icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床検査2巻5号

1958年05月発行

雑誌目次

グラフ

病理組織標本のつくり方のこつ(Ⅲ)

著者: 太田邦夫 ,   望月孝規

ページ範囲:P.259 - P.266

普通染色の1例(ヘマトキシリン・エオジン染色)
 ①よく乾燥した切片つきのスライド・ガラスは第一に,キシロールⅠ—キシロールⅡ—純アルコールⅠ—純アルコールⅡ—普通アルコール—70%アルコールの列を通して,先ずパラフインを完全にとかし,次ぎにキシロールをアルコールで除いてから,そのアルコールを除くために水洗いする。上図のように一枚づつ操作すれば間違いはない。キシロールの代りにベンヂンを使うと蒸発が早いためにとけたパラフイン濃渡が高くなり,標本がよごれやすい。

高級技術講義

測定誤差論

著者: 土肥一郎

ページ範囲:P.267 - P.273

1.緒言
 観察の結果を数値で表すことは,より精密な知識を求める人間の欲求が定性的な見方から定量的な見方に進む方向を辿る結果として,医学,生物学のあらゆる分野に入りこんできている。確かに,数値で表された性質は吾々に或る決着感,安心感を与えるが,却つてその為に吾々はその数字のもつあやふやさを忘れかけるものである。定性的表現は,それ自身の持つあいまいさ故に,これを受けとる側にも,いわば充分の心構えがあるともいえよう。数字による表現を見た場合,吾々は第一にそれが抽象的な数字でなくて具体的な数字であることを念頭に置かなくてはならない。例えば抽象的な数字としての152は152.00とも152.0000とも同一と見てよいが,具体的な数字である観測値の場合は,この3つの持つ意味は全く異つて居り,段違いの観測精度を示している。このことは,観測値に就て何等かの加減乗除を行わねばならない場合に大切なことで,不必要な計算の手間をかけて意味のない数字を羅列する誤りをしてはならない。
 定量的表現では,これに伴うあいまいさも数値的に表される。これに対して誤差ということばが漠然と使用されて居り,正しく定義され使用されている誤差にも幾種類かがあるので,これらの各各に就ての定義と立場を明かにしておく必要があると思われる。誤差論の対象となるのは偶発誤差といわれるもので,これは,その発生に系統立った所がなかつたり,また発生の個所は見当ついて居るがこれを測定の各段階から消去することが困難な為に,みすみす測定1直内にまぎれこむことを許している様なものである。例えば或る血中物質儂度を測る場合についていえば,

技術解説

心電図検査の解説

著者: 本田正節

ページ範囲:P.275 - P.284

 最近心電図の検査が盛んに行われているが,心電計を扱う技術者の指針となるような手頃な本がないので,困つておられる方が多いと思うので,ここに心電図検査にあたつて比較的重要と思われる数項目について説明することにする。

細菌学のエチケツト

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.286 - P.288

 英語の諺に,"Honest is the best policy"というのがあります。これは"誠実こそ最上の処世方針である。"という意味です。このように,どこに行つても,人間には入間の,技術者にはその専門技術者としてのエチケツトがあり,それに従うのが,最も間違が少いものです。即ち,経験的に,してよい事,わるい事が知られて居ます。細菌技術者にも,きびしい作法があります。熟練した技術者は,意識しない時も,そのエチケツトをちやんと守つて居るものです。これを,1つ1つ述べてみましよう。

血糖定量法

著者: 春日誠次

ページ範囲:P.289 - P.293

原理
 ブドウ糖は,中性水溶液中では環状構造をしているが,アルカリ性になると環状構造がやぶれ,端在のアルデヒド基を生じ,従つて還元性をもつようになる。血中ブドウ糖(血糖)の定量にはこの性質を利用したものが多い。血液の除蛋白液をアルカリ性にし,之にCuとか,FeとかHgとかを含む試薬を加えて一定時間一定温度で加熱するとCuならばCu,FeならばFe,HgならばHgを生じ,その量は糖量に比例する。加熱を終つてから,それを定量することによつて,糖量を知るという方法である。この原理による血糖定量法は非常に多い。その除蛋白法,被還元性物質の選択,アルカリ度,などに問題がある為で,更に手早く出来るということも考慮されなければならない1つの要因である。
 この他,ブドウ糖は硫酸と加熱するとHydroxymethylfurfuralを生じ,ここに適当な芳香族アルコールがあると,之とエーテル様に結合して発色するという性質がある。

座談会

臨床病理技術士資格認定試験を受けられる人の為に

ページ範囲:P.295 - P.298

試験の功績
 A 今日はお忙がしいところをお集まりいただきましてありがとうございました。今年もまた7月に臨床病理技術士資格認定試験が行われますが,まずこの試験について何か……。
 E 臨床病理技術士資格認定試験というのは日本臨床病理学会が行つている試験で非常に程度の高い1級試験と,初級の2級試験とがあり,毎年(昭和29年から)行われて来ました。既にもう何百人かの人が資格をとられて全国で活躍しておられます。

『医学常識』

検査結果の記録と検討の重要性

著者: 鈴木秀郎

ページ範囲:P.299 - P.301

はじめに
 2つのものが「同一である」とか「相等しい」という概念は数学的なものであつて,現実にそのようなことはないということは誰でも知つている。たとえば内径・厚さ・長さを指定して小試験管を1000本ばかり注文したとしよう。とどけてきた品物は大体において注文の規格にあつていても,肉眼でみた丈で太さや厚さや長さが異つている品物が大分まじつているし,規格どおりのものでも精密に測定してみれば寸法はまちまちで「相等しい」試験管などは存在しない。化学薬品も同様である。食塩ひとつを例にとつてみても2級・1級・特級などという規格があるのは製品の純度が異つているからであるし,同じ特級品でも精密な分析試験をしてみればやはり「相等しい」品物は全くないに相違ない。ガラス製品や化学薬品にして既にそうなのであるから,細菌検査室で使用する培地やWida1反応用の菌液,あるいは血清検査室で用いる抗原液や抗血清のような生物学的な製造過程をへて作られるものは,その差違はもつと甚しく数学的な「同一性」など全然望めないのである。
 ただこれらの品物はいずれも定められている精密度というものがあつて,実際に使用してみて不便のない程度の誤差や不純度ならば許容される訳である。したがつて規格品というのはその程度の意昧で「相等しい」品物というのであるから使用する側ではそのことを充分に心得ていなければならない。

新しい検査法

病原性真菌の検査法(その1)

著者: 岩田和夫

ページ範囲:P.303 - P.308

はしがき
 一口に真菌Eumycetes, true fungiといつても,医真菌学medical mycologyの対象となる真菌は,いわゆる汚染菌contaminantsも含めて,相当多数にのぼり,その検査法も,かなり多岐にわたるのは当然である。しかしその間に全般的に通ずる事項も多く,また一般細菌とは,分離培養その他の扱い方においてかなり手技の異なることを承知しておくべきである。
 真菌の大多数は,形態学的に比較的大きく,この点,特に病的材料を直接無染色あるいは染色標本にして観察し,真菌要素fungus elements,即ち菌糸,胞子及びそれらの示す特徴的な特殊構造等を確認しておくことが肝要である。たとえ,その後の分離培養が不成功に終つても,真菌症mycoses, fungous infectionsの診断上,極めて有利で,場合によつては,それのみで診断の確定する場合も少くないのである。分離培養が成功しえないのは,培地の選択宜しきをえない場合もあるけれども,そうでなく,しかもとにかく直接検査で真菌要素を認めえているにもかかわらず,培養が不成功に終ることは真菌感染の場合,時折経験されるところだからである。慢性の真菌感染において,臨床症状のはつきりしないときなど,特にこの病的材料の直接観察で,真菌要素の確認に努めることは大切である。ところが案外これが忘れられがちである。

研究

喀痰中結核菌の分離培養における雑菌の発生とアクリフラビンの影響

著者: 寺山和夫 ,   橋本正代

ページ範囲:P.309 - P.314

緒言
 喀痰中結核菌の培養法は陽性率の向上,集落発生の迅速培地汚染の防止の3点から種々の改良が行われている。雑菌の発生は喀痰均等化の不充分と前処理法の不適当ということが培地の種類と共に重要な原因である。現在通常用いられている小川培地に発生する雑菌を検査し併して喀痰中結核菌の検出及び雑菌の阻止に対するアクリフラビン(Af)の影響を観察した。

受験者のために

2級技術士認定試験の血液学受験について

著者: 青木康郎

ページ範囲:P.315 - P.317

いとぐち
 日本臨床病理学会の主催する2級臨床病理技術士資格認定試験は,今年も7月下旬に実施されることになつたようです。回を重ねて今年で第5回になりますから,これから受験しようとする皆様の周囲には恐らく何人かの経験者がおられて,試験の様子も大体ご承知のことかと思いますが,例年幾人かの失敗者を出しているように聞き及んでいますので,ここに2〜3の注意すべき点を申し述べてみたいと思います。血液学に関連した方面を主にしますが,多少とも御参考になれば幸であります。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?