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雑誌目次

論文

臨床検査21巻13号

1977年12月発行

雑誌目次

カラーグラフ

—JB-4・Methylmethacrylate・Divinylbenzene(JMD)包埋による—生検組織標本作製法

著者: 瀬野尾章 ,   渡辺斉 ,   土井優子

ページ範囲:P.1530 - P.1531

 生検材料の病理組織診断には,光顕の一般・特殊染色はもちろん,組織化学的,酵素組織化学的,免疫組織化学的,更には電顕的検索が不可欠となる場合が少なくない.しかしながらこのような多くの検索を同時に行うことは,材料の量的問題や各々の標本作製過程の違いなどにより困難な場合が多い.我々は,炭水化物を固定し,樹脂系包埋剤を用い,低温で重合させることにより,1回の生検でしかも1個のブロックから上述の多岐にわたる検索の可能な新しい標本作製法を開発したので,この方法により得られた標本の一部を供覧する.

技術解説

—JB-4・Methylmethacrylate・Divinylbenzene(JMD)包埋による—生検組織標本作製法

著者: 瀬野尾章 ,   渡辺斉 ,   土井優子

ページ範囲:P.1532 - P.1537

 生検技術の進歩に伴い,生検材料の組織標本作製,特にパラフィン包埋薄切標本の作製は,多くの病理検査室において日常業務となりつつある.しかし,各種疾患における臓器組織の機能形態的変化をより客観的に把握し,これら疾患の正確な診断を行うためには,通常のパラフィン包埋薄切標本による光学顕微鏡(光顕)的検索のみならず,組織化学,酵素組織化学,免疫組織化学,電子顕微鏡(電顕)などによる検索が不可欠となる場合が少なくない.
 さて実際に,量的に制限のある生検材料から,このような多岐にわたる検索を望む場合.それぞれの検索目的により固定,包埋を含む標本作製法も異なるため,常に材料の量的な問題が生じることになる.言い換えれば,1回の生検で上述の多目的的形態学的検索に必要なだけの材料を常に得られるとは限らず,また,頻回の材料採取は患者の病状や苦痛からみて決して望ましいこととは言いえない.つまり,生検材料のように資料に量的制限のある場合,1回の生検でしかも一ブロックを資として,先に述べた多目的的形態学的検索が同時に行えることが理想的である.

細菌の長期保存法

著者: 余明順

ページ範囲:P.1538 - P.1548

 細菌の形態,生理的性質,遺伝的性質を変えることなく長期間保存することは,細菌を用いた基礎的研究やその応用,あるいは病原微生物に関する研究を行うに当たってまず第一に留意しなければならない問題である.しかし一般に微生物はその世代時間が短く継代中に遺伝的な変異が起こりやすいので,なるべく長期間安定に保存できる方法を選ぶ必要がある.また細菌はその種類,性質により保存の容易なものから困難なものまで様々であり,それぞれに適した保存法を用いなければならない.長期保存の立場から従来用いられている継代培養保存法,軟カンテン法,流動パラフィン重層保存法などについては省略し,凍結及び乾燥法についてのみ以下に説明する.

聴力検査

著者: 渡辺勈 ,   阿瀬雄治

ページ範囲:P.1549 - P.1555

聴力検査とは
 聴力検査の目的は,正常な聴力の人と比べて被検者の聴力損失がどの程度にあるかをみることと,正常でないとなれば,その障害は聴覚経路のどの部位にあるかを診断することにある.この二つのことが判定できた時点で医学的な治療の方針が確立される.
 聴力検査は,音という物理的刺激を被検者に与えたときに,その音が聞こえたと被検者が判断し,その意志を検者に答えたことによる結果をもって検査成績が表示される.すなわち,音という刺激(Stimulus;S)を受けて,それに対する反応(Response;R)によって検査が成り立つ.このように生理的,心理的背景を持った検査であるゆえに応答ができない人,応答する意志のない人,聞こえても聴こえないふりをする人には検査が成り立たない.こうし(検査を受ける人の自覚をもって行う方法を自覚的検査法と言う.これに対して,乳幼児などのように応答ができない人に行う検査法は種々考案され,実用化されており,例えば音の刺激に対する大脳誘発電位記録をもって判定する方法などを他覚的検査法と言う.しかしながら,標準となるのはあくまでも自覚的検査法によって得られる成績である.

総説

レーザーの臨床検査への応用

著者: 西坂剛

ページ範囲:P.1557 - P.1564

 レーザー(LASER)とは,Light Amplification by Stimulated Emission of Radiationの頭文字から合成された言葉で,"輻射光の誘導放出による光の増幅"という意味である.レーザーの誕生は1917年アインシュタインの誘導放出に関する予言や,この予言に基づくマイクロ波の増幅,メーザー(MASER)に関する研究が基本となり,1953年に至りロシアのBasov,Prokhorov,アメリカのTownes,Gordon,Zeiger及びカナダのWeberが,メーザーと同様に誘導放出による光の増幅の考えを互いに独立して提唱したときに始まる.そして7年後の1960年,ヒューズ航空会社のMai-man1)は,最初のレーザー(ルビーレーザー)発振に成功した.翌年ベル社のJavan2)はHe-Neレーザー,翌々年にはSnitzerによるガラスレーザーと次々に新しいレーザーの発振に成功した.ルビーレーザーの発振成功と同時に,レーザーの応用に関する研究が始まり,1964年には第1回のシンポジウムがアメリカにおいて持たれた3).現在では,工学,化学,光学,原子物理,エレクトロニクスなどの基礎研究や工業加工,通信,公害計測,情報処理,医学あるいは芸術の分野へと,その応用は拡大している.

臨床検査の問題点・97

新しい妊娠反応—スライド法

著者: 髙木繁夫 ,   荒尾信子

ページ範囲:P.1566 - P.1570

 スライド法の特徴は,検査手技が簡単で短時間に反応が出ることであるが,試薬の性能を知らなかったり,尿検体の管理が悪いと陽性陰性の判定に大きな支障をもたらす(カットは,上が非凝集像(+),下が凝集像(−)).

検査と疾患—その動きと考え方・12

進行性筋ジストロフィー

著者: 谷淳吉

ページ範囲:P.1571 - P.1575

 患者9歳の男児.
 家族歴父系に近縁疾患なし.母系の血縁者については不詳.母に同胞なし.本人の兄(11歳)は筋ジストロフィー(デュシャンヌ型)と確定.弟(6歳)は精査はまだであるが,臨床的に同症の疑いが濃い.

Ex Laboratorio Clinico・12

筋PFK欠損症の発見とその後の研究

著者: 垂井清一郎

ページ範囲:P.1576 - P.1581

難しいのは,発見したものを己の血肉と化することだ
──テスト氏との一夜

座談会

Clinical Engineering

著者: 江部充 ,   河合忠 ,   木村亮太郎 ,   山中學

ページ範囲:P.1582 - P.1588

 Clinical EngineeringまたはClinical Engineer—日本では語彙自体まだ定着していないが,新しいなりに既に職種として認められているアメリカの現状と,日本でなかなか実現できずにいる問題点,ネックについて,関心の深い先生方に話し合っていただいた.併せて臨床検査技師との接点や仕事の分担はどうなるのかなどにも触れていただいた.

新しい神経・筋機能検査・6

脳波の二次元表示とその臨床的応用

著者: 松岡成明 ,   田村潔 ,   上野照剛

ページ範囲:P.1589 - P.1595

 診断検査の目的とするところは,患者に苦痛を与えず,短時間でその結果がだれにでも容易に理解できる方法があれば理想的である6)
 我々は脳波を中心に異常脳波を分析して,定量的,客観的に表現し,殊に器質的脳疾患の場合に脳障害の部位と異常脳波との関係を二次元的に表示できるならば,臨床的に,あるいは病的機構の解明に役立つであろうということで,異常脳波の抽出とその表示法を二次元的に開発した(computerized topographic display of EEG,以下CTDと略す).この方法は動的な脳波を静的に表現したもので,神経疾患の他の補助診断法,すなわち脳シンチ,脳血管写,CTスキャンなどと対比して,臨床的応用の一端を述べることとする.

検査技師に必要な統計学の知識・6

ノンパラメトリック統計学

著者: 臼井敏明

ページ範囲:P.1596 - P.1600

 いよいよ最終回である.統計学について急いで述べてきたので,記述の不十分な点が多かったと思うが,最小限の推定と検定法は応用ができるようになったことと思う.今回は最近注目されているノンパラメトリック統計学について触れて稿を終わりたい.

特別座談会

トランスアミナーゼ測定の標準化をめぐって—第4回臨床化学分析談話会夏季セミナーの話題から

著者: 北村元仕 ,   深谷順子 ,   小川善資 ,   加野象次郎

ページ範囲:P.1601 - P.1606

 トランスアミナーゼ測定はどの化学検査室でも数多く行われているだけに,測定上の問題点も多く,強く標準化の望まれる検査であろう.そこで,この夏の臨床化学分析談話会夏季セミナー(1977年8月,蓼科)のなかからワークショップ"トランスアミナーゼ測定はいかにあるべきか"にスポットを当て,参加者と企画者に,標準化への胎動を語っていただく.

学会印象記

第4回臨床化学分析談話会夏季セミナーに参加して

著者: 吉田陞

ページ範囲:P.1607 - P.1607

 第4回臨床化学分析談話会の夏季セミナーが1977年8月4日から6日までの3日間,130余名が参加して信州蓼科高原の慶応義塾大学立科山荘で開催された.連日うだるような真夏日が続く東京に比べ,日中でさえ冷気が漂う高原はまさに別天地であった.
 第一日目は"関連領域から学ぶ"ということで「微生物と酵素」—辻阪(大阪市立工業研究所),「ヒトの染色体地図」—石崎(京大),「凹面回折格子と多波長測光」—鵜沼(日立製作所)の3先生の講演を聴いた.

編集者への手紙

Staphylococcus aureus Cowan I株菌を用いたIgM・M成分のL鎖型(κ,λ)簡易同定法

著者: 若林郁子 ,   兼子澄子 ,   内藤成子 ,   千藤めぐみ ,   金子スミ枝 ,   伊瀬郁 ,   瀬戸幸子 ,   塚田理康 ,   松橋直

ページ範囲:P.1608 - P.1608

 当検査室では,免疫電気泳動法を用いて,M成分のL鎖型(κ,λ)の同定を行っています.同定の際にIgGの干渉によりIgM,IgAのM成分のL鎖型(κ,λ)の同定が困難でした.IgGと結合するProtein Aを持つStaphylococcus aureusは血清中のIgGを特異的に吸収することが知られています.IgMのM成分を有する血清を下記の方法でS.aureusを用いてIgGを吸収したところ非常に良い成績を得ましたので,その方法及び代表的成績を報告します.

新しいキットの紹介

二種の逆受身赤血球凝集反応によるHBs抗原検出法の比較検討

著者: 沢部孝昭 ,   中山昇 ,   大倉久直 ,   向島達

ページ範囲:P.1609 - P.1612

はじめに
 Hepatitis B Surface抗原1)(HBs抗原)の検出は,これらに起因すると考えられる各種疾患の診断などにおいて欠くべからざる検査になっている.現在,HBs抗原の検出法としてOuchterlony法2),対向免疫電気泳動法3)(IES),一元免疫拡散法2,4)(SRID),逆受身赤血球凝集反応5,6)(Reversed Passivehemagglutination;RPHA),ラジオイムノアッセイ7,8)(RIA)が行われており,特に後二者,すなわちRPHA,RIAが高感度なため,HBs抗原検索に用いられている.
 一般にRPHAの感度がRIAとほぼ匹敵することから,RIAの施設を有しない場合にはRPHAが用いられており,これにはAuscell9)と最近開発されたReve-rsecell10)の二者がある.

セロディアHBs法によるHBs抗原の検出率について

著者: 小松文夫 ,   吉川昭美 ,   矢野節子 ,   佐藤ヒロミ ,   須田真美子 ,   松田美枝子 ,   武内重五郎

ページ範囲:P.1613 - P.1615

はじめに
 Hepatitis-Bs抗原(HBs抗原)の検出法に関しては,これまでに種々の方法が開発されてきたが,検査の感度,手技の簡便さ,判定に要する時間,あるいは試薬そつ他の費用などの点で必ずしも一方法のみに依存することは難しい.感度の面に限ればラジオインムノアッセイ(RIA)法は現在最も高い感度を示すと言えよう1).しかしRIA法は手技が繁雑で判定に長時間を要し,更に最近ではラジオアイソトープの取り扱いに厳しい規制がからみ,ルーチン検査法としては不便な点が多い.かかる問題を考慮した方法として,近年,逆受身凝集反応(Reversed Passive Hemagglutination assay;R-P-HA)が開発され2),既にAbbott社からはAuscell法キットが発売され,一般の検査室で使用されつつある3).本邦では最近,国産としては初のR-PHA法であるニワトリ赤血球を用いたセロディアHBs法が開発された.今回我々はセロディアHBs法についてその感度を検討する機会を得たので,Auscell法及びRIA法と比較しながらセロディアHBsの有用性について報告したい.

Laboratory Instrumentation

細胞・粒子計数識別装置—CYTO-TALLY 900

著者: 宮前敏一

ページ範囲:P.1618 - P.1621

 最近,ビデオ,ITV,コンピューター技術が電子技術の急激な進歩に伴って,臨床検査部門に大きな変化をもたらそうとしている.従来の電子回路技術では,不可能と考えられていた分野にも徐々に浸透してきている.
 ここに紹介するCYTO-TALLY (サイトタリー)は以前より行われていた粒子カウンターを更に発展させて,細胞,粒子の大きさと色の濃淡により,計数,識別させようとする装置である.

検査室の用語事典

呼吸機能検査

著者: 田村昌士 ,   遠藤和彦

ページ範囲:P.1623 - P.1623

114) Total pulmonary resistance (RL);全肺抵抗
 口で測定した気流速度に対するtranspulmonary pressure (→116)として表される.したがってRLは気道抵抗と肺組織抵抗との和であり,慢性閉塞性肺疾患で増大する.肺組織抵抗の増大はRLには余り反映しないが,僧帽弁狭窄症などによる高度の肺うっ血などではRLが増大する.

免疫・血清学的検査

著者: 松橋直

ページ範囲:P.1624 - P.1624

167) Single radial immunodiffusion (SRID);単純放射状免疫拡散法
 抗体を含むカンテン平板にあけた小さな穴に抗原を入れると,抗原は放射状に拡散し,穴の周囲に沈降輪ができる.この面積が抗原の濃度と一定の比例関係があることを利用した疫免学的定量法の一種.

質疑応答

血液 血沈の標準法

著者: K子 ,   福武勝博 ,   三上俊衛 ,   須澤徹之 ,   長坂晋

ページ範囲:P.1625 - P.1628

 〔問〕血沈の国際標準法が設定されたと聞きましたが,それはどんなもので,従来の方法とどう違うのでしょうか.

免疫血清 免疫グロブリンクラスの決定

著者: W生 ,   臼井美津子 ,   松橋直

ページ範囲:P.1628 - P.1629

 〔問〕直接クームス試験陽性の場合,抗体の免疫グロブリンクラスと決めるのに免疫電気泳動用の市販特異抗血清(抗—γ,抗—δ,抗—μ,抗—λ,抗—κ,抗—β1C/A)を使って行ったところ全部に反応しました.どのように考えたらよいのでしょうか.

微生物 レンサ球菌の溶血毒産生能と溶血環形成能

著者: N子 ,   宮本泰

ページ範囲:P.1629 - P.1632

 〔問〕レンサ球菌の溶血毒産生能と溶血環形成能の関係をお教えください.

病理 ケルンエヒトロートを用いた場合の共染の防止

著者: S生 ,   河又国士

ページ範囲:P.1632 - P.1634

 〔問〕Weigert染色,ベルリン青染色などの後染色としてケルンエヒトロートを用いますが,染色前に濾過をしないと共染が強くなります.これはなぜなのでしょうか.

一般検査 尿定性試験紙の感度と試薬組成

著者: M子 ,   末廣雅也

ページ範囲:P.1634 - P.1635

 〔問〕尿定性試験紙の感度と試薬組成との関係をお教えください.

検査機器 超微量測定用機器

著者: W生 ,   山田正明

ページ範囲:P.1635 - P.1638

 〔問〕小児検査などで超微量測定をする場合,"超微量測定用"の機器として特に発売されているものがありましたら,種類,製品名また国内での販売店などを,お教えください.

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「臨床検査」 第21巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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