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雑誌目次

論文

臨床検査23巻7号

1979年07月発行

雑誌目次

今月の主題 リンパ球 カラーグラフ

リンパ球とリンパ系腫瘍細胞

著者: 下山正徳 ,   湊啓輔

ページ範囲:P.648 - P.650

リンパ球幹細胞は主として骨髄に分布する.この一部は胸腺の影響を受けてT細胞に,他はBursa相当器官の影響を受けてB細胞に分化する.前者は細胞性免疫に,後者は液性免疫に主役を演ずるが,両者は互いに影響し合って免疫反応を調節することになる.最近T細胞,B細胞及びその幹細胞は免疫学的ならびに生化学的に識別できるようになった.リンパ系腫瘍細胞もその由来にしたがって,これら正常T細胞,B細胞,non T non B細胞(幹細胞?)と同じ免疫学的性状を示す.すなわちその細胞帰属がより明らかになった.これらのうち代表的な細胞を供覧したい.(カラーグラフ解説の図を参照)

技術解説

T,B細胞算定のためのロゼット形成試験

著者: 橘武彦

ページ範囲:P.651 - P.659

 ヒト末梢血T, B細胞はそれぞれヒツジ赤血球(E)ロゼット形成細胞ならびに,螢光抗体法による膜免疫グロブリン陽性細胞として通常算定されるが,ここに示す方法はB細胞のマーカーとして補体レセプター(正確にはC3bレセプター)を利用し,C3b結合感作赤血球(EAC)ロゼット形成細胞として,T, B細胞ともに同一の操作手技によってロゼット形成細胞として分別算定しようとする迅速簡便法である.しかも,できる限り最大のロゼット形成率を得るために工夫,開発された方法で,この点T細胞,B細胞集団に認められる反応性の不均一性を利用して細分類するための方法ではない.したがって正常状態におけるリンパ球を両ロゼット形成能で最大限に識別するように標準化したものであって,疾患時における反応性の低下,正常値からの偏差によって異常を知ることに役立てることができよう.

細胞培養試験と分裂促進物質

著者: 笠原忠 ,   伊藤喜久

ページ範囲:P.660 - P.667

 免疫不全症,アレルギー性疾患,癌,臓器移植などにおける免疫学的機能検査法としてリンパ球培養法は,リンパ球の表面マーカーの検出とともに,最近広く行われつつある.リンパ球の培養法は,生体の体液性免疫能及び細胞性免疫をin vitroで知るための重要な検査である.前者の目的にはB細胞による抗体産生能を,また後者のためにはPHAや種々の抗原に対するリンパ球の芽球化反応,MIF産生あるいは腫瘍細胞に対する細胞障害活性の測定などが行われる.最近では更に臓器移植においてリンパ球の混合培養法によるHLAのタイピングは必須の検査であり,検査室でのルーチン化が望まれる.
 ここでは特にヒト末梢血リンパ球の分離と,その培養法及びその基礎的検討について実験例を示した.更にリンパ球の分裂促進活性を有する種々の物質についてまとめ,解説を試みた.

リンパ球膜表面蛋白の局在証明法

著者: 金衡仁 ,   高木星輝

ページ範囲:P.668 - P.673

 リンパ球表面には種々のレセプターが存在し,現在これらのレセプターをマーカーとしてリンパ球サブポピュレーションの検索がなされている.
 B細胞表面にはIgD,IgM,IgG及びIgAなどの免疫グロブリンが存在し,この表面免疫グロブリン(S-Ig)がB細胞を特徴付ける極めて重要なマーカーとなっている1,2)

総説

リンパ球と免疫機能

著者: 星野孝

ページ範囲:P.675 - P.687

 リンパ球は最も重要な免疫担当細胞であって,複雑に錯綜しながら見事な調節を保って目的を果たす免疫機構の立役者である.各種の免疫機能とリンパ球とのかかわりを解明することは,直ちに免疫全体の仕組みの追求に結び付くために,リンパ球の免疫学的機能を解明する努力は,近代免疫学の最重要課題として過去十数年の脚光を浴びており,かつ今後もますます多くの業績が発表されるに違いない.今回の短い総説の中で,リンパ球の機能のすべてを網羅することは到底不可能であるし,またそれはこのテーマの選択者の意図ではないと思われる.
 そこで今回は問題を主としてヒトのリンパ球と細胞性免疫反応及び,それを含めて免疫調節機能とかかわりに絞り,最近の知識を整理してみたい.この問題は免疫学の中でも最近の注目を集めて日進月歩の領域であり,記述は一応確認された機能に止め,多くの未解決の問題が残されていることも強調しておきたい.

臨床検査の問題点・117

リンパ球分離法

著者: 関口進 ,   能勢義介

ページ範囲:P.688 - P.694

 免疫反応の中心的役割を果たすと言われるリンパ球──より多量でより純粋なリンパ球を分離することは,臓器移植の組織適合性を調べることから,疾患との感受性の面で注目されているHLA (human leucocyte antigen)の検査に欠かせないものになっている(カットは,中央か理想的なリンパ球層,左は分離しておらず,右は層が厚く分離し切っていない).

検査と疾患—その動きと考え方・31

重症複合免疫不全症

著者: 岡田昌彦 ,   上原秀樹 ,   崎山幸雄 ,   松本脩三

ページ範囲:P.695 - P.702

 症例 S.D. 1972年4月2日生.
1歳11か月,女児,生下時体重2,655g

座談会

リンパ球機能検査はどれくらい診療に役立つか

著者: 河合忠 ,   矢田純一 ,   高月清

ページ範囲:P.704 - P.711

 リンパ球の増減や異型は,古くから伝染性単核症や百日咳などの感染症の診断に役立ってきたが,近年ではリンパ球subpopulationの分析が進むにつれ免疫不全症をはじめとする新しい病態の解明が進行しつつある.そこで今月は現時点でのリンパ球機能検査の意義を話し合う.

臨床化学分析談話会より・70<関東支部>

新しい発想による診断法の開発を!—胆汁酸測定とその臨床的意義

著者: 仁科甫啓

ページ範囲:P.703 - P.703

 第220回臨床化学分析談話会関東支部例会(1979.3.20)は東大薬学部記念講堂にて行われた."胆汁酸測定とその臨床的意義"と題して東北大薬学部後藤順一先生,筑波大大菅俊明先生に話題提供していただいた.
 ステロイドのカテゴリーに属する胆汗酸は肝臓でコレステロールより生合成された後,主としてグリシンあるいはタウリン抱合体としてmg/dlの単位で胆汁中に排泄され,いわゆる腸肝循環により,その生合成が調節されている.一方,血中にはμg/ml単位でしか存在しないが,血中の胆汁酸濃度が肝機能と密接な関係にあることが最近明らかにされつつあり,生体中の胆汁酸測定が臨床の面からも脚光を浴びてきている.そこで,後藤先生には個々の胆汁酸の分離定量,特に現在提唱されてきているガスクロマトグラフィー(GC),ガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリー(GC-MS),高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの術式を実施するうえの利点,問題点について,文献を豊富に引用されて分かりやすく解説していただくとともに,先生ご自身のユニークな研究内容も披露していただいた.

Ex Laboratorio Clinico・31

Abnormal fibrinogen "Nagoya"

著者: 高松純樹 ,   神谷忠

ページ範囲:P.712 - P.717

フィブリノゲン異常症とは
 フィブリノゲンの質的異常については1944年Fanconiが,1955年にはIngramがその存在について示唆したが,両者とも明確にすることはできなかった.1958年ImperatoとDettoriは,血中フィブリノゲンが極めて低値である重篤な出血症状を呈する少女について報告した1).当時は正確な診断がなされず,後になりフィブリノゲン異常症と分かり,先天性フィブリノゲン異常症の第一例となった.
 1963年Ménachéは免疫学的には何ら正常フィブリノゲンと変わりはないにもかかわらず,トロンビンによる凝固が全く起こらない先天性フィブリノゲン異常症を報告した2).翌1964年にBeckは,新しいフィブリノゲン異常症を発見し,先天性ヘモグロビン異常症と同様に発見された都市の名を付けることを提唱した3).以来現在までに世界で約50例の症例が発見されており,従来量的な異常と考えられていた低フィブリノゲン症の一部には,質的な異常を示すフィブリノゲン異常症も含まれていると考えられるようになった.

研究

セパラックス電気泳動法による血清蛋白分画における"カギ型"アルブミン分画の成因に関する研究

著者: 藤田清貴

ページ範囲:P.718 - P.721

はじめに
 血清蛋白の約60%前後を占めるアルブミンは,一般に栄養蛋白として考えられ,その血中濃度の減少は栄養の低下を意味し,逆に増加は栄養状態の好転を示していると言われている.また,アルブミンは血漿膠質浸透圧を維持し,水分を血管内に引き止めておく重要な蛋白質でもある.
 アルブミンの病気としては,Bennholdら1)が発見したAnalbuminemia, Knedel2)がドイツ人の2家系(3代)を調査して記載したBisalbuminemiaなどが挙げられるが,近年セルロース・アセテート膜電気泳動(以下セ・ア膜電気泳動)において,"カギ型"アルブミンが新生児期にみられることが報告されており,河合ら3)の経験した症例では,全例においてこの異常アルブミンバンドは,生後2週間以内で消失すると述べられているが,原因は現在のところ全く不明である.

感染症診断へのガスクロマトグラフィー応用の試み・1—臨床材料中に微量存在する細菌由来の脂肪酸の分析

著者: 渡辺邦友 ,   上野一恵 ,   沢村治樹 ,   沢赫代 ,   川出真坂 ,   二宮敬宇 ,   鈴木祥一郎

ページ範囲:P.722 - P.725

はじめに
 Gas liquid chromatography (以下GLC)を感染症の迅速診断に用いる試みは,Mitrukaらにより開拓され1,2),近年ではBrooksらがそれを受け継いでいる3,4)
 著者らもここ数年来,嫌気性菌の同定のために常用してきたGLCを,感染症の迅速診断に応用することを目的とし検討を開始した.まずその手始めの段階として,血液培養のカルチャーボトル中の菌の検出及び同定に,GLCを応用することができることを報告した5).今回は膿汁,関節穿刺液などの臨床材料中に微量含まれていると思われる起因菌と生体の相互作用によって生じる有機化合物,特に揮発性脂肪酸(volatile fatty acid;VFA)と難揮発性脂肪酸(non volatile fatty acid;NVFA)に注目し,そのGLC分析パターンと培養成績を比較検討した.

新しいキットの紹介

エラジ酸含有APTT試薬Cephotestの使用経験

著者: 長谷川淳 ,   瀬谷司 ,   小熊豊 ,   山内雅夫 ,   村越敏雄 ,   長田博 ,   村尾誠

ページ範囲:P.726 - P.728

はじめに
 内因性凝固系の凝固ポテンシャルの総和を知る方法として全血凝固時間,Ca再加凝固時間,PTTなどが日常使用されていた,しかし前2者は感度が低く不安定であり,後者は試料の表面接触活性化の程度によって結果が著しく変動することが指摘されていた.そこで試料の表面接触活性の程度による誤差を除去する目的で,カオリンないしセライトの粉末を添加するAPTTが考案され広く使用されるようになった.しかしこの方法の欠点としてカオリンないしセライト粉末の沈降,ケファリン懸濁液の安定度の欠乏などが指摘されていたが,非沈降性の接触活性化剤としてエラジ酸から作られた活性化剤と至適濃度に標準化され,安定化された動物の脳から抽出されたケファリンを使用したCephotestが考案された1).たまたま我々は数年来Cephotestを使用する機会があり,その成績をまとめたのでその概略を報告する.

新しい機器の紹介

ネフェロテックシステムによる血漿蛋白の定量

著者: 田中庸隆 ,   松井正 ,   奥田清 ,   川本和信 ,   山田繁樹

ページ範囲:P.729 - P.732

はじめに
 血漿特異蛋白の定量には,ゲル内沈降反応を用いるSRID (single radial immunodiffusion)法,標識抗体法であるRIA (radio immunoassay)とEIA (enzyme immunoassay),それに溶液内沈降反応を用いる光散乱分析法などがある.
 このうちSRID法が最も広く普及しているが,反応には長時間を要する.光散乱分析法は被検試料と特異抗血清を混合し,一定時間後に生成する抗原抗体複合物に光を照射して,得られる散乱光量から抗原量を求める方法であり,SRID法に比較して高感度で短時間に測定できる特徴を持つ.光束として紫外光(螢光法)1)やレーザー2)を用いた方法は既に発表されており,また螢光偏光解消法なども検討されているのが現状である.

検査室の用語事典

統計学

著者: 土肥一郎

ページ範囲:P.733 - P.733

55) method of least squares;最小自乗法
 n組の2変数データ(x1,y1),(x2,y2),…(xn,yn)があるとき,この値をxy軸から成る平面にプロットする.点のバラツキがほぼ直線的に見えるとき,xの値からyを推定する一次式y=a+bxを作るが,これを作るに当たってa,bを決めるのに,xをこの式に入れて求めたyの推定値y'と実測値yとの差の自乗の総和を最小にするという条件を満たすようにして求める.これを最小自乗法で求めたx上のyの回帰直線と言う.

超音波検査<臨床編>

著者: 竹原靖明

ページ範囲:P.735 - P.735

1.一般
1)異常エコー;abnormal echo
 正常では認められないエコーのすべてを言い,正常エコーに対応するもの.例えば結石エコー,腫瘍エコーなどのように疾患の存在を示唆するようなエコーは,すべてこれに含まれる.

質疑応答

臨床化学 セパラックスSによる蛋白分画/UV法とは

著者: H子 ,   河合式子 ,   S生 ,   𠮷野二男

ページ範囲:P.737 - P.738

 〔問〕セパラックスからセパラックスSに替えたのですが,従来どおり標準法に基づいた0.6mA 40分で約3.7cm (3.5cm前後)に泳動しますと,β領域が二峰性に出ます.緩衝液はアタゴのpH 8.60.07 M(μ=0.056)を用いています.試料の塗布は陰極より2.5cm (3:7)の所に0.8μlぐらいでやっています.
 他の施設に問い合わせてみますと,0.8mA 30分ぐらいで5分画に分かれるそうです.その条件でも6分画になります.セパラックスSについての泳動法をお教えください.

 〔問〕最近,盛んにUV法が使用されていますが,UV法について簡単に教えてください.

血液 トロンボポエチンについて

著者: Y生 ,   長沢洋

ページ範囲:P.739 - P.740

 〔問〕トロンボポエチンの測定法とその臨床的意義をお教えください.

免疫血清 B細胞の由来臓器

著者: N子 ,   熊坂一成 ,   河野均也

ページ範囲:P.740 - P.742

 〔問〕現在リンパ球は免疫学的分類でT細胞,B細胞,Null細胞などに分類されてきていますが,その出現機序及び免疫学的働きは,現在どのように考えられているのでしょうか.入野昭三:悪性リンパ腫,臨床検査,22,280,1978で,B細胞は骨髄由来と書かれてありますが(287ページ),他の文献では,トリではファブリチウス嚢,ヒトでは腸管系リンパ組織とあります.

免疫血清 日本脳炎

著者: M生 ,   大谷明

ページ範囲:P.742 - P.743

 〔問〕以下の四つについてお教えください.
(1)日本脳炎ワクチン製造者の生産株による室内感染は皆無か.

微生物 サルモネラの血清型判定/病理 再び細胞診の判定基準について/臨床生理 機能的残気量及び残気量測定値の変動

著者: I生 ,   坂井千三 ,   T生 ,   石束嘉男 ,   O生 ,   西田修実

ページ範囲:P.743 - P.746

 〔問〕市販のサルモネラ診断用免疫血清O群多価血清に凝集しないサルモネラの判定を強くするには,どのようにすれば良いかお教えください.この場合は,生化学的性状はサルモネラ菌と同定されています.サルモネラ属の中にはO凝集を判定しにくい血清型もあるのでしょうか.

 〔問〕本誌1月号で石束先生は検査技師は"この検体中にはこのような形態学的特徴を持った細胞が認められます"とまでは報告できるが,それ以上はできないと書かれていますが,技師は"この検体には扁平上皮癌細胞(または腺癌,小細胞分化癌細胞)を多数認めます"と報告できるのでしょうか.

 〔問〕残気量の測定で,同じ人で同じときに測定値が大きく出たり小さく出たり,変動が大きいことがあります.理由として,測定技術上どういうことが考えられるのでしょか.

一般検査 重炭酸塩測定

著者: Y生 ,   竹内正 ,   北田増和

ページ範囲:P.746 - P.748

 〔問〕重炭酸塩測定について,血液ガス分析による測定を日常行っておりますが,これは血液のため高い値が読み取れそうにありません.膵液の場合70〜120mEq/lぐらいのところを測りたいのですが,どうしたら良いデータが得られるでしょうか.測定法(試薬や方法)を教えてください.また測定機器はどのメーカーのものが良いでしょうか.

検査機器 自動分析機の長所・短所

著者: F子 ,   高原喜八郎

ページ範囲:P.748 - P.751

 〔問〕昨今の化学検査用自動分析機の進展には目を見張るばかりですが,門外漢にはなかなか製品の長所・短所がつかめません.ましてクローズドシステムにおいてはなおさらです.
 血清,試薬の吸引注入には種々の方法が導入されているようですが,それらの原理ならびに長所・短所をお教えください.

診断学 ペルテス病とは

著者: E生 ,   岩崎勝郎

ページ範囲:P.751 - P.754

 〔問〕小児の成長期に起こる関節病とのことですが,診断法,治療法を教えてください.

雑件 学校教育と進歩する臨床検査

著者: K生 ,   江部充

ページ範囲:P.754 - P.754

 〔問〕私は臨床検査技師として病院勤務5年になります.日進月歩する臨床検査を次々と学ぶよう努力しておりますが,40歳,50歳となって進歩に追いつけないのではないかと前途が不安になることがあります.私が受けた学校教育の程度で,20年後や30年後の検査室での勤務に堪えうるでしょうか.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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