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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査23巻12号

1979年11月発行

雑誌目次

今月の主題 甲状腺 カラーグラフ

甲状腺疾患の組織像

著者: 矢川寛一

ページ範囲:P.1332 - P.1334

 甲状腺疾患には普通の炎症,腫瘍などのように甲状腺組織自体の形態病変が病像の主体をなすものと,内分泌臓器としての特有な代謝機能障害が疾患像の主役を演ずるものとがあることは周知のところである.もともとホルモン異常を主徴とした,いわば機能性疾患の形態的表現は困難な場合が多いが,特に最近におけるホルモンの合成分泌機序の解明,あるいは免疫学的知識の導入によって,従来の甲状腺疾患の概念に著しい変化を示しているものもあり,これを裏付ける形態的理解がとても追い付けない状態である.
 本項では,病理形態像からわく付けられるか,ないしは比較的特徴的な組織病変を示すような疾患の中から指定枚数内で二,三を選び,供覧したいと思う.

技術解説

T3,T4の測定法

著者: 入江實 ,   黒田光保

ページ範囲:P.1335 - P.1342

 1959年にBersonとYalowがインスリンの測定にラジオイムノアッセイ(RIA)を初めて用いて以来,多くの物質の定量にこの方法が応用されており,ラジオアイソトープを用いるいわゆるin vitro検査の発展は目覚ましい.RIAは抗原抗体反応に基づく特異的結合反応を利用しているが,内分泌学領域においてもRIAにより,下垂体前葉ホルモン,甲状腺ホルモン,インスリン,その他多数のホルモンの微量測定が可能となり,内分泌疾患の診断や治療は飛躍的な発展を遂げた.
 以下にトリヨードサイロニン(T3),サイロキシン(T4)の測定法の実際と注意すべき点などにつき述べ,また本邦での測定報告についても述べるが,最初にRIAにおける一般的な事項について触れる.

TBG,PBI,BEIの測定法

著者: 屋形稔 ,   三国龍彦

ページ範囲:P.1343 - P.1350

 甲状腺から分泌された甲状腺ホルモン(T3,T4)は血液中で大部分が血清蛋白と結合して存在する.また甲状腺ホルモンは有機ヨード化合物であるから,血中ホルモン濃度は,このT4結合蛋白(thyro-xine binding protein;TBP)中のヨードを測定することによって間接的に知ることができる.これがPBI及びBEIで,優れた甲状腺機能検査法の一つとして古くから広く用いられてきたが,測定操作が複雑であること,厳重なヨード制限が必要なことなどから,T3,T4が直接RIAなどで測定しうる現在ではほとんど用いられなくなっている.
 一方,T4のTBPへの結合状態から血中T3濃度を相対的に測定するものとしてT3摂取率試験がある.in vitroで血清に加えた131Iあるいは125I-T3がTBPのT4不飽和部分とレジンなどの吸着物質とに競合的に結合することを利用したもので,現在多種類のキットが市販され,簡単に測定できるようになった.しかも甲状腺機能をよく反映しており,スクリーニングとして極めて有用な検査法である.PBIと異なりヨードに影響されないが,TBP特にTBGのT4結合能に影響される欠点がある.そのTBGも近年RIAによって測定が可能になっているので,それらについて解説したい.

甲状腺シンチグラムの臨床的価値

著者: 伊藤國彦

ページ範囲:P.1351 - P.1357

 甲状腺シンチグラムは甲状腺疾患の臨床の中でも,特に甲状腺の腫瘍性疾患に対して価値がある.この検査法の診断の意義を正しく評価して,目的に応じて施行すべきである.とかく最近は諸種検査法の進歩によりあらゆる検査を網羅して診断を下すという傾向があるが,甲状腺疾患の中でも甲状腺シンチグラムは必要がない場合も少なくない.甲状腺腫瘍の診断のうえでも甲状腺シンチグラムは万能ではない.したがって,例えば妊娠の疑いのある患者に施行すべきではないし,また授乳中の患者に授乳を中止させてまで施行する必要はない.
 甲状腺シンチグラムは理学的診断あるいは諸種検査の系列の中にあって価値がある.したがって著者は,甲状腺疾患の診断の中でのシンチグラムの存在意義を中心に述べる.技術的な問題は著者らの任ではないので,専門書を参考にしていただきたい.初めに甲状腺疾患,特に腫瘍性疾患について解説することにした.

総説

下垂体—甲状腺系ホルモンと臨床的意義

著者: 畔立子 ,   宮井潔

ページ範囲:P.1359 - P.1365

 下垂体が甲状腺の機能に関与していることは今から1世紀以上も前から知られていた.1921年Smith1)が下垂体前葉に甲状腺刺激ホルモンが存在することを報告して以来,このホルモンをthyroid stimulating hormone,thyrotropin (TSH)と呼ぶようになった.更にTSHの生物学的測定法(bioassay)が開発され,甲状腺ホルモン(thy-roxine;T4や3-5'−3'—l-triiodothyronine;T3)を投与するとTSHは抑制されることが認められた.
 その後種々の研究の結果,Salterは"下垂体—甲状腺系(pituitary-thyroid axis)"という言葉を提唱し,古典的なネガティブフィードバック機構(negative feed back system)の概念が認識されるようになった,1967年Odell2)はラジオイムノアッセイ(radioimmunoassay;RIA)を開発し,これによって血中の微量なTSHの測定が可能となった.

臨床検査の問題点・121

甲状腺ホルモン測定値の信頼度

著者: 屋形稔 ,   熊原雄一

ページ範囲:P.1366 - P.1372

 甲状腺ホルモンの測定は,RIの応用により大きく進歩し,血中の微量ホルモンの定量を日常検査化し,更に酵素法の導入により大量検体の同時処理も可能となった.一方,各種測定キットの選択・取り扱い,ピペッティング,またホルモンの性質によっては,臨床症状とは合わない異常値を出しているのも現状である.
(カット図は,RIAの際の標準曲線に及ぼすインキュベーション時間と温度の影響を示す)

検査と疾患—その動きと考え方・35

T3サイロトキシコーシス

著者: 江藤澄哉

ページ範囲:P.1373 - P.1379

 症例1 32歳,女性.
 主訴 体重減少,動悸.

座談会

甲状腺疾患診断の進歩

著者: 伊藤國彦 ,   紫芝良昌 ,   入江實

ページ範囲:P.1380 - P.1389

 甲状腺疾患は,内分泌疾患の中で糖尿病に次ぎ多いが,その診断技術は組織診断,CTスキャン,血中ホルモン測定の向上により,近年目覚しい進歩を遂げている.今月はその形態面,機能面からその診断技術の進歩を,専門家に語っていただくことにする.

Ex Laboratorio Clinico・35

梅毒血清反応・1

著者: 緒方富雄 ,   徳永栄一 ,   原一郎 ,   阿部正英 ,   松橋直

ページ範囲:P.1390 - P.1395

 我が国における梅毒血清反応の開発研究は,我が国における臨床検査で特筆大書すべきものの一つではないかと私は考えております.その理由の第一は,この研究が非常にタイムリーであったということ.すなわち梅毒が爆発的な流行があった終戦前後の時期に開発が行われたこと.第二は,方法が初めから標準化され,その方法が全国に普及したということ.第三は全国的に統一されたこと.全国津々浦々に普及したので,日本においては梅毒血清反応の成績は比較がどこでもできる.東京にいても鹿児島との比較ができる.あるいは北海道の成績を新潟でも比較できる.多くの臨床検査の方法はいろんな所で別々な源泉から出たものですから,統一が非常に困難になって,いわば群雄割拠している形でありましたが,この梅毒血清反応に限ってはそうでなかったと言えます.
 ここに,この血清反応につき早くからお考えになっておられた緒方先生,そして緒方先生の門下生としてこの開発に協力した私どもが集まり,当時を思い出しながら,現在のいわゆるSTSがいかにして開発されたかを通常のEx Laboratorio Clinicoとは形を変えて座談会(全2回)の中でお話しいただいて,若い読者の参考にしていただければと考えております.

臨床化学分析談話会より・74<関東支部>

活発な現場での問題点の指摘—HDL-コレステロールの測定

著者: 戸谷誠之

ページ範囲:P.1396 - P.1396

 第224回臨床化学分析談話会関東支部例会(1979. 7. 17)は東大薬学部記念講堂において開催された.
 今回は"HDL-コレステロール測定法の問題点"と題して慶応大病院の塚本秀子氏,東京クリニカルラボラトリーの藤井幹夫氏,三井記念病院の黒沢郁子氏からの話題提供があった.

研究

Wassermann反応のAA Ⅱ型による自動化

著者: 飯田悦夫 ,   田村䪸子 ,   吉田一夫

ページ範囲:P.1397 - P.1400

はじめに
 梅毒の血清学的診断法として,現在本邦では主にガラス板法,TPHAテスト,FTA-ABS法が実施されているが,自動分析法については福岡1)らのARTシステムの報告があるくらいで非常に少ない.そこで今回我々は,Technicon社のAuto Analyzer Ⅱ型(AA Ⅱ型)を用いてWassermann反応の自動測定を試み,至適条件,用手法との相関及び判定基準について検討した.

アガロースゲル電気泳動法による血清α-コレステロール濃度と糖尿病病態との相関

著者: 天野昌彦 ,   岩元栄一 ,   後藤千賀子 ,   糀谷利明 ,   杉町定 ,   生野哲雄 ,   福永秀行 ,   馬場茂明

ページ範囲:P.1401 - P.1404

いとぐち
 冠動脈疾患発生率とHDL-コレステロールとが逆相関するというFramingham Studyの報告以来,HDL-コレステロールと動脈硬化症との関連性が注目され,疫学,病因,治療面での研究が急速に進みつつある.しかし,HDL-コレステロールの測定法には,①超遠沈法,②沈殿法,③電気泳動法などがあり,まだ確立された方法はない.今回我々はアガロースゲルフィルム(Pol-Efilm)を用い,電気泳動法によるHDL-コレステロール(以下α-chol.)の測定を試み,α-chol.の変動が注目される糖尿病患者91名を対象にα-chol.と病態との相関について観察した.

尿路感染症におけるBMテストNの検討

著者: 甲田雅一 ,   鹿島ひさ ,   富川久美恵 ,   佐藤喜春 ,   松崎廣子

ページ範囲:P.1405 - P.1407

はじめに
 尿中亜硝酸塩検査用試験紙の一つであるBoehringer Mannheim Nitur-Test1)(以下BMテストN)は,菌が105ml以上存在する尿路感染症を90%以上検出すると言われている.本試験は早朝第一尿を用いて行うよう指示されているが1〜4),我々は入院患者緊急検査,外来患者で,早朝第一尿を用いられぬときでも有効か否かを定量培養法と比較検討した.その結果,入院患者では低い一致率しか得られなかったので不適当であるが,外来患者ではグラム陰性杆菌に限定すれば約70%の一致率を得たので,応用の仕方しだいでは補助診断法として使用できるのではないかという成績を得た.

IAHA法によるウイルス抗体価測定

著者: 溝口真理 ,   飯田悦夫 ,   永井秀 ,   市川孝行 ,   尾崎隆男

ページ範囲:P.1408 - P.1410

はじめに
 免疫粘着赤血球凝集反応(Immune adherence hema-gglutination;IAHA)は,1953年Nelson1)が見いだし,抗原—抗体—補体(Ag-Ab-C1-C4-C2-C3)結合物ができると,ヒトまたはサルなどの霊長類の赤血球と強く粘着し,赤血球の凝集を起こす現象が生じることを原理としている.
 現在までにIAHA法を用いた測定法としてHBsAg2)やHBcAg3),更にHAAg4)などについて報告が見られ,HBsAgの場合,最小検出感度が約10ng/mlとRIA法に匹敵すると言われている5)

新しいキットの紹介

プラスチックチューブコートインスリン抗体を用いたエンザイムイムノアッセイによる血中インスリンの測定

著者: 清水静夫 ,   泉倉康男 ,   中尾山梅子 ,   三村幸一 ,   井野隆弘 ,   松岡瑛

ページ範囲:P.1413 - P.1416

緒言
 1959年Yalow & Bersenら1)によりラジオイムノアッセイ(RIA)が開発されて以来,各種ホルモンの微量定量が可能になり,現在広く利用されている.しかしRIAはラジオアイソトープ(RI)を用いるため種々の制約を受ける難点がある.すなわちRIが比較的短時間で減衰すること,また特殊な測定機器ならびに設備を要すること,更に廃棄物及び放射線障害に対する取り扱い上の注意などが問題となる.
 これらの問題点を解消するため,RIの代わりに酵素を標識物質として用いるエンザイムイムノアッセイ(EIA)が近年開発され検討が加えられつつある.

新しい機器の紹介

尿自動分析機(クリニラブ)の使用経験

著者: 飯塚儀明 ,   仲村妙子 ,   村井哲夫 ,   及川淳

ページ範囲:P.1417 - P.1420

はじめに
 尿一般検査は多種類の試験紙の開発,改良によって簡易化されてきたが,肉眼判読による個人差や薬剤などによる偽陽性,偽陰性反応などの問題が残されている.近年,迅速化及び機械化を図る目的で開発された種々のタイプの尿自動分析機が市販されているが,今回当院においても尿自動分析機"クリニラブ"(エームス)の性能について検討する機会を得たので,その成績を報告する.

検査室の用語事典

統計学

著者: 土肥一郎

ページ範囲:P.1421 - P.1421

87) sample variance;標本分散
 大きさnの標本x1,x2,…xnがあったときs2=1/nΣni=1(xi−x)2(ただしx=1/nnΣi=1xi)を標本分散と言う.xiがxの周りに散らばるバラツキが大きいかどうかの目安となる.

超音波検査<臨床編>

著者: 竹原靖明

ページ範囲:P.1423 - P.1423

6.心臓・血管
1)アシナジイ;asynergy
 虚血性心疾患などにより,左室全体の一連の収縮運動に協調性が失われている状態を言う.

質疑応答

臨床化学 甲状腺機能亢進症とCK

著者: K生 ,   屋形稔

ページ範囲:P.1425 - P.1426

 〔問〕甲状腺機能低下症ではCKが上昇することはよく言われますが,甲状腺機能亢進症でCKは,①影響がないのか,②やはり上昇するのか,③正常下限位まで低下するのか,教えてください.成書では③や①と言われていますが,②も経験的にあるのではないかと考えています.

臨床化学 HDL-コレステロールの健常値

著者: M生 ,   野間昭夫

ページ範囲:P.1427 - P.1429

 〔問〕HDL測定用キットが多数出回っていますが,健常値が示されていません.添付文献などにはすべて原法で行った健常域が記載されていますが,実際に測定してみるとかなり高い値を示します.従来当施設ではリンタングステン酸塩化マグネシウム法(自製)で,健常域男37〜55,女40〜60mg/dl(n=600)を得,原法に近い健常域を使用していましたが,キットによっては70〜90mg/dlのものがみられます.
 HDL-コレステロールの健常域は一般にいくらぐらいと考えたら良いのでしょうか.測定方法別に健常値を作る必要があるのか,それとも測定方法を従来使用されている健常値に合うよう工夫するのか,良い方法を教えてください.またメーカーはなぜ健常値をキットに明示しないのでしょうか.

臨床化学 ブドウ糖負荷試験

著者: O生 ,   大井一輝 ,   水野美淳

ページ範囲:P.1429 - P.1432

 〔問〕50g GTTにおいては,ブドウ糖50gを水約300mlに溶解して飲むわけですが,もし溶解する水の量を変えて(例えば500とか600ml)飲んだとき,血糖値及び尿糖値に影響するでしょうか.ただしブドウ糖液は全量飲むものとします.300mlでは甘過ぎて飲みにくいという患者がいます.

血液 凝固因子の測定法の違いによる値の差

著者: Y生 ,   藤巻道男

ページ範囲:P.1432 - P.1434

 〔問〕血液凝固因子の測定で,凝固活性による凝固時間測定による値と,合成基質による測定法には食い違いがあると聞きましたが,なぜでしょうか.また臨床的意義についてもお教えください.

免疫血清 高グロブリン血症患者への輸血は?

著者: S生 ,   竹中道子

ページ範囲:P.1434 - P.1435

 〔問〕高グロブリン血症などの患者に対する輸血には,どのような血液を用いれば良いのですか.
 現在当病院では交差試験としては,①高蛋白交差試験(30%アルブミン),②ブロメリン法,の2法を行っていますが,最近ミエローマ,癌患者に対して保存血AB型を輸血するために交差試験を行いましたが,ミエローマの患者では①,②法とも不適合であり,癌患者では①適合,②不適合の結果を得ました.このような場合,輸血は可能なのですか(ドクターは注意して輸血をすると言い,輸血後副作用はなかったとのことです),やはり不可能なのですか.不可能ならばどのような血液を輸血すれば良いのでしょうか.

病理 鉄ヘマトキシリン液

著者: Y生 ,   上野哲夫

ページ範囲:P.1435 - P.1436

 〔問〕Weigertの鉄ヘマトキシリン液を作製するとき29%塩化第二鉄を使いますが,29%という濃度の意味を教えてください.

臨床生理 WPW症候群における運動負荷後のST低下

著者: S子 ,   外畑巖

ページ範囲:P.1436 - P.1438

 〔問〕WPW (Wolff-Parkinson-White)調律の人に運動負荷試験を行ったとき,心筋に虚血がなくとも,運動後STに有意の低下を認めることがあるとのことですが,その成因を教えてください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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