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雑誌目次

論文

臨床検査22巻2号

1978年02月発行

雑誌目次

カラーグラフ

赤血球の形態異常と疾患

著者: 野村武夫

ページ範囲:P.122 - P.123

 末梢血液薄層塗抹普通染色標本を鏡検する場合に,いきなり白血球百分比を求めるのではなく,まず赤血球形態について十分な観察を行う習慣をつけておきたいものである.特有な赤血球形態から疾患診断への重要な手掛かりを得ることが決して少なくない.ここにはそのような例を幾つかあげてみることにした.いずれもWright染色を施した標本の視野を示しており,倍率は1,000倍に統一してある(図12のみは例外で400倍).

解説

著者: 野村武夫

ページ範囲:P.124 - P.124

 末梢血液塗抹標本を検査する際には,白血球の百分比をとることに終始してはならない.赤血球と血小板の形態についても観察を怠らぬように注意し,更に白血球と血小板の増減に概略の見当をつけることが大切である.入念に観察すると,1枚の塗抹標本から非常に多くの情報を入手できる.ここでは赤血球の形態異常に注目し,それぞれどのような疾患を考えればよいか,解説を加えてみる.
 大小不同症はすべての貧血で出現しうる.図1では濃染する大赤血球が混在するため大小不同が目立っている.この視野では認められないが,大小不同症には多少なりとも変形赤血球症(poikilocytosis)を伴うことが多い.図2も大小不同症が著明であるが,ここでは小型で著しく濃染する赤血球が多数存在するところが図1と異なる.図2には多染性(polychromasia)も見られ,網赤血球増多症があると推測できる.小球状赤血球は自己免疫性溶血性貧血て溶血が強い場合などにも出現する.

技術解説

赤血球抵抗試験

著者: 山本きよみ ,   三輪史朗 ,   米原ヤス子

ページ範囲:P.125 - P.133

 赤血球は120日間生存するが,生存日数が120日間より短いときは赤血球寿命短縮と呼ばれ,溶血の亢進がその原因とされている.この溶血亢進の原因には種々あるが,赤血球自体に原因を求められる場合と血漿成分中に原因が発見される場合とがある.ここでは前者について述べてみると,赤血球自体の病変による溶血亢進は先天性と後天性とに分けられるが,先天性溶血性貧血には,赤血球膜の異常で起こる遺伝性球状赤血球症や異常血色素症,赤血球内酵素異常症などがあげられる.それぞれには特異的検査法,すなわち遺伝性球状赤血球症では赤血球抵抗試験,異常血色素症でも特に溶血を起こす不安定血色素症はヘモグロビン熱変性試験,赤血球内酵素異常は赤血球内の酵素を定性定量的に測定してその成績から病気の診断を行うが,ここでは赤血球抵抗試験の検査方法1〜4)のみを取り上げる.
 そもそも赤血球は,低張食塩溶液中ではディスク状の形態であったものが,赤血球内部への水分の侵入によりしだいに球状に変化していき,やがて赤血球自体は破壊し内容物が外部へ出てゆく.遺伝性球状赤血球症においては,最初から赤血球自身が球状であるために食塩(以下NaCl)濃度溶液の系列において,正常の場合より高張のところでも溶血を生じ,これを最小抵抗が低下していると言う.

エリスロポエチンの測定

著者: 千葉省三

ページ範囲:P.134 - P.140

エリスロポエチンと赤血球の生成
 血液細胞はその回転が早く,絶えず破壊と新生を繰り返しながら,しかも個体においてその数は一定に保たれ,特に赤血球は最もコンスタントな値を示すものとして知られている.正常人の赤血球寿命は平均120日と推定されているので,現在流血中にある赤血球の1/120が日々寿命を全うすると計算されるが,仮に正常人について,赤血球数500×104/mm3,血液量65ml/kg (正常値65.7±1.6ml/kg),体重50kg,を仮定すると,
 500×104×103×65×50/120÷1.35×1011となり,実に1日1千億個以上の赤血球が寿命を全うし,脾臓などで破壊,消滅されると計算されるが,それに相当する赤血球量が新しく造血組織で生成されることによって,末梢赤血球数の恒常性が維持されるわけである.更に,急性失血や溶血発作など赤血球に対する需要が急激に増大した場合には,骨髄の生成機能は正常の6〜8倍にも達することから,赤血球の恒常性を維持する生体のHomeostasis機構が,間断なくしかも迅速に作動していることが伺われる.

肺内ガス分布検査

著者: 佐々木孝夫

ページ範囲:P.141 - P.147

 ラジオアイソトープによる肺の地理学的分布の検査を除けば,肺内ガス分布の検査は呼気ガスを分析するもので,その基本的実施手順は今日でも変わっていない.変わってきているのは,ガス測定器の発達とその応用により,例えば,質量分析計の応用により数種のガスを同時にしかも連続的に測定でき,ガス分布に及ぼす生理的影響因子がいっそう明らかとなってきた点と,コンピューターの応用によりデータの分析解析法が複雑となっている点であろう.
 本稿では,初めに肺内ガス分布の基本的概念とガス分布検査法一般について解説し,後半はこれから肺内ガス分布の検査を始めるのに参考となるように,具体的に最も基本となる単一呼吸法と連続呼吸法の代表的なものを解説する.なお,紙面の都合上,ラジオアイソトープによる検査は割愛した.

総説

造血と微量元素

著者: 三木昌宏 ,   内野治人

ページ範囲:P.149 - P.155

 微量元素の多くは,その作用や機能が解明されない点が多かったが,最近になって種々の分析方法の進歩とともに,栄養学上や臨床医学の立場より,微量元素と疾病の関連が明らかにされつつある1〜3).また産業衛生や環境問題としての微量元素が注目を集めており,この方面での新しい分野が開かれようとしている.
 現在までに必須微量元素として知られているものでは,鉄,ヨード,銅,亜鉛,マンガン,コバルト,モリブデン,セレン,クロム,スズなどがあり,必要なものと考えられるものでは,上記のものに加えてニッケル,フッ素,臭素,砒素,バナジウム,カドミウム,バリウム,ストロンチウムなどがあげられる2)

臨床検査の問題点・99

血沈の国際標準法

著者: 福武勝博 ,   安室洋子

ページ範囲:P.156 - P.162

 最も古くからあり,最もポピュラーな検査の一つに赤血球沈降速度(赤沈)の測定がある.その赤沈の国際標準法が1973年に設定された.Wes-tergren法を軸にしたこの標準法と従来法とを比較しながら,この"ありふれた検査"を再検討してみる(カットは赤沈の自動読み取り装置).

検査と疾患—その動きと考え方・14

骨髄線維症

著者: 山口潜 ,   松谷章司

ページ範囲:P.163 - P.169

 患者 Z.K.大正8年生まれ,52歳,家婦.
 主訴 全身倦怠感.

Ex Laboratorio Clinico・14

赤血球酵素異常ピルビン酸キナーゼ欠乏症の発見

著者: 三輪史朗

ページ範囲:P.170 - P.175

入局当時の血液学の流れ
 私は昭和26年に東大医学部を卒業し,沖中重雄先生の内科学教室に入局した.研究の方向としては血液学を選んだ.形態学に興味を持ったからである.当時沖中内科で血液学の指導者として現自治医科大学学長中尾喜久先生と現徳島大学教授三好和夫先生がおられた.私は主として三好先生のご指導の下に,骨髄穿刺液より得た材料から組織切片標本を作成して経時的に観察し,骨髄塗抹標本と剖検時の組織標本の対比の接点を求めるという研究を行い,昭和33年学位を取得することができた.当時の我が国の血液学は形態学が主流であったが,そろそろ転換期にさしかかっていた時期だったと言えよう.中尾先生の下では放射性鉄を用いた鉄代謝の研究が行われ,私も患者さんについてフェロキネティクスのお手伝いをする機会があったし,一方三好先生の下ではチゼリウスの電気泳動装置を用いて血漿タンパク異常について,我が国ではパイオニアとして新しい知見が出されつつあった.

座談会

白血球自動分類装置

著者: 新谷和夫 ,   八田享二 ,   只野寿太郎 ,   寺田秀夫

ページ範囲:P.176 - P.183

 最近の臨床血液検査における画期的なことは白血球自動分類装置の登場であろう.これを原理的に分けると,細胞化学的な処理によるものと画像認識によるものとの二つに大別されるが,後者は我が国でも使われ始めているし,国産化も進んでいる.今月はこの装置の使用経験者にその特徴,使い方,問類点を語っていただく.

新しい超音波検査法・2

肝・胆道系

著者: 加藤栄一 ,   鈴木彰

ページ範囲:P.184 - P.190

 近年,超音波の臨床医学への応用は目覚ましい発展をみており,臨床各科の診断に広く用いられている.なかんずく,腹部疾患,特に肝・胆道系疾患に対する応用は,その代表的なものと言えよう.
 胆石症を超音波によって診断しようとする試みは,Ludwig1)による摘出胆石の音響学的特徴の測定に始まり,本邦,和賀井ら2)によって,世界に先駆けて臨床応用がなされた.超音波診断法は,超音波が生体軟部組織の分析能力に優れているという特徴を生かしたものであるが,肝・胆道系疾患における本診断法に限って,その長所を列記すると以下のごとくである.

研究

HBs抗原の検出におけるR-PHA法の検討

著者: 升田隆雄 ,   五十川豊治 ,   三原和栄 ,   久野晋也 ,   玉村和規

ページ範囲:P.191 - P.193

はじめに
 HBs抗原の検出には多くの方法が行われているが,一般病院の臨床検査室で日常検査として行ううえには何を用いるべきであろうか.感度,特異性の問題のみならず,判定の迅速性,あるいは手技の難易の問題も考慮すると,現在ではR-PHA法1〜4)が最も適していると考えられる.現在本邦ではR-PHAのキットとしてAuscell(ダイナボット社),SERODIA-HBs (富士臓器製薬),Reversecell (山之内製薬)の三者が発売されており,今回これらをSRID法(エーザイプレート)及びRIA法(AUSRIA II−125)と比較検討する機会を得たので報告する.

編集者への手紙

膠質反応が3か月後突然異常高値に

著者: 富岡和実

ページ範囲:P.194 - P.195

 ある日開業医より,
"過去3年間にわたって3か月ごとに検診を行っていた健康な人のデータが今回,突然膠質反応及びγグロブリンが異常高値となったのですぐ再検してほしい.3か月前のZTTが9で今回は34である"

臨床化学分析談話会より・53<関東支部>

実用化への模索—電気化学計測の臨床化学分析への応用

著者: 溝口香代子

ページ範囲:P.196 - P.196

 第206回例会(1977.10.18)は定例会場にて開催され,"電気化学計測の臨床化学分析への応用"というテーマで,昭和大医学部臨床病理 五味邦英先生と東工大資源科学研究所 鈴木周一先生による話題提供が行われた.
 五味先生は,イオン選択電極を用いたNa, K, Clの測定について原理,機械の特性及び実際面での問題点を使用経験に基づいてまとめられた.イオン電極を用いた分析機としてはテクニコン社のStat Ion及びオリオン社のSpace-Stat−30を例にとられた.

新しいキットの紹介

ヒト胎盤由来の活性化部分トロンボプラスチン時間測定試薬の検討

著者: 相馬正幸 ,   岡村憲昭 ,   中嶋豊子 ,   水田亘

ページ範囲:P.197 - P.200

はじめに
 血液凝固検査の中で活性化部分トロンボプラスチン時間(以下APTTとする)測定は,特異性が優れているため内因系凝固機序異常の検索のスクリーニング検査として,全血凝固時間測定,Ca再加凝固時間測定,部分トロンボプラスチン時間測定に代わり実施されることが多くなってきている.また,それに使用される血小板因子代用物質としては動物由来・ヒト由来のものなどが開発され,接触因子活性化物質も不溶性のカオリンをはじめエラジン酸の誘導体など各種のもの1)が用いられている.
 我々はこのたび,ヒト胎盤由来の血小板因子製剤を用い,カオリンにより接触活性を促して測定を行うAPTT測定試薬・パトロンチン(ヘキスト社製)について若干の検討を行ったので報告する.

原血清を用いるRAラテックス試薬の検討

著者: 岩田進 ,   阿久津ひろ子 ,   土屋俊夫

ページ範囲:P.201 - P.204

はじめに
 Singer1)らが,ヒトIgG吸着ラテックスがリウマチ因子と反応することを利用して開発したラテックス凝集反応は,術式も簡単であり,短時間で判定できることから広く普及しているが,試薬自体に関する問題や実際の使用上の注意点などがこれまでに指摘されてきた2,3).しかし,慢性関節リウマチの発症とリウマチ因子の役割が完全に解明されていない現在,試薬の特異性と鋭敏性の問題が依然残されている.
 検査室では,判定しやすく,再現性及び安定性の優れた試薬が要求されている.現在市販されているRAラテックス凝集反応用試薬はすべて被検血清を希釈することを必要としているが,今回血清希釈を行わないで,原血清のままで反応させるダイレクト型のRAラテックス凝集反応用試薬が開発され,使用する機会を得たので,特にその試薬の安定性について検討を行った.

Laboratory Instrumentation

呼吸器用質量分析計

著者: 西田修実

ページ範囲:P.206 - P.209

 呼吸器用質量分析計の出現により,He, Ne, C2H2,N2,O2,Ar, CO2,N2O, SF6などいろいろのガスの分圧変化は瞬時連続分析されうるようになった.本稿ではこの呼吸器用質量分析計について簡単に解説したいと思う.

検査室の用語事典

心機能検査

著者: 椎名晋一

ページ範囲:P.211 - P.211

11) Ballistocardiography (バリストカルジオグラフィー);心弾動図法
 心拍動により生ずる身体の動揺を時間の経過とともにグラフにして記録する方法である.心拍出量の測定に用いられたときもあるが,不正確なことが分かり絶対値の測定法としては利用されなくなったが,時間的変化,相対的変化を見るのに用いられることもある.

内分泌検査

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.212 - P.212

11) Androsterone (アンドロステロン)
 Androgenの一つで,代謝されetiocholanolone, dehydroepiandrosteroneとともに尿中17—KSとして測定される.男性ホルモン作用はテストステロンを100とすると10である.尿中では大部分がグルクロニドとして見いだされるが,血漿中濃度はアンドロステロン0.3,グルクロニド2.0,硫酸塩40μg/100ml.

質疑応答

臨床化学 血中アンモニア測定

著者: A子 ,   内田敬嗣

ページ範囲:P.213 - P.214

 〔問〕血中アンモニア測定時の採血と検体の取り扱い方,精度管理の方法,良い測定術式をお教えください.

臨床化学 尿タンパク定量の標準液

著者: K生 ,   斎藤正行

ページ範囲:P.214 - P.216

 〔問〕尿タンパク定量のための標準液は何を使ったらよいでしょうか.

血液 LE細胞現象について

著者: 緒方俊郎 ,   東條毅

ページ範囲:P.216 - P.218

 〔問〕LE細胞現象で,LE細胞形成に必要なものはLE因子,補体,細胞核,好中球(単球)だと言われていますが,LE細胞陽性に出るためにはLE因子(ANFのtiter),また補体の量はどれくらい必要なものでしょうか.またLE細胞検出の方法として凝固法(Zimmer-Hargraves法),ヘパリン加法(Mathis法),Snapper法がありますが,凝固法を100%とすると,他の方法は陽性率何パーセントぐらいなものでしょうか.

血液 CLUE testとは

著者: N生 ,   小河原はつ江 ,   小林紀夫

ページ範囲:P.218 - P.219

 〔問〕凝固線溶のスクリーニングテストとしてCLUE testとはどういうものですか.その臨床検査としての有用性と,従来法とどこまで置き換えることができるものでしょうか,お教えください.

免疫血清 ロケット免疫電気泳動法による定量のコツ

著者: T生 ,   河合式子

ページ範囲:P.220 - P.221

 〔問〕ロケット免疫電気泳動法でしばしば抗原孔の周囲に沈降リングができることがあります.これは定量値に影響がないものでしょうか.また,それを防ぐにはどうしたらよいのでしょうか,お教えください.

微生物 標準抗毒素・毒素の入手法

著者: T生 ,   村田良介

ページ範囲:P.221 - P.222

 〔問〕細菌性毒素・抗毒素の同定に必要な標準毒素・抗毒素の入手方法をお教えください.

臨床生理 網膜電図の標準法

著者: S子 ,   米村大蔵 ,   河崎一夫

ページ範囲:P.222 - P.224

 〔問〕網膜電図electroretinogram (ERG)を日常検査として取り入れたいのですが,標準とすべき方法をお教えください.

検査機器 血液凝固自動測定機器の選択

著者: M生 ,   鈴木弘文

ページ範囲:P.224 - P.226

 〔問〕プロトロンビン時間やPTTの測定に,用手法でのバラツキが気になります.自動化によって精度を高めたいと思いますが,現在我が国で入手可能な機種にはどんなものがありますか.また,どれが良いかお教えください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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