icon fsr

雑誌目次

論文

臨床検査22巻4号

1978年04月発行

雑誌目次

カラーグラフ

白癬 Ⅰ

著者: 赤木正志

ページ範囲:P.354 - P.355

 白癬という病名が最も似つかわしい病型は頭部白癬であろう.しかしこの病型が,白癬症全体に占める割合は微々たるものである.頭部白癬はいわゆる深在性白癬として分類され,治療を誤まれば永久的瘢痕を残すことがあるので臨床的には特殊な重要性を持っている.最近,小胞子菌による頭部白癬の流行が目立つようであるが,頻度の少ない病型はそれだけ余計に見逃される危険性が高い.検査室でも油断なく対処することが必要である.

解説

著者: 赤木正志

ページ範囲:P.356 - P.356

 白癬の原因菌は単一なものではなく,白癬菌(Trich-ophyton),表皮菌(Epidermophyton),小胞子菌(Microspor-um)の3菌属に分類される.菌の性状や臨床像には互いに共通する類似性があるために,その症候は白癬・黄癬などと総称される.この菌群の侵襲する組織は皮膚及びその付属器に限られ,内臓まで侵襲することは余程の例外(例えば脳)であるから,それらは一括して皮膚糸状菌(dermatophytes)と言われる.
 一般に白癬は浅在性白癬と深在性白癬に大別される.手足の汗疱状白癬や体部白癬や頑癬は前者であり,頭部白癬(特にケルスス禿瘡),白癬性毛瘡,白癬性肉芽腫などは真皮層にも変化が及ぶため深在性白癬として分類される.しかし浅・深の別には多少あいまいな面があり,深在性病型と言えども菌体が真皮層内に認められるとは言えず,むしろこれは反応性病型と言うべきであると言われる.また治療の難易からみても深在性病型は,浅在性と言われる足や爪の白癬より難治であるとは言い難い.

技術解説

組織培養法

著者: 鈴木利光

ページ範囲:P.357 - P.364

 組織培養の歴史は約70年前のHarrison (1907)までさかのぼるとされているが,それ以前にもW.Rouxによって鶏胎の神経管の培養がなされており,散発的な試みが蓄積されていたことがうかがわれる.以来,現在までに培養上の基本的な問題点はほぼ解決され,だれでも手軽に試験管内で細胞を生かし続けられるようになった.ここでは組織培養のうちに特にヒトの癌細胞の培養方法について述べる.

アフィニティー電気泳動法

著者: 井上勤

ページ範囲:P.365 - P.372

 多くの生化学的,臨床化学的研究は,生命現象が,高度にシステム化された化学反応系によって維持制御されているという基本的な認識に立って行われている.化学反応はFisherのLock and Key Model (錠と鍵との関係)に端的に表現されているように,A, B2物質間の結合と解離反応に基づいている.このA, B1対の物質群が結合したり,解離したりすることができるためには,A, B相互に結合できる機構が備わっていなければならない.

胎児の生理学的モニタリング—胎児心拍数図を主として

著者: 前田一雄

ページ範囲:P.373 - P.379

 妊娠中における胎児の環境として母体子宮の内部は医学の領域でも最後の聖域の一つであって,その状態をうかがい知るのは容易でないが,最近10数年間の胎児学の進歩によって,羊水診断や母体血中尿中ホルモン,酵素による胎児診断法とともに,生理学的情報による胎児モニタリング(胎児監視,fetal monitoring)が可能になり,分娩時における胎児仮死診断法などが新しく開発されるに至った.そのなかでも分娩監視装置による胎児心拍数図診断や超音波ドプラ装置による胎児心拍検出は既に広く普及しており,最近では高速電子走査超音波診断装置も用いられるに至った.胎児心電図・心音図も古くから応用され,超音波ドプラ胎児心臓弁膜信号解析や胎児UCGも報告されている.

総説

生化学的肺機能検査—その背景,現状と展望

著者: 北村諭

ページ範囲:P.381 - P.387

 肺機能と言えば,従来はガス交換と関連した肺の働きを意味していたが,今日では,それだけでは不十分である.肺にはガス交換のほかにも,血液中の異物を濾過するフィルター作用,血液貯留所としての作用,水と電解質バランスの維持,揮発性物質の除去,細菌をはじめとする経気道的異物に対する除去及び防御,凝血塊などのフィブリン溶解作用がある1).更に肺ではタンパク質,炭水化物,脂質,結合組織,血管作動性物質などの代謝が活発に行われている.
 このような各種の肺機能のなかで,近年ますますその重要性を増しているのは,肺の各組織を構成している各種細胞中で進行する生化学的過程と関連した"生化学的肺機能"である.肺には40種類以上の異なった細胞があり,このことはまた,肺内で進行している生化学的過程の多様性を如実に物語っているものと言えよう.

臨床検査の問題点・101

心電図検査とエマージェンシー

著者: 本田正節 ,   斎藤嘉鶴

ページ範囲:P.388 - P.394

 運動負荷試験や電撃による事故は心電図検査に携わる技師にとって,常に起こりうる緊急事態(エマージェンシー)として心掛ける必要がある.被検者が発作や心不全を起こしたら現在ではどう対処したらよいのか,またそれを未然に防ぐには……(カット上は期外収縮によるR on T現象).

検査と疾患—その動きと考え方・16

慢性気管支炎

著者: 原澤道美

ページ範囲:P.395 - P.402

 症例 N.S.35歳,男,地方公務員.
 主訴 咳,痰,息切れ,早朝の呼吸困難.

Ex Laboratorio Clinico・16

甲状腺ホルモンによる甲状腺機能のshort feedback

著者: 紫芝良昌

ページ範囲:P.403 - P.408

はじめに
 我々は1975年ボストンにおける国際甲状腺学会において,甲状腺ホルモンによる甲状腺機能の"ショート・フィードバック"系の存在を報告した.一見,臨床検査には全く無関係な主題にみえるのだが,実は我々が甲状腺機能亢進症の患者の血清について行ってきたLATSの生物学的検定の副産物なのであって,この研究に関するいきさつを述べることも,検査における異常現象をいかに把握して発展させたかという本誌のこの欄のテーマに無関係ではないであろう.

臨床化学分析談話会より・55<関東支部>

標準化の強力な推進を—トランスアミナーゼの測定はいかにあるべきか・2

著者: 仁科甫啓

ページ範囲:P.409 - P.409

 第208回臨床化学分析談話会関東支部例会は年の瀬も迫った12月21日に東大薬学部記念講堂にて開催された.
 今回は"トランスアミナーゼの測定法はいかにあるべきか,その2"と題して,三井記念病院中検の中甫氏,虎の門病院臨床化学の桑克彦氏,東大中検の亀井幸子氏と慶応大中検の松本宏治郎氏の4先生に,本会主催の夏季セミナーで発表された宿題報告の内容を主として,その後の研究も加えて話題提供していただいた.前回の総論的な内容とやや異なり,今回は各論的な内容を主として,詳細な測定条件の検討について基礎的な面,臨床的な面から統合討論がなされた.

座談会

脳波の展望

著者: 佐藤謙助 ,   平賀旗夫 ,   松岡成明 ,   江部充

ページ範囲:P.410 - P.417

 最近の脳の臨床診断における最大の話題はCTスキャンの出現であろう.また誘発電位の研究も大きく進歩している.これらが臨床脳波にどう変化をもたらすか.国の内外の脳波学会に出席した直後の専門家にお集まりいただき,臨床脳波の展望を語っていただく(1977年10月仙台にて).

新しい超音波検査法・4

眼科

著者: 山本由記雄

ページ範囲:P.418 - P.426

 超音波による眼科診断は確実に基本診断の位置を占めたことは認めても,画像の様相,画像の読みに一貫性がなく,したがって診断に不確定要素が介在することになり,"あいまい性"が伴う歯切れの悪い診断に終始することが多々あった.
 しかしE側のたゆまざる努力による機器の改良により,M側の診断の確実性が増加してきたことは吾人が認めるところであろう.ただし,相次ぐ機器の改良のため,M側における選択難,購入難,操作難などに悩まされているのも事実である.

研究

非特異性esterase染色の検討第1報—成熟及び病的細胞における重複染色

著者: 丹羽欣正 ,   山本公麿 ,   喜多悦子 ,   梅垣健三

ページ範囲:P.427 - P.431

 細胞の鑑別法の一つとして組織あるいは細胞化学的証明法は,alkaline phosphataseが組織化学的に証明されて以来,血球内加水分解酵素証明法としてphosphataseにおいて著しい発展がみられた.同じesterase系で,非特異性esterase反応には金属塩法1),indoxyl法2)及びアゾ色素法3)が用いられてきた.しかし組織材料で証明しえても,血液塗抹標本においては応用しえない方法もあり,血液塗抹標本にはアゾ色素法のみが用いられている.基質としてはα-naphthyl acetate(以下α-N-A)3),naphthol AS acetate(以下N-AS-A)4)あるいはnaphthol AS-D chloroacetate(以下N-AS-D-CL-A)5)が用いられ,これら基質とジアゾニウム塩との組み合わせによる多くの染色法が利用され,更にはこの反応に阻害剤や賦活剤を応用して血球の鑑別に利用されようとしている.しかし,基質の種類によっては反応陽性の態度が異なり,基質特異性,反応の鋭敏性など幾多の検討されねばならない問題点が残されている.

新しいキットの紹介

"γ-GT new"によるγ-Glutamyl Transpeptidase測定法の検討

著者: 寺岡弘平 ,   川岸洋子 ,   寺畑喜朔

ページ範囲:P.433 - P.436

(1)基質としてL-γ-glutamyl-3-carboxy-4-nitro-anilideを使用し,AKESによる血清γ—GTPの初速度分析を試みた.
(2)測定操作が簡単で,精度の良いデータが得られた.
(3)再現性は日差変動にして4.86%以下であり,従来法との相関関係においても回帰式y=1.066x+0.063と優れている.
(4)血清及び試薬量が微量で,1時間当たりの検体処理数は80検体であった.
(5)ヘモグロビンの影響は高単位活性(300U/l)ヘモグロビン濃度200mg/dl以上において現れた.また,ビリルビンの影響はほとんどないが,低活性値の検体に注意を払う必要がある.
(6)血清γ-GTPとその臨床的意義を検討した.
(7)血清γ-GTPの正常値の検討を行った.

Antihebscell試薬キットによるHBs抗原ならびにHebsgencell試薬キットによるHBs抗体検出の試み

著者: 田口一宏 ,   河井明夫 ,   松田重三

ページ範囲:P.437 - P.440

はじめに
 HBs抗原(hepatitis B surface antigen)及びHBs抗体(hepatitis B surface antibody)の検出を目的として,現在までに数多くの免疫学的方法が応用されてきたが,最近では検出感度がRI法(ラジオイムノアッセイ)と比し遜色がなく,しかもその取り扱いに種々の問題を有するRI法と異なり,検査室に採用しやすい方法としてPHA法(passive hemagglutination法),R-PHA法(reversed passive hemagglutination法)あるいはIAHA法(immune adherence hemagglutination法)たどがにわかに注目され始めている1〜5)
 我々は今回,R-PHA法を応用したHBs抗原検出用Antihebscell試薬キット(ミドリ十字)及びPHA法を応用したHBs抗体検出用Hebsgencell試薬キット(ミドリ十字)を使用する機会を得,若干の検討を加えたので,その成績を報告する.

Laboratory Instrumentation

画像処理イメージ・アナライザー

著者: 関谷富男

ページ範囲:P.442 - P.445

 パターン処理・認識の有力な応用分野に医用画像処理がある.医学の研究,検査,診断における画像データの重要性については,改めて言うまでもない.医用画像にはX線像,超音波像,内視鏡像,シンチグラムなど多くの種類があるが,最も広く用いられているのは顕微鏡像である.これは白血球や染色体の検査,細胞診などの普及により,その処理量が急速に増えつつあるという理由による.医療機械の自動化が進むにつれて,これらの画像処理が一つの隘路となりつつあることが広く認識されるようになった.一方,社会的な要請から集団検診や総合健診が実施され全国的に普及するにつれて,膨大な画像データの迅速な処理が要求きれるようになってきた.
 以下では医用画像,特に微小な画像を処理する装置の一例としてミクロ・ビデオマート(カール・ツァイス社製)の概要を紹介する.これは一般に画像処理イメージ・アナライザーと呼ばれているものの一つであるが,国内では日立などの類似の製品がある.いずれの機器も手動あるいは自動(電算機処理)に切り換え可能である.

検査室の用語事典

心機能検査

著者: 椎名晋一

ページ範囲:P.447 - P.447

35) Ectopic beat;異所性心拍
正常の洞結節以外のいずこかから刺激が発生して起こる心拍を言う.早期の場合には期外収縮または副収縮であり,遅い場合には補充収縮である.

内分泌検査

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.448 - P.448

30) C-peptide;Cペプタイド
プロインスリンが膵ラ氏島のβ細胞内で分解され,インスリンを生成する際に生ずる副産物のペプタイド.生理活性はないとされているが,β細胞内の分泌顆粒中に蓄えられ刺激によってインスリンと同時に分泌されるので,免疫学的手法で測定し,インスリン抗体が存在する患者やインスリン注射中の患者のインスリン分泌能をみるのに用いられる.

質疑応答

臨床化学 CPKの正常値

著者: Y生 ,   井川幸雄

ページ範囲:P.449 - P.450

 〔問〕正常値を調べるために健康者を募り,ひと通りの診察によって,50名について血清酵素活性値を測定したところ,2名に著しく高いCPKの活性値が得られました.棄却検定ではもちろん棄てられるのですが,棄ててよいでしょうか.この2名とも筋肉の病気はなく,他にも全く異常は認められません.

血液 PAS染色について

著者: S生 ,   松野一彦

ページ範囲:P.450 - P.452

 〔問〕血液細胞染色に特殊染色がありますが,その意義と実際を,PAS染色を例にしてご説明ください.

血液 網赤血球の染色

著者: K生 ,   日野志郎

ページ範囲:P.452 - P.454

 〔問〕網赤血球はなぜ超生体染色をすると顆粒または網状物質が染色されるのか.ギムザ染色だとpoly-chromasiaに染まるのに.

血液 Pappenheim染色法,May-Grünwald-Giemsa染色法,Panoptic染色法の染色機序について

著者: K生 ,   原島三郎

ページ範囲:P.454 - P.456

 〔問〕Pappenheimの全視染色法(May-GrünwaldとGiemsa染色の併用)は核と細胞質及び顆粒を明瞭に染める.WrightとGiemsaの併用でもほぼ同様な結果を得るがその染色理論をお教えください.

免疫血清 インスリン測定法

著者: K生 ,   葛谷健

ページ範囲:P.456 - P.457

 〔問〕インスリン測定法の二抗体法と一抗体法の原理と方法をお教えください.

病理 粘液染色(Mucicarmine)の核染色

著者: K生 ,   河又国士

ページ範囲:P.457 - P.460

 〔問〕粘液染色の核染色にヘマトキシリンを用います.教科書によるとMucicarmineを染める前でも後でも良いとされていますが,後から核染色すると粘液が染まらないことがありますがどうしてでしょうか.

一般検査 十二指腸液の沈渣鏡検

著者: M生 ,   北田増和 ,   石田美久 ,   竹内正

ページ範囲:P.460 - P.462

 〔問〕十二指腸鏡検が時に要求されますが,検査方法と一般に観察されるものをお教えください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?