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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査2巻11号

1958年11月発行

雑誌目次

グラフ

尿沈渣検査

著者: 東大附属病院中央検査部

ページ範囲:P.635 - P.642

 尿を遠心してその沈渣を顕微鏡的に検査することは,最もありふれた臨床検査の一つであつて,精密な腎機能検査の発達した現在でも,腎炎,腎盂炎,膀胱炎等の診断には沈渣の所見が第一に重視される。沈渣を顕微鏡下に観察してその所見を記載することは,病理組織学的検査と同じく,標本に見える物をその形によつて判定するのであるから多少とも検査に当る人の主観が入る。この点が化学的定量的検査と非常に異り,従つて正確な沈渣の所見が見れるようになるには,どうしても相当な訓練が必要で,実際の標本について指導者から一つ一つの細胞や血球について教えてもらはなくてはならない。
 沈渣を顕微鏡下に観察する前に大切なことは,採尿より遠心器にかけて沈渣の標本を作るまでの製作上の注意を正しく守ることである。沈渣検査成績の誤りは往々にして沈渣の標本を作るまでの装作の途中から生ずる。

技術解説

抗生物質の測定法

著者: 村山蓊助

ページ範囲:P.643 - P.650

I.抗生物質測定の意義
 現在我々は十指にあまる抗生物質を自由に駆使して感染症の治療に偉力を発揮しているが,効果のない菌種や菌株に対しても効くような新しい抗生物質の研究は常に続けられている。新薬剤に対してはその効果について臨床的研究がつみ重ねられるのが常であるが,薬剤の吸収,体内分布,排泄等を追及する事は,最も適当な投与法を決める上に重要な事である。特に感染症の原因菌が分離された時には,その抗生物質に対する感性検査の結果と相まつて,体液中濃度の測定は治療方針を決める上に指針となる。又,抗生物質のような生物学的製剤では常に同一の力価を有する製品を得られるとは限らないので,製造管理のためにも抗生物質の測定は頻繁に行われる。

糞便の細菌検査法(Ⅰ)

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.651 - P.654

 糞便の細菌学的検査は,主として腸内細菌群中の病原菌を検索する場合に行われる。これはグラム陰性の桿菌である。特殊な場合,グラム陽性の球菌等の検索も行われるが,それは比較的少い。赤痢アメーバ等の原虫が検索の対象になる事もある。
 糞便は,腸から出るわけで,口から入つた食品の最後の姿である。したがつて,食べものが口に入る時にもつて来た細菌も出てくる事になる。従つて,多種多様の細菌の集りといつてよい。

血液燐酸定量法

著者: 春日誠次

ページ範囲:P.655 - P.657


 血液中に燐酸は,無機燐酸,エステル燐酸,脂質燐酸,核酸燐酸として分布している。その量的関係は次のようである。

         全 血  血 漿

 無機燐酸    2〜4   2.4〜4.5

 エステル燐酸  20〜30  0.1〜1.7

 脂質燐酸    11〜14   7〜15

 核酸燐酸    2〜3    —

 総燐酸     35〜51  10〜12

  (数字はPmg/dlを示す)

 以上の数値からもわかるように,エステル燐酸は血漿中に少く,血球中に多い。又無機燐酸は,血球中には殆どない。之は血球内では,代謝過程殊に糖質代謝が進行する為に,それに関連した燐酸エステルが多いのである。この代謝に伴つて無機燐酸は血球内に取入れられてエステル化され,又血球内からは分解されて生じた無機燐酸が,血球に出されている。もしも血液が血管から外に出され,殊に室温に放置されると,血管内での血球燐酸代謝とは異つて来て,分解過程がより強く進む。即ち無機燐酸が次第に増加してくる。従つて燐酸定最を目的に採血したならば,血漿にしろ,血清にしろなるべく速かに血球部分とは分離してしまうべきである。血漿,血清は分離してからトルオール1滴を加えて氷室におけば,数時間は保存出来る。凝固阻止剤を用いるならばヘパリンがよい。蔭酸塩は燐酸定量の際の発色を阻害する。溶血した血清は用いてはならない。

「Papanicolaou染色方法」について

著者: 福島範子

ページ範囲:P.659 - P.663

 Papanicolaouの染色方法は1943年,Papanicolaouが腟脂膏から得られる剥脱細胞(Exfoliative cell)について子宮の周期的変化を研究するのに用いた方法で,これが次第に各種臓器の悪性腫瘍の剥脱細胞に応用され,腫瘍細胞診として広く行われる様になつて来たものである。その特徴の1つは固定法にあり後記する様に特殊な方法により標本を乾かさずに固定する所謂湿潤固定(Wet Smear)で,細胞の水分や脂肪がエーテルやアルコールと置換され,従来の乾燥固定法の如く細胞を載物グラス上に伸展乾燥し厚みを無くして見る方法に比すれば,原型に近いふくらみを持たせたまま固定,染色するものである。更に1つの特徴は染色方法で高濃度アルコールや有機溶媒液の使用により透明度の高い標本を得る為,ふくらみのある細胞が或程度密集していても構造の細部,殊に核の微細な構造を詳細に観察し得るものである。

濾紙の種類と使い方(4)

著者: 及川五郎

ページ範囲:P.665 - P.670

"馬も歩けば棒にあたる"
 この棒が良い棒か悪い棒かと,法学博士?金森德次郎がこの間,日経の履歴書欄で大まじめに疑問詞を投げて居た。勿論その場合,馬は犬であつたが,いろはがるたのいの一番さえ人によつてはこうも解釈が迷うもの,ましてや日本憲法の疑義においてをや,とまでは,云つて居ない。それとは別に,ある英書の訳に曰く"Everydog has his day"と棒の良し悪しなどはてんで問題でなかつた,更にこれから日本語に反訳したならば,
 "人おのおのに人生あり"

座談会

感光材料の扱い方と現像の仕方

著者: 宮本五郎 ,   田口武雄 ,   土屋省吾 ,   太田邦夫 ,   松村義寛 ,   松橋直 ,   高橋昭三 ,   樫田良精

ページ範囲:P.672 - P.684

はじめに
 樫田 今日は本当に暑いところを皆様お集り頂きまして有難うございました。夏の読物というわけで企画したのですが,いろいろの都合で繰越しになりまして11月号にのせることになりました。11月というのは写真では一般のアマチュアー等が非常に活躍する1年中の一つのピークだと思います。医学の領域でも写真の利用は,研究とか検査の際に非常に大事でありまして,これの扱い方をよく知つておけば,何か娯楽的な写真を撮る時にも勿論非常に役立つし,研究とか検査の時にもいろいろの利点があると思います。今日は写真の感光材料の扱い方と,それから現像の仕方,こういうような点に主眼をおいていろいろお話し合い願いたいと思います。最初に今日お出頂いた写真大学の宮本教授に総論的なお話をお願いし,次に小西六の田口さんと東大の写真係をやつている土屋さん,土屋さんは写真大学の卒業生ですが,いろんな面から質問なり,話合いをして頂きたいと思います。初めに宮本先生一つ。

研究

カンジダの確認培地について

著者: 正古良夫 ,   玉村富

ページ範囲:P.685 - P.687

 カレジダ症が一般の注目を引くようになり,従つてカンジダ同定の必要性が高まつてきた。現在カンジダの同定にはLodder一派か,あるいはMartin一派の分類方式が広く行われており,医学的に主としてC. albicans,C. tropicalis,C. krusei,C. parakrusei,C. guilliermondi,C. stellatoidea,C. pseudo-tropicalisの7種で充分とされている。しかし上記二方式は大同小異で形態と糖醗酵が共通の主眼点である。いずれにしても,同定に多種類の培地と日数を要するのみならず,形態上の判別には相当の熟練と経験とを要し,多忙な一般臨床検査担当者にとつてはきわめて厄介なことであろう。従つて正古はクリグラ培地のようなものがカンジダに対してあれば,きわめて重宝であろうと考えていたのであるが,幸にも東大秋葉教授の御助言を得て,カンジダの確認培地を試作したので報告すると共に御批判をいただければ幸である。

『医学常識』

リウマチのはなし

著者: 鈴木秀郎

ページ範囲:P.689 - P.690

 リウマチといえば老人の病気だと思つているひとが多い。事実老人の患者は多いことは多いが,若い愚者も決して少くない。それどころか数からいつたらむしろ若い患者のほうが多いくらいである。
 元来リウマチという病気は原因がまだはつきりしないくらいで,古くから学者の間でいろいろの説が唱えられているが決定的なことはわかつていない。したがつて病気の分類もちやんとできあがつておらず,とくにドイツ学派と米英学派では同じ病気に対する名まえのつけかたが違つており,医者ですらときに混乱してわけがわからなくなることもある。今回はリウマチについて,できるだけ簡単に述べて諸君の参考にしたい。

読者の頁

サルモネラ等の抗原誘導用に使用する一試験管(BY式試験管)の考案

著者: 辺野喜正夫 ,   藪内清

ページ範囲:P.691 - P.691

 腸内細菌,なかんずくサルモネラのH抗原の診断に際し,H抗原のうちの何れか一つの相を誘導する方法として,現在U字管,Cragie管等が使用されているが,これらはいずれも菌接種操作,滅菌操作,洗滌,取扱い等に多少の不便が感ぜられる。そこでこの改良を思い立ち,こゝに報告する試験管を考案した。この試験管は実際に使用して便利であると思うので,ここに紹介する。

検尿(糖定性)の集団検査法について

著者: 中西寬治

ページ範囲:P.693 - P.693

 この方法はすでに,採用されている機関もあるかと考えますが,私は年2回の定期健康診断と入隊志願者の糖尿試験に1本1本試験管を,ブンゼンバーナー(又はアルコールランプ)で直接加熱5分以上するとしますと,時間的にも労力的にも無理がくる事に,頭を痛め1回で数名から数十名検査する法を,考案しました。この法で,充分かどうか,諸先生の御指導を願えれば,幸甚に存じます。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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