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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査26巻1号

1982年01月発行

雑誌目次

今月の主題 栄養 カラーグラフ

栄養障害性貧血

著者: 宮崎保

ページ範囲:P.4 - P.6

 栄養障害性貧血として日常の臨床でよく遭遇するものは鉄欠乏性貧血と巨赤芽球性貧血である.前者は赤血球産生に必要素材としての鉄欠乏により低色素性小球性,後者はビタミンB12あるいは葉酸欠乏によりピリミジン合成障害を起こし,これがDNA合成障害に至り細胞の分裂異常,巨大化を起こすので大球性貧血,汎血球減少を示す.いずれも末稍血液,骨髄血液の塗抹標本をよく鏡検することが重要なので,これを中心にし,さらに鉄代謝,無効造血の反映としての血清LDH異常高値とアイソザイムの特微について解説する.

技術解説

ビタミンD代謝産物の血中濃度の測定

著者: 窪田実 ,   須田立雄

ページ範囲:P.7 - P.18

 最近ビタミンDの研究は著しい進歩を遂げ,その代謝と生理活性の全貌が解明されつつある.体内で合成される活性型ヒタミンDは強力な血清Ca上昇作用を有し,副甲状腺ホルモン,カルチトニンとともにCa調節ホルモンの一つと考えられている.したがってCa代謝異常を伴う各種疾患の診断と治療に際し,血中ビタミンD代謝産物の濃度を知ることの臨床的意義は大きく,その方法について種々検討が加えられている.現在測定可能で臨床に応用されているビタミンD代謝産物は25—ヒドロキシビタミンD〔25—(OH)—D〕,24,25—ジヒドロキシビタミンD〔24,25—(OH)2—D〕および1α,25—ジヒドロキシビタミンD〔1α,25—(OH)2—D〕であるが,本稿ではその代謝過程を異化に至るまで簡単に説明し,後に血中ビタミンD代謝産物の測定法を技術解説する.

ビタミンCの定量分析

著者: 荒川信彦 ,   大塚恵

ページ範囲:P.19 - P.32

 ビタミンCはアスコルビン酸(L-ascorbic acid;AsA)の化学名で知られ,細胞内における各種の物質代謝に多様に関与している.主な生理作用としてはコラーゲンの生成と保持がある.また,チロシンやコレステロールの代謝に重要な役割を演ずる.さらにホルモンとの関係も密接であり,ストレス時のアドレナリン分泌にはAsAが必要とされている.
 しかし,霊長類(ヒト,サル)およびモルモットなどにはAsA生合成能がなく,これをビタミンとして摂取しなければならない.AsA欠乏によって起こる壊血病では,組織の発育が悪くなり,皮膚や歯齦からの出血,発育障害が現れる.また感染に対する抵抗力も低下し,傷の治癒も遅れることが知られている.AsA不足状態を初期に発見するために毛細血管抵抗の測定やインドフェノール皮内反応,血中・尿中のAsA濃度測定などの検査法がある.

ビタミンB12と葉酸の測定法

著者: 田中信夫

ページ範囲:P.33 - P.42

 ビタミンB12および葉酸は造血ビタミンの一種として知られ,これらビタミンの摂取量の不足,吸収障害および需要増大などの原因に基づく生体内ビタミン含有量の減少あるいは利用障害は,骨髄造血細胞の核酸合成障害をきたし,巨赤芽球性貧血正(me-galoblastic anemia)を発症する1〜4)
 他方,血液中ビタミンB12が異常に増加する,いわゆる高ビタミンB12血症5〜7)は急性骨髄性白血病,慢性骨髄性白血病,急性前骨髄性白血病8,9),真性多血症,肝障害4,10,11)およびある種の悪性腫瘍12,13)においてみられ,特に慢性骨髄性白血病および急性肝障害時に起こる血中ビタミンB12高値はそれらの臨床診断に有意義である.

総説

栄養の問題と臨床検査

著者: 細谷憲政

ページ範囲:P.43 - P.49

 昭和56年の7月半ばごろ,『臨床検査』の編集部から,昭和57年の1月号は"栄養"を主題として取り組みたいので,「栄養とビタミン」という標題で,総説を執筆してくれと依頼してきた.諸栄養(素)とビタミンとの関係,相互作用(機能),人体(健康)に対する両者の作用,すなわち,栄養(素)とビタミンの発癌,制癌作用や,あるいは,その他の具体的な作用などについて,最近の知見を交えて執筆してくれと.そこで,添付されてきた執筆目録を拝見したところ,栄養問題に対する基本的な考えかた,取り組みかたに,私の立場としては,多少納得のできない点もあったので,お断りすることにした.
 しかしながら,紹介の労をとってくれた先生方に失礼申し上げてはと思い,旧友の山中學教授に,その旨を伝えた.ところが,山中教授からは,私が主張している,人体側面からみる栄養問題の取り組みについて,何の制限もなく,自由な立場で執筆してくれと強く要請されてしまった.人体側面から栄養の問題を取り組む場合には,臨床検査との関連が大きなウェイトを示してくることになるので,栄養問題における臨床検査の位置づけについて記述してはどうかと.そこで,いたしかたなく,結果的には執筆を引き受けることになり,締め切りをギリギリまで延ばしてもらって,つぎはぎの一文を提出することにした.

臨床検査の問題点・147

ビタミン剤投与と検査への妨害

著者: 安田和人 ,   大場操児

ページ範囲:P.50 - P.57

 ビタミンは"薬"ではないという診療側の意識であり,検査依頼伝票でも使用薬剤の項目でチェックされない現状では,大量投与の際にも,検査室からの問い直しによる確認が必要である.妨害が予想される検体では事前に手を打って検査を進めることもでき,検査データを注意深く読んで,妨害を見つけることもできる.そのための具体的な方法を話し合っていただいた.

検査と疾患—その動きと考え方・61

栄養障害性貧血

著者: 宮崎保 ,   樋口晶文 ,   片平潤一

ページ範囲:P.58 - P.67

 栄養障害性貧血とは,"赤血球および血色素の生成に必要な物質が,種々の原因で十分に供給されないために発生する貧血"と定義される.赤血球生成に必要な物質,すなわち栄養素として重要なものは全栄養素に及ぶが,特にその物質が不足するために貧血に至るものと規定すれば,蛋白質,脂肪,ビタミンとしてC, B2,B6,B12,葉酸および脂溶性のものとしてE,また無機物質として鉄,銅などがある.これらの物質のうち外から供給されなければならないもの,すなわち生体内で作ることのできない物質が不足した場合,広義の栄養障害性貧血と呼ばれうる.
 これらの病態の成立には,①食餌性欠乏,②生体側におけるこれらの物質の代謝障害,すなわち吸収,移送,利用,貯蔵などの障害が関係する.

座談会

食事,飲酒,喫煙と検査データ

著者: 加瀬沢信彦 ,   香川芳子 ,   浅野牧茂 ,   林康之

ページ範囲:P.68 - P.76

 食生活,嗜好が検査データにどのように影響を及ぼしているのか.長期的な食生活の蓄積は,どのような項目に影響し,短期的にはどの項目が変動するのか.飲酒と喫煙は,実際にデータをどれだけ動かしているのか.それぞれの立場で,これらの疑問について話し合っていただいた.

負荷機能検査・25

FIGLU試験

著者: 外林秀紀

ページ範囲:P.77 - P.85

 葉酸(folic acid;FA)はビタミンB群に属し,ビタミンB12とともに造血ビタミンと呼ばれている.

学会印象記

第28回日本臨床病理学会/第32回電気泳動学会

著者: 青木良雄

ページ範囲:P.88 - P.88

高感度分析法の開発と応用
 第28回日本臨床病理学会総会は10月9〜11日の3日間,札幌医科大学永井龍夫総会長により札幌市で開催された.会場は札幌市教育文化会館(1980年8月落成)と札幌医科大学の8会場が使用され,2,000名を超える参加者の下に盛大に行われた.
 プログラムは特別講演,総会長講演,シンポジウム3題のほか,一般演題が667の多数に達した.一般演題のうち326題が口演,341題がポスターセッションとされたので,実質2日問の学会にもかかわらず,口演には1題10分(発表7分,討論2分,予備1分)の時間が確保され,座長も演者も急がされることもなく安心して発表,討論ができた.その他,第二日の夜6:00〜8:30まで血液,微生物および病理の,そして第三日の午前中(9:30〜12:00)生理と血清の専門学術集会が開かれた.また「おかしな検査データをめぐって」との自由集会もあった.

材料別細菌検査の進め方・1【新連載】

喀痰検査法—一般細菌について

著者: 播金収 ,   鷲津良道 ,   山中喜代治 ,   増谷喬之 ,   小栗豊子 ,   佐久一枝 ,   三輪谷俊夫

ページ範囲:P.90 - P.97

喀痰検査の目的
 喀痰検査は下気道感染症—肺感染症の起病菌を検出し,起病菌の薬剤感受性を調べることによって診断,治療に役立てるために行う検査である.喀痰の喀出機構からみて,喀痰が形成される下気道炎症部の起病菌のみならず,常在菌群が生息している上気道部—気管,咽喉,口腔を通過してくる過程で,当然のことながら自然喀出喀痰の表層部に多数の上気道常在菌群が付着するため,真の起病菌を決めることが非常に難しい臨床細菌検査の代表的なものの一つである.
 船田ら1)は,上気道常在菌叢を①固定的菌叢(すべての人に共通して検出される菌群)と②流動的菌叢(普遍的には検出されない菌群)の二つに大別し,α-およびγ-Streptococcus, Micrococcus,Neisseria, Corynebacteriumの五菌種を固定的菌叢,Haemophilus influenzae, H.parainfluenzae, Streptoco-ccus pneumoniae, Staphylococcus aureusなどを流動的菌叢として報告しており,われわれも認容している.

分離分析の技術Ⅰ・1【新連載】

セルロースアセテート膜電気泳動法—血清蛋白質の標準分画法

著者: 橋本寿美子

ページ範囲:P.99 - P.107

 電気泳動法は血漿蛋白質をはじめとする体液中蛋白質の分析法として,もっとも広く利用されている方法の一つである.電気泳動法はTiseliusの開発による自由電気泳動法1)と,寒天,濾紙あるいはセルロースアセテート膜(セ・ア膜)などの支持体を用いる,いわゆる支持体電気泳動法と呼ばれる方法との二法に大別される.これらの中で,Kohnが紹介したセ・ア膜2)は優れた長所を数多く備えている.すなわち,①薄くて均質な多孔質膜である,②試料や色素の吸着が少ない,③微量の検体で実施できる,④泳動時のテーリング現象がほとんどない,⑤各分画の分離が明瞭である,⑥透明化剤を用いると一瞬のうちに完全に透明となる,などである.これらの優れた特質のゆえに,セ・ア膜は電気泳動用支持体としてもっとも広く利用されており,この方法による血清蛋白分画の解析は日常検査においてもスクリーニングテストの一つとして重要な検査項目となっている.またセ・ア膜電気泳動法は,血清蛋白の分画のほかにリポ蛋白分画3〜6),LDH7),ALP4),アミラーゼ8)あるいはクレアチンキナーゼ9)などの各種アイソザイムの分析およびヘモグロビン4)の分析などにも有用な手段となっている.

資料

ラジオイムノアッセイによる血中ジゴキシン濃度の測定

著者: 古舘正従 ,   伊藤和夫 ,   宮本篤

ページ範囲:P.109 - P.112

はじめに
 ラジオイムノアッセイによるジゴキシン濃度の測定は,1967年Butlerら1)によりジゴキシンの抗体産生に始まり,1969年Smithら2)により確立された.その後測定法が改良されて普及しつつある,初期のころは3Hを使用するものであったが,最近は125Iを使用するものが市販され,さらに簡便なものへと改善されつつある.
 著者らは第一ラジオアイソトープ研究所よりSPACジゴキシンキットの提供を受け,検討を行ったのでその結果を報告する.

質疑応答

臨床化学 セルロースアセテート膜の電気浸透現象について

著者: 青木紀生 ,   I生

ページ範囲:P.113 - P.114

 〔問〕『臨床検査』第23巻第1号の質疑応答欄"セルロースアセテート膜とは"ではセ・ア膜は陰性に荷電されるという説明がありますが,他誌においては陽性になるという説明が多いようです.これについて解説をお願いします.

臨床化学 RIAの添加回収試験

著者: 市原清志 ,   宮井潔 ,   Y生

ページ範囲:P.114 - P.116

 〔問〕 RIAにおける添加回収試験の実施上の注意点と,回収率に異常をきたす要因をお教えください.

微生物 バイオクリーンルームにおける清浄度

著者: 小林寛伊 ,   G生

ページ範囲:P.116 - P.119

 〔問〕 最近バイオクリーンルームが使われるようになりましたが,どの程度の清浄度が必要でしょうか.また,そのための検査はどのような基準で行われますか.

臨床生理 脳内の化学伝達物質

著者: 栗山欣弥 ,   西村千尋 ,   E生

ページ範囲:P.119 - P.121

 〔問〕 脳内の化学伝達物質として広く認められているものには,どのようなものがあるのでしょうか.

一般検査 先天代謝異常とスクリーニング

著者: 青木菊麿 ,   M子

ページ範囲:P.121 - P.123

 〔問〕 わが国でも新生児の代謝異常のスクリーニングが行われるようになったと聞いていますが,各種の異常症の発生頻度は,実際にどれぐらいだったのでしょうか.また,スクリーニングを実施している施設,検体の採取法や送付のしかたなどを教えてください.

雑件 負荷心電図実施中の事故について

著者: 宮下英人 ,   U子

ページ範囲:P.124 - P.126

 〔問〕 負荷前のEKGはST下降などの異常とみられるものについては医師に見せますが,医師は立ち会わないで負荷心電図を実施しています.こういう場合,患者の様子がおかしくなったときの救急処置は技師が行ってもいいのでしょうか.また責任の所在は医師にする旨口頭での約束はありますが,文書で確認しておくべきでしょうか.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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