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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査26巻2号

1982年02月発行

雑誌目次

今月の主題 炎症 カラーグラフ

炎症の組織像いろいろ

著者: 毛利昇 ,   森亘

ページ範囲:P.132 - P.134

 炎症で臨床的症状としては発赤,発熱,腫脹,疼痛および機能障害がみられ,これらの症状の原因として病理学的には「組織の変質(受身の病変),循環障害と浸出,組織の増殖(活動的の病変)を併発する複雑な病変で,その局所の防御的な反応とみなされるものである」と定義されている.原因には非常に多くのものがあり,またその病変も複雑であるが,病理学的には主な病理組織学的変化により分類されることが多い.

技術解説

プロスタグランジンの定量

著者: 稲川壽夫

ページ範囲:P.135 - P.147

 降圧,平滑筋収縮作用を有する精液中成分が1930年代前半に報告され,1960年代前半のBergströmらによる数種類のプロスタグランジン(PG)の構造解明と,1970年のCorey一派の化学合成の成功で大量供給が可能となって以来,PG自体の薬理的作用に対する検討は急速に進展した.一方,臨床的には発見の由来と薬理作用(子宮収縮)から考えて当然のように,産婦人科領域を軸として発展した.また炎症との関連性においても,血管拡張作用や透過性亢進作用,ブラジキニン活性の増強,線維芽細胞増殖効果などの薬理作用が認められるに及んで,催炎性への関与が推察される.すなわち.非ステロイド性抗炎症剤(アスピリン,インドメタシンなど)が強いPG産生阻害作用を有し,連用により消化管粘膜に潰瘍の発症を認めることと考え併せれば,PGと炎症との関係は深そうである.詳細は成書1,2)を参照願いたい.
 生体中濃度がきわめて微量で種類の多いことから定量が難しく,生体抽出物や合成標品の容易な入手から,PG研究は主として外因性PGによる薬理的効果に基づいて内因性PGの役割を推察する,という手法が用いられてきた.それゆえに,生体内産生PG自身の生理作用や動態に関しては,現在なお不明な点が多い.本稿は,PGは脂質の一種であるという原点に立ち返って,内因性および外因性PGの概念について若干言及し,望ましい量的捕捉手段について概説する.

好中球の遊走能検査

著者: 近藤元治 ,   古川泰正

ページ範囲:P.148 - P.156

 好中球の遊走能検査は,白血球機能検査法の一つであり,炎症が惹起された場合の血管外の炎症病巣への好中球の遊走状態を見るもので,白血球の機能異常症の検査法として非常に重要なものである.
 白血球機能検査法は,白血球機能不全症に先天性のものが多いため,小児科領域1)を中心に,あるいは炎症や遊走因子を研究する病理学者2)や内科医3)らによって発達してきたが,成人糖尿病での易感染性の問題,癌患者における抵抗力低下による感染症併発など,成人においても今後広く使用される検査法になってくると考えられる.

ヒスタミンの定量法

著者: 三田晴久

ページ範囲:P.157 - P.163

 ヒスタミンは図1の構造を有する生体アミンで,L-ヒスチジンがヒスチジン脱炭酸酵素により脱炭酸を受けて生成し,組織では肥満細胞,血中では好塩基球に貯蔵されている.即時型アレルギー反応において,ヒスタミンはこれらの細胞表面上のIgEと抗原との反応によって遊離し,近年,構造が確認されたロイコトリエン類(SRS-A)とともに,気道収縮を起こさせる物質と考えられている.遊離されたヒスタミンは,速やかに代謝されることもあって,生体液中のヒスタミン量は著しく微量であるため,現在でもなお,より正確な定量値を得るための新しい定量法の開発,改良が続けられているのが現状である.
 本稿では,これまでに報告された数多くのヒスタミンの定量法のうちから,バイオアッセイについて簡単に触れた後,螢光法と酵素アイソトープ法(radioiso-topic enzymatic assay)について解説する.これらのほかに,比色法や筆者らが最近報告したガスクロマトグラフ—質量分析計を用いる方法があるが,前者は他の方法と比べてこれといった特徴がみられず,現在ではほとんど使用されていない.また後者は非常に高価な機器を必要とするため,臨床検査の目的のためには一般的でないと思われるので,割愛する.

総説

炎症とプロスタグランジン

著者: 室田誠逸

ページ範囲:P.165 - P.174

 組織や細胞が損傷を被ると,その原因となるものを排除し,その局所を元の状態へ戻すように,生体の防衛反応が開始される.いろいろな顆粒球や単核球,マクロファージなどが動員されてその場へ集まってくると同時に,分裂・増殖も行われ,異物の処理を行うとともに,自らもいろいろなリソソーム酵素を放出したり,炎症の化学調節因子(chemical mediator)と称される種々の活性物質の産生に寄与して血管の透過性を亢進したりして,消炎に努める.
 では,なぜこのように白血球やリンパ球が炎症の場へ集まってきたり,その場の血管の透過性が亢進したりするのであろうか.おそらく,炎症が起こるとその場で白血球を引き寄せる物質が作られ,また血管の透過性を亢進させるような物質が作られるからであろう.最近,アラキドン酸カスケードで作られる物質の中に,こういった作用を持つものが多数見つかってきた.ここでは,まずアラキドン酸カスケードとは何かということから述べてみよう.

臨床検査の問題点・148

CRPテスト

著者: 河合忠 ,   加治史子

ページ範囲:P.176 - P.183

 CRPは1930年ころに発見された.その検査は,緊急検査としての意味はないが,いわゆる炎症性病巣の有無を推定し,経過を観察し治癒を判定するのに非常に役立つ.今回は,検査法として今日一般に行われている毛細管法とSRID法について,その原理と実施上の注意点,相違点,あわせてレーザーネフェロメトリーによる測定とその将来について語っていただいた.

検査と疾患—その動きと考え方・62

膠原病

著者: 橋本博史

ページ範囲:P.184 - P.191

 症例 18歳,女性,学生.
 主訴 発熱,紅斑,全身倦怠感.

編集者への手紙

オロット酸測定の意義について

著者: 坂根義已 ,   青木三恵子

ページ範囲:P.164 - P.164

 本誌vol.25 no.10(1981年)の「質疑応答」においてオロット酸測定の意義と測定法について述べられているが,その意義について先天性オロット酸尿症のみしか記載されてなく不十分ではないかと思われるので,ここに追加報告させていただく.
 オロット酸の血中および尿中増加は既報のごとく,ピリミジン合成系路における,ホスフォリボシル転移酵素とオロチジン−5—リン酸脱炭酸酵素の欠損による先天性オロット酸尿症1)以外にも,尿素サイクル酵素欠損症,オルニチンカルバミルトランスフェラーゼ欠損症(OCT欠損症),シトルリン血症,アルギニン血症においても増加し,尿中に多量の排泄がみられる2)

負荷機能検査・26

アルギニン負荷グルカゴン試験

著者: 平林秀光 ,   本間達二

ページ範囲:P.192 - P.200

はじめに
 膵内分泌腺はヒトではランゲルハンス島(ラ島)として存在し,B細胞からインスリンを,A細胞からグルカゴン(glucagon)を,D細胞からソマトスタチンを,PP細胞から膵ポリペプチド(pancreatic polypcptide)をそれぞれ分泌することが明らかにされている(図1).インスリンは1922年にBantingおよびBestが発見,それ以後,膵内分泌と糖の関係が確立され,1955年にはSangerにより一次構造が決定された.グルカゴンは1923年にインスリン製剤中に混在する高血糖性因子(hyperglycemic factor)として発見されたものであるが,1956年にBronerにより構造決定され(図2),1959年にはUngerがラジオイムノアッセイ(RIA)法を確立した.膵ポリペプチドはChance,Kimmelらによって,やはりインスリン製剤中に発見され,ヒトにおいて非刺激下およびセクレチンとセルレインの併用による刺激下で分泌された膵外分泌を抑制する作用を持っている.また1973年,視床下部から抽出されたソマトスタチンは,成長ホルモン分泌抑制作用のほか,グルカゴン,インスリンの分泌抑制作用を持つことが明らかになった.

材料別細菌検査の進め方・2

結核菌(その他の抗酸菌を含む)の検査法

著者: 鷲津良道 ,   播金収 ,   山中喜代治 ,   増谷喬之 ,   小栗豊子 ,   佐久一枝 ,   三輪谷俊夫

ページ範囲:P.202 - P.211

 結核はなやかなりし昭和20年代までの抗酸菌検査では,結核患者から結核菌を検索することが主な目的であった.しかし,結核に対する化学療法剤の開発・普及と衛生行政の目覚ましい成果によって若年者層の結核患者は激減したため,臨床細菌検査では一般細菌検査が重要視され,抗酸菌検査は軽視される傾向にあると言える.果たして,これでよいのであろうか.
 若年者層の結核患者は確かに激減したが,老人結核はいっこうに減少していないばかりではなく,悪性腫瘍の陰に隠れて重症な老人結核が見逃されてしまい,死後の病理解剖によって"真の死因は結核であった"という症例が増えている.一方,細菌分類学・病原細菌分離培養技術の進歩により,結核菌以外の抗酸菌感染症が多数報告されるようになってきた.このような現状を踏まえて,抗酸菌感染症の重要性をもう一度評価し直さなければならないと考える.

分離分析の技術Ⅰ・2

銀染色による微量蛋白分析法—脳脊髄液蛋白質の分析

著者: 菅野浩

ページ範囲:P.213 - P.222

 ポリアクリルアミドゲル(polyacrylamide gel;PAG)電気泳動の染色には,クマシー(Coomassiebrilliant blue;CBB)が現在もっとも普通に用いられている.ところが最近,この100倍も感度が高いという銀染色法が登場し,従来,事前に濃縮しないと泳動分析が不可能であった尿や脳脊髄液のような蛋白濃度の低い試料でも,濃縮操作なしに直ちに泳動できるようになった.また,ごく微量しかない試料では銀染色法を用いて初めて泳動分析が可能となり,ミクロ分離分析法としての電気泳動法の新たな発展の局面を迎えつつある.
 銀染色法は1979年のSwitzerら1)の報告によって多くの人の注目を集め,同じ年にMerrilら2)はこの方法を大腸菌蛋白および血漿,脳脊髄液,羊水,尿などの体液に適用して高感度染色の実験例を示した.一方,これとは別に,Kerenyiら(1972)3),Verheecke (1975)4),Karcherら(1979)5)は,濃縮しない脳脊髄液を用いて寒天ゲル電気泳動,免疫電気泳動,免疫拡散を行い,Switzerらの方法とやや異なる銀染色法を用いて発色させている.Switzerらの原法はその後Me-rrilら(1981)6,7)によって改良が加えられ,操作が簡略化されるとともに,硝酸銀の使用量も非常に少なくて済むようになった.

研究

嫌色素性下垂体腺腫の好銀性と保有ホルモンについて

著者: 鬼頭花枝 ,   鈴木春見 ,   細田峻 ,   野村隆吉

ページ範囲:P.223 - P.229

はじめに
 下垂体前葉内にはGrimeliusの好銀染色(G染色)1)により多数の好銀細胞を認め,これは大型類円形の黒褐色細胞と小型存突起性の黒色細胞に大別され,前者がチオニン青の好塩基性δ細胞に一致し,後者は嫌色素性細胞の特徴を示した.いずれの好銀細胞もHE染色では嫌色素性傾向を示した.大型黒褐色に染まる好銀細胞を螢光及び酵素抗体法で観察すると,FSHとLHを保有するGonadotrophであることが判明した2〜4)
 今回,われわれは7例のいわゆる嫌色素性下垂体腺腫を用いて同様の観察を行い,好銀所見と保有ホルモンを検討したので,ここに報告する.

資料

新しい測定機構による自動血球計数器ヘムメーター

著者: 新谷和夫 ,   菅沼清

ページ範囲:P.232 - P.236

はじめに
 自動血球計数器は,血球検出の原理から光学的検出法と電気的検出法の二種に大別されるが,いずれも再現性および能率の向上という点で血液検査室に対して大きな貢献をしてきた.ただし,従来の自動血球計数器は中央検査室制度を意識した設計で,病院内でもベッドサイド,夜間や急患対応用としては多くの問題があった.また一部では,自ら小型計数器を購入して測定する開業医もあったが,多くの開業医は検査センターへ検体を送らざるをえないのが実情であった.
 最近,このような自動血球計数の隘路打開を目的とした新しい測定原理によるヘムメーター注1)が発表されたので,このプロトタイプに関する実験データについて報告する.

質疑応答

臨床化学 HDL-コレステロールの異常低値

著者: 中村治雄 ,   T生

ページ範囲:P.237 - P.239

 〔問〕HDL-コレステロールが異常に低下している(0〜2mg/dl)患者がいます.βリポ蛋白分画電気泳像ではα分画が欠損しています.この場合,どのようなことが関係しているのでしょうか.この患者は肝機能がかなり悪く,肝硬変と思われます.
 検査データは次のとおりでした.

血液 血清分離について

著者: 野上清信 ,   中甫 ,   I生

ページ範囲:P.239 - P.241

 〔問〕私の検査室ではポリスピッツを使用し,2,500〜3,000rpm 10〜15分の条件で血清分離を行っていますが,フィブリン析出のために1回の遠心では血清が思うように採れません.採血時にリラーゼなどを入れないでフィブリン析出を防ぐ方法はないものでしょうか.また,ガラススピッツを用いた場合はフィブリン析出はないようですが,この理由もお教えください.

血液 Rh系初期抗体の検出

著者: 川越裕也 ,   S生

ページ範囲:P.241 - P.244

 〔問〕一般にブロメリン法は抗グロブリン法と比較してRh系の初期抗体をとらえやすいと言われていますが,これはIgMをとらえやすいということでしょうか,それとも,IgG,IgMにかかわらず検出感度が高いということでしょうか.また,ブロメリン二段法の術式もお教えください.

免疫血清 ポリブレン用手法による抗体検出

著者: 山口英夫 ,   J生

ページ範囲:P.244 - P.246

 〔問〕不規則性抗体の新しい検出法としてポリブレン法という方法があることを,過日の技師会の講演会で知りました.この方法の原理,操作法の詳細と,試薬の入手法,またどのような抗体に有用なのかについてお教えください.

病理 細網線維染色(鍍銀法)の意義とその手技

著者: 宇佐美一彪 ,   U生

ページ範囲:P.246 - P.248

 〔問〕肉腫などの診断の際に実施される細網線維染色(鍍銀法)の意義についてご教示ください.また,安定した結果の得られる鍍銀法がありましたら,その方法,文献などをご教示ください.

検査機器 電子線ホログラフィーとは

著者: 外村彰 ,   W生

ページ範囲:P.248 - P.250

 〔問〕最近,電顕とレーザーとを用いたホログラフィーと言われる方法が開発されたと聞きますが,これはどのようなものですか.その臨床的応用の夢も含めてお教えください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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