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雑誌目次

論文

臨床検査22巻12号

1978年11月発行

雑誌目次

カラーグラフ

筋の組織化学

著者: 田辺等

ページ範囲:P.1380 - P.1381

 臨床各科領域で広く診療の対象になっている神経筋疾患の病態診断上,筋生検はその習熟により安全確実に情報が得られる有力な補助検査の一つである.光顕組織化学的方法(化学物質・酵素などの半定量的局在の検索)の筋病変に関する臨床的応用は約20年の歴史を持ち,一般病理組織学的方法・電顕的方法とともに重要な役割を果たしている.患者診療への貢献のためには,病歴聴取・診察・他検査所見との比較検討による総合判断が大切である.

解説

著者: 田辺等

ページ範囲:P.1382 - P.1382

神経筋疾患について
 概念神経筋疾患(neuromuscular diseases)とは,運動単位(motor unit)すなわち"運動二次ニューロンとその支配筋"のどこかに主病態のある全身疾患の総称である,症候上多くは筋力低下・筋萎縮・深部反射減弱消失など共通点がみられるので,便宜上一括して取り扱われている.多くは遺伝変性疾患であるが,反応性・炎症性あるいは代謝性疾患も含まれる.

技術解説

心刺激伝導系検索の病理標本作製

著者: 齊藤脩 ,   佐久間由子 ,   鈴木節子 ,   砂田美津子

ページ範囲:P.1383 - P.1392

 臨床心電図学的所見と病理学的所見を対応せしめようとする諸家の努力は1950年代より重ねられて,ばくだいな時間と労力を費やしながらも,両者の照応は必ずしも容易ではない.
 臨床的にはECG-monitoring,His束心電図の登場発展があり,ますます精緻を極めている.一方,病理組織学的な刺激伝導系検索方法には見るべき進歩はない.1例の伝導系標本の製作に1人の技師が専念しても6週から2か月の長時日を要する(Lev et al.)ことはLev,Hudson,Jamesらの方法が発表された時代から何らの本質的改革はない.そのためルーチンの病理検査から外れた特殊専門領域とされている.

心音図検査

著者: 中村芳郎 ,   服部成彦

ページ範囲:P.1393 - P.1401

 心疾患の診断に聴診法は不可欠であり,古くより行われていたが,1894年にEinthovenが心音計を開発して以後,心臓の聴診法,診断技術はなお一層の発展を遂げた.心音図法(phonocardio-graphy)とは聴診所見を客観的に記録,図式表示したものである.現在では,心電図,心尖拍動図,頸動・静脈波などとの同時記録により,心音・心雑音と心動態とを結びつけ,心疾患の診断,重症度,手術法などの決定に広く応用され,心臓病学の基礎となっている.

生理機能検査と写真技術

著者: 石山陽事 ,   坂本省介

ページ範囲:P.1402 - P.1409

 生理機能検査で写真技術が必要なものは従来,ペン書きによる直記録が難しい心音図や筋電図のような高い周波数成分を持つ生体現象に限られていた.しかし医学の進歩に伴う種々の検査法の発達に伴って,心音図や筋電図にとどまることなく,心電図や脈波などの低い周波数を持つ現象や,超音波検査のようにブラウン管面の画像を記録するものなどにも用いられるようになった.
 生理機能検査における写真技術が一般の写真技術と異なる点は,時間の変化に伴う生体の電気現象または物理・機械的現象の変化を,ブラウン管面の輝点の動きや光点(スポット)の移動をフィルムまたはオシログラフペーパーに1枚撮りあるいは連続撮影する点である.

総説

検査室における化学物質の安全管理

著者: 白戸四郎

ページ範囲:P.1411 - P.1417

 化学物質の危険と言えば,かつては化学物質による直接的事故.例えば発火,引火,爆発,腐食,中毒などによる取扱者自身あるいはその周辺の障害を指すことが多かった.それらは概して高濃度の物質による化学反応であり,そのためいかなる物質も十分に希釈すれば安全という認識が広く定着してしまったようである.しかし希釈が問題を解決しないばかりかかえって途方もない困難に直結するということを知らしめたのは水俣病であった.薄まったとばかり思っていたものが生物によって濃縮されるという,予想もしなかったことが現実に起こったのである,一方,PCB汚染では難分解性,環境残留性の問題が大きくクローズアップされた.これらを契機として環境汚染が見直されてみると,更に新しい事実が発見され,すべての物質は廃棄しても我々と縁が切れるわけではなく,その物質が存在する限りその物質の性質は持続し,思わぬ所でその存在が証明されるという極めて当然のことが分かったのである.
 かくてにわかにすべての化学物質に対する見直しが世界的規模で始まった1)。我が国においては「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」が1973年に成立し,水質汚濁防止法や大気汚染防止法と関連しない物質についても,広くこれを環境との関係において調査研究することとなった.

臨床検査の問題点・108

測定法を変えるとき

著者: 北村元仕 ,   大場操児

ページ範囲:P.1418 - P.1423

測定法の変更は検査室のみならず,検査データを利用する臨床側にとっても重大な影響を与える.そこで最も肝心なのは正確度の検討であろう.なぜ変更するのかという考え方も合わせて,コレステロール測定を例に,変更の実際を話し合う(カット図は,血清コレステロールのο-フタルアルデヒド法と酵素法との相関)

検査と疾患—その動きと考え方・23

慢性関節リウマチ

著者: 鈴木星文 ,   塩川優一

ページ範囲:P.1424 - P.1433

 症例 Y.S.46歳,女性.
 主訴 発熱,るい痩.

Ex Laboratorio Clinico・23

アルカリホスファターゼ結合性IgGの発見

著者: 長嶺光隆

ページ範囲:P.1434 - P.1439

はじめに
 血清中で酵素が免疫グロブリンと複合体を形成する現象の認識は,1964年Wildingら1)によって見いだされたアミラーゼとγ-グロブリンとの結合が初めてである.その後,1967年Ganrot2)がLDHとIgAとの結合例を発表して以来,LDHアイソザイム分析の普及に伴ってLDH-免疫グロブリン結合例の検出は増加し,また一方では結合様式や免疫グロブリンの性状,更には疾患との関連についても検討されてきた.
 1975年,筆者3)はアルカリホスファターゼ(ALP)とIgGとの結合例を見いだしたが,その後今日まで7例が報告されて,ALPも免疫グロブリンと結合する酵素のグループに仲間入りしたわけである.ここではALP-IgG結合例との出会いから本態解明までのいきさつを紹介する.

座談会

穿刺細胞診の現況

著者: 坂井義太郎 ,   加藤治文 ,   ,   穂高千春 ,   国実久秋 ,   高橋正宜

ページ範囲:P.1440 - P.1447

 細胞診は,自然な脱落細胞を対象とした剥離細胞診として,癌の診断に重要な役割を果たしているが,一方積極的に乳腺,リンパ節,甲状腺,皮下の腫瘤などに細い針を穿刺して,目標とする細胞を採取する穿刺細胞診も大いに活用されている.

臨床化学分析談話会より・62<関東支部>

新しい精度管理の展開—患者の個別データを用いての試み

著者: 仁科甫啓

ページ範囲:P.1448 - P.1448

 第214回臨床化学分析談話会関東支部例会(1978.7.18)は東大薬学部記念講堂にて"個別データの精度管理の新しい展開"と題して,浜松医大 菅野剛史先生,鳥取大ステロイド研 臼井敏明先生(現 長崎大医学部教授),東大工学部 久米均先生に話題提供していただいた.
 菅野先生は現在もっぱら行われている分析法自体の精度管理,特にX-R管理法の功績について述べられるとともに,従来のX-R管理法では解決され難い幾つかの問題点を挙げられ,特に大型自動分析装置の非常な普及によって,従来とられてきた精度管理法と違ったやり方,非常に早いレスポンスの精度管理の採用,特にコンピューターを利用した管理法の展開の必要性を強調された.

新しい末梢脈管機能検査法・5

超音波による末梢血流測定

著者: 仁村泰治 ,   木下直和 ,   榊原博

ページ範囲:P.1449 - P.1454

I.はじめに
 末梢血管の血流状態を調べる方法として最近有望視されつつあるものに,里村,金子ら1〜3)により開発された超音波のドプラー効果を利用する血流測定法がある.この方法は生体に全く苦痛を与えず体外から経皮的に容易に施行できるところから,生理的状態での血流測定が可能でかつ反復して検査できる有利さがあり,今後は装置面での開発に伴い普及するものと思われる.

研究

Cellogel膜を用いたImmunofixation電気泳動法—Mタンパク同定への応用を中心として

著者: 堀井康司 ,   菅野剛史

ページ範囲:P.1455 - P.1458

 Alperら1)によって始められたImmunofixation電気泳動法(IFE)はタンパクを電気泳動後,直接抗体と反応させて検出同定する方法である.
 当初,IFEは主としてアガロースゲル,デンプンゲルを用い,各種タンパクの遺伝型決定に用いられてきた1,2).その後,この方法はRitchieら3,4)及びCawleyら5)により血清中,尿中,及び髄液中のMタンパク(単一クローン性グロブリン)のタイプ,クラスの同定にも応用され,特に近接した易動度を持つ複数のMタンパクの同定,IgM型Mタンパクの直接同定など,拡散を行った後に同定を行う免疫電気泳動法よりも優れていることが報告されている.

私のくふう

尿沈渣赤血球の新染色法

著者: 稲垣勇夫

ページ範囲:P.1459 - P.1459

 尿沈渣赤血球の染色法としてLa-rcom法があるが,製造及び使用を禁止されているベンチジンを用いるので,現在では実施することはできない.しかし,尿沈渣鏡検中に赤血球や血液円柱の確認が困難な場合が度々あるので,著者はο-トリジンを用いた染色法を考案し,常用しているので紹介する.

マイクロタイター用簡易ミニミキサー

著者: 安東泰行

ページ範囲:P.1460 - P.1460

 マイクロタイターを使用する検査法が普及するに従い,付属品であるミキサーなどが必要になる.既に何種類かの既製品が販売されているが,廃物利用で実用に耐えうるミニミキサーを自作したので紹介する.
 現在当検査室ではHBs検査などのマイクロタイター法に日常利用しており,反応パターンも明瞭である.

新しいキットの紹介

副甲状腺ホルモン(PTH)RIAキットの基礎的及び臨床的検討

著者: 中井利昭 ,   鈴木一夫 ,   山田律爾

ページ範囲:P.1461 - P.1463

はじめに
 原発性副甲状腺機能亢進症は,腎結石や骨病変をはっきり伴ったり,筋力低下などの神経学的徴候がみられる場合は,その診断もそれほど困難ではない.しかし原発性副甲状腺機能亢進症の中には,食欲不振,倦怠感など極めて漠然とした症状を示すにすぎない症例も少なくなく,また全く無症状の軽症例もみられる.このような例では血清カルシウムとともに,血中副甲状腺ホルモン(PTH)の測定が唯一の,また最も有用な検査法である.副甲状腺ホルモンのラジオイムノアッセイは従来いろいろな理由で非常に困難であった.今回は栄研ICLよりPTH-RIAキットを入手したので,この基礎的及び臨床的検討を行った.

レシチンとその反応を応用したCRP検出試薬の検討

著者: 河井明夫 ,   島村幸夫 ,   松田重三

ページ範囲:P.1465 - P.1468

はじめに
 C反応性タンパク(C-reactive protein,以下CRP)は,最近では健康者の血漿中にも微量に存在する正常血漿タンパク成分として認識されるようになっているが1〜3),炎症や組織崩壊性病変に伴って著増する,急性相反応性タンパクの一種でもある.このCRPの消長は疾患の経過,予後,治療効果などをよく反映しており,その臨床的意義は極めて高い4,5)
 従来,CRPスクリーニング法としては沈降反応を応用した毛細管法が広く用いられてきたが,この方法は判定までに長時間を要することが最大の欠点であった.このような欠点を補い,しかもベッドサイドテストとしての有用性を具備したCRP検出用試薬キット(CRPスライド—‘栄研’)が最近開発された.この試薬には,CRPとその抗血清との抗原抗体反応を応用した,従来のスライド法とは異なる原理が採用されている.すなわちCRPは,レシチンのコリンホスフェート残基と特異的な親和性を有することが明らかにされているが6,7),これとCRPとを反応させてCRPの有無を凝集反応によって検査する方法である8).今回我々は,この試薬キットを使用する機会を得,その有用性について若干の検討を行ったので報告する.

Laboratory Instrumentation

生体情報処理装置

著者: 西牟田啓

ページ範囲:P.1472 - P.1475

 医療の分野においてより良い健康管理,診断,治療のため多くの検査,研究を必要とし,大量のデータが生み出されている.生体情報処理の範囲を明確にすることは極めて困難であるが,1968年厚生省新医療技術研究の一環として行われた,"汎用医用電子計算機の性能およびサブルーチン,ライブラリ開発に関する調査結果集計報告"の処理対象別の参考分類によれば,①電気的現象(心電図,脳波,筋電図など),②音響,振動現象(心音図,心拍動図など),③循環器の圧力,流量(脈拍,血圧など),④呼吸器の圧力,流量(呼吸数,気圧曲線など),⑤その他の圧力,流量(消化器内圧,脳脊髄圧など),⑥温度(体表温度,器官温度など),⑦放射線関係(X線,キモグラフなど),⑧超音波計測データ像(Aスコープ,Bスコープなど),⑨その他の写真,光学像(血液の細胞成分,尿沈渣など),⑩その他の臨床検査(酸素飽和度,pHなど),⑪モデルまたはシミュレーション,に分類されている.
 生体情報処理装置で考慮しなければならないものは,生体特有の性質である.一般に生体から得られる現象の性質は,①一過性のものが多く再現性に乏しい,②生体内で各種の生体現象が混合し,目的とするデータだけを得ることが難しい,③生体は順応,記憶,予測するなどの性質があり,一定条件でのデータを得ることが難しい,④個体差が大きい,などを挙げることができる.

検査室の用語事典

心機能検査

著者: 椎名晋一

ページ範囲:P.1477 - P.1477

117) Trifascicular block;三束索性ブロック
房室伝導系は前放線と後放線の2本の枝から成る左脚と,1本の右脚を加えた3本の伝導路から成っている.したがってこの3本の枝が傷害された場合を三束索性ブロックと言い,他に右脚と左脚起始部が傷害された二束索性ブロック,His束穿通部の傷害された一束索性ブロックによっても完全房室ブロックを生ずる.

内分泌検査

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.1478 - P.1478

101) Stein-Leventhal syndrome;スタインレベンサール症候群
女性の両側卵巣が多嚢胞性で異常腫大を呈し,不妊(無排卵性)を来す.70%に多毛,40%に肥満を伴う.尿17-KS,血中アンドロゲンなど男性ホルモン過剰になるので,副腎性との鑑別が必要である.治療は卵巣楔状切除術や薬物(クロミッド)投与が有効.

質疑応答

臨床化学 GOTm測定の問題点

著者: Y生 ,   屋形稔 ,   松井朝子

ページ範囲:P.1479 - P.1481

 〔問〕GOTmは現在カラム法と免疫法と二つの分離の方法がありますが,分離されたGOTmの値が低い場合が多いため,特にカラム法は希釈率が高く測定に困難を感じています.初速度法で正確に測れるものでしょうか.測定する機器にも問題はないでしょうか.測定のための最良の機器及び試薬,またそれによるカラム法,免疫法の正常値(温度,単位などのはっきりした)が知りたいのですが…….また最も新しい文献があればお知らせください.

血液 血小板の大小

著者: T生 ,   磯部淳一

ページ範囲:P.1481 - P.1483

 〔問〕血小板を観察していると,時に大きいものやあるいは小さい形のものが出現しますが,これらはすべて異常として良いのでしょうか.あるいは正常ではどのくらいまで許容されるのか,お教えください.

免疫血清 ASOに使用する赤血球について

著者: K生 ,   水谷昭夫

ページ範囲:P.1483 - P.1485

 〔問〕普通ASOに使用する赤血球はウサギの血球のほかにヒトのO型赤血球が用いられますが,O型がないときは他の型を使用することは不可能でしょうか.私の実験ではO型でも他の型でも結果は同じに出るのですが,なぜO型のみ成書に書かれているのでしょうか.また血清を非働化するのに56℃30分間が薦められていますが,62℃3分間でも良いとされています.それでは58℃とか60℃とかで,15分間とか10分間とかでも良いのでしょうか.

臨床生理 脳波の"diffuseαpattern"について

著者: U生 ,   一条貞雄

ページ範囲:P.1485 - P.1487

 〔問〕脳波でdiffuseαという所見があります.記録上注意しなければならない点,及びこれの臨床的な意味について教えてください.

臨床生理 呼吸機能検査

著者: S生 ,   川根博司 ,   西田修実

ページ範囲:P.1487 - P.1490

 〔問〕フローボリウム検査におけるMEFR,PFR,MMFR,V75%,V50%,V25%,V10%,MTCなどアニマ社のパルモコーダーで測定しています.正常か異常かは今までのスパイロメトリーでは%VC 80%,FEV1.0%70%を基準として判定しています.フローボリウムが入ってきている現在,どういう基準で判定していくのか知りたいと思います.MEFR,PFRなどの値が悪くても%VC,FEV1.0%が正常に出ている例も多いのです.フローボリウムの判定基準などを教えてください.

診断学 sick sinus syndrome

著者: S生 ,   横須賀努 ,   上杉昌秀

ページ範囲:P.1490 - P.1492

 〔問〕sick sinus syndromeとはどのような症候群ですか,心電図の面から教えてください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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