなわち,遅延型皮膚反応,リンパ球の幼若化転換およびマクロファージ遊走阻止反応である.

細菌

—病原性球菌の分離,同定—αレンサ球菌,肺炎球菌の分離,同定,型別法 Ⅱ

著者: 小林貞男

ページ範囲:P.1022 - P.1023

αレンサ球菌の同定(つづき)
 一次鑑別の性状からレンサ球菌は1群(β溶レン菌),Ⅱ群(α溶レン菌)および皿群(腸球菌)に分けられる.

病理

—新しい病理組織標本の作り方—染色 Ⅲ

著者: 平山章

ページ範囲:P.1024 - P.1025

染色色素の性質について
 新しい染色法を文献に基づいて染色する時,あるいは日常ルーチンで行っている染色法を行っている時でも,思うような染色効果が得られず,その原因が分からない場合がよくある.こうした場合,前号に述べたような手技について十分注意してもやはり思ったような結果が得られずとまどってしまう場合が多い.
 我々が日常使用している染色色素について,色素製造業者も,また,病理学者や病理組織技師もあまりにも無関心すぎないだろうか.例えばDr. R. D. LillieはHistopathologic Technic and Practical Histochemistry(3rd Ed.)の中で,色素を購入する場合はColor IndexNumber(C.I. No.)を明確にしておくことが大切であると述べている.彼の著書をみると色々な染色法について述べる場合必ずその染色法に使用する染色色素のC.I. No. と色素製造会社名を明記している.ところが,他の病理組織技術の本や新しい染色法を紹介した文献などをみるとほとんどがこうした基本的条件を明記してないかあるいは無関心であることが多い.こうした基本的なことが無視されているため多くの病理学者や病理組織技師はいたずらに染色法を名人芸的なものと受け取り,無駄なしかも全く意味のないことに労力を費やさなければならない破目に陥いっていることがしばしばある.

生理

心音図の自動診断

著者: 吉村正蔵 ,   下地悦朗 ,   中塚喬之 ,   小原誠 ,   古平國泰 ,   沢近紀夫 ,   小原一夫

ページ範囲:P.1026 - P.1027

 近年医学の多くの分野でコンピューターが盛んに利用されており,心音図診断に関しても1962年Gerbargによる研究以来研究されているが,実用化に至ったものは少ない1〜3)
 筆者らは1963年以来,心音図自動診断装置を研究していたが1967年に完成させた4〜6).本装置は専門医と同程度の高度の診断能力を持っている.引き続き学童心臓病検診装置の開発を行い昨年完成した.これは学童の心疾患すなわち先天性心疾患,後天性心疾患,不整脈などを検出するためのスクリーニング装置で処理能力も大きく,小型軽量(数ブロックに分かれている)で1〜2人で運搬可能である.今回は紙数の関係で心音図自動診断装置の概略を述べるにとどめる.

My Planning

細胞診における現場教育

著者: 国実久秋

ページ範囲:P.1028 - P.1029

 癌の克服は,現在のところ早期発見早期治療が鉄則とされているが,その早期発見の一役を担うのがサイトスクリーナー(細胞診検査士)である.7号の細菌検査と同様に最も自動化されていない部門だけにマンツーマンの教育が必須となってくる.
 最近,スクリーナーを希望する検査技師が多くなっている,しかしその一部の検査技師のなかには,その理由として他の臨床検査部門では自動化が進歩しているので,機械に使われたり,機械の管理のみで臨床検査学的知識が活用できない,それに反し,細胞診は検査成績を出すのみではなく,診断業務の一部門を担えるという魅力がある,というようなカッコよさを強調している者が多い.確かに細胞診部門では,自動化の開発が試みられているが,他の臨床検査部門のようには日常化しておらず,細胞診は特に人の目と頭脳をもって行われる検査法である.決してスクリーナーが独断で診断するものではなく,検査成績を最終的に診断し,それに責任を持つものは医師である.要は正確な成績を出すことであり,他の臨床検査部門となんら違いはない.このような検査技師としての基本的な立場を明確にしたうえで,杏林大学・病院病理部において筆者が行っているスクリーナー志望者に対する現場教育の方針を具体的に述べてみたい.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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