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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査24巻1号

1980年01月発行

雑誌目次

今月の主題 白血病 カラーグラフ

無菌室

著者: 武尾宏 ,   天木一太

ページ範囲:P.4 - P.6

 無菌病室の様式は,テント式(Life Island型)と層流式(水平層流,垂直層流)に大別されるが,白血病などの感染予防に使用されるのは,最近では主に水平層流式無菌病室である.無菌病室の運営要領に関してはまだ一定の基準がなく,各施設の能力に見合った運営がなされているのが現状である.我々も1976年より本装置を使用して白血病の化学療法を試みているので,装置の概要と運営要領について述べる.

技術解説

白血球の特殊染色

著者: 古沢新平

ページ範囲:P.7 - P.18

 今日白血病の診断や病型分類に有用な特殊染色として,ペルオキシダーゼ(POD),ズダンブラックB,エステラーゼ(ES),パス(PAS),酸ホスファターゼ(ACP),アルカリホスファターゼ(ALP),β-グルクロニダーゼなどの染色がある.これらのうちPODあるいはズダンブラックB染色は歴史は古いが,リンパ性と骨髄性とを分ける最も基本的な方法であることは現在も変わりがない.
 近年のトピックはES染色で,基質を変えることにより単球系と好中球系とが正反対の染色態度を示すことから,両者の鑑別に極めて有力な染色法であり,更にリンパ球のサブポピュレーションの分類にも有用とされている.

白血病細胞のTdT活性

著者: 高久史麿

ページ範囲:P.19 - P.25

 TdTはオリゴ・ポリデオキシヌクレオチドをプライマー(primer)として,その3'OH末端にポリデオキシリボヌクレオチド三リン酸からのデオキシリボヌクレオチジル残基の付加を行う特殊なDNAポリメラーゼで,その測定にはpoly dAをプライマーとして3H-dGTPの取り込みでもって測定する生化学的な方法と,TdTに対する抗体を作製して間接螢光抗体法によって個々の細胞中のTdT活性を測定する免疫学的な方法とがある.TdT活性はかつてはT細胞のマーカーとされていたが,ほとんどすべての急性リンパ性白血病及び,約1/3の慢性骨髄性白血病急性転化例の芽球中にTdT活性が証明されること,TdT活性陽性の症例がビンクリスチン・プレドニゾロン(V-P)療法によく反応することなどが判明し,この酵素の病態生理学的ならびに臨床的意義がにわかに注目されるようになった.
 現在TdT活性の生化学的な測定が幾つかの施設においてなされており,また螢光抗体法による測定も一般化しつつあるが,特に後者の螢光抗体法による個々の白血病芽球のTdT活性の測定は,今後日常の臨床検査として広く行われるようになるのではないかと期待される.

Colony stimulating factor

著者: 冨田幹夫

ページ範囲:P.26 - P.30

 骨髄などの造血組織より得られる細胞を,colony stimulating factor (CSF)と呼ばれる物質を含む軟寒天培地に接種すると,細胞が増殖・分化し,顆粒球やマクロファージのコロニーを形成する.この方法はPluznikとSachs (1965年)及びBradlyとMetcalf (1966年)によって開発され,以後,白血球の増殖と分化の機構を解明するための重要な手段となった.臨床的には,白血病などの白血球の産生異常症の病態解明の目的でCSF分子について,コロニーを形成する細胞(CFU-C)とコロニー形成を阻害する生体因子について,この方法によって現在研究が進められている.
 CSFの性状に関する詳細は,拙著1,2)などを参照していただくことにして,ここではマウスの骨髄細胞を用いたCSFの測定法を中心に解説したい.

総説

白血病とHLA

著者: 辻公美

ページ範囲:P.31 - P.37

 白血病とHLAの関係を論ずるに当たって注目すべきことは,疾病とHLAとの関連性の最初の報告が1967年Kourilsky1)により急性リンパ性白血病を対象としてなされたことである.その後10年間のヒト免疫遺伝学,特にHLAの発展はすさまじいものがある.HLA,否,第6染色体上の遺伝子マーカーを武器にすることによって,疾病の原因,素因,診断,治療,予後,予防の面に大きく貢献した.
 ここでは白血病とMHCとの歴史,新しいHLA抗原の概念,二,三の我々の知見を中心に論述し,Cancer immunogeneticsの新しい方向性が生まれることを望むものである.

臨床検査の問題点・123

骨髄生検と骨髄像

著者: 新倉春男 ,   佐野欣一 ,   風間和男 ,   寺田秀夫

ページ範囲:P.38 - P.44

 我が国では,血液疾患の診断に骨髄穿刺(塗抹)検査は従来から行われているが,骨髄生検(組織)は,その重要性の割には普及していない.最近,生検針の改善により生検の実施が容易となり,有用性が更に高まったが,一方生検材料の処理をする検査室としてもますます慎重さを必要としてきている.
(カット写真はJamshidi針)

検査と疾患—その動きと考え方・37

前白血病状態

著者: 伊藤宗元 ,   川戸正文

ページ範囲:P.45 - P.53

 症例1 N.H.初診時40歳,女子,独身,公務員.
 主訴 心悸亢進.

座談会

白血病の研究と新しい検査法

著者: 下山正徳 ,   坂本忍 ,   森山美昭 ,   古沢新平 ,   鎌田七男 ,   柴田昭

ページ範囲:P.54 - P.64

 免疫学的検索法の導入,及び染色体検査,細胞化学,酵素測定などの進歩により白血病の研究や検査は大きな展開をみせている.今月は血液学の第一線のエキスパートに,急性及び慢性の白血病に限ってその診断面の最前線を語っていただく.

Ex Laboratorio Clinico・37

α1-アンチトリプシン欠損症

著者: 大橋晃 ,   猪熊茂子

ページ範囲:P.65 - P.70

はじめに
 何気なく見過ごされがちな検査データの一つ一つを注意深く観察していくことによって,思いがけずに珍しい症例,興味ある症例を発見することがある.血清電気泳動像における異常としては,M蛋白血症,二峰性アルブミン血症などが日常よく遭遇するものであるが,α1分画に注意が向けられることは少ない.ここに紹介するα1-アンチトリプシン(α1-AT)欠損症(Pi null)1)はα1分画の著減が契機となって発見されたものであり,電気泳動像の注意深い観察が稀有な症例を見いだした実例である.

負荷機能検査・1【新連載】

PSP排泄試験

著者: 折田義正 ,   上田尚彦 ,   今井宣子

ページ範囲:P.71 - P.78

 PSP (phenolsulfonphthalein,phenol red)排泄試験は,腎の異物排泄試験であるとともに,一種の負荷試験でもある.本稿ではこの試験について解説したい.
 PSPはRowntreeとGeraghtyにより1910年臨床検査に導入された.彼らは多くの色素の腎からの排泄を多くの動物でテストし,PSPが最も速やかに腎より排泄されること,ヒトの糸球体腎炎患者で排泄が非常に低下することを見いだした.彼らの原法は筋注法であったが,1933年ChapmanとHalsted2)により静注法に改良され,その臨床的価値を高めることとなった.

多変量解析の応用・1【新連載】

多変量解析入門

著者: 古川俊之 ,   田中博

ページ範囲:P.79 - P.89

 臨床検査の目的は,精密な観測によって個体の状態を正しく認識しようとする点にある.ところが精密な観測は正確な記述,認識,及び判断の必要条件であるが,十分条件ではない.ある物質の濃度を有効数字6けたで測定しえたとしても,日内変動や群間変動が2けたある場合には,判断の根拠が確実になるとは言えない.一方,臨床検査の発展に伴って同一被検者の多角的なデータが得られるようになって,いわゆる総合判断の手法を用いることへの素地が作られた.
 このような背景から臨床検査を担当する部門で,数理科学の応用への期待を反映するかのように,代表的な手法である多変量解析を用いた研究が広まりつつある.本講座はこのようなニーズに応えて,多変量解析法の概要を実際に経験した例に即して解説することを目的として企画した.予定の内容は第1回から順次以下のとおりである.

臨床化学分析談話会より・76<関東支部>

CPUの活用にはやはりソフトウエアがポイント—データ処理の工夫

著者: 大竹皓子

ページ範囲:P.90 - P.90

 第225回分析談話会関東支部例会(1979.9.18)は東大薬学部記念講堂で開かれた.夏期セミナーが盛大に終わった後でもあり,また秋の学会シーズンを控えて多忙な折にもかかわらず,会場には大勢の会員が参加して盛会であった.先のリポ蛋白シリーズでは,リポ蛋白の最近の知見とその検査法の新しい情報について学び,議論した.また,11月からは"糖尿病シリーズ"と題して,リポ蛋白と同様の主旨の企画が予定されている.今回の談話会ではこのような企画の合間に,臨床検査の現場では常日ごろ検査に対して求められているものにどう対処しているか,そのためにいかなる工夫がなされているのかを,"臨床化学検査のデータ処理の工夫"をテーマとして,現場の中からの話題を取り上げてみた.話題と提供者は次のとおりであった.
1.自動分析機の統計的管理法

研究

末梢血液検査の正常値及び個人の生理的変動について

著者: 設楽正登 ,   吉元加代子 ,   篠根和子 ,   梅津静子 ,   近藤由紀江 ,   西川美智子 ,   林康之

ページ範囲:P.91 - P.94

緒言
 現在広く使用されている末梢血液検査成績の正常値は,1957年全国規模で実施された小宮ら1)の報告に基づくものである.以来,方法論においては,メランジュールによる視算法から粒度分布を電気的に検出測定する自動血球計数器へと替わり,採血も耳朶,指頭から静脈血を用いるのが一般的となった.また抗凝固剤も,二重シュウ酸塩からEDTA-2K-ヘパリン合剤に替わり,その度ごとに従来の計数法に比較してその影響の有無を論じられてきたことは周知のところである.
 一方,これらの報告による正常値の多くは条件を整えた集団の平均値±2標準偏差で表しており,健康人の個人変動率にまで言及したものは少ない.また集団の1回検査測定における正常値範囲が,固有値±個人変動幅の累積から成り立っていることも明らかなところである.それで我々は個人の正常値を求め,その健康時における変動率を明らかにし,いわゆる正常値の臨床的応用をより精細にすることのできる資料を作ることを目的とし,次の実験を行った.すなわち,特定集団を対象とし約2年間に7回の末梢血液検査を実施し,個人差,個人変動率について解析したのでその成績を報告する.

新しいキットの紹介

エンザイムイムノアッセイによるCEA測定法(ABBOTT)の検討

著者: 伊藤寿美子 ,   飯森糸子 ,   仁科甫啓 ,   北村元仕 ,   佐藤誠也

ページ範囲:P.95 - P.98

はじめに
 癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen;CEA)は,1965年Gold1)らにより結腸癌組織及び胎児の腸管上皮組織中に見いだされた.その後,多くの研究者2,3)によりラジオイムノアッセイ法による測定法が開発され,血中CEAの測定は,内胚葉性器官の癌の診断及び臨床経過の観察に有効な手段として用いられるようになってきた.しかし,アイソトープを用いるため特殊な測定機器と設備を要し,また廃棄物の処理や放射線障害に対する取り扱い上の注意が必要とされるなど,多くの問題がある.
 今回,これらの問題のない酵素を標識物質とし,更にサンドイッチ法を採用した酵素免疫測定法のキット(アボット・CEA-EIA)が開発され,検討する機会を得たので,基礎的検討を行い多少の知見を得たので,その結果を報告する.

HBs抗体検出用PHA法試薬(エーザイ)の使用経験

著者: 舘田朗 ,   桜井富久子 ,   菊地金男 ,   安藤弘一

ページ範囲:P.99 - P.103

はじめに
 Hepatitis B surface antigen (HBs抗原)の発見1)以来,HBs抗原及びこれに対するAntibody to hepatitis B surface antigen (HBs抗体)の測定意義が明らかされ,現在では一般血清検査としてルーチンに測定されている.これらHBs抗原とHBs抗体の検出には種々の方法が開発・実用化されているが,高感度,特異性,定量性,簡便性などの点で,現在HBs抗原では逆受身赤血球凝集反応(Reversed Passive Hemagglutination;RPHA)2),HBs抗体では受身赤血球凝集反応(Passive Hemagglutination;PHA)3)が広く用いられている.しかし両赤血球凝集反応についてなお少なからず問題点がみられ,特に一般検査室においてルーチンに検査する場合,往々にして判定上困惑する問題に遭遇することがある.
 最近,Hepatitis B Virus (HBV)感染に対する予防及び治療におけるHBs抗体の役割が注目され,抗B型肝炎ヒト免疫グロブリン(Hepatitis B Immuno Globulin;HBIG)4)やワクチン5)が開発されるに至った.その実用化に際しては,HBs抗体によるモニタリングは必要欠くべからざるものである.

検査室の用語事典

脳波検査

著者: 江部充

ページ範囲:P.105 - P.105

 脳波の用語は主として生理学で使用する用語から由来しており,臨床検査としては心電図,筋電図など活動電位を記録する検査用語と重複するものが多い.また装置に関係した用語も他の検査と共通するものが多いため,日本脳波・筋電図学会用語集(脳波と筋電図,6,155,1978)と国際脳波・臨床神経生理学会連合用語委員会による用語集(Elect-roenceph.clin.Neurophysiol.,37,538,1974)を参考として,なるべく脳波に限定した用語を選んだ.英文用語の和訳は日本脳波・筋電図学会用語集に従った.一つの英文に二つの和訳が付いているものもある.

筋電図検査

著者: 渡辺誠介

ページ範囲:P.107 - P.107

1) absolute refractory period;絶対不応期
 細胞の興奮直後にはどんなに刺激を与えても興奮しない時期がある.これを絶対不応期と言う.この時期は細胞が脱分極して活動電位を生じている期間と考えられている.

質疑応答

臨床化学 GOD法におけるムタロターゼの作用

著者: S生 ,   奥田潤

ページ範囲:P.109 - P.111

 〔問〕血糖測定をGOD法により行っていますが,GODはα-D-グルコースには作用しないと聞いています.そこでムタロターゼを使用し,α-D-グルコース,β-D-グルコースをより早く測定しようと思いますが,各社のキットをみますと15〜20分で反応が終わってしまいます.これらのキットにムタロターゼを添加してもその反応に変化はみられず,キットの酵素に自家製の溶解液(コハク酸緩衝液)を加えるとムタロターゼの必要性があります.各キットの溶解液にはムタロターゼは使用していないと思いますので,何の作用で速く反応が終わるのでしょうか.またムタロターゼは血糖測定において,必要な酵素なのかどうかお教えください.

臨床化学 二波長測定の特徴

著者: K子 ,   横山宏 ,   斉藤徹

ページ範囲:P.111 - P.113

 〔問〕比色分析に二波長測定を用いた自動分析機を使用していますが,二波長測定の特徴,また波長の決定方法をお教えください.

血液 血漿凝固時間について—遠心時間と正常値

著者: N生 ,   松田保

ページ範囲:P.113 - P.114

 〔問〕血漿凝固時間(血漿カルシウム再加凝固時間)の検査を行っていますが,凝固の本によっては遠心回転数,遠心時間が異なっています.(3,000 rpm10分と1,000 rpm5分).正常値はどちらも90秒以上となっていますが,1,000 rpm5分のときはもっと早くフィブリンの析出が見られるようなのですが…….
〔例〕臨床検査法提要3,000 rpm 10分

免疫血清 間接クームス試験の検体

著者: S生 ,   山崎順啓

ページ範囲:P.114 - P.115

 〔問〕間接クームス試験を利用した交差適合試験では,補体成分が不活性化されるので,抗凝固剤(脱Ca2+)を用いず血清を使用すべきだと言われていますが,補体が作用する条件として,IgG,IgMの結合が必要であり,またこれらが赤血球表面に結合していれば,補体が不活性化されていてもクームス血清で検出できるはずなので,利用しやすい点からも血漿で良いと思うのですが,いかがでしょうか.

微生物 下痢腸炎における細菌検査

著者: W子 ,   坂井千三

ページ範囲:P.115 - P.116

 〔問〕便の一般培養では赤痢,サルモネラ,ビブリオ,ブドウ球菌,病原大腸菌を目的に検査を進めていますが,下痢腸炎の原因菌としては,上記以外の菌はないのでしょうか.当検査室での培養はほとんど小児科からのものです.他に考えられる菌がありましたら教えてください.

病理 Papanicolaou染色

著者: T生 ,   山岸紀美江

ページ範囲:P.116 - P.118

 〔問〕Papanicolaou染色で,OG−6とEA−36を混合して一度に染めることはできないものでしょうか.

臨床生理 肺機能検査における努力性のチェック

著者: M生 ,   谷合哲

ページ範囲:P.118 - P.121

 〔問〕肺機能検査は患者の協力を必要とする検査が多く,チェックによっては正常と異常に分かれることがあります.どのようにチェックしたら良いのでしょうか.

一般検査 クレアチニン・クリアランスの補正

著者: S生 ,   山下秀光 ,   小出輝

ページ範囲:P.121 - P.122

 〔問〕クレアチニン・クリアランスは結果を体表面積で補正しますが,クレアチニン係数は体重で補正すると1日排泄量はかなり一定だと言います.ということは糸球体の濾過能力は体重に比例すると考えられますが,それならクリアランスも体重補正のほうが良いように思うのですがいかがでしょうか.それともクレアチニン係数も体表面積当たりのほうが本当は一定化するのでしょうか.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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