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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査20巻4号

1976年04月発行

雑誌目次

カラーグラフ

—細菌の塗抹・培養 Ⅰ—塗抹鏡検によって推定しやすい病原菌

著者: 小寺健一

ページ範囲:P.370 - P.371

 細菌感染症の診断は,いうまでもなく患者材料から,病原菌を分離同定しなければならない.基本的な条件として,材料の取り扱い,培地の選択,培養法のいずれかを誤ると病原菌の検出率は低下する.まず材料の採取に当たって,抗生物質を投与中の患者は重症者を除いて,できるだけ24時間薬剤の投与を中止した後採取する.使用培地は,選択分離培地および非選択分離培地の併用が望ましい,分離する菌により嫌気的,または炭酸ガス培養法を併用しなければならない場合もある.
 Streptococcus pneumoniaeは喀痰などより検出され,血液カンテン培地の上でα溶血の扁平集落を形成するが,同定にはオプトヒン感受性を行う.

技術解説

コイルプラネット遠心器による検査

著者: 柴田進 ,   山田治

ページ範囲:P.373 - P.382

コイルプラネット遠心器とは(図1)
 普通の遠心器は1本の芯棒を軸にしな,遠心沈殿管(偶数を対称に配置)をこの軸の周りに回転させて,沈降管に入れた液内の浮遊物を遠心力によって沈殿させる装置である.それは遠心器が大型であろうと小型であろうとすべて同じである.
 コイルプラネット遠心器(coil planet centri-fuge)はこれと違って遠心軸を2本もっている一風変わった遠心器である.その特徴をあげると次のとおりである(図1参照).

臨床化学分析の計量誤差—容量分析

著者: 松村義寛

ページ範囲:P.383 - P.388

 化学分析の誤差には取り除くことかてきるものと,どうしても取り除くことがてきないものとかある.取り除くことが可能な誤差はすべて取り除いて初めて上手な分析,りっぱな検査ということかてきよう.
 取り除くことのてきる誤差の原因として,次のようなものがあげられる.

細胞電気泳動法の応用

著者: 山田喬

ページ範囲:P.389 - P.394

 現在,細胞電気泳動法を臨床検査に応用している機関はほとんどないであろう.この方法が必ずしも正しく理解されていないことと,体液の生化学的検査が進歩したために,我々の身体を構成する細胞そのものの変化は形態学的に検索される以外にほとんど顧みられないというのが現状であろう.
 しかし各種疾患において細胞自身の変化の一部が分子レベルまで解明されたり,また,その反応の初段階の場が細胞表面にある抗原抗体反応,特にリンパ系細胞が主役を演ずる細胞結合性抗体の反応機構が明らかにされるに及び,にわかに細胞表面における分子レベルの変化を解明する必要が生じてきたといえる.

総説

薬物中毒と検査法

著者: 丹羽口徹吉

ページ範囲:P.395 - P.399

 薬物とは生体または生体組織に何らかの影響を与える物質を指すもので,このうら疾患の治療や健康を維持するために用いられる化学物質を医薬品と称し,生体の機能に障害を与えるものを毒物と称している.しかしながらこれら両者の区別は判然としたものでなく,医薬品であってもその量を過大に投与することにより毒物となり,一般的には有害作用の強い毒物とされているものも,量によっては安全な医薬品として用いることができる.このように医薬品と毒物との区別は本質的なものではなく,量的なものであるため,医薬品であっても種々の中毒作用が発現することがある.本稿では主として臨床検査の観点からその検査法に関する諸問題について述べてみたいと思う.

臨床検査の問題点・77

FDPの検査法

著者: 松田保 ,   高橋郁子

ページ範囲:P.400 - P.405

FDPとはフィブリンあるいはフィブリノゲンのdegradation productsの略で,"フィブリン(またはフィブリノゲン)分解産物"という意味てある.FDPが測れるようになったのは極めて新しいことであるが,DIC (血管内凝固症候群)が注目されている現在,FDPの検出は大変重要な検査の一つとなりつつある.

異常値・異常反応の出た時・40

CPK

著者: 三好和夫 ,   川井尚臣 ,   多田嘉明 ,   八木田正聖

ページ範囲:P.406 - P.411

 測定手技そのものは心得ている検査技師の人々のために,血清クレアチン・キナーゼ(CPK,あるいはCK)活性の異常値が出たとき──といってもそれはほとんどすべて正常より高値であるが──,技師としての考え方,すなわち病態像あるいは測定ミスの反省などについて述べるのが本文の目的である.
 各研究室や検査室で,技師の人々は,現在あるいくつかのCKの測定法の中で,恐らくある一つの方法を行っていることと思われるので,それら種々の方法についての測定ミスの起こりやすいところに簡単にふれ,次いでCKの活性の異常高値を来す場合の病態について主として述べる.

私のくふう

ボールペン軸を嘴管とする効果的な試験管の洗浄装置

著者: 菅沼源二

ページ範囲:P.411 - P.411

 臨床検査の(精度上の)成績を左右する大きな要因の一つに試験管の洗浄がある.
 最近の化学的洗剤は洗浄効果も高まったが,中には器具に付着したものが落ち難く,思わぬ検査値の汚染の原因になりかねない.また,自動洗浄器を用いる場合も,水などで血餅や反応液に対する予備洗浄を行わなければならない.

中検へ一言・中検から一言

中検運営の改善を,他

著者: 安部井徹

ページ範囲:P.412 - P.413

 私が臨床医になったころは,末梢血液,尿,便はもちろんのこと,血糖,尿糖定量,残余窒素なども,すべて自分で測定しなければならなかった.今日の中央検査室の発展を考えると,まさに隔世の感がある.単に病院内のことにとどまらず,医学検査を専業とする機関が外にあることも,開業医や集団検診にとってはなはだ便利であり,今日の高度な医療授給の一因になっている.したがって私は特に中検に対してこれ以上のことを望むことはないと考えているが,飽くことのない人間の欲望からいわせてもらえれば,今後の中検の発展として望みたいことはたくさんある.第一に検査データの迅速な処理が欲しい.病院が大きくなればなるほど,医療側がデータを入手するのには時間がかかる.緊急を要するものに対する処理は一応あって,限られた施設と人員によってできる限りの努力がなされていることはよく知っている.しかし通常の検査成績が,自動的に外来や病棟に通知されるまでに少し時間がかかり過ぎるのではないか.これは中検だけではなく,病院全体で改善に努力すべきことかもしれない.検査の能率化への発展は確かに目覚ましい.機械化されて少ない検体量で不必要な検査成績まで一緒に測定される.そのうちに"検査"に丸をつければ,全部のデータが短時間で私たちの手に届くのではないかと楽しみである.しかし私たちにとっては,必要なデータが必要なときに,必要な速さで手に入ることのほうが有り難いことである.

座談会

臨床検査室におけるStandardとReference

著者: 菅野剛史 ,   新谷和夫 ,   水岡慶二 ,   小林章 ,   冨田仁

ページ範囲:P.414 - P.423

精度,正確度を常に追求する臨床検査では,いわゆる,標準物質(standard material,reference material)と標準法(standardmethod,reference method)をないがしろにできない.しかし,概念的な"標準"であるだけに受けとめ方に混乱がある.そこで,現状ではどう理解され,またどう取り入れられているのだろうか…….

研究

R-PHA法によるHBs抗原検出のルーチン化についての検討

著者: 岩崎洋子 ,   兼子澄子 ,   金子スミ枝 ,   島尻枝美子 ,   堀況子 ,   藤田和子 ,   瀬戸幸子 ,   塚田理康

ページ範囲:P.424 - P.425

はじめに
 当院血清検査室では従来HBs抗原検出のルーチン検査として電気向流法(以下ES法),赤血球凝集阻止反応(以下HI法),免疫付着現象(以下IA法)の3法を並行して行い,特殊検査としてRIA法を用いてきたが,検査の簡略化のために手技が簡単で検出感度も高いといわれている逆受身赤血球凝集反応(以下R-PHA法)をHI法,IA法に代わってルーチン検査に取り入れるべく検討を行ってみた.

耳朶単極誘導における電極間距離とフィルターに関する研究—Ⅰ.徐波性脳波異常について

著者: 村山利安 ,   久下陽子 ,   吉井信夫

ページ範囲:P.426 - P.428

はじめに
 脳波検査の誘導法には単極誘導法と双極誘導法があるが,脳波の周波数,振幅測定には単極誘導法が基準となる.単極誘導法は,活性電極と不関電極間の電位差を求めるものであるから,不関電極の良否は脳波記録の良い悪いに直接に関係のある重要な問題である.不関電極として活性電極と同側の耳朶を用いる方法が最も広く普及している.他に活性電極と反対側耳朶を不関電極とした,交差耳朶不関電極法1),その他2〜5)があるが一般にはほとんど,または全く使用されていない.ここでは通常用いられている耳朶不関電極法と交差耳朶不関電極法を実際的な立場から比較検討した.

編集者への手紙

ベンチジンを用いない白血球ペルオキシダーゼ反応

著者: 秋山淑子 ,   伊東洋子 ,   大橋儀光 ,   坂東明美 ,   戸川敦 ,   山中學

ページ範囲:P.429 - P.429

Letter to Editor
 白血球ペルオキシダーゼ反応の基質として用いられたベンチジンは,最近発癌性物質としてその製造が禁止され,入手不能となりました.そこでその代用物の出現が望まれていましたが,3アミノ-9-エチルカルバゾールを用いる方法1)を改良したKaplow法2)による試薬が,今回武藤化学より提供されましたので,従来用いているCartwright法3)と比較検討し,両者間でその陽性出現率に高い相関が得られましたので,ご紹介します.

新しいキットの紹介

免疫拡散板による血清ビタミンA結合タンパク測定法の検討

著者: 宮谷勝明 ,   高畑譲二 ,   福井巌 ,   金田吉郎

ページ範囲:P.431 - P.433

緒言
 レチノールバインディングプロテイン(ビタミンA結合タンパク)は,金井ら1)によって初めて人血中から分離,精製された,ビタミンAの血中輸送に特異的に関与するタンパクである.Smithら2,3)によれば,肝炎の経過観察に有用であるだけでなく,肝硬変症,慢性活動性肝炎などの肝細胞障害時にも著明に低下するという.更には慢性カドミウム中毒,イタイイタイ病4,5)などについても注目されている.
 測定法としては放射性免疫測定法2,6),一元平板免疫拡散法7)などが用いられている.これらの測定法はそれぞれ特徴を有するが,最近,一元平板免疫拡散板であるMパルチゲン,ビタミンA結合タンパクがBehringwerkeによって開発された.著者らはこの拡散板を用いて行う場合の測定条件について吟味をするとともに,併せてこの拡散板を用いて健常成人(男子30例,女子30例計60例)の値をも測定したので,その成績を報告する.

新しい機器の紹介

Enzyme Analyzer MA-301の使用経験

著者: 小出朝男 ,   河合忠

ページ範囲:P.434 - P.437

はじめに
 従来,酵素活性の測定には初速度反応を利用したrateassayが最も良い方法と老えられてきたにもかかわらず,日常検査で余り応用されなかった原因の一つとして手ごろな分析装置がなかったことがあげられる.ところが,近年,rate assayを目的とした自動分析装置の開発が盛んになり,臨床検査の領域でもrate assayを導入することが可能となり,近い将来酵素分析法の主流をなすものと思われる.
 現在,我が国で使用されているrate assayが可能な自動分析装置だけでも十数種類以上に及ぶ.しかし,これらの装置を中小病院の日常検査に導入しても能率よく利用できるものは意外に少ないように思われる.すなわち,multi-typeの装置では規模が大きく経済的に難点があるうえ,準備時間が長く,また,single-typeの装置では1項目ごとに準備操作を繰り返し行わなければならないため省力化に直結し難いことなどである.

検査と主要疾患・40

DIC

著者: 松田保

ページ範囲:P.442 - P.443

 DIC (disseminated intravascular coagula-tion血管内凝固症候群)は,血管内に血栓が多発することにより,血小板,各種の凝血因子が消費されて低下し,このため血栓による臓器症状とともに出血性素因を来す症候群である.脱線維素症候群,消費性凝固障害などと呼ばれる症候群は,DICとは多少のニュアンスの違いはあっても,これとほぼ同一と考えてよい.このように,血栓の多発と出血傾向という一見相反した症状を呈する点がDICの特徴であり,最初は比較的珍しいものと考えられたが,最近,種々の疾患の末期にしばしばDICの発現がみられることが明らかとなりつつあり,各科領域の診療に当たって,今や,DICを無視することはできないといってよいと思われる.

検査機器のメカニズム・52

顕微分光光度計

著者: 澤村一郎

ページ範囲:P.444 - P.445

 細胞や組織を顕微鏡下で観察検鏡しているときに,その対象物が"何であるか"また"どれだけあるか"を知る必要はしばしば経験することである.この"何が"(定性分析),"どれだけ"(定量分析)あるかを顕微鏡下で調べるための装置が顕微分光光度計である.1936年,スウェーデンのCasperssonが装置を作り,紫外線を用い個々の細胞の核酸の定量を行ったのが最初である.以来,この装置による測定は,細胞レベルにおける定量法の最も重要なものの一つとして発展してきた.本稿では,顕微分光光度計の原理と構成について述べる.

検査室の用語事典

精度管理用語

著者: 井川幸雄

ページ範囲:P.447 - P.447

39)正常者平均値法;Average of Normals method
精度管理法の一つで,①その日の終わりに正常範囲に入っている患者の測定値の平均値を求める,②この正常者平均値を管理図にプロットしてゆく,ことの二つから精度管理を行う.患者検体の実測値は大部分正常範囲に入ることと,この平均値が極めて安定したものであることの二つを生物学的根拠としている.(→ホフマン法)

臨床検査のコンピューター用語

著者: 鈴木孝治 ,   春日誠次

ページ範囲:P.448 - P.448

36) Cycle Time (サイクルタイム)
 制御装置が記憶部より命令,またはデータの読み出し,または書き込みを要求してからその動作が終了するまでの時間をいう.したがって,このサイクルタイムが遅いと計算機の動作速度が遅くなるため,計算機の処理速度を規定する一つの目安として使われている.実際の処理速度は各演算命令が何サイクルで完了するかで決まるため,サイクルクイムのみで処理速度は規定できない.

臨床化学分析談話会より・32<東海支部>

血糖,尿沈渣,ALPなどを討議—昨年の例会活動から

著者: 高阪彰

ページ範囲:P.449 - P.449

 東海支部の活動も1975年12月で140回の例会を重ねたことになるが,今回は1975年4月以後の例会活動につき紹介したい.

Senior Course 生化学

—臨床化学検査における酵素化学—酵素による定性・定量分析 Ⅳ

著者: 山下辰久

ページ範囲:P.450 - P.451

1.L-アミノ酸の定量
 アミノ酸の定量法としてアミノ酸アナライザーのようなカラムクロマトグラフィーによる新しい方法が多く用いられているが,このような高価な器械を必要としないで,しかも一連の特殊アミノ酸の測定ができるような,簡単で,正確かつ迅速な微量分析法がなお必要である.これはアミノ酸脱炭酸酵素を用いることにより達成される.
 L-アミノ酸脱炭酸酵素(L-Aminoacid carboxy-lyase;EC 4.1.1.―)は細菌にとって"誘導酵素"であり,培地に主な炭素源としてあるL-アミノ酸を入れて培養すると,そのアミノ酸に特異的な脱炭酸酵素を得る.酵素の誘導は特異的で,このように培養した細菌の乾燥菌体(アセトン処理)は,そのL-アミノ酸だけを特異的に脱炭酸する酵素標品となる,一般に要求される特異性をもつ酵素標品を得るためには,まず正しい菌株を用いることが必要であり,しかも培養条件や乾燥操作なども厳密に守らなければならない.

血液

顆粒球と単球の機能

著者: 黒川一郎

ページ範囲:P.452 - P.453

顆粒球
 顆粒球は赤血球同様骨髄で作られるが,赤血球と違っで骨髄それ自体が顆粒球のプールになっている.顆粒球は,幹細胞がleucopoietin (仮称:LPO)の作用を受けて,骨髄内で分化・成熟を行い,次いで末梢血流に入る.この幹細胞に対してLPOとerythropoietinは競合的関係にあるといわれる.血流中の顆粒球はTBGP(total blood granulocytic pool)と呼ばれ,それはCGP (circulatory granulocytic pool)とMGP (margi-nated granulocytic pool)に区別される.CGPは流血中の顆粒球,MGPは血管壁に付着したものと,毛細血管から組織に移行する顆粒球を含み,この二つは完全に平衡状態にある.末梢血の白血球数はCGPの白血球数を表す.一般に骨髄プールの顆粒球数対TBGP比は約30:1,MGP対CGPは13:10くらいであるという.すなわちTBGPは骨髄プールの1/30くらいである.TBGPの成熟顆粒球は必要に応じて組織にでると,再び血中にもどらないが,骨髄内プールは細胞の迅速な充足に役立っている.
 好中球数の増減は骨髄・TBGPと対比しながら考えるのが便利である.

血清

—血清検査法の基礎—赤血球凝集反応 Ⅰ

著者: 浅川英男

ページ範囲:P.454 - P.455

 赤血球凝集反応は免疫血清反応の中では極めて重要で,その判定の容易さ,鋭敏さとあいまって,それを利用する検査法の範囲はまことに広い.しかし,寒冷凝集反応にしても,クームス試験にしても,また受身赤血球凝集反応でも正確なコンスタントな結果を得るにはやはり習熟が必要と思われる.

細菌

腸内細菌の分類 Ⅰ

著者: 坂崎利一 ,   田村和満

ページ範囲:P.456 - P.457

 19世紀以後の急速な医学の進歩とともに細菌分類学もめざましく進み,中でも腸内細菌の分類に実に多くの学者が様々な属や種を設け,この科の中をいろいろに分類してきた.今日,それらの分類の中でもっとも代表的な分類はBergey's Manual of Determinative Bacteriolo-gyによるもの,Kauffmannによるもの,Ewingによるものおよび国際腸内細菌小委員会によるものがある.しかし,KauffmannおよびEwingの分類には独善的なところが多いため,現状においては彼らの分類が正式なものと承認されることはありえない.また,国際腸内細菌小委員会(1963)による腸内細菌の分類は分類学にのっとったものではなく,ただ実用上のための分類にすぎない.たとえば,小委員会では属を設けないで,ただこれを群(group)としてまとめているが,群の名は単なる通俗分にすぎず,命名規約によったものではない.
 以上のような点で,現状においてどの分類に従うべきかを結論することはきわめてむずかしいが,混乱を防ぐという意味からBergey's Manual第8版による分類が適当であろうと思われる.それは,いまのところBer-gey's Manualによる分類が国際腸内細菌小委員会の意向を大きくとり入れた分類を記載しており,また国際的にももっとも権威のある細菌分類学の著書であることからである.

病理

—病理検査の技術と知識—染色 Ⅰ

著者: 橋本敬祐

ページ範囲:P.458 - P.459

ヘマトキシリン
 組織の染色用としてヘマトキシリンほど応用の広い色素はなく,Waldeyer (1863),Böhmer (1865)らがこれを組織学に導入してから既に100年以上も使われている勘定になる息の長い物質である.その理由としては,多種類の金属化合物と極めて多様な化合物を作るため非常に微細で多様な色調が得られること,しかもそれが多くは黒色調であるため,光学的に細胞構造の輪郭を顕微鏡写真において明瞭に表現できる利点がある.更に,細胞構造との結合が強固であるから他の色素と組み合わせた複合染色を行っても色が落ちないし,いわゆる永久標本として長期の保存に耐えうる.古くからヘマトキシリンとほぼ同し位置を占めていたのがカルミンであるがこのほうはわずかに黒味をおびた赤色のいわゆる臙脂(えんじ)色の核染用色素であり,文字通り臙脂虫という半翅目(カイガラムシ,カメムシのたぐい)に属し,メキシコ産のサボテンに寄生するCochinile虫の虫体を擦り潰して得られる天然産の色素であるが,核の赤染という意味ではアゾカルミンやケルンエヒトロートに代用されるようになったし,安定性と顕微鏡写真に適するという意味ではヘマトキシリンに席を譲ったということができよう.このように保存性の良い色素がいずれもメキシコ地方に産する昆虫と植物から作られたことは興味深い.

生理

—電気生理検査に必要な電気の基礎知識—フィルター回路 Ⅰ

著者: 石山陽事

ページ範囲:P.460 - P.461

 今,ある回路の入力にいろいろな周波数を含んだ信号を入れた場合,出力にはある特定の周波数のみの信号が出てきたとすると,この回路の中には特定の周波数だけを通過させる回路が存在することが想像できる.このように特定の周波数だけ通過させ,それ以外の周波数を抑える回路をフィルター回路という.
 フィルター回路はRとC,ときにはLの接続を組み合わせることによっていろいろな種類がある.

共通

臨床検査室における有害性薬品—障害性とその予防

著者: 橘敏也

ページ範囲:P.462 - P.463

 近ごろの検査室では,整備がゆき届いたおかげで,保温,換気,採光など環境衛生の面では著しい進歩,改善がもたらされた.しかし,職域保全の立場からながめてみると,その外観の華々しさとは裏腹に,随分と旧態依然たるものがあり,特に,環境汚染の点では,検査室を含め病院は著しく遅れている.これは,長い間,社会から隔絶され,自分だけで好きなようにやってきた病院というものの長い伝統的な閉鎖性の体質にも一因があると思われるが,ここ数年来社会に起こっている公害問題の勢いは,病院も決してその枠外においてはくれなくなった.いまや病院も広く社会の問題として,また自らの問題として真剣に取り組む必要を生じた.
 公害問題としては,病院の周辺に対する環境汚染の問題と,病院内における職域保全の問題とがあり,後者については,更に感染,薬物による危害が問題となる.これらはいずれも大きな内容を含む問題であろうが,ここでは特に薬物障害の問題について,対象を一般臨床室に限って少し論じてみよう.RI関係にはふれない.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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