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雑誌目次

論文

臨床検査27巻1号

1983年01月発行

雑誌目次

今月の主題 老化 カラーグラフ

膠原線維と弾力線維

著者: 勝田省吾 ,   梶川欽一郎

ページ範囲:P.4 - P.4

 膠原線維,弾力線維は細胞間マトリックスの線維成分として生体に広く分布している.これらの線維はアザン染色,鍍銀染色,エラスチカ・Van Gieson染色などによって染め出され,組織内における分布や配列の状態,線維の量などを知ることができる.さらに,膠原線維束の大きさや弾力板のような大きい弾力線維では個々の線維の形態も観察でき,また加齢に伴っての線維の染色性の変化も見ることができる.

老化と脳変化

著者: 金子仁

ページ範囲:P.5 - P.5

 老化の病理学的指標は中枢神経系にもっとも多い.ここではPAS染色によるリポフスチン,Bodian染色による神経原線維変化および老人斑,脳血管のアミロイドアンギオパチーを図示した.リポフスチンは老化色素とも呼ばれる黄色色素で,PAS染色陽性である.老人性アミロイドは加齢による変化で,血管に沈着する場合が多い.アミロイドアンギオパチーと呼ばれるゆえんで,脳出血の原因になる.老人斑にもアミロイドがある.

技術解説

膠原線維と弾力線維

著者: 勝田省吾 ,   梶川欽一郎

ページ範囲:P.6 - P.11

 膠原線維,弾力線維はそれぞれ剛直性,弾性を有する線維で生体に広く分布し,組織の機能的要求に応じている.これらの線維は光顕的には種々の染色法によって容易に同定することができ,組織内における分布や配列状態,さらに大動脈中膜の弾力板のような大きい弾力線維では個々の線維の形もある程度知ることが可能である.
 個体の加齢とともにこれらの線維は形態学的,生化学的変化をきたし機能的にも変化を示すようになる.加齢に伴う形態学的変化は光顕的には量的変化,配列や分布状態の変化,染色性の変化などとしてとらえることができるが,個々の線維の形態を知るには電顕的観察が必要である.

中枢神経系老化の特殊染色について

著者: 金子仁 ,   清水一

ページ範囲:P.12 - P.17

 "老化"の概念は①本質性,②進行性,③障害性,④普遍性である.
 本質性とは加齢のみが原因で起こる変化である.胃癌があり,食事ができずやせ衰えるのは,決して"老化"ではない.脳軟化症は脳底動脈硬化症のために起こる疾患で,老人には多いが,決して"老化"ではない.

コラーゲンの化学的定量法

著者: 永井裕 ,   堀久枝

ページ範囲:P.18 - P.23

 コラーゲンは生体のいずれの組織,器官にも広く分布する細胞外マトリックスの主要な成分であって組織構築,生体の保持に関与するほか,細胞の増殖,分化,移動,血小板凝集など細胞のミクロ環境としての重要な生理機能を営んでいる.
 臨床検査の立場からコラーゲンの動態を調べようとするときは,①コラーゲンの代謝性異常,②肝,肺,動脈をはじめ諸臓器の線維化像または③線維化過程の追跡などが必要となる.①については主として血中,尿中ヒドロキシプロリン(Hyp)の測定,②については従来常用されてきた各種組織化学的染色法に加え,I〜V型コラーゲン(本文参照)のそれぞれに特異的な抗体を用いた免疫組織化学的染色,③についてはコラーゲン前駆体(プロコラーゲン)に特有のペプチド画分に対する抗体を用いたラジオイムノアッセイによる血中抗原の定量など,多様なアプローチが考えられる.

性腺機能検査—男性

著者: 島崎淳 ,   伊藤晴夫

ページ範囲:P.24 - P.29

 性腺は身体臓器中で加齢でもっとも著明な変化を示す臓器である.男子性腺はゴナドトロピンの影響下に精子形成と性ステロイド産生の二つの働きを持つ.本稿ではまず,血中各種ホルモン値について記載し,次いでホルモン負荷テストについて述べる.さらに睾丸の形態学的変化および,睾丸血流について,また精液検査,性的能力について記す.

性腺機能検査—女性

著者: 加藤順三

ページ範囲:P.30 - P.36

 女性性腺機能は,狭義には卵巣から分泌されるホルモンレベルを間接的・直接的に検査することである.臨床的には月経周期が正常であればまず卵巣機能は正常と考えてよいが,卵巣機能異常で月経異常が発来する.日常臨床上用いられている基礎体温(basal body temperature;BBT)測定,頸管粘液量と性状,子宮内膜日付(dating),腟脂膏角化係数は内因性エストロゲン動態の判定の指標として価値が大きい.特に,正確なBBT測定で得られるBBT曲線からはいろいろな情報が得られることや簡便であることからも,BBT測定は卵巣機能検査の出発点である.これらの検査について方法を含めて簡述した.
 内分泌学的検査法として負荷試験とホルモン測定とがあるが,いわゆるKuppermanテストは無月経の障害部位を推定できる点,臨床の実際上の価値が大きい.これにクロミドテスト,ゴナドトロピン試験,LHRH試験と,さらに負荷時のホルモン動態の解析から,障害部位の鑑別のみでなく,卵巣の反応性すなわち卵胞成熟の有無,程度も知ることができる.
 血中,尿中ホルモン測定はもちろん価値は大きいが,月経周期による正常値変動なども,測定データ解釈上注意を要する.なお,本稿では卵巣機能検査に直接関連するものにとどめたが,血中プロラクチン値測定は今や必須のホルモン測定としての位置を確立している.

総説

検査値と生物学的年齢

著者: 古川俊之

ページ範囲:P.37 - P.42

生物学的年齢研究の意義
 まず初めに,年齢と検査値の関係を研究することの意味を列挙して考えてみよう.
(1)加齢に伴う検査値の変化を分析する.

主題を語る(対談)

老人の正常値とは

著者: 日野原重明 ,   勝沼英宇

ページ範囲:P.44 - P.51

 高齢者には,年齢を感じさせない活力の持ち主もいれば,年相応に見られる老人もいる.では,例えば"年相応"とは何を基準にしているのだろうか.老化現象と考えられる各種の変化も検査値として表すと,各人さまざまで偏差も大きく開いている.こうした状況で,各人に対して検査値をどう評価すべきか,またその評価の基準となる"老人の正常値"は設定できるのだろうか.

検査と疾患—その動きと考え方・73

オステオポローシス

著者: 藤田拓男

ページ範囲:P.52 - P.57

はじめに
 オステオポローシスは骨粗鬆症とも言い,骨の量的な減少がその本体であるが,臨床像としては腰痛,骨折の傾向がその主要なものであり,そのほか種々の背景疾患の症状と所見,ことに老化に伴う変化が加わって複雑な臨床像を呈する.すなわち骨粗鬆症は,いわば高血圧のように,広くみられる症状であって,その背景には異なった多くの原因や疾患が隠れている.オステオポローシスの多様性ということが,その診断や治療を考えるうえにきわめて重要である.ここではオステオポローシスを示す1例を提示し,その背景を考察し,診断に至る過程を追ってみたい.

座談会

老化と検査

著者: 三輪卓爾 ,   白井達男 ,   金子仁 ,   原澤道美

ページ範囲:P.58 - P.67

 老人の実態は身体の構成の変化で,細胞数の減少であり,したがって臓器はその形を縮小させ,機能は全体として低下する.しかし,病的変化としてこのような現象が生じた場合それを老化とは言わない.老化という現象は形態的にも機械的にも,さらに各分野にわたって個人差の大きい,多様な変化をみせる.

学会印象記

第29回日本臨床病理学会

著者: 樋口正身

ページ範囲:P.43 - P.43

病理,細胞診を聴いて…
 川出眞坂総会長(岐阜大学中央検査部・教授)による第29回日本臨床病理学会総会は,1982年10月22日から24日まで岐阜市で開催されました.一般演題総数は678題で,このうち320題はポスターセッションで発表された.特別講演は川崎医科大学柴田進学長による「臨床病理—その山と川」,総会長講演は「本邦人におけるLp (a)リポ蛋白について」,シンポジウムは2題で「新しい測定技術とその臨床検査への応用」,「注目されている尿中低分子蛋白」と3題の教育講演,そのほかに公開講演会,器械,試薬の展示が行われました.発表会場が6か所に分かれており,見聞しえた講演と病理関係の発表についての感想を記すことにする.
 特別講演は柴田学長の35年に及ぶ実践と臨床病理学の歩みを,検査技術の進歩を「川」に架ける橋に,検査診断学の目標を「山」にたとえて,患者の治療・疾病の本態の解明への進むべき方向を示されて熱っぽく話された.日常性の中に流されがちな私には大きな戒めと励ましを与えられた想いがしました.総会長講演は,永年にわたり手がけられたLp (a)リポ蛋白について定量法の確立,本邦人における分布,個人差,疾病における値の変動を,門外漢の私にもわかりやすく述べられ,現在はまだ入口にさしかかったところであると結ばれました.

分離分析の技術Ⅱ・1【新連載】

ガスクロマトグラフィー/質量分析法—有機酸尿症の解析

著者: 松本勇

ページ範囲:P.70 - P.77

はじめに
 ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS法)は,分離能の優れたガスクロマトグラフ(GC)で分離したピークに含まれる化合物を,GCと直結した質量分析計(MS)で直ちに検出,同定し,さらに定量も行う高感度,高精度の分析法で,分離分析という観点からは,MSはGCのFIDやECDなどに相当する検出器と考えることができる.ただし,GCのFIDやECDなどとは異なるいくつかの特徴を有する.そのもっとも大きな特徴は,MSはそれ自体GCや液体クロマトグラフなどの分離分析用機器とは異なる,構造解析用の独立の分析機器である点である.種々の分離技術の中で,前述のようにGCは格段に高い分離能を有するが,しかし化学構造や分子量が非常に類似した化合物では,相互に分離できないものも少なくない.特に多数の代謝産物を含む体液成分では,類縁の化合物が多数含まれるため,同一ピークの中に2,3個の化合物が含まれることも珍しくない.このようなピークは,FIDやECDを用いる限り,相互に区別できず,単一の化合物として取り扱うことになり,誤った結論を招くことも避けられない.その1例を紹介しよう.
 ホモバニリン酸(HVA)は,ドーパミンから酸化的脱アミノおよびカテコール—o—メチル転移反応によって産生し,ヒトの脳脊髄液や尿中に多量に検出される.

ベッドサイド検査法・1【新連載】

糖尿病のベッドサイド検査法

著者: 宇都宮一典 ,   池田義雄

ページ範囲:P.79 - P.84

 日常の糖尿病診療の中で,ベッドサイドあるいは診察室で手軽に行える検査となると,おのずから簡易検査に限られることになる.簡易検査はスクリーニングとしての性格のみならず,緊急検査としての使命を担っており,測定自体の簡易性と同時に迅速性,正確性も要求される.
 1956年,尿糖検査に導入された酵素試験紙法は,1965年に至って血糖測定用試験紙の開発へと発展した.そして機器によって色調判定を行ういわゆる機器法は,現在糖尿病の簡易検査に欠くことのできない存在となっている.しかし,一方ではあまりにも日常的な存在であるがゆえにややもすれば無神経に取り扱われ,簡易検査法に内在する多くの問題点が見逃されがちである.ここでは糖尿病を診療管理するうえでもっとも重要な血糖,尿糖,ケトン体の簡易検査法をめぐって,試験紙法を中心にその特殊性と問題点を再考してみることにする.

研究

マイクロプレート光度計を用いた血清IgEの酵素免疫測定法

著者: 松永清二 ,   井上武志 ,   遠藤雄一 ,   大滝幸哉

ページ範囲:P.90 - P.93

はじめに
 ヒト血清中のIgEの測定についてはいくつかの酵素免疫測定法(EIA)が開発されている1〜5).Hoffman1)は抗IgE抗体結合プラスチック製チューブとアルカリホスファターゼ(ALP)標識IgEを用いた競合法を報告した.Guesdonら2)はグルコースオキシダーゼ標識抗IgG抗体を用いたSRID法を,またWeltmanら3)はβ-D-ガラクトシダーゼ(β-Gal)標識家兎抗ヒツジIgG抗体を用いた二抗体法を,Guesdonら4,5)はβ-Galなどの酵素で標識した抗IgE抗体を用いた固相法を報告した.Hoffmanらの方法1)における測定感度は,10μlの血清試料を用いて50IU/mlという値であった.また20μlの血清試料を用いるGuesdonらのSRID法2)においては20IU/ml,500μlの血清試料を用いるGuesdonらの固相法4,5)においては5IU/mlあるいは2IU/mlという測定感度が報告されている.これらの方法においては酵素とIgE,あるいは抗IgE抗体との結合にグルタルアルデヒドが架橋剤として用いられてきた.グルタルアルデヒドによる架橋は測定に不都合な過度の重合を起こす危険性がある.われわれは抗体の力価には影響を与えないジマレイミドを架橋剤とし,また標識酵素としてβ-Galを用い酵素抗体複合体を作製した.

脳波における過呼吸賦活の定量的標準化—過呼吸標準化装置(過呼吸モニター)の試作による

著者: 堺雄三

ページ範囲:P.94 - P.97

はじめに
 過呼吸賦活は,臨床脳波の通常的な検査でありながら過呼吸が被検者の主体性にゆだねられるため,被検者の換気に著しい不均一を生じることと,非定量的であることから,異常波の賦活効果,build upの臨床検査的意義などが必ずしも明確にされていない.著者は以前build up,発作性異常波,局在性徐波を賦活する一定した換気条件を安静時換気量の倍数で表し,呼気量を測定器で計測,コントロールすることで定量的標準化が可能であることを述べた2).今回はそれに基づき,被検者の過呼吸を一定の換気に標準化し,それを定量的にとらえる装置を開発した.これを用いて正常成人,てんかん成人の換気程度を一定にして,build upの相違を検討した.

エンザイムイムノアッセイのサンドイッチ固相法における理論的考察—抗原抗体反応の結合定数の決定

著者: 鈴木富士子 ,   加藤兼房

ページ範囲:P.98 - P.104

はじめに
 ラジオイムノアッセイの理論的分析に関しては,BersonとYalowが抗原と抗体の反応を平衡論的および速度論的に研究して,抗原と抗体の結合定数を測定している1)
 ここではエンザイムイムノアッセイのサンドイッチ固相法を理論的に考察し,抗体と抗原の結合定数を求めた.ここで述べる方法によって,すでに臨床的にも広く使用されている各抗原のサンドイッチ固相法の標準曲線から,抗原と抗体の結合定数を計算することができる.

質疑応答

臨床化学 血清の乳糜,溶血の判定基準

著者: 降矢震 ,   A子

ページ範囲:P.105 - P.106

 〔問〕生化学検査では乳糜や溶血によって影響を受けるものが少なくありません.当検査室では肉眼により判定し(+)〜(4+)を付記していますが,判定者によりバラツキがあります.乳糜,乳血の客観的判定基準があればお教えください.

臨床化学 イオン電極法と炎光法

著者: 高原喜八郎 ,   E生

ページ範囲:P.106 - P.107

 〔問〕Na,Kを測定した場合,イオン電極法と炎光法とで必ずしも値が一致しませんが,なぜでしょうか.また,どちらが正しいのでしょうか.

血液 フィブロネクチンとは

著者: 松田道生 ,   Y生

ページ範囲:P.107 - P.110

 〔問〕フィブロネクチンについて,その性状,測定法,臨床的意義についてお教えください.

血液 ヘマトクリットの測定原理による違い

著者: 新谷和夫 ,   G生

ページ範囲:P.110 - P.111

 〔問〕 ヘマトクリットがいろいろな原理で測定されるようになっていますが,遠心によるマイクロヘマトクリット法との異同および臨床的意義のうえで差があるのでしょうか.

血液 Turk液の作用

著者: 松野一彦 ,   H生

ページ範囲:P.111 - P.113

 〔問〕 Turk液は赤血球を破壊させて白血球を測定しますが,赤芽球の出現している検体では赤芽球も白血球と同様に算定されます.なぜTurk液で赤血球が破壊されるのか,白血球はどうして破壊されずに安定した測定ができるのかお教えください.

血液 フィブリノゲンの分解産物

著者: 河合忠 ,   R子

ページ範囲:P.113 - P.114

 〔問〕 フィブリノゲンの分解産物でフィプリノペプチドA (fibrinopeptide A)とフラグメントA (fragment A)とはどう違うのですか.

一般検査 検査時の夜間排尿

著者: 長沢正人 ,   M子

ページ範囲:P.114 - P.115

 〔問〕 検査時の夜間排尿は,何時まで排尿してよいのか.早朝4時,5時などの尿は排尿するのかどうか.あわせて濃縮食について一,二献立てをお教えください.

制度・資格 臨床検査技師の資格取得の具体的な方法

著者: O生 ,   日本臨床衛生検査技師会渉法部

ページ範囲:P.115 - P.116

 〔問〕『臨床検査』第26巻第5号の質疑応答"職業としての臨床検査技師"の回答中,資格取得のフローチャート図が掲載されていましたが,この図を具体的に解説してください.私は四年制大学の理学部生物学科を卒業しましたが,指定科目とは何か,申請取得とはどうすればよいのかわかりませんので,手続きのしかたも教えてください.

制度・資格 労働衛生コンサルタントとは

著者: 佐藤乙一 ,   K生

ページ範囲:P.116 - P.118

 〔問〕労働衛生コンサルタントとはどのような職種ですか.仕事の内容,収入,社会的地位についてお教えください.また,その国家試験の受験資格(特に臨床検査技師の場合〉,内容(科目),合格率,そして参考書をお教えください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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