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雑誌目次

論文

臨床検査2巻9号

1958年09月発行

雑誌目次

グラフ

トロンボプラスチンの作り方

著者: 安部英

ページ範囲:P.515 - P.522

 血漿のプロトロンビン(以下「プ」)時間の測定には,標準力価をもつたトロンボプラスチン(以下「トプ」)が必要であるが,本検査室では次のようにして「トプ」を作り,これを用いてQuick氏一般法により,正常値が12〜13秒の「プ|時間を得ている。
 まず必要な器具,薬品として,①図の上左よりウサギ固定箱,電気スタンド,アルコール綿,生理的食塩水,ガーゼを底に敷きこれに生理的食塩水を充したペトリ・シヤーレ,乳鉢,アセトン・デシケーター,出来上つた「トプ」を容れる摺り合せ試薬瓶,50ccの肉厚遠心管,25cm程度の硝子棒,20ないし10ccの注射器,中型および小型ピンセツト,メス,鋏,骨鉗子,花鋏および骨切用鋸を用意しておく。

高級技術講義

ウイルスの血清反応の実際(Ⅱ)

著者: 甲野礼作

ページ範囲:P.523 - P.529

III.補体結合反応
 補体結合反応は日常のウイルス病血清診断法のうちで最も広く行われ,重要な位置を占めている。梅毒の血清診断法においては,補体結合反応は,沈降反応に席を譲つた感があり,補体結合反応と言えば今日ではウイルス病の診断を想い浮べると言つても過言ではないであろう。
 補体結合反応が何故に応用が広いかというと,Iに述べた様に抗原抗体反応が起つた時補体が結合されるといういわば間接の現象を用いて弱い抗原抗体反応でもその生起を知り得るという,一言にして言えば感度の良い反応であることによるのである。

実例による吸光度の計算

ページ範囲:P.529 - P.529

E=2—log T
 上式は透過率T(%)から吸光度(正しくは光学的濃度)Eに換算する有名な(?)もので光電比色計を操作する技術者は必らずお目にかかつたものである。

目盛の1/10の桁を読む—補間法

ページ範囲:P.560 - P.560

 測定の最終段階は目盛の読みとりになることが多いが,目盛の中間にあたるときはどちらか。一目盛の間を目分量(メノコ)で十区劃に分けて読みとるのが常識である。
 天秤の指針のフレ,ビユレツトのメニスカスの位置,光電比色計のガルバノメーターの指針,いずれも目盛の上を動いて多くの場合目盛の中間の位置を示すことになるもので,それぞれ最小目盛の110の桁まで読みとるのを例とする。

技術解説

中枢および末梢神経組織の新しい染色法—有髄神経線維をめぐる形態学研究のために

著者: 向井紀二

ページ範囲:P.530 - P.539

はじめに
 1953年,Klüver-Barrera8)によつてあたらしく髄質の染色にとりいれられたCopper Phthalocyanine(CuPC)の化学的な特性や,すぐれた理論の裏付をもつた実用性については,すでに再度にわたつて詳しく記載14)17)してきた。
 しかし,それらの内容は組織にかんする知識に通じていられる方々のために一つの前提をふくめてかいたもので,したがつて,歴史の浅いこの方法を識者のすぐれた研究のなかで,あらためて評価されることにつよい期待をいだきながらあえて不十分なデータをよせあつめたものにすぎなかつた。ここで,「臨床検査」編集部のあらたな企画にしたがつて,より多くの発表の場をかりて新しい方法に普遍性をもたせるためにも,いままでの形式とはかなり趣きをかえて,ふたたびCuPC染色について技術者の方々を主な対象として筆をすすめてみることにした。あるいは,あらかじめ設定したこのような枠にさまたげられて,広い範囲にわたる各術式のつながりに具体的な周到さをかくおそれがあるとしても,それらの不備を予め御諒解いただき,限られたスペースを有効に埋めることにしたい。

濾紙の種類と使い方(3)

著者: 及川五郎

ページ範囲:P.541 - P.545

千里馬常有而伯楽不常有
 50年ばかり前の話,小学校の2〜3年頃であつたか,おやぢが教えた漢文の素読の一節である。田舎の家のいろりのそば,台所の板の間ふき,庭の草取り,苦しい暮らし向きを手伝う合いの間の口伝であつた。返り点,句読点,送り仮名もない白文を今では却つてなかなか読みづらい。
 若くして東都に学び,志を得ずして国に帰つた父は村会議員や学務委員と狭い土地の名誉職には甘んじなかつたか,それとも半農半商の貧乏生活のいらだちでもあつたろうか,悶々の情を酒に過ごしたこともちよいちよいあつたらしい。路の上,橋の上,所かまわず寝ころんだら最後,誰の介抱もよせつけない,不思議に目をさますのは子供の迎えに限ると云うので見掛けた人の知らせがあれば母はあわてて私達に云いつけた。年子を交えて2つ違いの兄弟5人は男ばかり,育ち盛りの苦しいなかでも子供の養育だけを楽しみにして居たらしい。

座談会

臨床検査と水

著者: 長尾元雅 ,   樫田良精 ,   太田邦夫 ,   松橋直 ,   荒井佳則 ,   松村義寛 ,   高橋昭三 ,   堤洋子 ,   天木一太

ページ範囲:P.546 - P.557

 樫田 今日はお忙しいところを有難うございました。今日のテーマは臨床検査と水という漠然とした題ですが,いろいろの実験の時に水というものはどの場合でも使われる可能性があります。臨床検査の場合,水はどういう役割をしているか,その目的に適つた水を得るにはどうしたらいいか,水を中心としたいろいろの問題を各方面から検討して頂きたい,というわけでございます。今日は特に東京都衛生研究所の長尾課長さんにお出頂いて,水質の点からいろいろのお話を伺いたいということ,それからもう一つは最近方々で使われているイオン交換樹脂を利用した純水というような方面からも,お話を伺いたいというわけでございます。それでは先ず最初に長尾先生から水質というような漢然としたことかもしれませんけれども,飮水でなく検査に使うというような角度で水質というようなことを何も知らない人々のために少しお話して頂きたいと思います。

『医学常識』

異型肺炎のはなし

著者: 鈴木秀郎

ページ範囲:P.559 - P.560

はじめに
 検査成績の判定をしてその意義を判断するのは検査室の專属医員の仕事であつて技術者の役目ではない。しかしながら技術者もその検査が何の為に行われ,その結果がどんな意味をもつているのかを知らずに検査を行つていたのでは仕事に面白味もないにちがいない。したがつて技術者といえどもいろいろな疾患についてある程度の知識をもつている必要がある。そこでこれから数回にわたつて検査の際よく見受けられる病気のことを簡単に記してみようと思う。

読者の頁

Thrombokinase "Geigy"を用いてのプロトロンビン時間1段測定法

著者: 藤巻道男 ,   山田茂

ページ範囲:P.563 - P.565

1.いとぐち
 血液の凝固は,第1段階で血小板の破壊にはじまつて血漿中にトロンボプラスチンが生成されると,それは血漿中のプロトロンビンをトロンビンに転化させる。このプロトロンビン→トロンビン転化が,第1図に示すように凝血第2段階であり,同時に或る種の凝固促進因子(即ち安定因子(第7因子),不安定因子(第5因子)),並びに凝固阻害因子がこれに関与するのである。この理論に基づいて影響の最も大きいトロンポプラスチン(組織)を充分に作用させて,血漿中のプロトロンビン濃度を測定するのが,プロトロビンの1段測定法である。現在最も用いられているのがQuick法,またはその変法である。
 凝血検査としてプロトロンビン時間1段法は,臨床方面にその必要性が認められ広範囲に施行されるようになつてきた。しかし従来はその試薬の調製,検査の手技等について難点もあるようであつた。試薬の調製は時間を要し,高価な家兎脳より作らなければならない。しかし現在は組織トロンボプラスチンを製品化して市販されているが,その一つとして簡易に操作のできるThrombokinase ‘Geigy’を用いてみたので,その手技と成績について述べる。

私の検査室

川口市民病院

著者: 石田行仁

ページ範囲:P.566 - P.567

 当中央検査科は昭和32年6月に始つた。約1年を経過したのみで,何も特別お伝えする事もない。未だ完成への途上にある。筆者自身は,当科を受けもたされた時,現在身にしみて感じる程,このシステムに対して,充分の理解をもち得なかつた。季節遅れの感はあるが,このシステムの普及発展を奨めたい為,1年間の感想と現況を書く事にした。1人の医師は確に万能ではあり得ない。医療内容の向上,充実,発展は,このシステムを除いては考えられない。病状の把握,診断,治療方針,推移,予後等は,極言すれば,手をコマヌイていて可能である。医師は自信を以て対象を処置出来るし,患者の内界に立入る余暇が生じる。亦社会的には所謂過剰診療等の弊も防げる等々,之は正に組織の力である。
 当院は人口15万弱の地方都市にある市立病院であるから,超一流の中央検査科とは違つた点が考えられる。要約は,パイオニアではないが,忠実なエピゴーネンとしての態度をくずさない事であり,各員の純然たる分業は不可能であり,エネルギツシユな活動が望まれる。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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