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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査25巻1号

1981年01月発行

雑誌目次

今月の主題 リンフォカイン カラーグラフ

T細胞,B細胞の細胞化学

著者: 三方淳男 ,   鈴木裕

ページ範囲:P.4 - P.6

 血液学では,従来より細胞化学的検索が,細胞機能を形態学的に追求する手段として広く用いられてきた.リンパ球の機能がはなばなしく解明されると同時に,その形態学的な特徴を捕らえるために,超微形態学や細胞化学が応用され,多くの新知見が集積してきた.リンパ球のサブクラス,サブセットに対応する細胞化学的特徴も把握されている.細胞内の各種酵素活性と膜受容体発現の相関なども,血液細胞をモデルとして今後更に詳細な追求が行われるであろう.ここではリンパ球の免疫学的な表面形質と,各種酵素活性の細胞化学的所見との関連について示説する.

技術解説

マクロファージ遊走阻止試験

著者: 山浦昇 ,   染谷彰

ページ範囲:P.7 - P.14

 マクロファージ遊走阻止試験(MIT)は,in vitroにおいて生体の遅延型アレルギー性の有無を調べるために考え出されたものである1).その後,遅延型アレルギーのみならず広義の細胞性免疫に感作された動物のリンパ球は,対応抗原と培養することによって複数の生物学的活性物質を産生することが分かり,それらは総称してリンフォカインと呼ばれている2).その中に,migration inhibitory factor(MIF)と呼ばれる物質も含まれている3).このMIFがマクロファージの膜表面のレセプターに結合すると,粘着性が増してその遊走運動を阻止すると考えられている.
 本試験は遅延型のアレルギー反応だけでなく,移植免疫,特殊感染症の免疫,腫瘍免疫を含む広義の細胞性免疫の消長を正しく反映していることが確かめられ4〜9),本試験の臨床応用への試みが幅広く行われるようになった.臨床応用例としては,前述したもののほかに免疫不全疾患患者の免疫能の検査10,11),悪性腫瘍の術後の予後判定12),自己免疫疾患の検索13,14),などが挙げられる.

リンフォトキシンの検査

著者: 伊藤忠一

ページ範囲:P.15 - P.19

 リンパ球を介して起こる免疫反応としての標的細胞傷害現象には,少なくとも5種類あることが現在までに知られている.すなわち,①キラー(killer) T細胞(TK)または細胞傷害リンパ球(cytotoxic lym-phocyte;TC)による直接標的細胞傷害,②抗体依存性リンパ球介在性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity;ADCC).これに関与するリンパ球はIgGのFc部分に対する受容体を担うリンパ球でK細胞と総称されているが,大部分のB細胞とT細胞の一部分がこれに属する,③natural killer細胞(NK細胞)による細胞傷害,④感作リンパ球より遊離される特異マクロファージ武装因子(specific macrophage arming factor;SMAF)あるいはマクロファージ活性化因子(ma-crophage activating factor;MAF)によって活性化される"armed"あるいは"activated"マクロファージによる細胞傷害,⑤感作リンパ球より遊離されるLTによる傷害,である.
 感作リンパ球を感作に用いた抗原とともに培養すると,リンパ球は形態的に幼若化すると同時に各種の生物学的活性を持つ可溶性物質を合成し遊離する.

プロテインAとStaphylococcus aureus Cowan I株によるリンパ球検査法及びその応用

著者: 河合忠 ,   伊藤喜久 ,   笠原忠

ページ範囲:P.20 - P.27

 プロテインAは,Staphylococcus aureusのほとんどの菌株の菌体細胞壁表面にペプチドグリカンと結合して存在する分子量42,000の蛋白質である1).この蛋白質は,免疫グロブリン特にIgGのFc部分との結合性を有することから2),血中免疫複合体の測定3),IgGの精製4),プロテインA感作ヒツジ赤血球による表面IgG保有細胞の検出などに広く応用されている5)
 Forsgrenらは,プロテインAを菌体表面に豊富に保有するStaphylococcus aureus Cowan I株菌体(不溶性プロテインA:SpA CoI)がT細胞非依存性のB細胞に特異的なマイトジェンであることを示し6),Mollerらは免疫グロブリン産生の強力な多クローン性B細胞活性化因子であることをプラック測定により証明し7),B細胞機能検定のための有力なマイトジェンとしての道を開いた.一方,菌体より精製された可溶性プロテインA(プロテインA)はT・B細胞協力により,T,B細胞両方を刺激することが示されている8)

総説

リンフォカインと臨床的意義

著者: 笠倉新平

ページ範囲:P.29 - P.35

リンフォカインとは何か
 感作リンパ球を感作に用いた抗原とともに培養すると,リンパ球は種々の活性物質を培養液中に放出する.これらのうち免疫グロブリンを除いた活性物質をリンフォカイン(Lymphokine)と付名けており,遅延型過敏症,標的細胞傷害をはじめ種々の細胞性免疫を発現させる作用物質として,あるいは液性免疫においてその調節機能に関与する作用物質として注目されている。非感作リンパ球でも,マイトジェンであるPHA,Con A,PWMなどで刺激培養した際に産生される.
 現在,少なくとも50種類のリンフォカインが報告されているが,これらのリンフォカインはいずれもin vitroでの試験管テストによって発見されたものであり,これらのリンフォカインの分子性状の異同,物理化学的性質についてはまだ明らかでないものが多い.したがって,これらのリンフォカインのうち幾つかは単にアッセイ方法の違いによって異なる活性を示し,そのため全く異なるリンフォカインとして別々に報告されたが,実際はいずれの活性も同一物質によって示されている可能性もあるし,また報告されているリンフォカインの幾つかは単に試験管内での人為的現象にすぎず,生体内での免疫反応には全く関与していない可能性もある.主なリンフォカインを表1に挙げた.本稿ではこれらのリンフォカインのうち,ヒトで比較的よく研究されているリンフォカインについて述べてみたい.

臨床検査の問題点・135

マイトジェンの選択と使い方

著者: 笠原忠 ,   笠原和恵

ページ範囲:P.36 - P.42

 細胞性免疫検査におけるリンパ球活性化に必要なマイトジェンはCon A,PHA,PWMをはじめ多くの植物性レクチンが市販されている.それらのレクチンは病態により選択を要求され,またその性質を知ったうえで使用しなければ的確な反応性の評価は得られない.

検査と疾患—その動きと考え方・49

慢性皮膚粘膜カンジダ症

著者: 楠俊雄 ,   原田誠一

ページ範囲:P.43 - P.50

 症例 13歳,男子,中学生.
 主訴 爪の変形・混濁及び右足背の地図状皮疹.

座談会

細胞性免疫検査法の展望

著者: 倉辻忠俊 ,   河野均也 ,   河合忠

ページ範囲:P.52 - P.59

 リンパ球,マクロファージが演じる細胞性免疫は,その生体反応として遅延型過敏反応,移植免疫,腫瘍免疫があり,更には自己免疫病の発症にも大きな影響を及ぼし,また病原体に対する感染防御機構にも重要な役割を果たしている.そこで臨床検査として,免疫病,遺伝病,感染症にその重要性を高めつつある細胞性免疫検査の現況と将来について検討してみる.

私のくふう

収縮させないセルロゲルの乾燥法

著者: 河村孝夫

ページ範囲:P.14 - P.14

 現在セルロゲルを用いた各種アイソエンザイムが普及していますが,この取り扱いにたいへん苦労します.特に染色後の乾燥,透明化は,注意しないとセルロゲルが収縮してしまいます.
 そこで私は染色,水洗後のセルロゲルの水分を濾紙で吸い取り,新しい濾紙の上にセルロゲルを置いて,その上からセロテープでセルロゲルに気泡が入らないようにピッタリ濾紙に貼り付け,更に上下に濾紙を2〜3枚重ねやや重い本を載せ,1晩放置します.乾燥したセルロゲルをセロテープにくっ付けたまま濾紙から剥き取り,透明化のためデカリンに浸し直ちにセロテープをゆっくりと剥がし,透明化しています.

尿沈渣用試験管立て

著者: 小嶺敏勝

ページ範囲:P.50 - P.50

近時尿沈渣用スピッツは軽量化し,従来の試験管立てでは不安定で,同一高さの場合探し難いなどの難点があるたるめ.透明なポリアクリル樹脂で製作してみた(図1).(見掛け上は2段だが,4段になる.)
 置いた状態で沈渣内容が見え,水洗が簡単で清潔であるし,安定感があり伝票も横にすっきりと入り,半定量テープは管と管との間に置いて判定できるなどの利点がある.

臨床化学分析談話会より・88<関東支部>

臨床検査への応用の評価—FFAの酵素法

著者: 大竹皓子

ページ範囲:P.51 - P.51

 第234回分析談話会関東支部例会(1980.7.15)は慶応大学医学部東校舎講堂において開かれた.今回は新しい技術シリーズの3回目で,"NEFAの酵素法について"と題して,基礎研究の立場から清水昌(京大・農),臨床検査の立場から橋本寿美子(虎の門病院)がそれぞれ話題提供をした.
 1975年に高橋十郎らが,生体内脂質代謝過程での遊離脂肪酸(NEFA,FFA)活性化機構に着目して,Acyl CoA Synthetase (ACS,EC 6.2.13)を用いたFFAの酵素的測定法を開発して以来,最近急速に臨床検査の中へ浸透しつつある.主なものに,ATPとCoAの存在下にACSを用いてFFAを活性化し,その際に生じるAMPにミオキナーゼ,ピルビン酸キナーゼ,LDHを連続的に作用させ,最終的にNADHの吸光度の変化として捕らえる方法,ACSの作用によって生じたAcylCoAに,Acyl CoA oxidase (ACO)を作用させて過酸化水素を生成させ,POD存在下で2,4—ジブロムフェノールと4—アミノアンチピリンを赤色キノンへ導く方法,更にACS作用後に残存しているCoAを発色させて定量し,残存CoAの量からFFAの濃度を求める方法などがある.

Ex Laboratorio Clinico・49

サプレッサーT細胞増加による免疫グロブリン欠乏症

著者: 新保敏和 ,   菅原眞智子 ,   矢田純一

ページ範囲:P.60 - P.64

はじめに
 抗体は血清,組織間液,分泌液などに存在し,物理化学的には主にγグロブリアに属する蛋白であるが,免疫学的活性を有することにより免疫グロブリンと呼ばれ,IgM,IgG,IgA,IgD,IgEの5種に区分される.その重要な働きはウイルスや細菌の感染から生体を守る働きである.免疫グロブリン産生の著しい低下やその欠乏状態は感染症に対する防御が不良となり,反復性の感染を示し,時には遷延化するあるいは重症化する感染症を引き起こす.
 この免疫グロブリンの欠乏は産生に関与する細胞に異常があると考えられている.免疫グロブリン産生細胞へと分化するべきB細胞の欠損,またはその分化過程における障害が考えられる.B細胞の分化にはT細胞の関与が必要であり,分化に働くT細胞はヘルパーT細胞と呼ばれる.一方,B細胞の分化を抑制するT細胞はサフレッサーT細胞と呼ばれる.通常,両T細胞は生体の恒常性を維持するために働くわけだが,免疫グロブリン欠乏症(無または低γグロブリン血症)の中に,サフレッサーT細胞の活性増強によるもののある可能性がWaldmannらにより報告された1).以下,原発性免疫不全症におけるサプレッサーT細胞の増加例を,我々の研究成績から述べてみたいと思う.

負荷機能検査・13

アレルゲンとスパイロメトリー

著者: 谷本普一 ,   石丸志保

ページ範囲:P.65 - P.70

気管支喘息におけるアレルギーの意義と吸入誘発試験の歴史
 気管支喘息の発症におけるアレルギーの役割は極めて重要であり,喘息患者の約2/3はアレルギーによって発症する.そのアレルギーの機序はまだ十分に解明し尽くされたとは言えないが,気管支喘息のアレルギーばI型アレルギー反応が主であり,それにIII型,まれにIV型反応が加わったものと考えられる.
 喘息患者では,アレルゲンが吸入されると流血中にIgEに属するレアギン抗体が産生され,それが気管支粘膜に存在するマスト細胞(肥満細胞)に固着する.抗体が出来上がったところへ再びアレルゲンが吸入されると,アレルゲンはマスト細胞に固着しているレアギンと結合する.これが抗原抗体反応であり,抗原抗体結合の結果マスト細胞で脱顆粒現象が起こり,ヒスタミン,SRS-Aなどの化学伝達物質(chemical mediator)が遊離する.これらの物質は直接気管支組織に働き,平滑筋収縮,血管透過性亢進,気管支腺刺激による分泌亢進を起こし,閉塞性換気障害を生じついには喘鳴を伴う呼吸困難が発現する(図1).

アイソエンザイム・1【新連載】

アイソエンザイム総論

著者: 玄番昭夫

ページ範囲:P.71 - P.75

アイソエンザイムとは
 アイソエンザイム(isoenzyme),あるいはアイソザイム(isozyme)とは,一言で言うと"酵素の複数形"のことであり,これは同一生物種内に自然発生した同じ酵素活性を有する酵素蛋白のことである.ただここで問題になるのは,この酵素の複数形が自然発生学的過程のどの段階で生成されたものであるかという点である.すなわち遺伝学的に酵素蛋白の一次構造が決定されるときに酵素の複数形が生じたのか,あるいはその決定された後に複数形になったのかという点である.
 国際生化学連合の生化学命名委員会(CBN)の勧告案では前者,つまり一次構造に遺伝学的に決定された差をもって生じた酵素の複数形のことをアイソェンザイムと定義している。確かに遺伝学的な酵素の複数形と,その後に生じた酵素の複数形とは,その起原を異にするという点では全く違うものである,しかしその起原のいかんを問わず,生体内で自然発生した酵素の複数形が,生体機能を最大に発揮させる目的のために複数化したものであれば,生理学的機能という面における両者の差はそれほど大きなものとは考えられない.更に臨床的にアイソエンザイムを取り扱う場合には単なる現象として疾患との結び付きを見ていくにすぎず,このことと,自然発生学的事柄とはほとんど関係ないものになってしまう.

編集者への手紙

中華人民共和国の検査技師

著者: 谷島清郎

ページ範囲:P.76 - P.76

 瀋陽市にある中国医科大学附属第一医院検査室の友人から,中華人民共和国の検査室や検査技術者について手紙で,同時に資料をそえて教えていただいた.これまでにも,二,三の紹介はみられるが1,2),検査技術者の養成制度については詳細が分からなかったので,特にこの点に関して何かのお役に立てば幸いです.

研究

抗EA-IgG抗体測定に用いるEA抗原作製方法

著者: 武井みどり

ページ範囲:P.77 - P.79

はじめに
 EBウイルス(EBV)関連抗原の一つである早期抗原1)(early antigen;EA)をIUdRを用いて効率良く誘発させる方法を検討した,この実験の目的は,細胞生残率をよく保ちながらEAの保有率の高い細胞を得.塗抹標本を作製するところにある,細胞生残率を問題としているのは免疫螢光法(immunofluorescense;IF)を用いて抗体価を測定する際,死細胞が多く存在すると非特異螢光の原因となり誤った結果を出す恐れがあるためである.
 EAに対する抗体はEBV感染症である伝染性単核症2)(infectious mononucleosis;IM)や上咽頭癌(naso-pharyngeal carcinoma;NPC),Burkittリンパ腫3)(Bu-rkitt lymphoma;BL)などの患者血清中に検出される.その他,白血病やHodgkin病でも検出さねることがあるが、これは患者の細胞性免疫能の低下によると考えられている.また小児でまれにこの抗体が検出されることがあるが,これはEBVの不顕性感染を示唆する4).なお正常健康人に証明されることはごくまれである.特にIMにおけるこの抗体価の推移を見ると,EBV感染後10日くらいから抗EA抗体が出現し,1か月くらいでピークに達し2)治癒とともに約5か月後には完全に消失するので,この抗体の追跡はIM診断上に有用である.

TMPyPを用いた血清銅の簡易直接定量法

著者: 森下芳孝 ,   中根清司 ,   高阪彰

ページ範囲:P.80 - P.84

はじめに
 血清銅は鉄の吸収,動員利用に関連を有し,かつ造血に必須な物質であり,胆道疾患,感染症,再生不良性貧血に高値を示し,Wilson病,肝硬変などのセルロプラスミン合成障害時には低値を示すことが知られている.
 現在,血清銅定量法としてLanders-Zakの松原変法1)が一般的に採用されているが,感度の点で問題があり,測定に際し多量の血清が必要である.

ヘパプラスチンテストの自動化の試み

著者: 薄和保 ,   秋山康博 ,   坂部尚子 ,   川島英敏

ページ範囲:P.85 - P.88

緒言
 ヘパプラスチンテスト(エーザイ)は.内因性凝血阻害因子(PIVKA)に感受されず肝,胆道疾患時に低下する3種の凝血因子(第II,VII、X因子)の活性を正確に測定できるよう,Owrenら12)が開発した凝血能検査試薬である1〜4).したがってヘパプラスチンテスト値は,単に凝血能を示すだけでなく,肝臓における凝血蛋白の合成能を正しく反映することから,肝機能検査薬としても広く用いられている5〜7)
 しかしヘパプラスチンテストは一般には用手法により,凝固反応終末点を肉眼で判定する方法がとられていることから,判定のバラツキや測定者による個人差が生じることは避けられない事実である.

Paul-Bunnell反応のマイクロタイター法への応用及び各種動物血球を用いた異好抗体の測定

著者: 熊谷エツ子 ,   上村弘子 ,   大瀬戸素子

ページ範囲:P.89 - P.92

目的
 現在,EBウイルス(EBV)感染症と考えられる伝染性単核症(IM)1)は,発熱,リンパ節腫脹,異型リンパ球の増加,Paul-Bunnell(P-B)反応,Davidsohn吸収試験2)(P-B-D反応)の上昇,EBV抗体価の上昇などを特徴とする熱性疾患である.日常,IMの血清学的診断に用いられているヒツジ血球を用いたP-B反応は感度が悪く,P-B-D反応を行って異好抗体の吸収パターンを見ようとしても,吸収前の値が低いため鑑別が困難である.そこで今回,私たちはヒツジ血球とヒツジ血球より感度の高いウマ血球4)を用いて,手技の省力化,検体及び試薬の微量化を目的として,マイクロタイター法で異好抗体の検出を試みた.更に各種動物血球を用いた異好抗体の検出など若干の検討を行ったので報告する.

新しいキットの紹介

スパックコルチゾールキットの使用経験

著者: 小菅幸子 ,   仁科甫啓 ,   高橋十志子 ,   高山夕子 ,   橋本寿美子

ページ範囲:P.93 - P.96

はじめに
 血中コルチゾール測定が診断上有益な情報となりうることは明らかであるが,従来の螢光法でコルチゾールを特異的に測定するのには血漿1ml近くを必要とし,日常検査として頻繁に測定するのには問題がみられた.
 近年登場してきたラジオイムノアッセイ(RIA)法による測定では5〜10μlの検体量で,しかも有機溶媒抽出を行わない直接法も提唱されてきており,微量,迅速,簡便性などの点から注目されている.しかし.用いる抗体により特異性が異なり,正確度での問題がみられた.

サブタイプayの抗HBsを感作に用いて作製したRPHA測定試薬

著者: 船越哲 ,   上村八尋 ,   西川勝 ,   田島政和 ,   生垣賢

ページ範囲:P.97 - P.100

はじめに
 現在RPHA法によるHBsAgの測定試薬は数多く市販されるに至っている.HBsAgにはadr,adw,ayr,aywの4種のサブタイプがある.このうちayは日本では1%以下であるが,特定の地域,例えばGianotti病の流行地域などではayの比率が高くなり,疫学的にも臨床検査においても,ayを診断することが重要な場合も多い.
 日本においてはほとんどがadrとadwであることから,日本で集められたHBsAg陽性材料を用いて製造されたRPHA試薬では,yをほとんど含まないと考えられる.実際PHA試薬(ヘブスゲンセル®)は抗yとは反応しないことが明らかとされている1).これに対してrとwについては,RPHA試薬(アンティヘブセル,オーセル,リバースセル)でいずれもadrとadwの血清中最小検出濃度に差は認められていない2)

検査室の用語事典

凝固・線溶検査

著者: 藤巻道男

ページ範囲:P.101 - P.101

1)アイビー法;Ivy method
出血時間の測定法として,1941年にIvyによって考案された方法である.毛細血管に一定の圧を加えて毛細血管の収縮による影響を除いて測定する方法で,前腕屈側部が用いられる.欧米で多く行われている方法であり,その正常値は3〜6分である.

細胞診

著者: 浦部幹雄

ページ範囲:P.103 - P.103

1)悪性細胞;malignant cell
正常細胞に比し増殖が旺盛で,形態学的に核の腫大,染色質の増量,核辺縁の不規則性などが一般的な特徴である.細胞診における細胞形態の目安は,核径が10μm以上,核・細胞質比の大,核小体の増加増大,細胞相互間の大小不同性及び核縁の肥厚などである.

質疑応答

臨床化学 血中乳酸測定法

著者: 仁科甫啓 ,   M生

ページ範囲:P.105 - P.107

 〔問〕Lactate-UV-Test (Boehringer Mannheim)の反応時間は25℃60分ですが,これを短くすべくいろいろ実験してみましたが,反応がスムースにいきません.温度を変えることも試みましたが,反応が不安定で再現性も悪く余り良い結果は得られませんでした.何か良い方法がありましたらご教示ください.また温度の補正法も併せてお教えください.

血液 ヘモグロビン電気泳動における支持体

著者: 宮地隆興 ,   H生

ページ範囲:P.107 - P.110

 〔問〕ヘモグロビン(異常ヘモグロビンを含む)電気泳動において,現在支持体としてセルロースアセテート膜を用いておりますが,それに代わるもっと良い支持体はないものでしょうか.緩衝液はpH8.6のトリス—EDTA—ホウ酸を使用しております.

免疫血清 乳・幼児の血液型

著者: 遠山博 ,   K子

ページ範囲:P.110 - P.112

 〔問〕 乳・幼児の血液型が大人とほぼ同じくらいに反応するのは,何か月または何歳ぐらいからでしょうか.またウラ試験できちんと出るのはいつごろからでしょうか.
 現在1歳未満の子供については,もう少し大きくなったら再検査をするように推めてはいるのですが….

微生物 ヘモフィルス菌の感受性検査

著者: 小栗豊子 ,   K生

ページ範囲:P.112 - P.114

 〔問〕Haemophilus influenzaeの感受性試験をチョコレート平板,1濃度ディスク法で実施した場合,ペニシリン系とセファロスポリン系に限り多くの場合阻止円内にある程度の菌の発育が見られます.この場合,阻止円内の発育はその濃淡にかかわらずすべて無視して判定してよいのでしょうか.また上記薬剤に限ってこうなる場合があるのはなぜですか.

雑件 小規模施設における日常の成績管理

著者: 水島淳 ,   N子

ページ範囲:P.114 - P.118

 〔問〕人員3名の小規模検査室ですが,僻地のためかなりの項目数の検査を行っています.特に生化学関係の精度管理が難しく,現在試薬メーカーのサーベイ(毎日)と日本医師会のサーベイに参加していますが,なかなか満足のゆくものになりません.何か良い方法がありましたら御教示ください.
 人員:技師,助手,看護婦各1名

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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