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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査23巻6号

1979年06月発行

雑誌目次

今月の主題 組織検査の進歩 カラーグラフ

腎生検

著者: 荒川正昭

ページ範囲:P.536 - P.538

 腎生検による腎病変,殊に糸球体病変の診断は,糸球体腎炎(glomerulonephri-tis;GN),ネフローゼ症候群(nephrotic syndrome;NS)の臨床に必須である.診断には光顕,電顕,螢光抗体法が用いられるが,光顕が基本かつ最も重要である.糸球体(glomerulus;Gl)病変は質的ならびに半定量的に評価する.GNはメサンジウム(mesangium;Mes)細胞及び基質の増加と定義されるが,その分布(focal,diffus esegmental,diffuse)と程度(mild,moderate,severe),更に硝子化Glを含む間質反応(parenchymal scarring)が問題となる.また,内皮細胞,基底膜(GBM),Bowman嚢上皮細胞の変化も注意しなければならない.NSではGBMの肥厚の型と分布(minimal change groupかmembranousnephropathyか)が大切で,またMes反応(proliferative GN)も重要である.

技術解説

酵素抗体法・1 酵素抗体法の基礎—光顕観察を中心に

著者: 和泉伸一 ,   渡辺慶一

ページ範囲:P.539 - P.552

 酵素抗体法(酵素標識抗体法;enzyme-labeled antibody method)は,1966年Nakane1,2)らによって開発された免疫組織細胞化学的技法の一つであり,創案以来,更に多くの研究者によって,新しい標識法をはじめ検体作製上の工夫や反応法の改善などが重ねられ,広く医学,生物学での有用性の高い研究技法として発展してきている.

酵素抗体法・2 免疫電顕法としての酵素抗体法

著者: 小松遵至 ,   渡辺慶一

ページ範囲:P.553 - P.561

 酵素抗体法をはじめ免疫組織化学は,組織,細胞の構造と機能を相互の密接な関連下に追求できる技法として医学,生物学研究の領域のみならず,臨床医学の面でもその有用性は広く認められていることは「酵素抗体法・1」でも述べられたとおりである.最近では,細胞の代謝機能の検索は細胞内小器官レベル(Subcellular level)にまで細別されて行われるようになり,免疫組織化学にも電顕,超微形態レベルでの抗原局在観察,すなわち免疫電顕法による観察の要求が高まってきている.

骨組織標本作製法—特に大割標本を中心に

著者: 宮下剛彦 ,   尾島昭次 ,   丸本雅夫 ,   古田伸行 ,   川村亮寿

ページ範囲:P.562 - P.568

 骨組織は膠原線維性の基質と,カルシウムを主体とした無機物質の沈着によって構成されている極めて硬い組織であるため,通常の方法により顕微鏡標本を作製することは不可能である.したがってまずカルシウムを除去(脱灰操作)し,薄切しやすくする必要がある.また染色効果を上げるためには標本をできるだけ小さく切り出し,短時間で脱灰が完了するようにしなければならない.そのために,手術により切断あるいは摘出された大型骨組織標本は一般に小さく切り出され,それによって病理組織学的診断がなされている場合が多い.
 しかし,骨組織は部位により質的,構造的に一様ではなく,かなり変化に富んだ組織であるので,骨病変の組織像は切り出された部位によって異なる場合が少なくない.骨肉腫を例にとるならば,1個の腫瘤は単一の腫瘍性病変だけでなく,反応性の類骨や骨の増生,壊死,出血などが加わり,複雑な像を呈する場合が多い.したがって小さい標本では病理組織診断に際し好ましくない結果を生ずる恐れがあり,手術材料においては大割標本作製が望ましい.

総説

腎生検とネフロパチー

著者: 小林収

ページ範囲:P.569 - P.575

 腎生検が一般に行われるようになってから約30年になり,腎臓病学は一大進歩を遂げることになった.針生検法によることが多いので種々の制約,その意義の限度などについても論ぜられているが,これらについては省略し,腎生検による腎疾患の病態の解明,解釈,新病態,問題などについて二,三の概略を述べる,これらは腎生検組織切片が新鮮で経過の追跡が可能な光顕,電顕,更に免疫螢光染色法による成績を総合して得られている.今後生検切片検査法の新しい技術の開発も期待され,新分野も開かれることと推測される.腎生検の最終目的は腎組織像と非観血的検査成績との相関を解明し,検査成績より腎組織変化を窺知しうる方法,例えば尿内諸物質測定法を発見・開発することと思われる.

臨床検査の問題点・116

蛋白尿

著者: 林康之 ,   大竹和子

ページ範囲:P.576 - P.582

 病気の検査で最も古くから取り入れられている尿検査,その中で件数が多くかつ問題が多いのが蛋白尿であろう.定性試験と定量試験—その考え方と進め方,標準物質の選定を日常検査レベルで検討し,更に最近普及している自動化機器の長短について言及する(カットは病棟から集められた尿と伝票の照合風景).

検査と疾患—その動きと考え方・30

アミロイドーシス

著者: 古山隆 ,   京極芳夫

ページ範囲:P.583 - P.590

 症例 S.S,49歳,女,教員.
 主訴 浮腫,腹部膨隆及び食思不振.

座談会

尿の細胞診

著者: 石津澄子 ,   田崎寛 ,   山田喬 ,   土井久平 ,   高橋正宜

ページ範囲:P.592 - P.600

 膀胱内視鏡や病理組織学的検査に先行され,立ち遅れていた我が国の尿細胞診は,最近膀胱癌やその再発チェックなどに診断価値を高め,かつ"繰り返してできる検査"としてそのオーダーが増えている.検査室として知っておくべき細胞の知識と細胞診技術は…….

私のくふう

免疫電気泳動像の簡易な判読法

著者: 橋本寿美子

ページ範囲:P.591 - P.591

 免疫電気泳動法は,血漿蛋白組成の増減をマススクリーニングするには極めて優れた方法であり,我々も免疫電気泳動法を日常臨床検査法の一つとして実施しているが,その判読に際しては,熟練者でも特異抗血清を使用しなければ困難を伴うことがしばしばである.特に数多くの沈降線の形成が認められるα2分画においてその感が強い.中でも,血管内溶血や肝炎の活動性を知る良い指標となるとされているハプトグロビンは,遺伝型による易動度の相違があり,その減少時にはα2HS糖蛋白やセルロプラスミンなど,α2分画に含まれる蛋白と紛らわしく,更に判読を困難にしている.
 また,免疫電気泳動法は尿蛋白の分析にも応用さね,α2-マクログロブリンなどの大分子蛋白の検討は,糸球体基底膜の選択的透過性が保たれているか否かを判定する目的でも注目されている.ところが免疫電気泳動法は比較的感度も低く,微量蛋白の検出には不適当てある.これらの問題をいくらかでも改善する目的で,我々は10×10cmの寒天ゲル平板を用い,免疫電気泳動を実施した残りの部分を利用して,図のようにOuchterlony法を実施し,これらの蛋白の判定に役立てているが,極めて便利なので紹介したい.

Ex Laboratorio Clinico・30

TPHA

著者: 富沢孝之

ページ範囲:P.601 - P.605

 いつかTPHAを開発した当時のエピソードを書いてみたいと思っていたところ,今回編集の方から,Ex Laboratorio Clinicoにそのようなことを物語風に書いてみてくれとの要望があり,この機会にと思い書くことにしました.と言うのも,その当時のことを考えてみると,いろいろのチャンスが重なり合っておとずれたことを記憶し,物を作り上げるには偶然に出来上がるものではなく,いろいろな要素,例えばチャンス,タイミング,雰囲気,そして同じ仕事を長くやっていることなど,一時に集まったときに出来上がるものだと考えています.それらのことを思い出しながら述べる前に,臨床検査のことについて前から考えていたことについて一言します.

研究

ポリスチレンラテックス粒子を用いた白血球貪食能検査の検討

著者: 丹羽欣正 ,   寺田信市 ,   山本公麿 ,   喜多悦子 ,   梅垣健三

ページ範囲:P.607 - P.610

はじめに
 白血球貪食機能検査法は,大別して生体外検査及び生体内検査があるが,いずれも現在までに墨粒,細菌,赤血球など種々の被貪食物を用いて実施されている1,2)
 生体外検査法では墨粒貪食試験が最も一般的であり,その方法にはスライドグラス法(杉山)3),毛細管法(寺田)4)などがあり,好中球機能の検索,単球系細胞の鑑別法として広く臨床検査に用いられている.生体内検査法ではポリスチレンラテックス粒子(以下ラテックス粒子)などが,腸管内吸収の研究(Sanders,E.)5)に利用されている.その他ラテックス粒子は,好中球における貪食に伴う酸素消費量の研究(Weening,R.S.6),木谷7))にも利用され,貪食機能のメカニズムの解明に大きな進歩をもたらしている.

パラフィン包埋材料の走査電顕観察について

著者: 浜崎美景 ,   福山伊都子 ,   渡部威 ,   井上とし子 ,   岡田雄平

ページ範囲:P.611 - P.613

はじめに
 日常の病理組織検査の中で,組織標本を光学顕微鏡によって検索している際に,診断確定の目的で,あるいは研究上の興味から,その標本を更に電子顕微鏡的に観察する必要を感じることが少なくない.
 しかしすべての材料を電顕用固定をしておくことは現実的には不可能な現状にあるので,このような場合にパラフィンブロックとなった材料を使用するほかはないケースにしばしば遭遇する.すなわち,いわゆるもどし電顕の方法をとることになるわけであり,透過電顕の場合には既にこの方法が比較的広く日常的に使用されて,像の質についてはかなりの制約はあるものの一定の成果を挙げていることは周知のところで,その方法についての文献1,2)も少なくない.

血液培養へのガスクロマトグラフィーの応用

著者: 渡辺邦友 ,   上野一恵 ,   沢赫代 ,   沢村治樹 ,   川出真坂 ,   二宮敬宇 ,   鈴木祥一郎

ページ範囲:P.614 - P.617

はじめに
 今日菌血症の診断は,カルチャーボトルから適当な平板培地へのblind subcultureの結果に基づいて行われ,その最終的な判定に要する日数は14日以上にも及ぶ.これらの一連の操作の迅速化,簡便化,正確さが強く要求されている.
 そこで著者らは,培養陽性例ではカルチャーボトル内に蓄積されるであろう菌体由来の代謝産物のうち揮発性脂肪酸(volatile fatty acid;VFA),難揮発性脂肪酸(nonvolatile fatty acid;NVFA)に注目し,これらの脂肪酸をGas liquid chromatography (以下GLC)により分析した成績と,従来のblind subcultureによる培養成績とを比較検討し,若干の知見を得たので報告する.

臨床化学分析談話会より・69<関東支部>

免疫学的な血中薬物測定法も—生体内薬物濃度の測定

著者: 大竹皓子

ページ範囲:P.618 - P.618

 第219回臨床化学分析談話会(1979.2.20)は東大薬学部講堂において開催された.今回の題は"生体内薬物測定"で,東大医学部の田村善蔵先生に薬物測定の意義,測定方法,投与薬物の生体内での代謝,体液中の薬剤のモニタリングの実例などについて解説していただいた.
 まず,生体内薬物濃度測定の意義について触れられ,薬物は生体にとっては異物であり,有効濃度範囲を外れると無効または毒物として有害作用を表すから,体内の標的部位において有効な薬効を期待するためには,薬物の使い方を適正化していかなければならないこと,そのためには薬物治療の監視手段として生体内薬物濃度を測定することが非常に重要であり,従来,医師がさじ加減で行っていた薬物投与を,科学的根拠に基づく投与計画に高めていかなければならないと述べられた.一方,薬物濃度の測定は薬物中毒の解析にも利用でき,その例としてフェノバルビタール中毒とキノホルム中毒の例を示された.

新しいキットの紹介

APIシステム(アピケンキ)による嫌気性菌の簡易同定法の有用性

著者: 渡辺邦友 ,   江崎孝行 ,   渡辺泉 ,   甲畑俊郎 ,   今村博務 ,   二宮敬宇 ,   上野一恵 ,   鈴木祥一郎

ページ範囲:P.619 - P.621

はじめに
 嫌気性菌感染症に対する関心が著しく高まってきた今日,嫌気性菌の分離・同定の簡易化は臨床細菌検査室における非常に重要な問題の一つである.
 著者らは,嫌気性菌同定用の簡易法としてのAPIシステム(アピケンキ)を検討する機会を得たので,その成績を報告する.

HBs抗原・抗体検査法R-PHA法及びPHA法の評価

著者: 森山隆則 ,   古森治代

ページ範囲:P.622 - P.624

はじめに
 HBs抗原・抗体の検査法の中で,現在感作血球凝集反応を用いた方法が普及しつつある.今回抗原についてはRIA法,IAHA法,R-PHA法及び従来法,また抗体についてはRIA法,PHA法などについて検出感度及び測定力価を比較検討し,また同一検体について,HBs抗原RIA法とR-PHA法の再現性を検討したので報告する.

検査室の用語事典

統計学

著者: 土肥一郎

ページ範囲:P.625 - P.625

44) Latin square;ラテン方格法
 検査のために得られる試料に制限がある場合とか,実験回数が費用とか時間の関係で制限される場合に工夫される実験計画の型である.例えば皮膚に対する照射量と反応との関係を,皮膚の縦方向の区分,横方向の区分を考慮に入れて3要素の効果を分析する場合,照射量D1,D2,D3,D4,縦区域の区分C1〜C4,横区域の区分R1〜R4として,4種類の照射量を縦区域のどの番号の列にも1回ずつ,横区域のどの番号の行にも1回ずつ割り付ける.こうして16か所の反応を測定すると,D,C,Rの主効果を16測定で分析できる.もしこれを2元配置型で行うなら4×4×4,すなわち64測定が必要になってしまう.

超音波検査〈基礎編〉

著者: 竹原靖明

ページ範囲:P.627 - P.627

54)ダイナミックレンジ;dynamic range
 増幅,表示,記録するエコーの最小振幅(ノイズに埋もれない)から最大振幅(飽和しない)の範囲を言う.通常dBで表す.例えばダイナミックレンジ40dBのブラウン管は,ノイズに埋もれない最小振幅のエコーの100倍の大きさのエコーを飽和することなく表示することができる.

質疑応答

臨床化学 透析患者のCCLF判定

著者: K子 ,   池田清子

ページ範囲:P.629 - P.631

 〔問〕慢性透析患者のCCLF結果は新鮮血清を用いると(2+)〜(3+),2〜3日後の血清を用いると大部分(肝炎のある患者でも)(−)の結果となります.これはフィブリンの影響なのでしょうか.また結果はどちらを提出すれば良いのでしょうか.なお,採血は透析開始後採血で,健康人血清の対照は(−)です.試薬は北里研究所を使用し,調整法に従って調製しています.

臨床化学 尿中ステロイドホルモン測定

著者: H生 ,   後藤順一

ページ範囲:P.631 - P.634

 〔問〕ガスクロによる尿中ステロイドホルモン測定の現状をお教えください.

血液 白血球の粒度分布

著者: N生 ,   新谷和夫

ページ範囲:P.634 - P.636

 〔問〕白血球数をトーアCC 100-2で測定するとき,300〜450のディスクリミネーターで測定し粒度分布をみると,白血球数の多いほど粒度分布の差は大きいのですが,これは赤血球のゴーストを数えているのでしょうか.それともゴミとか血小板なのか,それ以外のものなのか教えてください.
 粒度分布は以下のとおりです.

免疫血清 生死をさまよう患者の血液交差試験

著者: N生 ,   遠山博

ページ範囲:P.636 - P.638

 〔問〕現在,血液交差試験は血清法の後,ブロメリン法を実施していますが,血球の洗浄を2〜3回して実施すると約1時間かかります.他の検査の合間にやっているとこれ以上かかります.
 そこで,生死をさまよう患者の血液交差試験は最低どの程度実施すれば良いのでしょうか.

微生物 消毒液の殺菌効果

著者: M生 ,   辻明良

ページ範囲:P.638 - P.640

 〔問〕使用消毒液の殺菌効果の簡易測定法をお教えください.

臨床生理 トレッドミル負荷試験

著者: K子 ,   村山正博

ページ範囲:P.640 - P.642

 〔問〕日ごろ問題点の多い負荷心電図について,今まで使用しているMaster負荷よりもトレッドミル負荷のほうが適していると聞き購入しようと思っているのですが,今までのMaster負荷と対比させたトレッドミルの運動量を知りたいと思います.
 またトレッドミル負荷時の発作などの対応の仕方についてもお教えください.

一般検査 精液中の円形細胞について

著者: Y生 ,   白井将文

ページ範囲:P.642 - P.642

 〔問〕不妊症での精液検査で,精子数は正常に認められるのですが,精子形成前段階の各層の精母細胞がみられる症例を経験しています.これらの症例では精子の奇形率は高く,円形細胞に多核分裂像や大小不同,精子脱出後の細胞膜の残存が見られ,何らかの原因で,これら円形細胞のライフサイクルに乱れが起こったと考えられるのですが,文献的に乏しく困っています.円形細胞出現のメカニズム,不妊との関係についてご教示ください.
 また,夫がもしHBs抗原に持続感染していた場合,不妊の原因になる可能性はあるのでしょうか.経験した症例の中に,夫がHBs抗原陽性のケースが数例ありました.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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