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雑誌目次

論文

臨床検査24巻3号

1980年03月発行

雑誌目次

今月の主題 肝疾患 カラーグラフ

ビクトリア青染色によるHBs抗原の組織内証明

著者: 諏訪幸次 ,   田中薫 ,   森亘

ページ範囲:P.248 - P.250

 最近種々な染色法を用いてホルマリン固定,パラフィン包埋後の薄切組織切片上にHBs抗原を証明する試みがなされているが,いずれも一長一短で更に新しい方法を期待する余地が残されているように思われる.私どもは,一般には比較的よく知られている色素でありながら,今日までこの点では何ら注目されていなかったビクトリア青(VB)によってHBs抗原が青染することに気付き,ケルンエヒト赤(KE)で後染色することにより,赤と青という対照的な色の差によってHBs抗原を鋭敏に検出できることを見いだした.染色法は比較的簡単で安定性があり,生検材料でも容易に染め出せることを特徴としている.

技術解説

肝疾患と肝組織内金属の検査

著者: 恩村雄太 ,   平間元博

ページ範囲:P.251 - P.258

 生体に必須な金属も疾患時には大きな変動を来し,時にその疾患発症の主因あるいは誘因となることはよく知られている.一方,汚染金属例えば水銀,ウラニウム,タリウムなどは腎もしくは中枢神経系に,またカドミウム,ニッケルなどは肺組織にというように金属は比較的特定の臓器,組織に蓄積することが多い.
 代謝の中心臓器である肝では,諸金属の影響は当然否定できないが,そのほとんどが鉄及び銅の代謝障害によるもので,鉄に関しては鉄症(Siderosis),ヘモクロマトーシス(Hemochromatosis),銅に関してはWilson病が代表的疾患として挙げられている.なお近年,ウイルス性肝炎,原発性胆汁性肝硬変症をはじめいろいろな場合に鉄,銅またはその複合体の異常蓄積の起こることが注目されている.

肝疾患と走査型電子顕微鏡

著者: 西正与 ,   市田文弘 ,   武藤正樹 ,   藤田恒夫

ページ範囲:P.259 - P.270

 走査電子顕微鏡(SEM)が肝組織学の研究に応用されて,今まで二次元的切片から再構築して理解していた肝の立体構造を,直接に観察できるようになった.特に肝臓の特別な毛細血管である類洞の内面や毛細胆管の走行を広い範囲にわたって同時に観察できる点が特徴で,光顕や透過電子顕微鏡(TEM)では理解できなかった構造間の位置関係が,手に取るように把握できるようになった.これらの進歩の基礎にSEM標本作製の改革があり,①灌流による細胞表面の洗浄,②タンニン酸オスミウム法による導電性の確保,③凍結割断法と臨界点乾燥法の組み合わせによる正確な形態保存が確立されてきたことは言うまでもない1)
 本稿ではSEMを用いて肝内胆管系の立体構造,類洞やディッセ(Disse)腔の位置関係を提示する.更にそれらの構造が疾患によってどのように修飾されるかを,ヒトの肝生検材料,実験ラット肝を用いて観察した所見を紹介する.

肝血管,リンパ管構築の検査—特にゼラチン注入法について

著者: 佐々木憲一 ,   北爪伸二 ,   奥平雅彦

ページ範囲:P.271 - P.279

 肝は実質細胞(肝細胞),血管,胆管,リンパ管及び結合織から成っている.肝細胞は極めて多種にわたる機能を営んでおり,その変化は肝機能上極めて重要であることはもちろんである,一方肝の脈管系は,それ自体あるいは肝細胞の変化に対応して変貌し,肝疾患の診断上のみならず,その成り立ち・進展を解明するうえで重要な領域である.
 肝への流入血管には,栄養血管である肝動脈と機能血管である門脈があり,この血管の二重支配が肝疾患の進展に興味ある"からみあい"を持っている.多種の肝機能を果たすため,肝臓には毎分1,500mlの血流がこの2本の血管から流入し,肝静脈から流出している.

総説

劇症肝炎と臨床検査

著者: 清水勝 ,   𠮷田貴 ,   本堂克 ,   川出靖彦 ,   高橋善彌太

ページ範囲:P.281 - P.289

 劇症肝炎とは急性肝炎の経過中,意識障害をはじめとする重篤な臨床症状を呈し,短期間のうちに死亡する予後不良の疾患であり,本邦では1971年に開催された第57回日本消化器病学会で提唱された定義1)に従って診断されている.すなわち"急激に起こる肝広汎壊死に基づいて,急速に肝不全症状が現れる肝炎で,臨床像のうえで肝萎縮,進行性の黄疸,なんらかの精神神経症状を伴うものを指す.中でも肝性昏睡は疾患の重篤度を知るうえで有力で,発病前に健康であった症例では特に重要視されるべき症状である.したがって肝機能面では発病する前は正常状態であり,重篤な肝機能障害に基づく肝不全症状が6〜8週以内に現れる場合に限定する"である.
 劇症肝炎は本邦では年間3,700例2)発生すると言われており,その治療成績ははなはだ悪く,最近4年間の全国集計の結果でも救命率は17.3%3〜5)と低く,治療に当たり早期診断,早期治療が重要なことは言うまでもない.

臨床検査の問題点・125

A型肝炎とウイルス検索

著者: 森次保雄 ,   伊瀬郁

ページ範囲:P.290 - P.297

 我が国の全人口の50%以上が,特に20歳代以下はそのほとんどがA型肝炎ウイルスの抗体を保有してなく,生活環境などの変化によっては肝炎が爆発的に広がる危険がある.そこで"A型肝炎ウイルスとは"を軸にして,ウイルス発見の経緯や我が国のA型肝炎の歴史,そしてウィルス抗体価の測定の問題点を話し合っていただく.
(カット写真はA型ウイルスの電顕写真)

検査と疾患—その動きと考え方・39

体質性黄疸

著者: 上野幸久 ,   芳賀稔

ページ範囲:P.299 - P.306

 症例1 J.K.25歳,男性.
 主訴 黄疸,褐色尿,全身倦怠感.

座談会

肝生検をめぐって

著者: 佐々木博 ,   柄沢勉 ,   菅原克彦 ,   鵜沢輝子 ,   志方俊夫

ページ範囲:P.308 - P.317

 肝機能検査はトランスアミナーゼなどの生化学的検査や色素排泄機能検査が大勢を占めるが,一方肝生検による形態学的検査は信頼度が高く,生検技術の向上とともにその件数を増している.ここでは生検をどんなときに施行するのか,また他の肝機能検査と生検像との差異を検討し,更に染色技術,肝炎の感染予防についても言及する.

臨床化学分析談話会より・78<四国支部>

年2回の4県合同セミナーを軸にして—四国支部の発足

著者: 片山善章

ページ範囲:P.298 - P.298

 臨床化学分析談話会とは,臨床化学分析に従事している人たちが集まって勉強会を行っていたことに端を発していると聞かされており,現在では北海道,関東,東海,近畿,山陰の各支部ができるまでに発展してきています.
 事を始めるには,まず"言い出しっぺ"がいなければなりません.たまたま私が大阪にいて,本会の近畿支部の事務的な仕事を微力ながらしていた関係上,四国にもそのような会があればと思い,愛媛県はもちろんのこと四国の事情もよく分からない私が"言い出しっぺ"になりました.当時,愛媛県技師会の臨床化学研究班班長の近藤優先生(松山日赤)にお話ししたところ,長年四国に在住されていて事情をよくご存知の水島淳先生(香川県立中央病院)に相談しようということになりました.それが1977年1月でした.

私のくふう

電卓を用いたコリンエステラーゼ(ΔpH法)の検量線自動読み取り法

著者: 伊藤充 ,   江藤徳文 ,   重広佳枝 ,   橋本和正

ページ範囲:P.318 - P.318

 自動分析器,比色計の発達に伴い,スタンダード値,ファクターなどを機器に設定することによって,検量線を用いなくても試料の測定値を直読できるようになった.しかし検量線が直線性を示さないコリンエステラーゼ(Ch-E)高橋・柴田法などでは,吸光度を測定した後,検量線からpH値を求め,更に試料値とブランク値との差をΔpHとして報告しなければならない繁雑さがある.我々はCh-Eの検量線を二次回帰曲線式に当てはめ,吸光度からΔpHへの検量線読み取りをプログラム電卓により自動化しているので,その概要を紹介する.

Ex Laboratorio Clinico・39

脳波事始・1—欧米編

著者: 下田又季雄

ページ範囲:P.319 - P.324

はじめに
 脳波事始については島薗教授が詳細に報告しておられます1〜3).私もまた一度臨床脳波の歴史的発展経過4)を述べたことがあります.その後私は3年前定年退官記念講演に当たって改めて内外の脳波創世紀の調査をして教えられる点が多かったので,欧米編と国内編に分けて書いてみることにいたします.

負荷機能検査・3

糖負荷試験

著者: 平田幸正

ページ範囲:P.325 - P.329

 今日糖尿病の診断上最も有力な情報を与えるものとして,ブドウ糖負荷試験がある.しかしこのブドウ糖負荷試験が今日のように普及するまでに,意外にも長い年月を要したのであった.
 古くから,糖尿病においては尿糖の出現に糖質摂取の多寡が大きい影響を与えることから,J.Rolloによる糖質制限食という食事療法の基本を生んだのであった.またこのことから逆に糖尿病の診断に際して,一定量の糖質負荷が有意義であるらしいという考え方を生んだのであった.

多変量解析の応用・3

重回帰分析

著者: 古川俊之 ,   田中博

ページ範囲:P.330 - P.336

はじめに
 前回の相関分析の解説で各変量間の相関係数ではなく,一つの変量と他の複数の変量間の相関関係を表す指標として重相関係数を紹介した.相関係数は変量間の線形関係の程度を表す量であるから,重相関係数が十分大きい場合には,一つの変量を他の複数の変量の線型結合式で説明できるようになる.
 重回帰分析とは,このような重相関係数で考えられる相関関係を貝体的に予測式の型に表現したものである.すなわら,目的変数と呼ばれる説明すべき変量をyとし,説明変数と呼ばれる他の腹数の変量をx1,x2,……,xpとすると,説明変数群から,

研究

悪性腫瘍,自己免疫疾患におけるプラーク形成法によるAntibody Dependent Cell-mediated Cytotoxicity(ADCC)の測定

著者: 小松文夫 ,   武内重五郎

ページ範囲:P.337 - P.340

はじめに
近年,種々の疾患におけるAntibody Dependent Cell-mediated Cytotoxicity(ADCC)の研究が盛んになりつつある.ADCCは標的細胞抗原に特異的に結合する抗体(IgG)の存在下で,エフェクター細胞が抗体のFc部分を介して標的細胞に結合し,標的細胞を破壊する現象である.ADCCを担うエフェクター細胞数の動態を測定することは疾患とADCCとの関係を知るうえで,あるいはリンパ球のサブポピュレーションの変動を知るうえで重要である.エフェクター細胞数の定量としてはPerlmannら1,2)によって考案されたプラーク形成法があり,現在その変法も幾つか提唱されている.今回,我々は日本抗体研究所で開発された方法に多少の改変を加えて,悪性腫瘍,自己免疫疾患におけるプラーク形成率を測定した.今回の測定法の特徴を述べながら,これらの疾患のADCCの傾向について報告する.

新しいキットの紹介

FDPLテスト-Uの使用経験

著者: 田浦幸一 ,   柴田哲雄 ,   平井義修 ,   荒谷弘康 ,   横山一章 ,   新里健 ,   原田孝司 ,   緒方弘文 ,   曲泰男

ページ範囲:P.341 - P.344

はじめに
 腎炎患者尿中にフィブリンまたはフィブリノゲン分解産物(以下FDP)が出現することが知られ,糸球体内血液凝固との関連で多くの検討がなされている.今回私たちは,尿中FDPの測定用として従来の0.5μg/mlに比し,0.1μg/mlの感度を有するFDPLテスト-U(帝国臓器製)を各種腎疾患患者30例に使用する機会を得たので,尿中FDPの臨床的意義について考察を加えながら報告する.

新しい機器の紹介

自動血球分類装置"コールターDiff-3"システムの評価

著者: 村井哲夫 ,   榎本孝一

ページ範囲:P.345 - P.348

はじめに
 筑波大学附属病院検査部のシステム化に当たり,血液検査室に自動血球分類装置"コールターDiff-3"システムの採用を決定した.そのシステム性能に検討を加えたので成績を報告する.

検査室の用語事典

脳波検査

著者: 江部充

ページ範囲:P.349 - P.349

19) baseiine;基線
 厳密には脳波計の入力G1,G2に全く等い同位相電位が入力した状態での記録ペンが描く線あるいは校正電圧の加えられていないペン位置の描く線を言う.しかしある時間記録された脳波の振幅のほぼ中央に引かれた線を言うこともある.

筋電図検査

著者: 渡辺誠介

ページ範囲:P.351 - P.351

19) clonus;(クローヌス)間代
 筋伸張反射が異常に亢進しているときにみられる筋伸張反射の律動的な反復現象で,大腿四頭筋,下腿三頭筋にしばしばみられる.例えば足を急に背屈させ,ある力で保持すると下腿三頭筋の律動的な収縮が生ずる.これを足間代と言う.大腿四頭筋のときは膝間代と言う.

質疑応答

臨床化学 CCLF反応と精度管理

著者: T生 ,   池田清子

ページ範囲:P.353 - P.354

 〔問〕CCLF反応の精度管理に関して以下の二つについてお教えください.
1)試薬調製法について

臨床化学 LDHアイソザイム分画

著者: H生 ,   嵯峨実枝子

ページ範囲:P.354 - P.356

 〔問〕LDHのアイソザイム検査に寒天ゲルプレートを用いるキット(和光)を用いています.LDH5より更に陰極側に(たいていLDH5分画の活性が高い場合に)更にバンドが分離されます(下図).これは手技が悪いためでしょうか.それとも更にサブタイプの分画があるのでしょうか.

血液 寄生虫感染での好酸球増加

著者: E生 ,   辻守康

ページ範囲:P.356 - P.358

 〔問〕寄生虫感染ではなぜ末梢血液像で好酸球が増えるのでしょうか.

免疫血清 狭域等電点平板電気泳動法

著者: S生 ,   松田好史

ページ範囲:P.358 - P.360

 〔問〕狭域等電点平板電気を用いての担癌宿主の免疫抑制酸性蛋白(immunosuppressive acid protein;IAP)の測定法をお教えください.泳動方法や試薬の作製方法など,できるだけ具体的にお願いいたします.

免疫血清 クームス試験のレポートの仕方

著者: N子 ,   水岡慶二

ページ範囲:P.360 - P.361

 〔問〕直接クームス試験で自己凝集が見られた場合のレポートの仕方をお教えください.

病理 LDHアイソザイムの組織化学

著者: O生 ,   三輪和子

ページ範囲:P.361 - P.363

 〔問〕最近LDHアイソザイムの塗抹標本による組織化学が行われていることを本誌で読みました.実際に手掛けてみましたところ均一に染色ができないことがあります.どこかコツがあるのでしょうか.

臨床生理 基礎代謝検査

著者: U生 ,   紫芝良昌

ページ範囲:P.363 - P.364

 〔問〕最近基礎代謝検査が少なくなっていますが,臨床的価値が低いためでしょうか.また日常検査項目から除いても良いのでしょうか.

一般検査 Tamm-Horsfall蛋白とは

著者: M生 ,   藤林敏宏

ページ範囲:P.364 - P.366

 〔問〕Tamm-Horsfall蛋白とはどんな蛋白質ですか.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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